こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。
皆さんは茶道(茶の湯)の経験はありますか?
日本の伝統文化としてよく知られ、部活動や習い事として行う機会はありますが実際に経験のある人は珍しいのではないでしょうか?
作法や礼儀に厳しく堅苦しいというイメージもあるかもしれません。
しかし現代こそ自分と向き合い、人と向き合う茶から得られるものはたくさんあるのではないでしょうか。
そんな茶道(茶の湯)の主役のひとつが茶器や茶碗をはじめとする茶道具の数々です。
茶の伝統を現代まで受け継いできた茶道具の美学は、我々の日常と見えない線で繋がっています。
本記事では茶の湯・茶器/茶碗の歴史と見どころについてご紹介します。
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まずは茶器/茶碗の舞台となる茶の湯について解説します。
茶の湯という言葉に馴染みがない方もいるかもしれません。
部活動やメディアで取り上げられる家元が活躍する場では「茶道」という言葉の方がよく聞きます。
茶の湯とは、抹茶を嗜む行為全般を指す意味の広い言葉です。
一方茶道とは、茶の湯を通じて精神を修養することに主眼が置かれた芸道としての行為を指します。
この記事ではより広い意味を指す「茶の湯」で解説をしていきます。
茶の種類
茶の湯で頂くのは茶葉を砕いた粉末状の抹茶ですが、その中でも頂き方によって薄茶と濃茶に分けることができます。
薄茶は泡だった淡い緑のお茶で、気軽な茶会で供される飲みやすいものです。
濃茶は上質な抹茶をたっぷり使った、とろりとした濃厚なお茶です。
茶を作ることを「点前」と言いますが、薄茶を作ることを「点てる」というのに対して、濃茶を作ることは「練る」と言います。
茶の湯
抹茶を嗜む行為全般を指す茶の湯の中で、お客さんを招いてもてなすことを茶会(ちゃかい)と言います。
本来は格式高い茶事(ちゃじ)のことを指しましたが、現在では大人数を招いて気軽に行われるものにも使われます。
一方、茶事は正式な茶会のことを指します。炉に火を入れ、懐石というコース料理を食べ、濃茶、薄茶を頂きます。
主な茶道具
茶の湯に使われる道具を茶道具と言います。点前(抹茶を点てること)に用いるものから茶室を飾るものまで多岐に渡り多様な種類がありますが、ここではアート視点で5つピックアップしてご紹介します。
釜
火にかけてお湯を沸かす道具です。
催し事のことを「釜をかける」と表すほど、茶の湯を代表する大切な茶道具のひとつです。
茶室の真ん中に埋め込まれているイメージがある方も多いかもしれませんが、実はそれは季節によって異なります。
五月から十月ごろまでは風炉(ふろ)といい、畳に敷いた敷板に釜を直接載せて使います。
十一月になると、畳を切って仕舞っていた炉(ろ)を開けて釜に火を入れる炉開きという行事が行われます。
宗派によって違いはありますが、炉開きは火を入れるだけではなく、塩や米を舞いて炉を清め、柏手をうってお神酒を頂きます。
こうした神聖な儀式を経て、四月ごろまで茶室に埋め込まれていた釜を使い始めます。
釜の多くは鉄の鋳物で、中には土や陶製のものもあります。
茶器/茶入
抹茶を入れておく道具です。薄茶を入れるための容器を「薄茶器」といいます。日本製の漆塗りのものが最も一般的で、形によって「棗(なつめ)」「吹雪(ふぶき)」「中次(なかつぎ)」などの種類があります。
濃茶を入れるための容器を「茶入」といいます。一般に陶製で象牙の蓋がつき、仕服と呼ばれる袋にしまいます。
元々は中国からの渡来品である「唐物」が使われ、東南アジアの「島物」が取り入れられ、千利休以降では日本製の「和物(国焼)」も使われるようになりました。
茶碗
抹茶を点てて飲む時に用いる道具です。茶の湯の歴史と共に国産のほか、中国、韓国、東南アジアなどのものが使われます。
季節によって使い分けられる茶碗もあります。
例えば冬に使われる筒茶碗は縦に長く口が狭く、冷めにくいだけではなく手の平で包むように持ちぬくもりを感じさせてくれる作りになっています。
反対に夏に使われる平茶碗は横に長く口が広く、茶が冷めやすくなっています。
現在の茶道を完成させた千利休はこのように言っています。。
夏は、いかにも涼しきように。冬は、いかにも暖かなるように。
茶の湯の極意である「もてなし」「気遣い」を分かりやすく表した言葉です。
茶碗のデザインは釜元や素材、見た目の素晴らしさだけではなく、そのデザインの先にある気持ちが重要であるという良い例です。
菓子器
茶の湯では、茶に合わせて菓子を頂くことがあります。
菓子を入れる容器である菓子器にも様々な種類があり、茶器や茶碗と並んで注目したい工芸品です。
菓子が生菓子か干菓子か、季節や他の道具との取り合わせ、さらには催し事の趣向など様々な要素を組み合わせて器を選びます。
掛物/花入/香合
掛物(かけもの)とは茶室の壁に掛けられた掛軸のことです。最も格が高いため、柱で仕切られ床が高くなった床の間に飾られます。
禅語(禅の教え)や書、詩文、絵画などが書かれていることが一般的です。格式高い家元の場合は家元による作品が書かれていることもあります。
掛物に書かれた言葉は茶会のテーマを示す重要な役割があり、茶道具や着物、食事の取り合わせの中心になります。
茶道具のリーダーといっても差し支えないと思います。
「花入(はないれ)」は茶の湯に飾る花を入れる入れ物で、花のことを「茶花」といいます。
また「花を生ける」ではなく「花を入れる」と言う決まりがあります。「茶石では茶花が唯一命あるもの」と言われ、菓子と共に茶の湯に季節感をもたらす重要な飾りです。
「香合(こうごう)」は炉に火を入れる炭点前に焚くお香を入れる道具です。
炭の匂いを消し、お湯が沸くまでのあいだ空間を清めながら香を楽しむために行われます。風炉には木製、炉には陶製を用いるほか貝殻や金属で出来たものもあります。
茶の湯といえばお茶やお菓子に直接触れるものに注目しがちですが、茶室を飾る道具にも重要な役割と魅力があるのです。
古美術って?
まずは古美術というジャンルが生まれた歴史からご紹介します。
古美術という言葉が生まれたのは、第二次世界大戦が終了し欧米との貿易や文化交換が盛んになった頃のことです。
海外のアンティークが日本で人気になり、同時に日本の古い美術品や工芸品が海外で価値を帯び始めました。
これまでは古い美術品や工芸品を作者の知名度やジャンル問わず「骨董品」としていましたが、美術品として高い価値を持つものを「古美術品」と呼ぶようになりました。
伝統工芸について詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ!
茶の湯・茶器/茶碗の歴史
ここから茶の湯と共に茶器/茶碗の歴史を見ていきましょう。
日本に抹茶がもたらされてから八百年、日本独自の茶の湯文化が出来上がるまで時代と共に茶の楽しみ方や価値観の変化していきました。
お土産から始まった茶の湯800年の歴史

茶の湯にかかせない抹茶が日本にやってきたのはおよそ八百年前の鎌倉時代に遡ります。栄西禅師という人物が仏教の修行のため中国に渡った際に、茶の木の種を持ち帰ります。
鎌倉幕府三代将軍である源実朝が二日酔いで苦しんでいる時に抹茶を献上して二日酔いを沈め、抹茶の効能や飲み方を『喫茶養生記』という書物に記したことで抹茶が世の中に広まりました。
茶の栽培が始まり、特に修行中の眠気を取り除くのに効果的として僧侶の間で抹茶を喫する文化が浸透していきました。
現在でも建仁寺では、中国の禅寺から伝わった「四つ頭の茶会」が栄西の誕生日である4月20日に開催されられています。
鎌倉時代末期には、宋から伝わった「闘茶」が公家や武士の間で流行します。
闘茶は、日本最古の茶園である栂尾(とがのお)産の「本茶」とそれ以外の産地の「非茶」を飲み分ける遊びで、時には莫大な金品を景品とする賭け事も行われました。
茶道の源流・侘び茶の始まり
室町時代から安土桃山時代にかけて、茶の湯は日本独自の文化へ発展していきます。
茶を楽しんでいた武士の生活空間が書院造に変化し、道具や飾り物を揃えて部屋全体でもてなすようになります。
これに対して奈良の僧侶であった村田珠光が禅の思想を茶の湯文化に取り入れ、四畳半程度の草庵(民家を模した小さな建物)で茶を楽しむ「草庵の侘び茶」を提唱しました。
これが茶室の始まりと言われます。
室町時代の末期には唐物を尊重する時代から国焼(または和物)と呼ばれる国産の器が浸透し、日常生活で使われている雑器の中から茶道具として使えるものを見出す「見立て」という文化が生まれました。
また当時の和歌で重視されていた「冷え枯るる」という心持ちが茶の湯に取り入れられ、冬の山に一人取り残されたような、凛とした清々しさと寂しさが禅の無常感とマッチし、後の侘び茶にも影響を与えています。
千利休による茶の完成

村田珠光の没年に誕生した武野紹鴎は、幼い頃から茶の湯や香道を学び、京都で禅僧になります。
紹鴎は珠光の侘び茶をさらに深め、より小さい三畳の座敷や道具の取り合わせを提案します。
この教えを受け継ぎ茶道として完成させたのが、紹鴎の弟子であった千利休です。
千利休は茶室を簡素化して、入り口に低く狭い躙口(にじりぐち)を設けました。どんな立場の人物も平等に頭を下げ、武器を置いて入らなければならないという仕組みになっています。
茶器/茶碗は伝統的な唐物を尊重しつつ、樂茶碗(素焼きの陶器に絵付けを施した簡素な器)を取り入れたりもしました。
また、千利休は花入や茶杓を手作りし、当時は使い捨ての質素な素材であった竹を茶道具に取り入れたりと伝統を尊重する一方で新しい価値観を創出し取り入れることもしました。
こうした千利休の功績の多くが禅の教えに依り、千利休は「茶禅一味」と言い表しました。
京都山崎には、1582年の山崎の戦いで千利休が陣中に建てた茶室「待庵」が現存しています。
火中で拵えたということもあり極限までシンプルに作られた待庵は唯一現存する千利休が建てた茶室で、後の数寄屋建築の原形になったとされます。
近代日本の茶の変遷

江戸時代以降は古田織部や小堀遠州といった独自の美意識を持つ茶人が現れ、茶の湯のありようを大きく変えました。
彼らのような茶人は自分の世界観を表現するために自ら職人を指導したり、茶器に銘を入れ、好みのものを分類するなどして茶人と茶道具の美意識を統一させました。この文化はその後の「家元好み」へと繋がっていきます。
明治以降、明治維新によって封建的な体制が破られ、茶の湯は急進的に力を持った政治家や実業家の嗜みになりました。
そういった人々は名物茶器をコレクションのためこぞって入手を競い、茶の湯は社交や権力の誇示を目的として行われるようになりました。
現在の茶の湯にある高尚なイメージは、この時代の印象を引きずっているのかもしれません。
さらに現代では茶の湯が日本の伝統文化として世界に認知された一方で、一般人が茶の湯に触れる機会が減っていることが懸念されています。
近年では抹茶を嗜む喫茶店の登場、家で茶を点てるグッズの販売、若年層向けの茶会の開催など、茶の湯の普及を目指す動きが目立ってきました。
茶器/茶碗鑑賞のポイント
ここからはアート視点で茶器/茶碗の鑑賞ポイントをご紹介します。
茶器/茶碗の見どころ1:名前から情報を読み取る
芸術品の中でもやきものや刀剣といった工芸品の作品名は独特です。多くは名前だけでおよその「産地」「作り」「用途」が分かります。
実際に名前だけで判別するためには膨大な知識が必要になりますし、その全てを覚える必要はありません。
「文字から読み取る」ことと「作品から観取る」ことを繰り返して知識をつけることで、鑑賞体験を豊かにしていきましょう。
その第一歩として実際の作品を見ながら、名前を分解してみましょう。
曜変天目茶碗(12~13世紀頃)
天目茶碗の中でも出来の良い三作品を特にこう呼び、現在すべてが国宝に指定され日本国内に現存しています。
名前を見ると「曜変」とあります。これは元々「窯変」と書き、釉薬の上に七色に屈折する斑点模様が浮かび上がる化学反応のことです。
次に「天目」とあります。これは中国にある天目山に由来し、中国産の「唐物」であることと口付近が角張った「天目形」であることの両方を表します。
最後の「茶碗」は上記の通り、濃茶を頂くときに使う器のことです。
古瀬戸肩衝茶入 銘:在中庵(16世紀頃)
茶の湯の発展に大きく寄与した茶人・小堀遠州が所持していたとされる重要文化財の一品です。
「古瀬戸」は窯元を表し、現在の愛知県瀬戸市にあたります。
次に「肩衝」は茶入の形の様式を表す名前で、名前の通り口の近くの肩が突き出して下が窄んでいる形を指します。
最後の「茶入」は濃茶をつくる抹茶を入れる器のことです。
呉須赤絵玉取獅子鉢(16~17世紀)
「呉須」は真ん中の絵に用いられている青い染料、「赤絵」は周囲の色付きの柄のことを指します。
呉須赤絵は明時代の中国でよく見られた様式です。この頃の中国では同じ様式の食器が輸出用に多く生産されていたため「唐物」の名が付いていませんが中国製であることが推測できます。
「玉取獅子」は真ん中の絵柄を表します。呉須赤絵の中では玉取獅子の絵柄は最も人気があり、日本で菓子器や懐石の器として重宝されます。
「鉢」は茶以外に用いる器で、本来は中国で一般的な食器に使われたものを日本で茶道具として見立てられ使用されるようになりました。
茶器/茶碗の見どころ2:一番上と一番下に注目
砧青磁茶碗 銘:馬蝗絆(13世紀)
口造りには切り欠きが、器体には割れを補修したかすがいが、高台には青磁に映える赤褐色が。頭のてっぺんからつま先まで見どころの詰まった逸品。
やきものを鑑賞する時に真っ先に目が行くのはどこでしょうか。
多くの人が器の全体のシルエットや胴体の部分に注目するのではないでしょうか。
単純に面積が広く、絵や細工が施されていることも多いので自然に目線が集まります。
しかし茶器/茶碗に限らずやきものの重要な鑑賞ポイントは最初と最後、つまり口造りと高台にあります。
口造りとは、使用する時に口に触れる一番上のふちです。
ふちが広がっているか窄まっているかに注目してみましょう。上記の「筒茶碗」「平茶碗」のように季節に応じた気遣いを表すほか、茶や菓子の種類に合わせて取り合わせます。
また、切り欠きを加えることで真上から見た時に花びらのように見える作品もあります。
高台とはやきものの一番下のふちのことです。いわばやきものの裏の部分で実際に茶の湯を体験しても目に着きにくいところではないでしょうか。
ここは釉薬を施した作品であれば土の地肌が見える唯一の場所で、素材の風合いと釉薬や絵付け、細工とのコントラストを一目で見ることができます。
また口造りと同様に切り欠きを施したものもあります。
茶器/茶碗の見どころ3:茶の湯を再現して鑑賞する
御所丸茶碗 銘:緋袴(16~17世紀)
回した時の手触りも心遣いのひとつかも?
茶の湯の所作で、器を手の中でくるくると回しているのを見たことはないでしょうか?
これは茶の湯で器を扱う時に決まって行う所作です。
まず主側は器の正面が客側を向くように渡し、客側は飲む時に正面が汚れないように時計回りに二度回します。
飲み終わったら反時計回りに二度回して正面が見えるように戻します。
そうしたら拝見に移り、地面に置いて器を右、左と拝見します。
次に器を手に取り、内側や高台を鑑賞して地面に置き、もう一度右、左と拝見します。
最後に時計回りに二度回して正面が主側に向くようにして元に戻します。
正面を相手に向けながら器を汚さずにお茶を楽しむための心遣いと、美しい仕草で器を鑑賞するための所作なのです。
あなたがどのようなシチュエーションで鑑賞するとしても、結局茶器は茶の湯で用られるために作られたものです。
実際の茶の湯で行う拝見を再現することで、茶の湯の真髄である心遣いや物の見方に近づくことができるでしょう。
大人数を招く気軽な催しものでは、一人ひとりが器を手にとって拝見する時間を省略されることも少なくありません。つまり茶器の展示や販売は、初心者がじっくりと器を拝見する貴重なチャンスなのです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
本記事では専門的なことばがたくさん出てきてしまいましたが、茶の湯や茶器/茶碗を楽しむために必要なのはことばを覚えることではありません。
千利休の孫・三代元伯宗旦はこのように言っています。
「茶の湯とは、耳に伝えて目に伝え、心に伝え、一筆もなし」
本記事が鑑賞体験を豊かにする一助になれば幸いです。
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