戯曲を読まない、舞台をみない、英文学をよく知らない、という方でも「シェイクスピア」という名前は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
「ロミオとジュリエット」、「ハムレット」など現代にまで読み継がれるような大傑作を書いた、世界一有名といっても過言ではないイギリスの劇作家です。
今回は、舞台芸術を語る上で欠かせないシェイクスピアについて経歴や作品をご紹介いたします。
ウィリアム・シェイクスピアとは?
出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/ウィリアム・シェイクスピア
<国籍>
イギリス
<人生>
生まれについては諸説ありますが、1564年にイングランド中部のストラトフォード・アポン・エイヴォンに誕生したと言われています。父はジョン・シェイクスピアという革手袋職人でありながら、市議会員も勤めた人物、母メアリー・アーデンは貴族の娘で、かなり裕福な家庭に生まれたようです。
正確な生月日は不明ですが、1564年4月26日にキリストの洗礼を受けています。
ストラトフォードにあったグラマー・スクールに通い、ラテン語文法や文学について学習。幼少期から語学に長けていたと言われています。
その後、尊敬する父の没落や、アン・ハサウェイという女性を妊娠させ、結婚を余儀なくされるなど家庭の重圧に押しつぶされそうになったのか、20歳で謎の失踪を遂げています。再びロンドンでの記録が見つかるまでの7年間は一切資料等が残っておらず、「失われた年月」と呼ばれているのです。
次に残っていた記録では、既に1592年ロンドンで演劇の世界に進出していました。この頃には名声を手にしており、宮内大臣一座の設立メンバーで座付き作家兼役者として活躍していす。
1603年にはエリザベス1世に代わって即座したジェームズ1世によってシェイクスピアの劇団は国王一座と改称され、その人気はますます高まっていきます。シェイクスピアの父が獲得できなかった紳士階級も手に入れ、グローブ座も建築。柿落としは『ジュリアス・シーザー』で、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いでした。
人気絶頂の中、今も名作として語り継がれる4大悲劇を書き上げています。
ですが1613年、グローブ座の焼失を期に引退を決意。
1616年4月23日、52歳でその生涯を閉じました。死因はわかっていません。
シェイクスピアの作品
今回は数あるシェイクスピア作品の中でも押さえておきたい4大悲劇 「ハムレット」「オセロ」「マクベス」「リア王」についてご紹介します。
1,『ハムレット』(1601年頃)
出典:https://www.amazon.co.jp/ハムレット-新潮文庫-ウィリアム-シェイクスピア/dp/4102020039
<主な登場人物>
・ハムレット…主人公。デンマーク王国の後継者とされている。
・クローディアス…ハムレットの叔父。先王ハムレット亡き後、代わってデンマークの王位についた。
・ガートルード…ハムレットの母。ハムレットの父の死後、クローディアスと再婚した。
・先王ハムレットの亡霊…ハムレットの父。先代のデンマーク王で、クローディアスの兄だった。
・オフィーリア…ハムレットの恋人であり、ポローニアスの娘。
<あらすじ>
デンマーク王国で、王が急死。それを受け、王の弟であったクローディアスが王位を継承し、国王の座に就いた。さらに、王子であるハムレットの母、ガートルードは夫だった先王が亡くなってまもなく、クローディアスと再婚してしまう。
先王の死と、早すぎる母の再婚に絶望したハムレットは現実を受け止めきれずに荒れてしまう。そんな時、ハムレットは城に亡霊が出るとの噂を耳にする。実際に見に行ってみると、その亡霊はなんと亡くなった父であり先王の霊だった。そしてハムレットは、先王はクローディアスの策略によって殺された事実を知ってしまう。
クローディアスへの復讐を誓ったハムレット。頭がおかしくなってしまったフリをし、クローディアスを暗殺する機会を狙うのだが…。
「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」はあまりにも有名なセリフですね。
日本でも藤原竜也さんが主演、蜷川幸雄さんが演出など、幅広く舞台化されています。
2,『オセロ』(1602年頃)
出典:https://www.amazon.co.jp/オセロー-新潮文庫-シェイクスピア/dp/4102020020
<主な登場人物>
・オセロ…ムーア人で、ヴェニスの将軍。
・デスデモーナ…オセロの妻。
・キャシオ…オセロの臣下で副長。
・イアーゴー…オセロの旗手。
・エミリア…イアーゴーの妻。
<あらすじ>
主人公オセロはムーア人でヴェニスの軍人である。ある時、周囲の反対を押し切ってデスデモーナと駆け落ちをするが、オセロに恨みを抱いている旗手イアーゴーから「デスデモーナはキャシオと密通している」と告げ口され、オセロはそれを信じてしまう。
嫉妬に狂ったオセロはイアーゴーにキャシオの暗殺を命令し、自身はデスデモーナを殺害してしまうが、イアーゴーの妻エミリアに真実を教えられ…
ボードゲームのオセロの名前の由来ともなった戯曲です。
3,『マクベス』(1606年頃)
出典:https://www.amazon.co.jp/マクベス-新潮文庫-シェイクスピア/dp/4102020071
<主な登場人物>
・マクベス…スコットランドの将軍にして、のちにスコットランド王になる。
・ダンカン…スコットランド王。
・マクベス夫人…マクベスの妻にしてマクベス以上の野心を持ち合わせている。
<あらすじ>
スコットランドの将軍であったマクベスは、戦場からの帰りに荒野で3人の魔女と出くわす。魔女たちはマクベスは王になるという予言を残して消え去り、その後本当にマクベスは昇進する。マクベスは野心にかられ、昇進だけでは満足せず国王になることを望むように。
夫人に魔女のことを話すと、夫人は大喜び。マクベスをそそのかし、現国王であるダンカンの暗殺を示唆する。罪悪感にかられるマクベスを叱咤し、実際にマクベスはダンカンを殺害。国王になる。
それからというものの、自らの地位を失する恐怖に取り憑かれたマクベスは次々に恐ろしい罪を重ねように…。
マクベスはかつて本当に存在した人物で、実際にスコットランド王を殺害し自ら王座についた、という史実があるようです。
4,『リア王』(1605〜1606年頃)
出典:https://www.amazon.co.jp/リア王-新潮文庫-ウィリアム-シェイクスピア/dp/4102020055
<主な登場人物>
・リア…ブリテン国の老王。
・コーディリア…リアの三女。
・リーガン…リアの次女。
・ゴネリル…リアの長女。
<あらすじ>
長らくブリテンを統治していたリアは、高齢を理由に退位し、領土や権力を3人の娘に分割すると発表する。長女のゴネリルと次女のリーガンは、言葉巧みにリアを喜ばせるが、末娘のコーディリアは姉達二人のように媚び諂うことができず、それに激怒したリアによって勘当されてしまう。父であるリアの身を案じながらフランスの王妃になり城を出ていくコーディリア。
リアは退位後、領土を譲ったゴネリルとリーガン二人を頼って余生を過ごすつもりだったが、二人はリアを裏切り嵐の吹き荒ぶ荒野に追い出してしまう。愛する娘に裏切られ狂っていくリア。
リアの状況を知ったコーディリアは、リアの救出のためにフランス軍を起こすが、戦闘に破れリアとともに捕虜になってしまう…。
4大悲劇の中では最も壮大な作品。黒澤明監督の『乱』(1985年)の原作でもあります。
まとめ
ウィリアム・シェイクスピアについてご紹介しました。
かなり古い劇作家ですので取り扱うか迷ったのですが、演劇のみならず、オペラなどの舞台芸術に興味がある方は絶対に避けては通れない人物だと思い、今回こうして解説しました。
シェイクスピアの戯曲は現代の戯曲とはかなり異なっていて、初めて読む方は読み進めるのが大変かもしれませんが、その美しい台詞回しや鋭い人間の観察眼を感じ取れるでしょう。どこの書店でも置いてあると思うので、ぜひ挑戦してみてください!