【徹底解説】ルイージ・ルッソロとは?ノイズを音楽に昇華した未来派画家、作曲家

【徹底解説】ルイージ・ルッソロとは?ノイズを音楽に昇華した未来派画家、作曲家
反乱 (1911)

こんにちは、ユアムーン編集部です。

皆さんは「ルイージ・ルッソロ」という人物をご存知でしょうか?

ルッソロはイタリア未来派の画家、作曲家で、彼の業績は絵画作品よりも自身が発明した楽器「イントナルモリ」を使用したノイズミュージックの創造に注目されることが多いです。

新たな表現方法を求めて奔走する彼の音楽は、後の音楽の発展に大きく寄与することとなります。

今回はそんなルイージ・ルッソロの人生と作品についてご紹介していきます!

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ルイージ・ルッソロってどんな人?

Self-portrait with skulls (1909)
頭蓋骨のある自画像 (1909)
本名 ルイージ・カルロ・フィリッポ・ルッソロ(Luigi Carlo Filippo Russolo)
生年月日 1885年4月30日
出身 イタリア ポルトグルアーロ
学歴
分野/芸術動向 絵画, 作曲 / 未来派, ノイズミュージック

経歴と作品

生まれと環境

ルイージ・ルッソロは、1885年4月30日にイタリアのポルトグルアーロで音楽一家の家庭に生まれます。父はポルトグルアーロ大聖堂でオルガニストをしており、兄弟は音楽の才能を持っていました。

1901年、2人の兄弟、ジョヴァンニとアントニオが音楽を学ぶため家族でミラノに移り住むと、同じく音楽的才能があったものの、芸術にも興味があったルッソロはブレラ美術館に通い詰め、独学で絵画を描き始めます。

独学にも関わらず、絵画の高いスキルがあったルッソロはすぐにレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」やスフォルツェスコ城のフレスコ画の修復を手伝う仕事に就きます。

未来派との出会い

1909年、未来派の代表的画家「ウンベルト・ボッチョーニ」と出会い、さらに翌年の初頭に未来派の創始者「フィリッポ・トマソ・マリネッティ」と出会ったルッソロは、彼らと親しくなり共に工業化が進む現代の視覚的・聴覚的な新たな表現の可能性を探り始めます。

1910年2月11日にボッチョーニの指導の下、マリネッティの雑誌「ポエシア」から「未来主義宣言」が発表されます。ルッソロはそれに署名し未来派運動に加わります。

未来派の画家たちは過去の伝統的な絵画を否定し、工業化の加速する現代のスピードや動き、リズムを表現するスタイルを支持しました。

同年ボッチョーニはマリネッティの「ポエシア」を通じて「未来派画家: 技術宣言」を発表し、これにもルッソロは署名しています。ボッチョーニは「未来派画家: 技術宣言」の中で「鋼鉄、誇り、熱狂、スピードの渦巻く生活を表現するには、これまで使われてきた題材はすべて一掃されなければならない」と宣言しています。

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未来派初期時代の作品

この時代のルッソロの作品は、未来派の作品の特徴であるスピードやダイナミズムが、空力的で連続的な要素や強烈な色彩を持って表現されています。

『反乱 (1911)』は政治的テーマを扱った初期の未来派作品の一つで、当時のイタリアでの急速な工業化と時代遅れの社会構造に対する民衆の不満を表現しているようです。

『音楽 (1912)』には5本の腕を持つピアニストがピアノを演奏している様子が描かれています。同心円状に描かれた青空とうねる旋律は、ピアニストが奏でる音楽を表現しており、ピアニストを囲むように伸びた赤、緑、黄の不気味な笑みを浮かべる仮面たちは「和音」を表しているとルッソロは述べたようです。

『車のダイナミズム (1913)』は未来派で一般的に扱われたテーマである、走行する車が描かれています。いくつかの左向きの連続的なエリアに区切られて描かれたそれは、車が高速で走行しているかのような印象を鑑賞者に与えます。また、コントラストの強い青と赤の配色は車の速度と、それが持つ活気を表現しています。

音楽表現に傾倒・ノイズの研究

1916年に本として出版された「騒音芸術」の表紙
1916年に本として出版された「騒音芸術」の表紙

1913年ルッソロは絵画を中断し、3月11日に論文「騒音芸術」を発表し、工業化、機械化の進んだ現代の生活に付随するノイズに着目し音楽制作・研究に専念するようになります。

「騒音芸術」では、『古代の生活は静寂に満ちていた。「ノイズ」は19世紀の機械の登場により初めて存在するようになった』と述べています。そして『音楽の進化を機械の増殖に準え、かつては限られていた音の環境が機械のノイズによって多様になったことを指摘し、音楽家たちに対して「より複雑なポリフォニー(多声音楽)」を作り出すように促す』ことを主張するものでした。

ノイズミュージックを演奏するための楽器を発明

ルッソロとアシスタントのウーゴ・ピアッティ、そしてインナルモリ
ルッソロとアシスタントのウーゴ・ピアッティ、そしてインナルモリ
イントナルモリの原画 (1914)
イントナルモリの原画 (1914)

ルッソロは「騒音芸術」で述べた新しい音楽を演奏するための楽器を1910年から1930年にかけて製作します。その楽器は「イントナルモリ(イタリア語で“ノイズチューナー”)」と言い、様々な音色のノイズを発生させるため合計27種類が作られました。

しかし、イントナルモリは第二次世界大戦中にパリが襲撃された際にほとんど破壊されてしまい、残った楽器も紛失してしまいました。その後、原画をもとにレプリカが製作されているようです。

未来派コンサートで演奏

1914年、初めて未来派のコンサートでイントナルモリを使用して演奏したルッソロは、賞賛とともに激しい批判も得ました。

聴衆からの批判はルッソロ自身も想定していたようですが、ノイズで音楽を奏でるという前衛的で実験的なこの試みは、今後進化していく音楽の多様性における重要なステップとして見逃すことはできなく、ルッソロが作り出した音楽は、シュルレアリスム音楽を作り出した「ジョン・ケージ」など多くの作曲家のインスピレーションの源となりました。

音楽活動の停止

1920年代も音楽の研究を続け、劇場で演奏したり楽器の発明に没頭しますが、1929年夏、パリ郊外に移り住んだのを皮切りに再び絵を描き始めます。

この時代の作品は1930年にヴェネツィア・ビエンナーレで展示されたりしましたが、後に全て失われているようです。

1931年、オカルト的な学問や、東洋哲学などに興味が湧いたルッソロは音楽活動を停止し、1933年から1938年にかけては哲学的論考「物質を超えて (Al di là della materia)」の執筆に取り掛かります。

「物質を超えて (Al di là della materia)」では美、真実、善といったテーマを探求し、物質主義、実証主義への批判を展開しています。

絵画の世界へ戻る 〜 晩年

1942年、ルッソロは再び絵画の世界に戻り、ルッソロ自身が「クラシックモダン」と呼んだスタイルで制作を続け、最後の作品は1945年と1946年の展覧会に出品されました。

1947年2月6日、ルッソロは未完成の作品を残したまま亡くなります。

ルッソロの音楽

ルッソロの楽器、イントナルモリはパリの襲撃で破壊されてしまいましたが、弟のアントニオよってルッソロの演奏を録音したものが残っているようで、Youtubeで彼の音楽を聞くことができます。気になった方は視聴してみてはいかがでしょうか?

まとめ

いかがでしたか?

今回は未来派の礎を築いた画家、作曲家の「ルイージ・ルッソロ」についてご紹介しました。

工業化が進む中で芸術、音楽の在り方を再考し、ノイズを使った新しい音楽を作り出したルッソロは音楽の進化の中で多大なる貢献をしたことでしょう。

彼が初期に目指した画家としての作品では大きな注目をされることはなかったようですが、彼の絵画作品は、彼の音楽と同様、過去の伝統的なスタイルを超えた新しい表現方法を探求していることには変わりありません。

ルッソロについて気になった方は、さらに深掘りしてみてはいかがでしょうか?



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