こんにちは、ユアムーン株式会社 編集部です。
皆さんは、マイケル・ビェルートという人物をご存知でしょうか?
ビェルートは時に創造性よりも問題解決力を重視し、シンプルで展開性の高いデザインを作ることで有名なグラフィックデザイナーです。イタリア出身の著名なデザイナーであるマッシモ・ヴィネッリのもとで働いたのちにアメリカを代表するデザインファームのPentagramに所属し、MITやサックスフィフスアベニューといった世界的に有名な企業、団体のブランディングを行ってきました。
今回はそんなビェルートの経歴を作品とともにご紹介していきます!
マイケル・ビェルートってどんな人?
基本情報
本名 | マイケル・ビェルート(Michael Bierut) |
生年月日 | 1957年 |
出身 | アメリカ オハイオ州 クリーブランド |
学歴 | シンシナティ大学 デザイン・建築・芸術・計画学部 |
職種 | グラフィックデザイナー |
受賞歴 |
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公式/関連サイト | https://www.pentagram.com/about/michael-bierut |
生まれと環境
ビェルートは1957年、オハイオ州のクリーブランドに生まれました。
少年時代はクリーブランド美術館の土曜日午前に開かれていた美術の講座に参加し、デッサンの技術を磨いていました。
中学3年生の時に、学校の演劇のためにポスターを制作したことがきっかけでクリエイティブに興味を持ち始めます。
また「アーミン・ホフマン」と「ミルトン・グレイザー」によって、点、線、テキストなどグラフィックデザインを構成する要素の考察とデザインの基礎が著述された『Graphic Design Manual: Principles and Practice』を読んだことも影響し、高校を卒業したビェルートは、『シンシナティ大学』の『デザイン・建築・芸術・計画学部』でグラフィックデザインを学び始めます。
ビェルートは在学中にボストンのテレビ局「WGBH」で2002年のAIGAメダリストであるクリス・プルマンの下でインターンとして働いていました。
1980年にシンシナティ大学を卒業し、グラフィックデザインの学士号を取得したビェルートは、タイポグラフィーの巨匠「マッシモ・ヴィネッリ」が創設したデザイン会社『Vignelli Associates』でヴィネッリの下で働き始め、10年の間で副社長の座まで上り詰めました。
1990年、ビェルートはデザイン会社『Pentagram』のニューヨークオフィスにパートナーとして入社し、Alliance for DownTown New York、ウォルト・ディズニー・カンパニー、ニューヨーク大学など名だたるクライアントにサービスを提供しました。
彼が携わった、有名なグラフィックデザインをご紹介していきます。
ヒラリー・クリントンの大統領選挙キャンペーンロゴ
ヒラリー・クリントンの2016年大統領選挙の際に制作されたロゴです。
Facebook、Twitter、Instagramに席巻されている今の世界の有権者は、自分の声を発信し、直接つながることに慣れています。
このような環境下で大統領選挙のデザインは、「簡潔で効率的」であり、タブレットやスマートフォン、腕時計の中で目立つものでなければならないとビェルートは考えました。
それに加えて、2008年のオバマ政権は、退役軍人、教師、LGBTなど様々な人々にアピールするためにロゴを同心円や曲線、グラデーションなど、さまざまな要素でカスタマイズしていたことを受け、思い返してみるとビェルートはこのロゴを無理矢理作られたように感じたようです。
そこでクリントンのロゴでは、その逆であるシンプルで展開性の高いロゴを制作しようと考えました。
クリントンも「新しいものを作りたい」という思いに共感し、数週間かけて制作されました。
クリントンは、これまでのキャンペーンでは伝統的なセリフ体のタイポグラフィーを使用していたということで、ビェルートは綺麗で大胆なサンセリフ体を採用することに決定します。
また、バラク・オバマのロゴではすべて大文字だったのに対し、ビェルートたちは、より親しみやすく、より会話しやすいという意味を込めて大文字と小文字の組み合わせを採用しました。
初期案は「H」のみで、そのロゴに絵やパターンなどを簡単に入れることができ、支援者一人一人がカスタマイズすることができる、「究極のダイナミック・アイデンティティ・システム」という考え方の下作られたデザインでした。
しかし、「H」だけではさすがにシンプルすぎるという心配もあり、ビェルートは文字の形状から自然に浮かび上がる、未来に向かう矢印を配置します。
未来に向かう矢印を配置したビェルートですが、実際のところこの「未来に向かう」という意味はあまり重要視せず、5歳の子供でも画用紙とはさみで作れるようなロゴにしたいという気持ちで制作したようです。
MasterCard
ビェルートは、2016年から2019年にかけて使用された米国最大の金融サービス企業「MasterCard」のロゴもデザインしました。
MasterCardのこれまでのロゴに共通してみられるシンボルマークの円は「協力」と「団結」を象徴し、色は「成長」、「エネルギー」、「動き」を表しています。
1990年から2016年の間に使われた2つのロゴのシンボルマークは2つの円の交差部分がボーダーで組み合わさっているデザインでした。
しかしビェルートがデザインしたロゴはとてもシンプルで、シンボルマークは赤とオレンジの円が重なり合っているだけになり、「MasterCard」の文字はシンボルマークの真ん中から下に移動させました。
彼のコンセプトは「エレガントな基本への回帰」であり、26年もの間使用され世界で最も認知されているであろう横線が入ったデザインから「色の明るさ」を引き継ぎ、1969年や1979年のロゴと同様の二つの円が交差しているだけのデザインに回帰しています。
MaterCardのロゴ変遷
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回はシンプルで、認知されやすく展開性の高いデザインが特徴であるグラフィックデザイナー、マイケル・ビェルートについてご紹介させていただきました。
ビェルートはTED Talksで「子供たちの読む気を引き出す図書室のデザイン方法」などについて講演している動画があり、無料で視聴でき、とても面白い講演になっているので、ぜひそちらも視聴することをお勧めします!
【TED Talks】マイケル・ビェルート: ロンドン地下鉄路線図は何がすごいのか?