みなさんは、デザインマネジメントという言葉を聞いたことがありますか?
デザイン経営や、デザイン戦略、デザイン思考という言葉に置き換えられることもあり、今注目されているDXにも関連してくる単語です。
漠然とデザインという言葉が広まりつつある中で、なぜ多くの人がデザインを必要としているのかに迫ります。表層だけではないデザインマネジメントをより詳しく説明していきます。
今回紹介する本、「デザインマネジメント」は、日本でも有名なプロダクトデザイナー田子學によって書かれた本です。
デザインマネジメントとは何か、物事の本質を捉えるための経営手法や、一気通貫のデザインでプロジェクトを戦略的にマネジメントすること、について詳しく説明していきます。
目次
デザインマネジメントとは
デザインは創造的計画!
最近は、経営にデザインを取り入れたいという人でありふれてきました。経営にデザインを取り入れたい一番の理由としては、経営に革新を起こしたい、イノベーションを起こしたいからです。
しかし、今の日本社会ではイノベーションがなかなか生まれない世の中だと、著者は考察しています。
そして創造的計画、という単語の中にはデザインのもつポテンシャルをより明確にしています。
多角的視点を身に付ける
物事を多角的に見ることが重要という話は聞いたことがあると思います。
集中して取り組んでいる時ほど、周りが見えなくなり、客観的に捉えられなくなることもしばしば。
物事を取り組む前には多くの情報収集をし、考察していくことが、いかに重要かということを説いています。そして、集めた情報が多い人ほど、再構築する上でも自由度が上がり、必然的に本来やるべきことの輪郭が見えてくると思います。
仕組みと構造
デザインは経営のごく一部分のみを担う機能ではないし、ほんの一部が重なり合ったものではない。デザインと経営はほぼ全ての領域に渡って分かちがたく重なり合っている。
デザインマネジメント p 87
経営とデザインで分けられるものではないし、さらには、デザインを経営に活かすものではないと著者は言っています。創造的計画は、デザインが中心になり経営が行われるべきだという
” Design Centric Management (デザイン中心の経営)”と呼ばれるべきものです。
デザインの対象は?
プロセスを大きく分けると5つになります。
- 組織チームのデザイン
- コンセプトのデザイン
- モノのデザイン
- ユーザー接点のデザイン
- 体験やソリューションのデザイン
商品開発のプロセスを例にとっても、広範囲な領域をデザインが占めており、そう言った意味でも一気通貫したデザインが必要です。
デザイナーであることは重要か?
マネジメントをする上でも、チーム全体の把握ができるマネージャーなどがいるとプロジェクトの全体像が把握しやすいです。しかし、ある一定の自由度は制限されてしまうため、マネージャーのいないハンズオフの状態では、創造性が発揮しやすい傾向にあります。
つまり、ハンズオフの状態はデザイナーであることはあまり意味がなく、反対に、デザイナーでない人ほど当事者意識を持って取り組むべきであると思います。
デザインのことはデザイナーに任せることが当たり前な風潮だからこそ、常にハンズオンの状態で取り組むべきだと著者は言っています。
デザインの三大要素
p334
LOGIC(ロジック)、SENSE(センス)、LOVE(ラブ)、三つの要素が深く交われば交わるほど、デザインの精度が上がっていきます。
LOGIC(ロジック):『論法』論理立てて情報を相手に伝えること。
SENSE(センス) :『知性』人間が日常の中で五感(知覚)によって感じ取った情報の集積を統合じて考える力。
LOVE(ラブ) :『心』脳の働きで言うならば「快」と言う作用。
ロジック、ラブ、センスの距離が遠くなると、デザインの幅も狭まってしまうし、プロジェクトの狙いや位置づけを伝えることが難しくなり、成功がおぼつかなくなる。
p335
ロジック、ラブ、センスの相関図
ロジック不在のデザイン
クリエイター主導で極めてアートなモノが出来上がる。
p336
論理立てて情報を相手に伝える、つまり、思考ツールのように物事を整理しながら考える要素です。ロジックが欠けてしまうと、エゴや偏見などが組み込まれてしまうこともあります。
ラブ不在のデザイン
ものは出来上がるが当事者意識が欠落しているため、魂を感じられない(最も良くないケース)。
p339
効率よくモノを作る上でも分配された作業などがあり、広告などを代理店などに任せるケースがあります。このケースは、実際のものづくりに携わった人とは遠くなってしまうため、魂を感じられないと言うようなことが起こり得ます。
センス不在のデザイン
技術者主導で極めてシーズ寄りなモノが出来上がる。
p337
購入する上で一見何ら問題がないように見えてしまいます。
日々の観察などにより磨かれるセンスを用いることで飛躍的により、より良い、デザインされた商品になる可能性があります。
デザインマネジメントの実例を数々紹介!
「デザインマネジメント」には、著者が実際にデザインマネジメントで実践した実例をもとに紹介されています。編集部がおすすめするそのうちの一つの実例を解説いたします。
Nasta – airシリーズ
ランドリーという日常に欠かせない、長らくデザインとは程遠いところにいた商材をデザインマネジメントしています。
キョーワナスタは八十五年も続く老舗の住宅金物メーカーで、当時、住宅関連の下請けメーカーは低価格競争に巻き込まれて厳しい経済環境に直面していました。
そして、会社の将来をどうするべきか、という具体的な答えを探るべく、「ランドリープロジェクト」を打ち立てます。
「晴れた日の洗濯」のように気持ちがいい、楽しい気持ちで日々を過ごせたら、というようなコンセプトで、ありそうでなかったランドリーポールや、あたりまえを見直した洗濯ばさみなど、数々のランドリーにまつわるプロダクトを手掛けました。
まとめ
一見、難しく捉えがちなデザインマネジメントですが、取り入れる三大要素は不思議と日常生活に転がっているように感じました。センスを磨くことは、日々の観察!
経営に限らず、さまざまな領域にも応用が効く本でしたね。
三大要素をバランスよく保って、イノベーションを起こしやすいデザインを考えてみましょう!
Euphoric””では、今後も数多くのアーティストをご紹介していくだけではなく、弊社デザイナーが使っているAdobeソフトのイラレやフォトショのチュートリアル、3Dプリンターの解説などを記事にしています。
是非、そちらの記事も見てみてくださいね!