こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。
皆さんはエイプリル・グレイマンという人物をご存じですか?
エイプリル・グレイマンは、コンピュータテクノロジをデザインツールとして取り入れた最初のデザイナーの1人として広く知られるアメリカ人のデザイナーです。
本記事では、そんなエイプリル・グレイマンの経歴を見ていきましょう。
エイプリル・グレイマンってどんな人?
基本情報
本名 | エイプリル・グレイマン(April Greiman) |
生年月日 | 1948年3月22日 |
出身 | アメリカ ニューヨーク |
学歴 | Kansas City Art Institute(KCAI) Allgemeine Kunstgewerbeschule(Basel School of Design) |
職種 | デザイナー |
公式サイト | https://www.madeinspace.la/ |
生まれと学歴
エイプリル・グレイマンは1948年3月22日に生まれ、ニューヨーク市で育ちました。彼女の父親はコンピュータプログラマであり、システムアナリストであり、ベンチュラ工科大学の創設者兼社長でもありました。
彼女がデザインの勉強を始めたのは美術学校への進学を決意し、Rhode Island School of Design(RISD)に出願した直後でした。
RISDの古いブーツを描かせるという試験に惨敗した彼女は、学長からグラフィックに強いことを指摘され、Kansas City Art Institute(KCAI)と呼ばれるミズーリ州カンザスシティにある美術学校のグラフィックデザイン課程に出願するよう勧められました。
グレイマンは、グラフィックデザインの定義もわからないまま、その提案を受け、入学しました。
そこでグレイマンは、Basel School of Designというスイスのバーゼルにある大学院で学んできた教師たちから、モダニズムの理念を学び、その体験に触発されBasel School of Designに進学します。
この大学院でグレイマンは、アーミン・ホフマン(左)とウォルフガング・ヴァインガルト(右)に師事します。
彼女は、インターナショナルスタイルやモダニズムを深く探求するとともに、ヴァインガルトが個人的に行っていた、モダニズムをあまり反映せず、変化するポスト工業化社会を代表する美学の開発という実験に取り組みました。
それは現在ニューウェーブと呼ばれるスタイルとして確立しており、特徴としては、一貫性のない文字間隔、一つの単語内で様々な太さの文字、直角でない文字の配置などがあり、当時のデザイン界に衝撃を与えたといわれています。
デジタルツールを進んで利用
1970年代半ば、ニューヨークでデザイナーをしていたグレイマンは、ヨーロッパの伝統に深く根差したデザイン文化の快適さから離れ、ロサンゼルスに移り住みます。当時のロサンゼルスは美術館やギャラリーが少なく、まともなコーヒーを飲むのも困難でした。
しかし、確立されたデザイン手法がないことが、かえって新しいデザインを探求する機会を生んだようです。
この年代はコンピュータ技術の進歩が進むにつれ、多くのデザイナーがデジタル化を恐れていた時代でした。しかし、同世代の人々とは異なりグレイマンは恐れることなく、テクノロジがもたらす脅威を超えて、デジタルツールを活用することにしました。
彼女は、ピクセル化やデジタル化の「エラー」をデジタルアートの不可欠な部分として利用したのです。
また、芸術やデザインに先端技術を取り入れるという考えを探求し、広めることに尽力しました。
カリフォルニア芸術大学 デザイン学部長に任命
1982年にグレイマンは、カリフォルニア芸術大学のデザイン部門の責任者となります。
1984年、グレイマンは「グラフィックデザイン」という言葉は学問の幅を狭めてしまうと感じたため、部門名を「ビジュアルコミュニケーションズ」と改名するよう働きかけ、成功しました。
そこでは学生に教えながら、彼女自身もテクノロジーが彼女の仕事に与える影響について深く研究しました。
Design Quarterlyにて「Does It Make Sense?」を発表
写真のコラージュや静止画などのメディアを早くから実験的に使用したことで知られるグレイマンは、1984年に初めてリリースされたMacintoshを早くから採用し、後にMac Worldの『First Macinstosh Masters in Art』コンペティションでグランプリを受賞しました。
そして1986年、当時のグラフィックデザインの発展に貢献した雑誌である『Design Quarterly』にて『Does It Make Sense?』という作品を発表します。
この作品はMacintoshのMacDrawソフトを使用して、ビデオカメラからキャプチャした画像を読み込み、タイポグラフィを作成することで制作されました。
グレイマンが作品を作る以前のデザイン界では、コンピュータがデザインに関与しすぎることに反対するデザイナーも多かったが、『Does It Make Sense? 』が発表されると、多くの人がコンピュータとデザインの関係について考え方を変え、さまざまな議論を引き起こしたといわれています。
また彼女は、このデジタル作品をただ紹介するだけでなく、作品とメディアに対してより大きな問いを投げかける機会として捉えました。
グレイマンは、『Does It Make Sense?(意味がわかりましたか?)』このテーマについてウィトゲンシュタインの本を読み、彼の「あなたがそれに意味を与えるならば、それは意味をなす」という結論に共感したそうです。
彼女は、この考え方が大好きで、「道具や技術によって、何をどのように見るか、どのように結果を予測するかが決まってくる。このような考え方は、私の中にある子供のような純粋な好奇心を呼び覚ます。」と言っています。
アメリカ グラフィックデザイン展のビルボード
グレイマンがデザインしたアメリカのグラフィックデザイン展のビルボードです。グレイマンは巡回展でも取り上げられたようです。
女性の投票権を記念する切手をデザイン
1995年、アメリカ郵政公社はアメリカ合衆国憲法修正第19条(女性の投票権)を記念し、グレイマンに32セント切手のデザインを依頼します。
この切手のデザインは、主に二つの写真で構成されています。
一つ目は、1913年のワシントンDCにてウッドロウ ウィルソン大統領の就任式の際に行われた、あらゆる職業や職種の女性が行進している写真です。5000人を超える行進の規模は、当時のものとしては初めてで、全国メディアの注目を集めました。
二つ目は1976年の平等の権利修正案により何千人もの支持者がイリノイ州議会議事堂へ行進している写真です。
これらのアメリカの女性参政権運動の歴史に欠かせない二つの重要な写真と、タイポグラフィやシンボルが組み合わされたデザインになっています。
この切手は、公式にデジタルで作成された一番最初のアメリカ郵便切手となっています。
MadeInSpace設立
2005年にグレイマンはロサンゼルスを拠点とするデザインコンサルト会社、「MadeInSpace」を設立。
MadeInSpaceはテクノロジ、サイエンス、言葉、イメージを色と空間に融合させるユニークな方法で、アイデンティティ、建築ブランディング、色に関するデザインコンサルティングを提供する会社です。(https://www.madeinspace.la/)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、テクノロジの進歩に恐れずに自分のデザインにデジタルツールならではの要素を取り込んだエイプリル・グレイマンについてご紹介させていただきました。
個人的には、ニューウェーブやグレイマンのスタイルがとても好きで展覧会などがあれば見に行ってみたいなと思っています。
ぜひ彼女の作風に興味を持った人は、さらに調べてみてはいかがでしょうか!