【徹底解説】建築家 ダニエル・リベスキンドの人生と作品に迫る〜幾何学とコンセプトの建築理論〜

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こんにちは。ユアムーン 編集部です。

皆さんは ダニエル・リベスキンドという人物をご存知ですか?

ダニエル・リベスキンドはポーランド系アメリカ人の建築家で、脱構築主義建築で知られ、代表作に「ユダヤ博物館」や「ワールド・トレード・センター・マスタープラン」などがあります。

数多くの建築計画に参加し、日本では第五回ヒロシマ賞を受賞、2001年のサーペンタイン・ギャラリー・パビリオンに招致されるなどの功績を残しています。

本記事ではそんなダニエル・リベスキンドの人生と作品についてご紹介します。

ダニエル・リベスキンドについて

基本情報

本名 ダニエル・リベスキンド(Daniel Libeskind)
生年月日 1946年5月12日〜(78歳)
出身/国籍 ポーランド ウッチ
学歴 クーパー・ユニオン、エセックス大学卒業
分野 建築、都市計画
傾向 脱構築主義
師事した/影響を受けた人物 音楽、文学に影響を受ける

脱構築主義とは?

建築における脱構築主義とは1980年以降のポストモダン動向の一種で、フランスの哲学者ジャック・デリダの「脱構築」という思想に由来します。

これまでの型にはまった構造を常に破壊し、新たな構造を作り続けることで思想が現在進行形的なダイナミズムを生むという思想で、しばしばアートシーンでは前衛芸術(アヴァンギャルド)と関連づけられます。

特に建築においてはロシア構成主義や、その元になったキュビズム、シュプレマティズムに遡ることもできます。

モダニズム建築の規範的な思想を批判して、新しい建築のあり方を模索する動向といえるでしょう。

経歴と作品

生い立ち

ダニエル・リベスキンドは1946年5月12日にポーランドで生まれました。

幼い頃、アコーディオンを習っていたリベスキンドは1953年ごろにテレビ出演を果たしており、その活躍からニューヨークのアメリカ・イスラエル文化基金から奨学金を得ます。

イスラエルに移り住んだ父と共に作曲を学び、音楽への興味は大学進学まで続きます。

1959年にアメリカに渡ったリベスキンドは、ブロンクス科学高校に入学。卒業後にはアメリカの市民権を得ます。

その後にクーパー・ユニオン(ニューヨークの私立大学。「科学と芸術の発展のためのクーパー・ユニオン」を掲げる教育レベルの大学で、現在、全米で最も倍率の高い大学の一つ。)に入学。1970年に卒業して建築博の博士号を得ます。

1972年にエセックス大学(イギリスの国立大学。社会科学、人権分野で特に高い評価を得ている。)に入学。歴史学と建築理論の修士号を取得します。

リベスキンドは建築理論家としてキャリアを踏み出し、クランブルック・アカデミー・オブ・アートの建築部門のディレクターを務め、さまざまな建築設計に携わりました。

「建てない建築家」の建築理論・マイクロメガス

これまで脱構築主義の建築思想家として建築設計のディレクターを勤めていたリベスキンドは、「建築しない建築家」として知られていました。

リベスキンドの名を有名にしたのは、1979年に発表された『マイクロメガス 終末空間としての建築』というドローイング集でした。

主題のマイクロメガスとはギリシャ語でマイクロ=小さい、メガス=大きいという単語を組み合わせた言葉で、その矛盾する意味に違わない難解な内容でした。

ちなみにこの主題はフランスの文学者であるヴォルテールの著作『ミクロメガス』から取っていると考えられます。

建築のドローイングとは思えない幾何学形が縦横無尽に配置された図案は、建物の形を読み取ることすら容易ではなく、実際にリベスキンドは建物の形や設計そのものをドローイングしたわけではないようでした。

リベスキンドはこのように解説しています。

ドローイングは必ずしも青写真ではありません。

マイクロメガスはその意味で青写真ではなく、音楽的秩序としての数学と、音楽の媒体としてのドローイングとの協調の古い伝統を引き受けるものです。

音楽的秩序というのは、幼い頃にアコーディオンを習ったり、イスラエルで音楽を学んだというリベスキンドの素地を感じさせる例えですね。

さまざまな解釈ができるかと思いますが、「(従来の、あるいは一般的な)ドローイング」と「青写真」が並列化されていることを考えると、マイクロメガスは、単にこのように建築するつもりだという設計図ではなく、世界観やストーリー性といった概念的な構想をまとめるために行われたドローイングだと捉えることができると思います。

リベスキンドにとってはイメージトレーニングのようなものだったのかもしれません。

建築理論家から建築家へ

フェリックス・ヌスバウム・ハウス(1998)

1998年、52歳のリベスキンドは初めての建築を手がけることになります。

『フェリックス・ヌスバウム・ハウス(1998)』は、かつてアウシュビッツで亡くなったユダヤ人画家のフェリックス・ヌスバウム氏の作品を収蔵するための美術館で、市の歴史文化博物館を建て直したものになります。

リベスキンドの両親はユダヤ系であり、ホロコーストを生き延びたユダヤ人迫害の経験者であることは何かの縁であったのかもしれません。

実際に建築された作品としては処女作となる『フェリックス・ヌスバウム・ハウス』ですが、リベスキンドの特徴である幾何学形による極端な鋭角の間取りや採光窓が如実に現れています。

ベルリン・ユダヤ博物館(2001年)

時を前後して1989年、歴史博物館の分館として新ユダヤ博物館を建てるためのコンペティションが行われました。これまで現実的な建築設計の経験がないリベスキンドでしたが、他の案が展示を見越したニュートラルな設計をする中で、ギザギザに折れ曲がった幾何学形の構成が目を引いたのか、リベスキンド案が選出されました。

1991年、ベルリン市議会上院は費用を主な理由にベルリン・ユダヤ博物館の建設を取りやめる決議を行いました。

しかしリベスキンドはこれを受けてマスコミや政治家に訴え、建設計画の続行を進言しました。

こうした動向もあり、一度はコストを理由に取りやめになりかけたベルリン・ユダヤ博物館でしたが2001年に公開され、そのデザインから多くの注目を集めて35万人の動員数を記録しました。

上空から見るとジグザグの博物館は、ユダヤ教のシンボルであるダビデの星(六芒星)が引き裂かれたようになっています。

壁には傷を思わせる不規則な形の窓があったり、建物の途中には屋根のない「ヴォイド」と呼ばれる空間がホロコーストによる空白の歴史を想起させるなど、ユダヤ人の歴史を保存するのにふさわしいコンセプチュアルなデザインが施されています。

北帝国戦争博物館(2002)

ベルリン・ユダヤ博物館の設計を担当したことで知名度が上がり、リベスキンドには多くの設計依頼が舞い込むようになりました。

北帝国戦争博物館は、第一次世界大戦の記録を保存するため、イギリス国内に五か所ある国立博物館、帝国戦争博物館のうちの一つです。

帝国戦争博物館は1920年、水晶宮で初めて公開された歴史ある建物で、北帝国戦争博物館はイギリス マンチェスターに所在します。

「3つの連動する破片で構成される星座」というコンセプトを設定したリベスキンドは、空気、土、水を表す三つの破片をイメージした幾何学形のオブジェクトが組み合わせられたデザインを行いました。

三つの破片は、紛争によってバラバラになった地球の残骸というイメージであり、それぞれの建築物が別々の役割を担っています。

ワールド・トレード・センター・マスタープラン(2002)

ワールド・トレード・センターの倒壊後、再建のために2002年に行われた国際コンペに参加したリベスキンドの案が採用されマスタープランおよびフリーダム・タワー(後の1ワールド・トレード・センター)の設計を行います。

しかし、モニュメント性の高いリベスキンド案は目を惹くものの収益性が低いと考えた不動産会社は、デイヴィッド・チャイルズに設計を主導させ、計画案を大幅に変更させました。

リベスキンドは不動産会社の後出しのような態度に怒り、訴訟問題に発展しますが最終的には和解を表明し建造計画を再開させますが、リベスキンド案は全体の4%ほどにまで削られてしまいました。

角柱形のシルエットの一部が欠かれた近未来的なデザインですが、リベスキンドの初期案ではビルは角柱形のまま真っ直ぐに立っている想定だったことがスケッチから伺えます。

螺旋状に高く伸びるタワーは自由の女神像を彷彿とさせ、新しいニューヨークのシンボルにふさわしい造形であると言えます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

かつては脱構築主義の建築理論家として「建てない建築家」と呼ばれたリベスキンドですが、幾何学的で近未来的なデザインと、建物のテーマやストーリーを重視するコンセプチュアルな手法が様々な理由で実現できるようになり現代で最も重要な建築家の一人であることは間違いありません。



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