【徹底解説】19世紀末に誕生したレトロでオシャレなポスターの裏側

出典:『ミュシャ・スタイル』を確立し、グラフィック・デザインの世界に革命を起こした商品ポスター,Asahi Shinbun Digital Magazine,https://www.asahi.com/and/article

こんにちは!ユアムーン株式会社 編集部です!

突然ですが、皆さんは昔のポスターを見たことがありますか?

レストランや古着屋さんなどでよく飾られており、レトロなデザインがとても可愛らしいですよね。

今回は、そんなオシャレなデザインのポスターを集め、活躍した『作者』や『時代背景』について紹介します!

ポスターの始まり

19世紀末になると、建物の中に止まる油彩画やフレスコ画といった伝統的な絵画に対して、街頭に貼られるメディアとしての絵画が登場しました。

それがポスターの誕生です。

いわゆる「絵画」を描く画家とポスター作家は垣根を超えて融合し、それに伴ってポスターの芸術性も大きく評価されるようになります。

19世紀末から20世紀初頭にかけて印刷術が進化し、現在の形式に近づいたこともポスターの普及の要員の一つであると考えられます。

ポスターが大量に印刷されて町中に貼られることは、画家にとって自分の作品を多くの人々に見てもらい、有名になるチャンスでもありました。

技術や産業の発達に伴って人々の生活が変化するにつれ、労働者や中流階級の民衆も簡単に芸術に触れられる時代が到来しましたが、ポスターの普及はその先駆けとなったのです。

カリスマポスター作家

ポスターが生まれた当初、その役割はダンスホールやバル(酒場)、演劇の宣伝でした。民衆が娯楽を楽しみ始めた時期ですから、やはり身近なものが対象となります。

優れたポスター作家として人気を集めたのはアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックというフランス人です。彼は1864年に生まれ、ドガや印象派、日本の浮世絵に影響を受けながら独自の作風を生み出しました。浮世絵に関しては自身がコレクターであった程で、及ぼした影響は特に大きいと指摘されています。

彼は主に雑誌の挿絵を描いていましたが、1891年、当時足しげく通っていたクラブの「ムーラン・ルージュ」にポスターの作成を依頼されたことをきっかけにポスター作家としての人生が始まりました。

ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ(1891年)

中央で踊っているのは「ラ・グーリュ(大食い女)」というあだ名のメインダンサーで、手前に黒い影で描かれた「骨なしヴァランタン」という、こちらもあだ名の男性ダンサーとペアを組んで多くの人から人気を集めていました。

ロートレックの作品は浮世絵に影響を受けていると説明しましたが、二つの点で指摘できます。

一つ目は、登場人物を前景、中景、後景と描き分けることです。主役となる女性ダンサーに焦点が当たるような構図となっています。更に、左手前や右上奥に描かれた照明器具は、奥行きや空間の広がりを表現する役割を果たしています。

二つ目は、「平塗り」の技法です。

点描でなく均一に色をのせることで、絵の内容をより際立たせることができ、それはポスターを作成する上で大きな武器となりました。当時立体感を重視されていたヨーロッパにおいて、これらの技法は人々を大変驚かせました。

ディヴァン・ジャポネ

中央の女性は、ジャヌ・アブリルという女優です。ロートレックは彼女のことを気に入っており、他の作品にも度々登場していたそうです。こちらの作品も浮世絵的な技法で描かれています。主役を前景に、そして濃い色で平塗りで描くことで、見る人の焦点を確実に集めています。

 

ロートレックと並んで人気を博したのはアルフォンス・ミュシャです。彼は1860年にチェコ共和国で生まれ、アール・ヌーヴォーの代表的画家として活躍しました。

*アール・ヌーヴォーとは、19世紀末から20世紀初頭にかけての新しい芸術運動で、花や植物といった有機的なモチーフや自由曲線、プラスチック等の新素材といった従来の枠に囚われない装飾性が特徴です。

彼もロートレックと同じく雑誌や書籍の挿絵を描くことで生計を立てていましたが、ポール・ゴーギャンとの出会いをきっかけに出版社で働くこととなりました。そこで舞台女優のサラ・ベルナールが主演した演劇のポスターを請け負い、その優れた出来栄えで一躍有名になります。

ジスモンダ(1894年)

アルフォンス・ミュシャ『ジスモンダ』(1894年)
出典:『ジスモンダ』,Artpedia,https://www.artpedia.asia

こちらは舞台『ジスモンダ』のポスターです。クリスマス前に注文を受けて年明けに間に合わせるように制作したところ、出来栄えが素晴らしく一躍ミュシャが有名になったそうです。

パステルカラーの色合いや背景のアラベスク様式のタイトルが美しいですね。中央の女性の浮き出ているような立体感は非常にインパクトがあります。また、衣装の曲線的でボタニカルなデザインにアール・ヌーヴォーの面影を感じます。

わずか1週間で仕上げたとは到底考えられませんが、ひょっとすると、余白の部分にはまだデザインを書き足す予定だったのかも知れませんね!

サロン・デ・サン(1897年)

こちらは美術文芸雑誌『ラ・プリュム』を主催していたレオン・デュシャン主催の画廊で開催されたポスター展「サロン・デ・サン」のためのものです。デュシャンが当時の人気作家に次々と依頼していたため、先程紹介したロートレックによって描かれたものも存在します。

ここでも花のモチーフや幾何学的な模様が見られ、更にメインとなる女性が浮き出るように描かれています。パステルな色合いにもミュシャらしさが感じられます。

プロパガンダとしてのポスター

 1909年にイタリア出身の詩人フィリッポ・トンマーゾ・マリネッティによる『未来宣言』が提唱されたことをきっかけに、前衛的でダイナミック且つスピード感のある「未来派」という芸術運動が始まると、世の中の芸術作品は大きな変革を迎えました。

それまでの伝統に固執した芸術に対して、次々と進化する都市の喧騒をそのままに表現する芸術は、イタリアで多くの芸術家を魅了し、熱狂的な支持者を集めました。

更にこの運動は絵画や彫刻だけに止まらず、音楽や建築、写真など全ての表現に広がります。特に写真は芸術において一つのメディアとなり、数々の実験的な作品が生み出されました。印刷技術においては写真制版が普及し、写真を使った雑誌が多く刊行されるようになりました。

それに伴い、写真を使用したメディアは人々に大きな影響力を持つようになります。それらの影響力は単なる演劇や商品の宣伝としてだけでなく、国家のプロパガンダとしても利用され始めました。

男女の労働者よ、皆ソヴィエトの改選へ(1930年)

こちらはモスクワを舞台にフォトモンタージュを手法として雑誌挿絵や表紙絵、ポスターを描いたグスタフ・クルーツィスによって描かれたものです。

彼は生産主義理論を作品を通じて民衆に伝えることを目的としていました。たくさんの手は民衆と指導者を繋ぐツールとして、労働者の象徴として用いられています。また、背景に赤色を用いることで、共産主義のイメージが表現されています。

オリジナリティ溢れるポスター

1920年代から盛んになったキュビズムや未来派、シュルレアリスムなどに代表されるモダニズムで、19世紀までのような伝統に囚われない芸術が追求されました。

その後、1950年代から1960年代にかけて「人」として多様な文化や芸術の共存を肯定するプルーラリズムという考えが生まれました。多元主義とも呼ばれ、これまで特定の様式が時代を先導していたのに対し、多様な様式の共存が唱えられ、その運動は現在に至ります。

多方面に広がる芸術に対して単一の批評が有効でなくなったことや、西洋中心主義的な「美術史」そのものが見直され始めたことが要因であると言われています。プルーラリズムはポスターにも影響を与えました。国の境や画一的な表現から離れた自由な表現がなされていて、作者のオリジナリティが前面に出されていることが見て取れます。

牛乳石鹸モン・サヴォン(1949年)

こちらはフランス人のポスター作家レイモン・サヴィニャックの作品です。

「私は41歳の時に、『モン・サヴォン』の雌牛のおっぱいから生まれた」と作家が自伝に記しているように、この作品でサヴィニャックは一躍広告界のスターになりました。

流行に流されることなく自身の作風を生涯貫いたサヴィニャックは、時代や国を超えて、日本でも大変人気のある作家です。彼はそれまでの伝統であった装飾的な要素を排除し、明快でポップな造形と色合いを用いたのです。そんな無駄のない、シンプルなデザインはかえって商品にインパクトを与え、ポスター界で重宝されました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、昔のポスターについて作者や時代背景と共にご紹介しました。

オシャレで雰囲気のあるデザインの背景には、作成された当時の芸術運動や国の情勢などが複雑に絡んでいたことが伺えますね。

今度見かけることがあれば、何についてのポスターであるのか、注目してみてはいかがでしょうか!

参考文献

大阪中之島武術館開館記念『超コレクション展 99のものがたり』中之島美術館制作



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