こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。
みなさんは『墨流し』と呼ばれる伝統芸術をご存知ですか?
墨流しとは、福井県の指定無形文化財に指定されている約千年もの歴史を持つ伝統芸術で、水面に墨を落とした際にできる模様、またはその技法そのものなどのことをいいます。
水面に広がる墨の模様は、落とした墨の位置や風などの影響で次々と表情を変えていくので、出来上がる模様を制御することはとても難しく、二度と同じ模様は生み出せないといわれています。
本記事では、そんな墨流しの歴史や技法などをご紹介します。
墨流しの歴史
起源は平安時代
墨流しは、平安時代後期の王朝貴族が川に墨を流し模様の変化を楽しんだ遊びを起源としています。
また『西本願寺本三十六人家集』と呼ばれる、平安時代の書の料紙には『墨流し』の模様を転写した料紙が使われており、華麗で風格があります。
『西本願寺本三十六人家集 躬恒集 一開』
また、1151年(仁平1)に広場治左衛門によって越前国(福井県)に広められたという伝説があります。
江戸時代
江戸時代に入ると墨のほかに紅や藍なども使われ始め、油脂を用いて木目や雲のような模様を染めたものが、千代紙という折り紙で使用する紙や引き出しの内張りに用いられました。
そして、さらにこれを布地に移すことが開発され、福井県の武生や京都などで行われました。
墨や染料の模様が平らに写せるように生地を糊付けしてよく伸ばしたり、着色後の色止めにも様々な工夫が凝らされたようです。
用途としては、長襦袢や風呂敷、袱紗の類から、近代ではネクタイ、スカーフなどにも用いられています。
現代
墨流しはおよそ千年の歴史の中で、さまざまな研究や改良がされ、ついには平成12年3月21日に福井県指定無形文化財として登録されました。
染めるものが大きくなるほど、繊細な技術と集中力が必要になるので、現代では描くことのできる人は限られた職人のみになります。
墨流しの方法
ここからは、墨流しの神秘的な模様がどのような方法で描かれているのか、簡単に説明していきます。
- トレイを用意し、水を張る
- 新聞紙を水面に浮かべ水面の油汚れを取り除く
- 墨をつけた筆と、油をつけた筆を用意する
- 墨が円状に広がるまで墨の筆を水面につける
- 水面にできた円の中心に油の筆をつけ、墨を弾かせる
- 墨と油の筆を交互につけるのを繰り返す
- 満足する模様が完成したら、模様の上に和紙を乗せ、模様を転写しゆっくりと引き上げる
ほかにも細かく解説すると、しなくてはならない工程はありますが、大まかにはこのような流れで墨流し作品は作られます。
こちらは、後述する墨流しに似た技法である『マーブリング』と呼ばれる技法で筆者が作ってみたブックカバーになります。
板締和紙とよばれる、吸水性に優れ、濡れても破れにくい和紙を使用して作成しました。
作ってみた感想としては、色を広げる際に輪郭がきれいにならずギザギザしてしまうのが、難しいなと感じました。しかし、模様が次々と水面で表情を変えていくのを見たり、ここから風を送ったらどんな模様になるだろうとか色々考えたりしながら楽しんで描くことができたので、またやりたいなと思いました。
墨流しの技法に似た、マーブリングとは
マーブリングは、15世紀頃にトルコで生まれたとされており、トルコでは『Ebru』と呼ばれています。
墨流しとマーブリングは見た目や技法も似ていますが、墨流しは墨の一色なのに対し、マーブリングは絵具などが使われるので、カラフルなのが特徴です。
また、マーブリングは紙などに転写するだけではなく、自分の肌に転写するボディーマーブリングと呼ばれる技法を研究するアーティスト集団も存在しています。
『BLVisuals』
『Dirty Workers Studio』
おすすめ墨流し・マーブリングセット
ここまで墨流しやマーブリングについてご紹介してきました。
そこで墨流しやマーブリングをやってみたくなった方におすすめの墨流しセットをご紹介させていただきます。
墨運堂 カラー墨流しセット
初めての方におすすめなのが墨運堂の『カラー墨流しセット』です。通常のマーブリングセットに追加で必要な容器や、和紙などが付属したお得なセットになっています。
セット内容は、
- マーブリングセット(6色 各12ml / フロート紙 / 説明書)
- 筆(水書き用)
- はがき専用容器
- 綿棒
- テキスト(ふしぎ染めの世界)
- 板じめ用和紙(B5サイズ)
となります。
墨運堂 マドレー6色セット
マーブリングセットでは作れない、更に色鮮やかな模様を作りたい方におすすめです。
セット内容は、
- インク(6色 12ml)
- 糊セット
- 説明書
となります。
初めての方は転写する和紙などや、水を入れる容器なども揃える必要があるので、要注意です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は日本の伝統芸術『墨流し』の歴史や技法、似た芸術である『マーブリング』についてまとめてご紹介しました。
墨流しやマーブリングは、出来上がる作品を完璧にコントロールすることは困難で、二度と同じ模様は作れない偶発性が特徴であり、インパクトのある神秘的な模様はつい目に留まってしまうような魅力があると思います。
墨流しやマーブリングをやってみたい!と思った方は、おすすめの墨流しセットを合わせてご紹介させていただいたのでぜひご覧になってみてください。
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