【書籍紹介】原 研哉 – デザインのデザイン

はじめに

『デザインのデザイン』は、日本を代表するグラフィックデザイナーである原 研哉氏によって書かれた本です。本書では、デザインに関する哲学や原 研哉氏の独自の考え方が紹介されています。デザインを勉強している学生、デザインでお仕事をされている方などデザインに関わるすべての方の課題図書と言える良本の一冊だと思い今回ご紹介させていただきました。要点をまとめさせていただきましたが、是非本を購入され、何度も何度も繰り返し読み直すことをおすすめします。

本書のポイント

デザインの目的

原氏は、デザインの目的は「問題を解決すること」であると述べています。デザインは、人々の生活を向上させるために、問題に対して適切な解決策を提供する役割を果たすべきだと考えています。この考え方はデザインを始める前にデザイナー誰しもが考えるべき点の１つです。デザインとアートとの違いはこれまで幾度となく議論されてきましたが、デザインがアートと決定的に違う点はここにあると考えられるかもしれません。

無駄のないデザイン

原氏は、デザインにおいて無駄を省くことの重要性を強調しています。彼の考えでは、無駄を削除することでデザインはよりシンプルで機能的になり、ユーザーにとって使いやすくなるというメリットがあると説明しています。デザイナーのエゴによって、不必要に装飾された家具をデザイナーズ家具と呼び、使い勝手の悪い奇抜な形をした家具をデザイナーズ家具と呼ぶこともあります。しかし、それらは決して”正しいデザイン”とは言えないかもしれません。デザインではなく、アートでやるべきなのかもしれないと考えさせられます。

美しいデザインと機能性

美しいデザインは目を引くだけでなく、機能性も重要だと原氏は指摘しています。彼は、デザインが美しいだけでなく、実際に使う人にとって機能的であることが重要だと考えています。

コミュニケーションの重要性

原氏は、デザインはコミュニケーションの手段であると主張しています。デザインは、情報やメッセージを伝えるためのビジュアルな言語であり、デザイナーはその言語を使いこなすことが求められると説明しています。すごく詩的な考え方ではありますが、全デザイナーがここを理解し使いこなせるようになれば、デザイナーの制作意図をすべて伝えることができるでしょう。

デザインのプロセス

本書では、原氏が実際に取り組んだプロジェクトを通して、デザインのプロセスが紹介されています。彼は、アイデアの生成からクライアントとのコミュニケーション、最終的なデザインの完成までの一連のプロセスを詳細に解説しています。是非実際に手に取って確認してみてください。

持続可能なデザイン

原氏は、持続可能なデザインの重要性も強調しています。彼は、環境や社会への影響を考慮したデザインが、現代社会においてますます重要になっていると認識しています。デザイナーは、リソースの節約や環境への負荷を軽減する方法を考慮してデザインを行うべきだと主張しています。

変化への適応力

デザイン業界は常に変化し続けており、原 研哉氏はデザイナーがその変化に柔軟に対応できる能力を持つことが重要だと指摘しています。新しい技術やトレンドに適応し、継続的にスキルや知識を向上させることが求められると説明しています。

まとめ

本書では美と機能性のバランスが強調されています。美しいデザインは人々の心を惹きつける力がありますが、同時に機能性を犠牲にしてはならないと原氏は説いています。これは、現代社会においてデザインが単なる装飾ではなく、人々の生活をより快適で効率的にするための手段であるべきだという考え方を示しています。

また、持続可能性への配慮がデザインの重要な要素であるという視点も、本書が提示する価値の一つです。環境や社会への影響を考慮したデザインは、現代社会においてますます重要になっており、デザイナーはリソースの節約や環境負荷の軽減を目指したデザインを追求するべきだと主張されています。このような姿勢は、持続可能な未来を実現するために欠かせないものであり、デザイン業界全体が取り組むべき課題と言えるでしょう。

さらに、本書ではデザイナーが変化に適応し続けることの重要性が指摘されています。新しい技術やトレンドに柔軟に対応する能力は、デザイナーが現代社会で成功を収めるために必要不可欠なスキルです。この点からも、『デザインのデザイン』はデザイン業界にとって貴重な指針を提供していると言えます。

総じて、『デザインのデザイン』は、デザインの本質や役割について考える機会を提供してくれる本です。美と機能性のバランスの重要性、持続可能性への配慮、変化への適応力など、原氏が提示するデザインに対する考え方は、デザイナーだけでなく、広くビジネスや社会に関わるすべての人々にとって参考になるものです。これらの価値観は、現代社会で取り組むべき課題を明確に示し、デザイン業界がさらなる発展と革新を遂げるための指針となっています。

また、原氏のデザイン哲学は、日本の美意識や伝統が生み出す独自の価値を国内外に発信する役割も果たしています。本書を通じて、日本のデザイン業界の価値や魅力が世界に広まることは、国際的な競争力を向上させるだけでなく、多様な文化が交流することによる新たなアイデアや発想の創出にも寄与するでしょう。

『デザインのデザイン』は、デザインに関心を持つすべての人々にとって必読の一冊であり、その普遍的な価値は今後も続くであろうことは間違いありません。デザイナーはもちろん、さまざまな分野で活躍する人々にとって、本書から学ぶことができる考え方やアプローチは、よりよい製品やサービスの創出に役立つことでしょう。原研哉氏の『デザインのデザイン』は、今後もデザイン業界や社会全体に対して、大きな影響力を持ち続けることでしょう。