【徹底解説】クリストファー・ノーランの代表作と制作にまつわる話

【徹底解説】クリストファー・ノーランとは?作品と人生を3分で理解しよう!

こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんは2020年に公開され、話題になった映画『TENET』の監督、クリストファー・ノーランをご存知でしょうか。本記事ではクリストファー・ノーランの経歴と代表作品について、映画にまつわるトピックスやノーランの映画に対する考えも合わせてご紹介したいと思います。

クリストファー・ノーランの概要と経歴

名前 Christopher Nolan,
国籍 イギリス アメリカ

1970年07月30日、ロンドン出身。イングランド人の父と、アメリカ人の母の間に生まれたため、イギリスとアメリカの国籍を持つ。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン大学に入学すると、英文学を学ぶと同時に短編映画の制作もしていた。進学先を選んだ理由について、映画制作の機材が豊富であることと、視野を広げるために英文学を学びたいからと述べている。

1998年、『フォロウィング』で長編映画監督デビュー。脚本、製作、撮影、編集、監督の5役を担った。2001年に、弟のジョナサン・ノーランが書いた短編を基にした映画『メメント』を発表。斬新な映像表現が話題を呼び、低予算での制作ながら異例の興行的成功を収める。『バットマン』シリーズの監督を経て、2010年からは製作費1億円を超えるオリジナル作品を連続して手掛ける。『インセプション』、『インターステラー』と続き2017年『ダンケルク』では初の歴史物に挑戦。全世界で5億ドルの興行成績を達成し、第90回アカデミー賞では8部門にノミネート、技術部門で3冠を受賞、監督賞のノミネートを果たす。2020年には『TENET』を発表。新型コロナウイルス感染拡大の影響で公開が度々延期され興行収入は低迷したが、公開年の全世界興行収入では5位を記録した。

クリストファー・ノーランの代表作3選

まずはクリストファー・ノーランを語る上で欠かせない代表作を3作品ご紹介します。

Amazonプライムビデオ等で視聴しながら、作品の評価やノーランの考えに触れてみて下さい。

『メメント』

監督 クリストファー・ノーラン
原作 ジョナサン・ノーラン
出演者 ガイ・ピアース

キャリー=アン・モス

ジョー・パントリアーノ他

上映時間 113分
あらすじ 10分前の記憶を全て忘れてしまうという記憶障害に悩まされる主人公・レナード。その発端は愛する妻が何者かに殺されるという凄惨なものだった。ポラロイド写真と手がかりを彫り込んだ全身のタトゥーを記憶の頼りに、復讐のため犯人探しを始める。


弟のジョナサン・ノーランが書いた短編を基にしているこの映画は、物語上の時系列とは逆のシークエンスが映し出される、斬新な表現方法が全米で話題になりました。後年のクリストファー・ノーラン作品にも共通する、シンプルなストーリーラインとアカデミックながらも挑戦的な舞台設定という特徴は、出世作と言っても差し支えない本作の時点で見受けられます。観客の予想と倫理観を裏切る結末は、様々な解釈と考察を喚び、ブレイクのきっかけとなる話題作りに大きく貢献したといえるでしょう。『メメント』が持つストーリー構造について、クリストファー・ノーランはこうコメントしています。

「『メメント』は映画の道徳相反主義を表現していると思う。つまり、日常生活において自分とは異なる道徳規範を受け入れるのが難しくても、映画なら比較的すんなり受け入れるということだ。たとえば、西洋ではどんな手口であっても、観客はヒーローが悪者を撃ち殺すと大喜びする。その映画が設定したルールに則っている限りはね。僕はそのルールをいじるのが好きなんだ。」

『ダークナイト』

監督 クリストファー・ノーラン
脚本 クリストファー・ノーラン

ジョナサン・ノーラン

原作 ボブ・ケイン

ビル・フィンガー『バットマン』

出演者 クリスチャン・ベール

マイケル・ケイン

ヒース・レジャー他

上映時間 152分
あらすじ バットマンはゴードン警部補と協力し、マフィアの資金洗浄の摘発に尽力しゴッサム・シティの安全を目指していた。バットマンの活躍により資金難に悩むマフィアの前に、ジョーカーと名乗る男が現れ、バットマンの殺害を宣言する。


DCコミックスを原作とする『バットマン』シリーズの2作目になる『ダークナイト』は、全米興行収入歴代2位、世界興行収入歴代4位(すべて公開時)を記録。悪役・ジョーカーを演じたヒース・レジャーが第81回アカデミー助演男優賞を受賞するなど世間的にも業界的にも高い評価を受けました。その年のアカデミー作品賞にノミネートされなかったことが物議を醸し、翌年からアカデミー作品賞の候補作品数を5作品から最大10作品に引き上げることになったほどです。

「これはジェットコースター・ムービーだ。ただし、このジェットコースターは急降下し続けている。」

ノーラン自身ですらも「残酷で冷たい映画」と評するほど、『ダークナイト』は見事に悪役ジョーカーの悪意を表現しています。それがどれだけの説得力を帯びて映像作品として結実しているかは、映画会社の役員に言ったノーランのこの言葉に込められているでしょう。

『インターステラー』

監督 クリストファー・ノーラン
脚本 クリストファー・ノーラン

ジョナサン・ノーラン

出演者 マシュー・マコノヒー

アン・ハサウェイ

ジェシカ・チャステイン他

上映時間 169分
あらすじ 異常気象が頻発する近未来、地球上に人類が安全に住める環境は僅かとなっていた。元宇宙飛行士のクーパーはかつての仕事仲間から、ワームホールを通り別の銀河に「第二の地球」を探しに行くプロジェクトの存在を知らされる。クーパーは娘の反対を押し切り、我が子の未来のためにいつ帰るともしれない危険な宇宙の旅に身を投じる。


特殊相対性理論や特異点などの様々な科学的考証をベースにした本格SF映画である本作は、興行的には成功したものの、実は観客および批評家からの評価は好意的なものばかりではありませんでした。科学的考証とプロットの矛盾を指摘するものから、純粋に意味がわからないという意見まで多岐にわたりますが、クリストファー・ノーランはそれらの意見についてこう述べています。

「映画監督として嫌なのは、制約があると感じることだ。僕は奇想天外な発想と物語性というしかるべき伝統を活用したいと思っている。(中略)すべてのルールを破っているわけじゃない。ルールがあるという事実を無視した映画なのさ。」

その他の作品の紹介

『インセプション』

監督 クリストファー・ノーラン
脚本 クリストファー・ノーラン
出演者 レオナルド・ディカプリオ

渡辺謙

ジョセフ・ゴードン=レヴィット他

上映時間 148分


他人の潜在意識に潜り込みアイデアを盗む産業スパイ・コブが、ターゲットの潜在意識にアイデアを植え付けるミッション「ミッション」に挑戦するSFアクション映画。レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、トム・ハーディなど豪華なキャストと、『夢の階層』を巧みに表現した刺激的な映像が魅力の作品。

『ダンケルク』

監督 クリストファー・ノーラン
脚本 クリストファー・ノーラン
出演者 フィン・ホワイトヘッド

トム・グリン=カーニー

ジャック・ロウデン他

上映時間 106分


第二次世界大戦におけるダンケルク大撤退をテーマにほぼセリフのないサスペンスを描いた、クリストファー・ノーラン初の歴史映画。『陸』『海』『空』によって分割され、クロスしていくストーリーと映像表現が美しい映画。第90回アカデミー賞で8部門にノミネートされた完成度の高い作品です。

『TENET』

監督 クリストファー・ノーラン
脚本 クリストファー・ノーラン
出演者 ジョン・デヴィッド・ワシントン

ロバート・パティンソン

エリザベス・デビッキ他

上映時間 151分


CIA特殊工作員の主人公は、謎の存在“TENET”のスカウトを受け、未来人からもたらされた時間逆行装置「アルゴリズム」と第三次世界大戦の阻止を巡るミッションに巻き込まれる。『メメント』で用いられた逆再生の演出が、本作では時間の逆行という現象として描かれる。直感を裏切る“逆行映像”と、スパイ映画さながらの派手なアクションが見所。

他作品への案内

最後に、クリストファー・ノーラン作品への理解が更に深まるであろうトピックスを3つご紹介します。

デイヴィッド・リンチ

代表作品:『イレイザーヘッド』『エレファント・マン』『ブルーベルベット』

アメリカの映画監督。低予算かつ興行的に成功しているとはいえない作品が多く「カルトの帝王」と評される。クリストファー・ノーランは彼のファンで、両者には画家フランシス・ベーコンの作品を好むという共通点も存在する。

『007』シリーズ

英国のエージェント「ジェームズ・ボンド」を扱った一連の映画作品。クリストファー・ノーランはファンを公言しており、いつかボンド映画を監督したい旨や、『インセプション』『TENET』などに影響を与えたことを話している。

クラシック音楽

クラシック好きの父親の影響で、音楽は映画制作において強いこだわりを発揮する領域の一つであった。作曲家ハンス・ジマーはノーランのことを『ダンケルク』の「共同作曲者」と呼んでいるほど。ノーランの制作会社「シンコピー」も父親の発案で音楽用語「シンコペーション」から取ったという。

まとめ

クリストファー・ノーランと、代表作品のいくつかについて紹介させていただきました。

斬新ながらも確かな考証と理論に裏打ちされたアイデアと、それを再現する圧倒的な映像のクオリティがノーラン作品の魅力です。興味の湧いた方は『ノーラン・ヴァリエーションズ クリストファー・ノーランの映画術(2021.玄光社)』や『クリストファー・ノーランの嘘/思想で読む映画論(2017.フィルムアート社)』などのインタビュー集もオススメです。2021年には、「原爆の父」と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマーを題材にした最新作『Oppenheimer(オッペンハイマー)』の制作が発表されました。ノーランが我々観客に仕掛けるアイデアを楽しみにしながら、本記事で紹介した映画を鑑賞してみてはいかがでしょうか。

出典

『ノーラン・ヴァリエーションズ クリストファー・ノーランの映画術(2021.玄光社)』

『クリストファー・ノーランの嘘/思想で読む映画論(2017.フィルムアート社)』