インターネット上における画像を気軽に利用できるようになった昨今、画像使用における著作権への意識がより重要となっています。
この記事では、「どんな場合に画像使用が可能なのか」「どの画像を使用できるのか」という基本的問題に対処するために、他者に著作権が帰属している画像の使用方について解説していきます。
目次
著作権の基本的な考え方
著作権の基礎
日本弁理士会のホームページを参照すると、「著作権とは著作物を保護するための権利」とされています。この場合における著作物とは、著作者の思想や感情などが表現された創作物を指し、文芸・学術・美術・音楽・コンピュータープログラム等がこれにあたります。
著作権は狭義には著作財産権を指し、独占的かつ排他的に著作物を利用する権利です。財産権として認められている特性上、譲渡・貸与・許諾の契約等を結ぶことにより著作者ではない人(自然人や法人)が著作物を自由に利用することも可能になります。なため、著作権は相対的独占権あるいは排他権とされています。
著作物の利用方法に応じて細かく分類されており、これら支分権ごとの譲渡も可能です。しかしながら、人格権としての著作者人格権は著作者に残されるため(著作権法第59条)、無断で著作物を公表・改変、特に氏名表示を変えることはできません。
著作権支分権一覧
複製権 | 著作物を複製する権利。 |
上演権及び演奏権 | 著作物を公に上演・演奏する権利。 |
上映権 | 著作物を公に上映する権利。 |
公衆送信権等 | 著作物を公衆送信・受信装置を用いて公に伝達する権利。 |
口述権 | 言語の著作物を公に口述する権利。 |
展示権 | 美術の著作物等を原作品により公に展示する権利。 |
頒布権 | 映画の著作物を複製して頒布する権利。 |
譲渡権 | 著作物を原作品、もしくはその複製物で譲渡し、公衆に伝達する権利(ただし、映画は除く)。 |
貸与権 | 著作物をその複製物の貸与により公にする権利。 |
翻訳権 | 著作物を翻訳、編曲、脚色、映画化等、翻案する権利。 |
著作権が生じないもの
著作権が生じないものとしては、「創作性の無いアイディア・ノウハウ」「自然科学に関する論文」「創的な思想や貴重な情報そのもの」
また、「工業製品」の場合は、特許権・商標権・産業財産権・意匠権などの、その他の知的財産権によって保護されるケースが多いようです。
著作権法に関する解説
次に著作権法に関する解説をしていきます。今回は画像使用に関連する部分にのみ焦点を当て解説していきます。より詳しい情報を知りたい方は、記事の最後に出典を記載しますので、そちらよりアクセスしてください。
※著作権法全文は、「e-GOV」の著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)より確認できます。また、本記事ではより使いやすく掲載されている「コンメンタール著作権法(Wikibooks)」のリンクを参照していきます。
著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)|日本の場合
著作権を保護する法律として、著作権法が制定されています。画像使用に関しては、「私的使用のための複製(第30条)」「引用(第32条)」の二つのが関連してきます。
画像を個人的な目的で使用する
初めに前者の「私的使用のための複製(第30条)」についてみていきます。著作権法第30条によれば、家庭内かつ仕事以外の目的であれば自由に使うことができるようです。しかしながら、デジタルに関連する著作物はこれに当たらず、補償金の支払いや許諾が必要になることに注意です。
著作権法第30条
私的使用のための複製(第30条)
家庭内で仕事以外の目的のために使用するために,著作物を複製することができる。同様の目的であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできる。
なお,デジタル方式の録音録画機器等を用いて著作物を複製する場合には,著作権者等に対し補償金の支払いが必要となる。
しかし,[1]公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製するときや,[2]技術的保護手段の回避により可能となった(又は,その結果に障害が生じないようになった)複製を,その事実を知りながら行うとき,[3]著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を,その事実(=著作権等を侵害する自動公衆送信であること)を知りながら行うときは,この例外規定は適用されない。
また,映画の盗撮の防止に関する法律により,映画館等で有料上映中の映画や無料試写会で上映中の映画の影像・音声を録画・録音することは,私的使用目的であっても,この例外規定は適用されない。出典:著作物が自由に使える場合, 文化庁, https://www.bunka.go.jp/index.html
引用目的で使用する
次に後者の「引用(第32条)」について見ていきます。引用は、ビジネスや学術的な領域において欠かせない考え方で、これに遵守しない場合著作権侵害に当たる可能性があります。
引用とは自分の著作物に他社の著作物を利用する行為を指し、正当な範囲内であれば基本的に問題ありません。
しかしながら、下記の4点を満たしたうえで使用する必要があります。一つ一つ細かく見ていきましょう。
「他人の著作物を引用する必然性があること。」
「かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。」
「自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。」
「出所の明示がなされていること。(第48条)」出典:著作物が自由に使える場合, 文化庁, https://www.bunka.go.jp/index.html
引用のための注意事項
1:他人の著作物を引用する必然性があること。
引用される著作物は、自分の著作物に他人の著作物を引用する正当な理由を持つ必要があります。
例えば、ご自身で自分の家族を紹介するウェブサイトを制作する際、何の脈絡もなしにアイドルの画像を使うことはできません。しかしながら、アイドルの歴史を紹介する記事を書く場合はどうでしょうか。アイドルを紹介していくうえで、画像無しで説明していくことはかなり無理がありますし、引用する必然性があるかと思います。
自分の著作物を作る上でどうしても必要かつ明確な文脈、脈絡がある場合は他人の著作物を使用することができます。
2:かぎ括弧をつけるなど,自分の著作物と引用部分とが区別されていること。
引用される著作物は、自分の著作物と他人の著作物を明確に区別されている必要があります。
本記事でも使用されているような「””」で囲うことや、枠線を付けて明確に区別するなど、視覚的な工夫が必要になってきます。第三者から見てわかる形に区別するようにしましょう。
3:自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)。
引用される著作物は、自分の著作物の”量”に対して他人の著作物の”量”が少ない必要があります。
一般に、他人の著作物は自分の著作物に対して1~2割程度にすることが通例となっています。少なくとも「自分の著作物:他人の著作物=8:2」の基準を守るようにしましょう。
4:出所の明示がなされていること。(第48条)
引用される著作物は、他人の著作物の出典を明確に記載されている必要があります。ウェブサイト、書籍、論文など、引用もとによって出典の記載方法は変化してきます。下記に記載するべき情報例を載せておきますので、必ず確認してください。
論文 | ・著者名 ・発表年 ・論文のタイトル ・掲載誌名(+巻数) ・所在ページ |
書籍 | ・著者名 ・出版年 ・タイトル ・発行所 |
ウェブサイト | ・著者名 ・ウェブページのタイトル ・URL ・最終アクセスの年月日 |
5:著作物に改変が加えられていないこと
引用される著作物に対するトリミングや加工はできません。必ず画像に変更を加えずそのまま掲載するようにしましょう。
6:公表された著作物であること
引用される著作物は、必ず公開されている必要があります。未公開な著作物を引用することができません。
7転載を禁ずる旨の表示がない
ここまで引用のための注意事項を解説してきましたが、転載を禁ずる旨の表示がある場合は上記4点を満たしていても引用することはできません。ウェブサイトの場合、プライバシーポリシーや利用規約に記載されている場合が多いので、必ずそこを確認するようにしましょう。
著作権法第32条 条文
引用(第32条)
1 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。2 国等の周知目的資料は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。出典:著作物が自由に使える場合, 文化庁, https://www.bunka.go.jp/index.html
フェアユース|アメリカの場合
アメリカにも著作権法は存在しますが、一定の条件を満たしていれば著作者に無断で利用しても著作権侵害とはなりません。
その代表例が、フェアユース(公正利用)という抗弁事由で、「利用の目的と特性(その利用が、商用か非営利の教育目的かなど)」「著作権のある著作物の性質」「著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性」「著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響」の4条件を満たしていれば他人の著作物を利用することができます。
フェアユースの4要件
利用の目的と性格(利用が営利性を有するか、非営利の教育目的かという点も含む)
裁判所では通常、その利用が「変形的」であるかどうか、つまり、新しい表現や意味がオリジナルのコンテンツに追加されているかどうか、あるいはオリジナルのコンテンツのコピーにすぎないかどうかという点を重視します。
2. 著作権のある著作物の性質
主に事実に基づく作品のコンテンツを利用する方が、完全なフィクション作品を利用する場合に比べフェアユースであると認められる可能性が高くなります。
3. 著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性
オリジナルの作品から引用するコンテンツがごく一部である場合は、コンテンツの大半を引用する場合に比べフェアユースであると認められる可能性が高くなります。ただし、ごく一部の利用であっても、それが作品の「本質的」な部分である場合は、時としてフェアユースではないと判断されることもあります。
4. 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響
その作品の需要に対する代替品となることにより、著作権者がオリジナルの作品から受けることができる利益を損ねるような利用は、フェアユースであると認められる可能性は低くなります。
出典:「フェアユース」とは, Google ヘルプ, https://support.google.com/
ケース別にみる著作物の利用方法
どのような場合にその画像を引用でき、どのような場合はできないのか、判断に困る場合が多くあるかと思います。そのような場合に、法律やルールに従い的確に判断できるよう、著作権の帰属に関するルールをケール別にまとめました。
パブリックドメイン
パブリックドメインの場合、著作権が失効していることを意味し、画像の加工やトリミングを含め自由に使用することができます。「公共に帰した」と訳すことができ、誰でも自由に利用することができます。
一般に、右図のような©に斜線が入った図で示されていることが多くなっています。
クリエイティブコモンズ
クリエイティブコモンズとは、著作権ルールの普及と作品の適切な流通を目指して活動している国際非営利団体で、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)という著作権のルールを提供しています。
このルールに基づき著作者が自身の創作物に対してライセンスを付与することで、その著作物をどのように利用してよいかを示すことができます。作品利用の条件は4つあり、これを組み合わせて6種類のCCライセンスがあります。
CCライセンスの種類
アイコンの意味
作品のクレジットを表示すること | |
営利目的での利用をしないこと | |
元の作品を改変しないこと | |
元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開すること |
6種類の組み合わせ
表示 | 原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示することを主な条件とし、改変はもちろん、営利目的での二次利用も許可される最も自由度の高いCCライセンス。 | |
表示—継承 | 原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、改変した場合には元の作品と同じCCライセンス(このライセンス)で公開することを主な条件に、営利目的での二次利用も許可されるCCライセンス。 | |
表示—改変禁止 | 原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ元の作品を改変しないことを主な条件に、営利目的での利用(転載、コピー、共有)が行えるCCライセンス。 | |
表示—非営利 | 原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ非営利目的であることを主な条件に、改変したり再配布したりすることができるCCライセンス。 | |
表示—非営利—継承 | 原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ非営利目的に限り、また改変を行った際には元の作品と同じ組み合わせのCCライセンスで公開することを主な条件に、改変したり再配布したりすることができるCCライセンス。 | |
表示—非営利—改変禁止 | 原作者のクレジット(氏名、作品タイトルなど)を表示し、かつ非営利目的であり、そして元の作品を改変しないことを主な条件に、作品を自由に再配布できるCCライセンス。 |
出典:クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは, Creative commons Japan, https://creativecommons.jp/, 2023/01/26
フェアユース
フェアユースは前述の通り、「利用の目的と特性(その利用が、商用か非営利の教育目的かなど)」「著作権のある著作物の性質」「著作権のある著作物全体との関連における使用された部分の量および実質性」「著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響」の4条件を満たしていれば他人の著作物を利用可能とするルールです(厳密には抗弁事由)。
実際に使用する際は、画像を使用する際はこれら条件に加え、ウェブサイト内の利用規約(Term of use)で著作権に関する項目を確認するようにしましょう。また、フェアユースの場合でも、必ず出典を書くようにしましょう。
例えば、MOMAなどはウェブサイトの利用規約(Term of use)には、Fair use is permitted という記載があり、基本的にサイト内の画像はフェアユースの考え方に基づけば使用できることを示しています。必ず利用規約を確認するようにしましょう。
SNSの埋め込み
Twitterサービス利用規約の「ユーザーの権利およびコンテンツに対する権利の許諾」によれば、ツイッターに投稿した創作物は著作者に帰属しますが、コンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配信するための、世界的かつ非独占的ライセンスは無償でツイッター社側に許諾したことになっています。そのため、ツイッターのサービスを利用したコンテンツの複製は問題ないため、埋め込みコードをウェブの記事内に利用することは基本的に著作権侵害には当たりません。詳細は下記URLから確認することができますので、ぜひ一度確認してみてください。
InstagramもTwitterと同様の考え方で、Instagramの埋め込みについても著作権侵害にはなりません。しかし、注意しなくてはならないのが、Meta社は著作者の同意を得る必要があると主張しているため、法律的には問題ないものの利用者の倫理観に基づき許諾をとる必要があると言えるでしょう。
※アメリカの判例では、サーバーテストではなくインスタグラムの利用規約に基づき判断されています。また、アメリカは判例法定主義にのっとっているため、判例に基づき埋め込みを利用しても基本的には問題ないでしょう。
判例結果参照はこちらから【Sinclair v. Ziff Davis, LLC (1:18-cv-00790)】
判決文のPDFはこちらから【判決文】
Youtube
YoutubeもTwitterと同様の考え方で、埋め込みコードを利用は著作権侵害にはなりません。Youtube利用規約内の「お客様のコンテンツと行動 他のユーザーへのライセンス付与」に記載されていますので、一度確認してみてください。
PinterestもTwitterと同様の考え方で、埋め込みコードを利用は著作権侵害にはなりません。Pinterest利用規約内の「b. Pinterest やその他のユーザーが、あなたのコンテンツを使用する方法」に記載されていますので、一度確認してみてください。
ただし、Pintarestには、著作者の許可を取ったかどうかがわからない画像も多く存在します。この場合、コミュニティーガイドライン内の知的所有権とその他の権利に違反している可能性がありますので、可能な限り一次情報に近いところから埋め込みを利用するようにした方が良いでしょう。
著作物の著作者が明確で使用禁止の記述がある
著作物に利用禁止の記述がある場合、許諾を取らずに引用することは基本的に不可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は画像著作権に関して、参考文献を参照しながらかなりがっつりとまとめました。下記に参考文献も記載していますので、時間がある際こちらも確認してみてください。
参考文献
- 文化庁公式サイト 著作物が自由に使える場合
- Wikibooks コンメンタール著作権法
- e-GOV 法令検索
- 学ぼう著作権 ①著作権とはどんな権利?
- フェアユース
- 「フェアユース」とは
- ライセンスについて 私たちのライセンスが行うこと
- クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは
- Pinterestサービス利用規約
- Youtubeサービス利用規約
- Twitterサービス利用規約
- Instagramサービス利用規約
- Judge smacks down copyright suit over Instagram embedding
- Sinclair v. Ziff Davis, LLC (1:18-cv-00790) District Court, S.D. New York