史上最短でV3からSVリーグへ – ヴォレアス北海道が地域と共に描く新たなブランディングのカタチ – 池田憲士郎

アートコンサルティング

自己紹介

池田 憲士郎 / Kenshiro Ikeda on X: "ライセンスの話もここでは出来ると思います" / X
名前池田 憲士郎 (Ikeda Kenshiro)
生年月日1986年11月6日
出身地北海道旭川市
肩書き株式会社VOREAS 代表取締役社長 / プロバレーボールチーム運営会社代表 / NewsPicks プロピッカー
SNSX : https://x.com/KenshiroIkeda
Instagram : https://www.instagram.com/kenshiroikeda33/
Threads : https://www.threads.com/@kenshiroikeda33
note : https://note.com/kenshiroikeda
NewsPicks : https://newspicks.com/user/3363790/ヴォレアス北海道
公式X : https://x.com/voreas_official
公式Instagram : https://www.instagram.com/voreas_official/
公式TikTok : https://www.tiktok.com/@voreasofficial
公式サイト : https://voreas.co.jp/

1. ヴォレアス北海道の急成長と池田社長のリーダーシップ

池田さんがヴォレアス北海道の創設された経緯と、その際に描いていたビジョンを教えてください。

一番のきっかけは、地元・旭川に戻ってきたときに感じた強い危機感でした。

私は東京で会社員として働いたあと、家業の建設会社を継ぐために帰ってきたのですが、街にどこか元気がなく、若者の流出や高齢化といった地方が抱える構造的な課題を肌で感じました。

「このまま何もせずにいたら、本当に地元が衰退してしまう。」

そんな焦りの中で、自分にできることを考えた結果、「スポーツ」というコンテンツを用いる結論にたどり着いたんです。スポーツには、世代や立場を超えて人をつなぐ力があるし、夢中になれる対象があることで、その街に“誇り”や“帰属意識”が生まれる。私自身バレーボールはもともと小学校から大学まで情熱を持って取り組んできた競技でしたし、ゼロからチームを作り、地域活性化に挑戦することを決めました。

最初は、建設会社の採用課題を解決するための企業クラブとしてのスタートでした。
しかし、地域の方々の応援や期待がどんどん高まり、気づけば「これはもうプロとしてやるしかない」と覚悟を決めて法人化し、リーグ参入を目指すこととなりました。

創設当初から描いていたのは「勝つこと」以上に「地域の誇りになること」でした。
人が集まり、熱狂が生まれ、そこから新しい産業や文化が育っていく。スポーツクラブを“まちづくりの起点”にできると本気で信じていましたし、それは今も変わっていません。

2. 北海道の象徴としての使命感と挑戦

『ヴォレアス北海道』という名前を作るにあたって、地域性や未来への思いをどのように込めましたか? またチーム名やブランドロゴを決める際に、どんな選択肢や議論があったのでしょうか?

ヴォレアス北海道

「ヴォレアス」は、荒々しい神様でギリシャ神話の“北風の神・ボレアス”が語源です。それにV(Volleyball)を掛け合わせて、「北海道から新しい風を起こす」という意味を込めています。北海道の地に根ざしながら、ここから全国・世界へと挑戦していく存在でありたい、という願いが込められています。

さらにもう一つ、僕らのチームには“翼を持つ狼”というシンボルがあるんです。これは、かつて北海道に実在した「エゾオオカミ」にも通じています。エゾオオカミは、自然との共存の象徴でありながら、人間の都合で絶滅に追いやられた存在です。私たちはその記憶を受け継ぎながら、もう一度この地に“誇り”と“野性”を取り戻したいという想いを込めました。

 実は最初、「もっと分かりやすくて覚えやすい名前の方がいいのでは?」という声があったんです。でも僕らが目指していたのは、“勝つだけのチーム”ではなく、“文化やムーブメントを生む存在”。だったら、名前にもストーリーと哲学を持たせるべきだと考えました。

狼をチームの象徴にしたのも、ただカッコいいからではありません。群れで連携しながら獲物を仕留める狼の習性って、実はバレーボールの本質とすごく重なるんですよね。個の力だけでは勝てない。全員で意思をつなぎ、獲物(=1点)を確実に取りにいく。その集団戦略の美しさが、狼とバレーに通じていると思っています。

 ロゴのデザインにも、「誇り高く、自分たちの道を切り拓いていく」という想いを込めています。地方発のクラブだからこそ、見た目も中身も“世界基準”であること。デザイン一つにも妥協せず、未来に残せるブランドを目指しました

それと、チーム名やブランドロゴとは別に、マスコットにもすごく思い入れがあって。やっぱりマスコットって、子どもたちや地域の方々にとって、一番身近で親しみやすい“クラブの顔”じゃないですか。だからこそ「かっこよさ」よりも「親しみやすさ」や「覚えやすさ」、そして何より“みんなに愛される存在”になってほしい、という想いを込めました。

ヴォレアス北海道公式マスコット「ヴォレ」デザインリニューアルについて
ヴォレアス北海道公式マスコット「ヴォレ」

当時はスタッフやサポーター、地域の方々にも協力してもらって、何度も名前の公募や投票を実施しました。候補もたくさん出ましたし、正直どれも個性があって、決めるのは本当に大変でした。
色々と考慮した結果「ヴォレ」という誰もがチームとの関係性を理解でき、親しみやすい名前に決定しました。
決定までかなり多くのプロセスがあったからこそ“みんなでつくった”という実感がありますし、今の名前には、たくさんの人の想いが詰まっていると思っています!

マスコットって、勝敗関係なく会場に来た人を笑顔にできる存在なんですよね。だからこそ、僕らの活動の中でもすごく大切にしている存在です。将来的には、子どもたちが「バレーは知らないけど、あのキャラクターは好き」って言ってくれるくらいの、地域のアイコンになってくれたら嬉しいですね。

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ヴォレのXアカウントはこちら

3. ブランディング戦略の核心

ヴォレアス北海道のブランディングにおいて、特に意識された点や工夫されたことは何ですか?

一番意識したのは、「地方発であっても、最初から世界基準で勝負する」という姿勢です。北海道・旭川というローカルな土地から始まったクラブだからこそ、見た目も中身も“本物”でなければ埋もれてしまう。だからこそ、妥協せず、最初からプロフェッショナルな世界観を徹底しました。

たとえばチームロゴやユニフォーム、映像や音楽に至るまで、すべてにストーリーとコンセプトを込めています。単に“かっこいい”ものではなく、「このクラブは何者で、何を目指しているのか」がビジュアルや空気感から伝わるようにしたかった。デザインやクリエイティブに手を抜かないのは、スポーツを“文化”として根づかせたいという想いがあるからです。

また、ファンの方々との距離感もすごく大事にしています。あえて「応援される側」と「応援する側」の関係だけではなく、共に“つくっていく”感覚を持ってもらえるよう、マスコットの名前募集やイベント、グッズの共同開発なども積極的に取り入れてきました。日々のアンケートをしっかり目を通して反映させていることも当たり前の事ですが、継続して実施しています。

加えて、“スポーツクラブ”という枠を超えた価値を提示することも常に意識しています。地域の飲食・観光・教育・エンタメ・環境事業ともつながりながら、「ヴォレアスがあるからこの街が面白い」と思ってもらえる存在を目指しています。

4. 地域密着とファンとの関係構築

「地域密着型のチーム運営として、具体的にどのような活動を行ってきましたか?」

僕たちが考える「地域密着」は、地域にいるという事実以上に、「日常の中にクラブが溶け込んでいる状態」を指します。そのために、全世代を対象とした関係づくりや体験設計を意識してきました。

たとえば、子どもたちには「VOREAS KIDS PASS」という無料観戦パスを発行し、「スポーツを観に行く」という行動が特別なことではなく、日常になるような環境を整えています。ご家族での来場やリピート観戦も増え、街の中で自然とクラブの話題が広がるようになってきました。

また、試合会場では音楽・映像・演出・飲食などの“空間全体の体験設計”を通じて、全年齢層がそれぞれの楽しみ方で過ごせるような工夫をしています。バレーボールそのものを知らなくても、音楽や照明演出に引き込まれたり、美味しい地元の飲食を楽しんだり。来場者の年齢や目的が違っても、それぞれが「今日ここに来てよかった!」と思えるような時間になるよう心がけています。

一方で、地方ならではの課題もあります。人口が限られ、情報の伝播スピードも遅いため、都市圏のような広告手法だけでは届きづらいだからこそ、「一人ひとりと丁寧につながっていくこと」を大切にしてきました。時間はかかりますが、関係性の深さは都市部とは比べものにならないほど強くなると感じています。

そして同時に、「デジタル戦略」にも攻めの姿勢で取り組んできました。SNSや動画、オンライン配信、コンテンツマーケティングなどを積極的に展開しているのは、地方クラブだからこそ、“地理的制約に縛られない発信力”が必要だと考えているからです。これは「情報格差」や「機会損失」を生まないための努力でもあります。どこに住んでいても、どんなライフスタイルの人でも、ヴォレアスに触れられる。「誰も取りこぼさない」「誰も置いていかない」という意思を、リアルとデジタルの両面から形にし続けています。

5. 挑戦と成長の裏側

SVリーグ昇格を目指す中で、最も大きな課題は何でしたか?また、それをどのように克服されましたか?

一番の課題は、「クラブ経営そのものを持続可能なビジネスに変えること」でした。

これまでのVリーグは、正直言って「稼ぐ仕組み」にはなっていませんでした。リーグ全体が赤字体質で、クラブもチケットや放映権ではなく、企業の広告宣伝費としての“親会社予算”に頼る構造だった。つまり、ほとんどのチームが“コストセンター”として存在していたわけです。

僕らのような独立系のクラブには、その「親会社の潤沢な予算」がない。スタート時から、自分たちで稼ぎ、自分たちで運営していくしかない状況だったんです。

そこに追い打ちをかけたのが、コロナでした。イベントは止まり、スポンサーの動きも止まり、会場にはお客さんが入れられない。僕らのような「まだ何も築けていない」段階のクラブにとっては、本当に“生きるか死ぬか”の時間が続きました。

ただ、その状況を逆手に取って、「ゼロから見直す」というチャンスに変えたんです。まずは「経営の透明性」と「自走するビジネスモデル」を徹底的に磨くことに集中しました。限られた資源の中でどう稼ぐか、どう価値を創り出すか、どう支援者と継続的な関係を築くか。

クラブの存在理由を、スポーツの枠に閉じず、「地域経済やまちづくりに貢献するプラットフォーム」と再定義したことで、地域の企業・行政・市民と信頼関係を築けたのは大きかったです。

SVリーグ昇格のプロセスでは、財務・組織・ガバナンス・施設・観客動員など、すべてにおいて“経営体”としての評価が問われました。これは、単にチームが強ければいいという話ではありません。その中で僕たちが突破できたのは、華やかさよりも、「“地道に積み上げてきた信頼と構造」があったからだと思います。

コロナ禍に撮影されたチームドキュメンタリー _ 2020/03/29公開

6. 今後のビジョンと目標

「今後、ヴォレアス北海道をどのような組織に成長させたいと考えていますか?」

目指しているのは、「プロスポーツクラブ」という枠にとどまらず、地域の未来を共につくる“社会的インフラ”のような存在になることです。

もちろん、競技としてのバレーボールの魅力は追求し続けます。ただそれ以上に、僕たちはこのクラブを通じて、人が動き、経済が回り、誇りが育つような“地域の起点”をつくりたい。スポーツ、教育、食、エンタメ、観光、環境…分野を越えて広がる接点を活かしながら、ヴォレアス北海道が地域に必要とされる「新しい公共」のような役割を担っていけたらと考えています。

組織としては、単に「運営会社」ではなく、熱量と責任を持った個人が集まるプラットフォームのような集合体でありたいと思っています。これは選手もスタッフも、関わる地域の企業や行政、そしてファンの皆さんも含めてです。スポーツビジネスの枠を越えた、ひとつの“ムーブメント”として成長させていきたい。

将来的には、北海道全体を舞台に、国際的な展開や地域連携型アリーナの整備など、やるべきことはまだまだ山積みです。でも、根っこにあるのはシンプルで、「誰かの心に火をつける存在でありたい」という想い。それが結果的に、地域や社会を動かす力になると信じています。

7. ファンへのメッセージ

最後に、ヴォレアス北海道を応援しているファンやスポンサー、これから関心を持つすべての方々にメッセージをお願いします。

まずはこれまで応援し続けてくださったサポーターの皆さん、支えてくださっているパートナー企業の皆さま、そして僕たちの挑戦に少しでも関心を寄せてくださっているすべての方々に、心から感謝しています。

ヴォレアス北海道は、ただのスポーツチームではありません。僕たちはこのクラブを、「地域に熱狂と誇りをつくる装置」だと考えています。そしてその装置は、選手やスタッフだけでは動きません。皆さん一人ひとりの存在と声が、クラブの力そのものです。

これまで、うまくいかないことや壁にぶつかることもたくさんありました。でも、そのたびに支えてくれた人がいて、信じてくれた人がいたから、ここまで来ることができました。だからこそ、これからも“誰かのために、何かのために”戦えるクラブであり続けたいと思っています。

「なんか最近、ヴォレアスが面白いことやってるな」「ちょっと会場に行ってみようかな」その小さな興味や行動が、地域を動かし、未来を変える原動力になります。ぜひ気軽に、そして長く、一緒にこの物語をつくっていってもらえたら嬉しいです。

まだまだ挑戦は続きます。引き続き、応援よろしくお願いします。


 

あとがき by Euphoric ” “編集部

いかがでしたか。
地域に熱狂と誇りを共創し続けるヴォレアス北海道の挑戦に共感した方は是非一度ホームゲームに足を運んでみてはいかがでしょうか。
またヴォレアス北海度はクラブ理念に共感したパートナーも募集しております。ご興味のある企業の方は下記までご連絡ください。

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