こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。
皆さんはデイミアン・チャゼルという人物をご存知ですか?
デイミアン・チャゼル(Damien Chazelle)は、アメリカの映画監督・脚本家です。ジャズ・ドラマーの若者と鬼教師を描いた『セッション』(原題:Whiplash)、ロサンゼルスで夢を追う2人を描いたミュージカル『ラ・ラ・ランド』で世界的に知られるようになり、2017年には32歳でアカデミー賞監督賞を受賞しました。ブリタニカ百科事典によると、受賞の時点で史上最年少の監督賞受賞者でした。
その後も、宇宙飛行士ニール・アームストロングを描いた『ファースト・マン』、1920年代のハリウッドを舞台にした『バビロン』と、題材を広げながら作品を発表しています。多くの作品に、音楽、とりわけジャズへの関心が通っていることも特徴です。
本記事ではそんなデイミアン・チャゼルの人生と作品についてご紹介します。受賞歴や公開年は、映画祭や映画賞の公式記録、百科事典で確認したものだけを、表と図解にまとめています。
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Toggleデイミアン・チャゼルって?
デイミアン・チャゼルは、1985年1月19日にアメリカ・ロードアイランド州プロビデンスで生まれた映画監督・脚本家です。ハーバード大学で映画づくりを学び、卒業後は脚本家として働きながら、自分で書いた脚本の映画化を目指しました。
名前の表記は日本でも揺れていて、「デミアン・チャゼル」「ダミアン・チャゼル」と書かれることもあります。検索では「デイミアンチャゼル」と中黒を入れずに調べられることも多い監督です。いずれも同じ人物を指しています。日本の配給会社ギャガの『ラ・ラ・ランド』公式サイトは「デイミアン・チャゼル」と表記しており、本記事もこの表記にそろえます。
基本情報
| 本名 | デイミアン・セイヤー・チャゼル(Damien Sayre Chazelle) |
| 生年月日 | 1985年1月19日(2026年10月時点で存命) |
| 国籍・出身 | アメリカ。ロードアイランド州プロビデンス出身 |
| 学歴 | プリンストン高校(ニュージャージー州)、ハーバード大学 視覚環境学科(Department of Visual and Environmental Studies)卒業(2007年) |
| 分野 | 映画監督、脚本家 |
| 代表作 | 『セッション』(2014年)、『ラ・ラ・ランド』(2016年)、『ファースト・マン』(2018年)、『バビロン』(2022年) |
| 主な受賞 | サンダンス映画祭 審査員大賞・観客賞(米国ドラマ部門、2014年)、ゴールデングローブ賞 監督賞・脚本賞(2017年)、アカデミー賞 監督賞(第89回、2017年) |

経歴と作品
ジャズ・ドラムと映画づくり(高校〜大学時代)
ブリタニカ百科事典によると、チャゼルは子どものころから映画づくりと音楽の両方に関心を持っていました。ニュージャージー州のプリンストン高校に通い、非常に競争の激しい学校のジャズ・バンドでドラムを演奏していました。この高校時代の経験が、のちに『セッション』の土台になります。
高校を出たチャゼルは、ハーバード大学の視覚環境学科で映画づくりを学び、2007年に卒業しました。ゴールデングローブ賞の公式サイトの紹介も、チャゼルが「ハーバード大学で映画づくりを学び、2007年に卒業した」と書いています。
チャゼルの作品を語るうえで欠かせないのが、作曲家ジャスティン・ハーウィッツです。ブリタニカ百科事典は、ハーウィッツを「チャゼルの友人」と紹介し、デビュー作から『セッション』『ラ・ラ・ランド』までの音楽を手がけたと書いています。
長編デビューと脚本家の時代(2009〜2013年)
チャゼルの長編監督デビュー作は、2009年の『Guy and Madeline on a Park Bench』です。ブリタニカ百科事典によると、学生時代の作品を広げた白黒の映画で、トランペット奏者と大学院生のうまくいかない恋を、ニューヨークとボストンで撮影しました。音楽はハーウィッツが担当し、トライベッカ映画祭で好意的に受け止められました。
『Guy and Madeline on a Park Bench』(2009年)
題名を直訳すると「公園のベンチのガイとマデリン」。日本の配給会社ギャガの『ラ・ラ・ランド』公式サイトの解説によると、チャゼルは『ラ・ラ・ランド』のアイデアをハーバード大学在学中に思いつき、まず低予算のミュージカルとして形にしようと、大学の卒業制作として、昔からの友人ハーウィッツとこの作品をつくりました。同じ解説は、ボストンのジャズ・ミュージシャンを描いたこの作品を、『ラ・ラ・ランド』の「パイロット版とも言える」作品と紹介しています。
デビュー作の時点で、音楽と恋という、チャゼルがくり返し描く主題がすでに表れていたことになります。日本での劇場公開の記録は確認できなかったため、原題のまま紹介します。
その後チャゼルはロサンゼルスに移り、脚本家として働き始めます。ブリタニカ百科事典によると、ホラー映画『The Last Exorcism Part II』(2013年)とスリラー映画『Grand Piano』(2013年)の脚本を手がけました。一方で、自分ひとりで書いた脚本には、なかなか関心を集めることができませんでした。
『セッション』で世界へ(2013〜2015年)
自分の脚本の映画化をいったんあきらめたチャゼルは、高校時代に出会った厳しい音楽教師との経験をもとに、新しい脚本を書き始めます(ブリタニカ百科事典)。これが『セッション』です。
チャゼルはまず、この脚本の1場面を18分の短編映画にしました。教師役はベテラン俳優のJ・K・シモンズ、ドラマー役はジョニー・シモンズです。短編は2013年のサンダンス映画祭に出品され、短編部門の審査員賞を受けるとともに、長編をつくるための資金を得ることにつながりました(ブリタニカ百科事典)。

『セッション』(原題:Whiplash、2014年)
長編版の『セッション』は、J・K・シモンズが再び教師を演じ、ドラマー役をマイルズ・テラーが演じました。米国の配給会社ソニー・ピクチャーズ・クラシックスの作品紹介によると、主人公アンドリュー・ニーマンは、東海岸の名門音楽学校で頂点を目指す野心的な若いジャズ・ドラマーです。学校で最高のジャズ・バンドを率いる教師テレンス・フレッチャーは、指導の才能と同じくらい、その恐ろしい指導法で知られていました。フレッチャーに見いだされてバンドに加わったアンドリューの、完璧を求める情熱は、やがて執着へと変わっていきます。
主人公はドラマー、題材はジャズ、物語の出発点は監督自身の高校時代の経験です。チャゼルが自分の音楽体験から書いた脚本が、世界的な評価を受ける最初の作品になりました。
長編版は2014年のサンダンス映画祭で上映され、サンダンス・インスティテュートの発表によると、米国ドラマ部門の審査員大賞と観客賞の両方を受賞しました。前の年に短編で出品した作品が、長編になって映画祭の最高賞を手にしたことになります。
翌2015年の第87回アカデミー賞では、作品賞を含む5部門にノミネートされ、助演男優賞(J・K・シモンズ)、編集賞、録音賞の3部門を受賞しました。チャゼル自身も脚色賞にノミネートされています(アカデミー賞公式記録)。
『ラ・ラ・ランド』とアカデミー監督賞(2016〜2017年)
次の作品『ラ・ラ・ランド』は、チャゼルの名前を世界中に知らしめました。ブリタニカ百科事典は、この作品を「女優を目指すエマ・ストーンと、野心的なジャズ・ミュージシャンのライアン・ゴズリングが主演する、21世紀の魅力的なミュージカル」と紹介しています。
『ラ・ラ・ランド』(原題:La La Land、2016年)
ヴェネチア・ビエンナーレの公式サイトによると、『ラ・ラ・ランド』は2016年8月31日、第73回ヴェネチア国際映画祭の開幕作品として上映されました。同じ記述は、この作品がのちに「ゴールデングローブ賞7部門を受賞し、アカデミー賞14部門にノミネートされた」と続けています。

2017年の第89回アカデミー賞では、14部門にノミネートされました。ブリタニカ百科事典はこれを「史上最多タイ」のノミネート数と書いています。アカデミー賞の公式記録によると、受賞は監督賞(デイミアン・チャゼル)、主演女優賞(エマ・ストーン)、撮影賞、作曲賞、歌曲賞(「City of Stars」)、美術賞の6部門です。作曲賞と歌曲賞では、友人のハーウィッツも受賞しました。チャゼル自身は脚本賞にもノミネートされています。
同じ年のゴールデングローブ賞でも、チャゼルは監督賞と脚本賞を受賞しました(ゴールデングローブ賞公式サイト)。ブリタニカ百科事典によると、作品は英国アカデミー賞(BAFTA)の作品賞、ゴールデングローブ賞のミュージカル・コメディ部門の作品賞も受けています。
日本では、ギャガとポニーキャニオンの配給で、2017年2月24日に公開されました(ギャガ『ラ・ラ・ランド』公式サイト)。同サイトの紹介によると、物語の舞台は夢を叶えたい人々が集まる街ロサンゼルスです。映画スタジオのカフェで働きながら女優を目指すミアは、オーディションに落ち続けていました。ある日、場末の店で、いつか自分の店を持ってジャズを思う存分演奏したいと願うピアニストのセブ(セバスチャン)の演奏に魅せられます。2人は恋に落ち、互いの夢を応援し合いますが、セブが店の資金づくりのために入ったバンドが成功したことから、心がすれ違いはじめます。
『ラ・ラ・ランド』ができるまで
ギャガの公式サイトの解説は、この作品の成り立ちも紹介しています。チャゼルは『雨に唄えば』や『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』に憧れ、壮大なテクニカラーのミュージカル映画をつくりたいと考えていました。卒業後、ハーウィッツとともにロサンゼルスに移って脚本を書き進めますが、最初に脚本を買った会社からは、音楽をジャズからロックに変えるといった要求を受けます。行き詰まったチャゼルは、先に『セッション』を手がけることにしました。
『セッション』の成功のあと、チャゼルは本来の夢だったミュージカル映画を製作会社に売り込み、ライオンズゲートなどと契約します。予算が広がり、多くのミュージカルを手がけてきたプロデューサーのマーク・プラットも加わりました。『セッション』は、実は『ラ・ラ・ランド』より後に構想された作品だったのです。
ワンテイクへのこだわり
同じ解説によると、チャゼルはダンスの場面をできる限りワンテイク(カメラを止めずに1回で撮ること)で撮りたいと考えていました。冒頭の「Another Day of Sun」は、渋滞したロサンゼルスの高速道路で、車に乗っていた人々が突然歌い踊り出す場面で、カリフォルニア・ハイウェイ・パトロールが道路を封鎖したわずかな時間で撮影されました。街を見下ろす丘の上で2人が踊る「A Lovely Night」は、6分におよぶ場面がカットなしで撮られています。
カメラワークについてチャゼルは、マーティン・スコセッシ監督の『レイジング・ブル』がボクシングのリングの中にカメラを置いたように、ダンスの中にカメラを置きたかったと語っています。撮影監督のリヌス・サンドグレンは、アナモルフィック・レンズと35ミリフィルムを使い、ステディカムで撮影する方法を選びました。画面の縦横比は、1950年代のシネマスコープ映画と同じ2.55対1です(パナビジョンの撮影監督インタビューによる)。
撮影は物語の舞台であるロサンゼルスで行われ、有名なグリフィス天文台でもロケが行われました。天文台の中のプラネタリウムは、古い投影機を探し出してセットで再現されたといいます(ギャガ公式サイト)。

『ファースト・マン』と宇宙への挑戦(2018年)
2本続けて音楽を題材にしたチャゼルは、次の作品で大きく方向を変えます。
『ファースト・マン』(原題:First Man、2018年)
『ファースト・マン』は、人類で初めて月面に降り立った宇宙飛行士ニール・アームストロングを、再びライアン・ゴズリングが演じた作品です。ブリタニカ百科事典によると、伝説的な月への飛行に向けて準備するアームストロングの姿を描き、登場人物を中心に物語を進める描き方が高く評価されました。
ヴェネチア・ビエンナーレの公式サイトによると、『ファースト・マン』は2018年の第75回ヴェネチア国際映画祭の開幕作品でした。チャゼルは2016年に続いて、2度目の開幕を飾ったことになります。同年10月4日には、ワシントンのスミソニアン国立航空宇宙博物館で試写会が開かれました(NASA撮影の記録写真の説明による)。

2019年の第91回アカデミー賞では、美術賞、音響編集賞、録音賞、視覚効果賞の4部門にノミネートされ、視覚効果賞を受賞しました(アカデミー賞公式記録)。
ドラマと『バビロン』(2020年〜)
その後チャゼルはテレビの仕事にも取り組みます。ブリタニカ百科事典によると、2020年にはパリのジャズ・クラブを舞台にした音楽ドラマのミニシリーズ『The Eddy』(Netflix)で、共同で監督を務めました。ここでも題材はジャズです。
『バビロン』(原題:Babylon、2022年)
2022年には、1920年代のハリウッドを舞台にした『バビロン』で監督・脚本を務めました。ブリタニカ百科事典は、マーゴット・ロビーやブラッド・ピットらが、サイレント映画からトーキー(音の出る映画)への移り変わりに直面する俳優を演じた、豪華な作品と紹介しています。ゴールデングローブ賞の公式サイトの紹介も、ブラッド・ピットとマーゴット・ロビーが出演した作品として『バビロン』を挙げています。
映画が音を持つようになる時代を描いた『バビロン』は、音楽を大切にしてきたチャゼルの関心が、映画そのものの歴史へ向かった作品とも言えそうです。
2023年には、第80回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門で審査員長を務めました(ヴェネチア・ビエンナーレ公式サイト)。開幕作品の監督として2度招かれた映画祭で、今度は作品を選ぶ側に立ったことになります。
デイミアン・チャゼルの代表作と受賞歴
主な監督作を表にまとめます。年は米国での公開年、受賞はアカデミー賞・ゴールデングローブ賞・映画祭の公式記録で確認したものです。
| 年 | 作品 | 主な出演 | 主な受賞・出品 |
|---|---|---|---|
| 2009年 | Guy and Madeline on a Park Bench | 未確認 | トライベッカ映画祭で上映 |
| 2014年 | セッション(Whiplash) | マイルズ・テラー、J・K・シモンズ | サンダンス映画祭 審査員大賞・観客賞(米国ドラマ部門)、アカデミー賞3部門受賞 |
| 2016年 | ラ・ラ・ランド(La La Land) | エマ・ストーン、ライアン・ゴズリング | ヴェネチア国際映画祭 開幕作品、アカデミー賞6部門受賞(監督賞を含む) |
| 2018年 | ファースト・マン(First Man) | ライアン・ゴズリング | ヴェネチア国際映画祭 開幕作品、アカデミー賞 視覚効果賞 |
| 2020年 | The Eddy(ドラマ) | 未確認 | Netflixのミニシリーズ、共同監督 |
| 2022年 | バビロン(Babylon) | マーゴット・ロビー、ブラッド・ピット | 監督・脚本 |

アカデミー賞に絞って並べると、チャゼルの作品が受けた評価の広がりが分かります。
| 回(年) | 作品 | ノミネート | 受賞 |
|---|---|---|---|
| 第87回(2015年) | セッション | 5部門(チャゼルは脚色賞) | 助演男優賞、編集賞、録音賞 |
| 第89回(2017年) | ラ・ラ・ランド | 14部門(チャゼルは監督賞・脚本賞) | 監督賞、主演女優賞、撮影賞、作曲賞、歌曲賞、美術賞 |
| 第91回(2019年) | ファースト・マン | 4部門 | 視覚効果賞 |
チャゼル作品を楽しむ手がかり
代表作を見比べると、チャゼルの作品にはいくつかの共通点があります。ひとつ目は音楽、とくにジャズです。デビュー作のトランペット奏者、『セッション』のドラマー、『ラ・ラ・ランド』のジャズ・ミュージシャン、『The Eddy』のジャズ・クラブと、ジャズは何度も物語の中心に置かれてきました。
ふたつ目は、高校時代からの経験と仲間です。『セッション』は高校時代の厳しい音楽教師との経験から生まれ、音楽は友人のハーウィッツが手がけ続けました。

みっつ目は、題材を広げ続けていることです。音楽映画で評価を確立したあと、宇宙飛行士の伝記、1920年代のハリウッドへと舞台を移しました。それでも『バビロン』が映画に音が付く時代を描いたように、音への関心は形を変えて続いています。

まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、アメリカの映画監督デイミアン・チャゼルをご紹介しました。
高校のジャズ・バンドでドラムを叩き、ハーバード大学で映画づくりを学んだチャゼルは、脚本家として働いたのち、高校時代の経験をもとにした『セッション』でサンダンス映画祭の最高賞を受けました。『ラ・ラ・ランド』では32歳でアカデミー賞監督賞を受け、その後も『ファースト・マン』『バビロン』と題材を広げています。
デビュー作から一貫して流れる音楽への関心に注目すると、作品どうしのつながりが見えてきます。気になった一本から、ぜひ見てみてください。
Euphoric " " の視点
チャゼルは、自分の脚本の映画化をいったんあきらめた後、新しい脚本の1場面を18分の短編にして、まず作品で示す道を選びました。その短編がサンダンス映画祭で評価され、長編『セッション』へ、さらに学生時代から温めてきたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』へとつながっていきます。
高校時代のジャズの経験や、昔からの友人ハーウィッツとの協働は手放さないまま、題材は宇宙や1920年代のハリウッドへと広がりました。大きな夢にも、手の届く小さな形から近づくことができる。チャゼルの歩みは、そのことを教えてくれます。
作品に触れるには
チャゼルの作品は、製作・配給会社や映画祭の公式サイトで紹介されています。上映や配信の状況は時期によって変わるため、最新の情報は各公式サイトをご確認ください。







