ミラノ工科大学とは?デザイン学部・建築学部の構成と学費・出願を解説

ミラノ工科大学とは?デザイン学部・建築学部の構成と学費・出願を解説
ミラノ工科大学とは?デザイン学部・建築学部の構成と学費・出願を解説

アートコンサルティング

ミラノ工科大学(Politecnico di Milano、通称ポリミ)は、1863年に創立されたイタリア・ミラノの国立大学です。工学を中心にしながら、建築学部とデザイン学部を持つことがこの大学の大きな特徴で、QS世界大学ランキング(分野別)2026年版では、アート&デザイン部門(Art & Design。大学の公式発表では「デザイン」と表記)で世界7位、建築・建築環境部門(Architecture & Built Environment)で世界6位にランクインしています。公式サイトによれば、いずれもイタリア国内では1位です。

日本では「イタリアの工科大学」という紹介のされ方をしがちですが、実際には世界的なプロダクトデザイナーや建築家を数多く送り出してきた学校です。この記事では、公式サイト(polimi.it、design.polimi.it、auic.polimi.it)で確認できた最新の情報をもとに、デザイン学部の構成、建築学部、学費と奨学金、出願の進め方までをまとめました。それでは早速いってみましょう。

ミラノ工科大学の基本情報

ミラノ工科大学レオナルド・キャンパス、ピアッツァ・レオナルド・ダ・ヴィンチ側の正面入口
ミラノ工科大学レオナルド・キャンパスの正面入口(ピアッツァ・レオナルド・ダ・ヴィンチ側)/撮影:Ale zena(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons
正式名称Politecnico di Milano(ミラノ工科大学、通称ポリミ)
創立1863年。フランチェスコ・ブリオスキが創設し、イタリアで最初のポリテクニコ(高等技術専門大学)となりました。創立時の名称は Istituto Tecnico Superiore
所在地イタリア・ミラノ。主要キャンパスはレオナルド(ピアッツァ・レオナルド・ダ・ヴィンチ32)とボヴィーザの2か所
学生数2025/26年度で49,395名(建築7,375名・デザイン4,793名・工学37,227名)。これに加えて博士課程が2,240名。留学生は9,940名(学士2,632名・修士6,608名・博士700名)。いずれも公式サイトが2026年3月に更新した数値です
学長ドナテッラ・ショート(Donatella Sciuto)。2023年就任、同大初の女性学長。任期は2028年まで
卓越領域公式サイトは「工学・建築・デザインにおける卓越した拠点」と位置づけています
QSランキング2026(分野別)アート&デザイン部門:世界7位(総合スコア83.3、前年6位から1つ下降)/建築・建築環境部門:世界6位。公式サイトによれば、いずれもイタリア国内1位

アート&デザイン部門の順位の読み方は、【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキングで詳しく解説しています。同記事によれば、7位のミラノ工科大学(83.3)は8位のグラスゴー芸術大学(82.9)、9位のアールト大学(82.3)と1点差圏内にひしめいており、僅差の競争の中にいる大学です。

1863年から続く歴史

ミラノ工科大学レオナルド・キャンパスの本館。ファサードに「1863 POLITECNICO DI MILANO」と刻まれている
レオナルド・キャンパスの本館(レッタラート)。ファサードには創立年を含む「1863 POLITECNICO DI MILANO」の文字が刻まれています/撮影:Marco Ausano Maria Introini(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

ミラノ工科大学は1863年11月29日、フランチェスコ・ブリオスキによって創立されました。公式サイトはこの学校をドイツやスイスのポリテクニク(高等技術専門学校)をモデルにしたものと記しており、創立当初の名称は Istituto Tecnico Superiore(高等技術学院)でした。ブリオスキは公式サイトで「政治家であり、卓越した数学者かつ水理技術者」と紹介される人物で、初代学長として1863年から1897年に没するまで学校を率いました。校舎はコレージオ・エルヴェティコ(Collegio Elvetico)での開校から、ピアッツァ・カヴールの建物を経て、1927年に現在のカッシーネ・ドッピエ地区へ移っています。

20世紀に入ると、1937年に Regio Politecnico di Milano(王立ミラノ工科大学)の名称が正式に採用されました。現在のレオナルド・キャンパスの主要な建物群は1927年に開館し、ミラノの大学街チッタ・ストゥーディ地区の中心的な存在になっています。

公式サイトが公開する最新データ(2024年に修士課程を卒業したイタリア人が対象)によれば、卒業1年後の就業率は99%、仕事の内容が専攻と一致していると答えた人は94%、もう一度ミラノ工科大学を選ぶと答えた人は89%です。150年以上の歴史を持ちながら、卒業後の実務との結びつきを重視する姿勢は変わっていないことがうかがえます。

デザイン学部(Scuola del Design)

この記事の中心になるのがデザイン学部です。公式サイトによれば、1993年にイタリア初の「インダストリアルデザイン」学位課程がミラノ工科大学に生まれ、2000年6月にデザイン学部(Faculty of Design)へ発展し、現在のSchool of Designに至ります。学部長はフランチェスコ・ズルロ(2022年就任)です。

公式サイトは自校を「製品・コミュニケーション・インテリア・ファッションの各デザイナーを養成する、学生数・教員数ともに世界最大の国際的な大学」と説明しており、同じページに学生数約4,300名、教員数450名以上、研究・教育アシスタント約400名という概数を載せています(このページには更新時期の記載がなく、大学全体の統計では2025/26年度のデザイン系在籍者は4,793名です)。校舎は主にボヴィーザ・キャンパスにあり、レッコ・キャンパスでも一部の課程が開講されています。毎年およそ200名の交換留学生と、200名を超える修士課程の正規留学生を受け入れているとも案内しています。なお学位課程を担当する「デザイン学部(School of Design)」とは別に、研究を担う「デザイン学科(Department of Design)」と「POLI.design」という共同事業体があり、対外的な発信はこの3者が一体となった「デザインシステム」として行われています。

ボヴィーザ・キャンパスのB1棟。赤・黄・青に塗り分けられた校舎
デザイン学部が拠点とするボヴィーザ・キャンパスのB1棟。赤・黄・青に塗り分けられた外観です/撮影:Marco Ausano Maria Introini(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

学士課程(Laurea、3年制)

公式の課程一覧で確認できる学士課程は次の5つです。4課程はボヴィーザ・キャンパスでイタリア語により開講され、インタラクションデザインのみレッコ・キャンパスで英語開講という点が特徴です。

学士課程開講キャンパス使用言語
Product Design(プロダクトデザイン。出願要項では Industrial Product Design とも表記)ボヴィーザイタリア語
Interior Design(インテリアデザイン)ボヴィーザイタリア語
Communication Design(コミュニケーションデザイン)ボヴィーザイタリア語
Fashion Design(ファッションデザイン)ボヴィーザイタリア語
Interaction Design(インタラクションデザイン)レッコ英語

修士課程(Laurea Magistrale、2年制)

修士課程は7つあり、いずれもボヴィーザ・キャンパスで開講されます。3課程はイタリア語・英語の両方で履修でき、残りは英語のみです。

修士課程使用言語
Communication Design(コミュニケーションデザイン)伊・英
Integrated Product Design(統合プロダクトデザイン)伊・英
Interior and Spatial Design(インテリア&スペーシャルデザイン)伊・英
Design & Engineering(デザイン・エンジニアリング)英語
Design for the Fashion System(ファッションシステムデザイン)英語
Digital and Interaction Design(デジタル&インタラクションデザイン)英語
Product Service System Design(プロダクト・サービスシステムデザイン)英語

学士課程からそのまま同系統の修士課程に進む「内部進学(automatic admission)」の仕組みもあります。たとえばプロダクトデザインの卒業生なら、インテグレーテッド・プロダクトデザインかデザイン・エンジニアリングへ選考を受けずに進めます。2027/28年度までの運用として公式サイトが案内する要件は、次の3つをすべて満たすことです。

  • 初回入学から4年以内に卒業すること
  • 初回入学の翌暦年の10月10日までに、114単位(ECTS)以上を修得し、加重平均27/30以上であること(プロダクト・サービスシステムデザインとデジタル&インタラクションデザインを志望する場合は28/30以上)
  • 入学の時点で有効な英語力証明書を持っていること

単位数と平均点の期限が「卒業まで」ではなく2年目の秋に置かれている点は見落とされやすいところです。この要件を満たさない場合も、加重平均23/30以上であれば通常の選考に出願できます(他大学の出身者は25/30以上)。

建築学部(Scuola AUIC)

もう一つの柱が建築学部です。正式名称は Scuola di Architettura Urbanistica Ingegneria delle Costruzioni(英語名 School of Architecture Urban Planning Construction Engineering、通称AUIC)で、公式サイトは「1865年以来、建築と工学を組み合わせてきた確立した伝統」を持つスクールと説明しています。現在の体制は、かつての3つの教育組織(建築と社会、シビル・アーキテクチャー、建設工学・建築)での経験を母体に、2016年に再創設されたものです。

公式サイトはAUICが育てる人材像を、「建物からインテリア空間まで、都市から地域、景観まで、そして文化遺産まで」さまざまな尺度の課題に責任を持って向き合える卒業生、と説明しています。建築単体ではなく、都市計画や文化財保存まで含む構えのスクールです。

学士課程のArchitectural Design(建築デザイン)は、レオナルド、マントヴァ、ピアチェンツァの3キャンパスで開講されます。修士課程は9つあります。

修士課程開講キャンパス使用言語
Architecture(建築)ミラノ・レオナルド伊・英
Building Engineering for Sustainability(持続可能性のための建設工学)ミラノ・レオナルド伊・英
Management of Built Environment(建造環境マネジメント)ミラノ・レオナルド英語
Urban Planning and Policy Design(都市計画・政策デザイン)ミラノ・レオナルド英語
Architectural Engineering(建築工学)レッコ英語
Building Engineering/Architecture(建設工学・建築)レッコイタリア語
Architectural Design and History(建築デザインと歴史)マントヴァ英語
Landscape Architecture. Land Landscape Heritage(ランドスケープ・アーキテクチャー)ピアチェンツァ英語
Sustainable Architecture and Landscape Design(サステナブル建築・ランドスケープデザイン)ピアチェンツァ英語

建築学部の著名な卒業生の一人が、建築家のレンゾ・ピアノです。公式の卒業生向けサイト(alumni.polimi.it)によれば、ピアノは1964年にミラノ工科大学を卒業しました。2023年1月には、レンゾ・ピアノ財団がレオナルド・キャンパス内の「ナーヴェ(Nave)」棟に新たな拠点を開いています。ピアノはこのとき、コッリエレ・デッラ・セーラ紙に「私はすべてを大学に負っています。そこは私が本当の意味で育った場所、すべてを学んだ場所です」と語ったと公式サイトは伝えています。なおナーヴェ棟を設計したのは、同じく卒業生のジオ・ポンティです。

ミラノ工科大学のデザイン学部と建築学部を、学士課程の数、修士課程の数、主なキャンパス、学士の入試の4項目で比べた図
図:デザイン学部と建築学部

キャンパス

公式サイトによれば、ミラノ工科大学は現在、ミラノ市内のレオナルドとボヴィーザ、そしてクレモナ、レッコ、マントヴァ、ピアチェンツァを合わせた6つのキャンパスで構成されています。これとは別に、中国・西安交通大学との共同で設けられたジョイントスクール(Joint School of Design and Innovation Centre)が西安にあり、公式サイトはこれを「イタリア国外で最初のキャンパス」と紹介しています。

開講されている課程は拠点によって異なります。建築(AUIC)はレオナルドのほかレッコ・マントヴァ・ピアチェンツァ、デザインはボヴィーザのほかレッコです。クレモナは工学のみで、建築・デザインの課程はありません。

レオナルド・キャンパス

1927年に開館した、同大学で最も歴史あるキャンパスです。ミラノの大学街チッタ・ストゥーディ地区、ピアッツァ・レオナルド・ダ・ヴィンチ32に位置し、学長室と大学本部のほか、建築学部と2つの工学系学部が置かれています。

ピアッツァ・レオナルド・ダ・ヴィンチ32番地、レオナルド・キャンパスの校舎群
ピアッツァ・レオナルド・ダ・ヴィンチ32番地、レオナルド・キャンパスの校舎群/撮影:Ale zena(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

ボヴィーザ・キャンパス

ミラノ工科大学ボヴィーザ・キャンパスの校舎。背景に旧ガス工場のガスタンクが見える
ミラノ工科大学ボヴィーザ・キャンパス。デザイン学部の校舎が置かれています。背景に見えるガスタンクは、この地区がかつてガス工場だった名残です/撮影:Goldmund100(CC BY-SA 3.0)/出典:Wikimedia Commons

デザイン学部の主要な校舎があるキャンパスです。かつてガス工場が立地していた地区で、工業地帯の面影を残す建物と現代的な校舎が混在しています。公式の卒業生向けサイトによれば、この地区では「ボヴィーザ・ゴッチャ」というマスタープランが進んでおり、ミラノ市が所有する23.4ヘクタールとミラノ工科大学が所有する9.1ヘクタール(公式サイトは合計を約32ヘクタールと表記しています)の敷地に、キャンパスの拡張とサイエンスパークの整備を行う計画です。このマスタープランを設計したのは、卒業生でもある建築家レンゾ・ピアノとアンドレア・キパールで、ピアノ自身が大学で発表しました。

地方拠点とコモ・キャンパスについて

一方で、かつて地方拠点の一つだったコモ・キャンパス(Polo Territoriale di Como)は、コモ拠点の公式サイトによれば2017/18年度から学位課程の新規募集を停止しており、学生向けサービスも2020年9月30日に終了しています。大学の沿革ページも「コモ(1987年開設、2018年まで活動)」と記しています。古い紹介記事にはコモが現役のキャンパスとして載っていることがありますので、ご注意ください。

学費:所得に応じて変わる仕組み

イタリアの公立大学で納める金額は、日本の大学のような一律の学費ではありません。ミラノ工科大学の場合、1年分は印紙税(16.00ユーロ)、州税(regional tax)、保険料(計11.04ユーロ)、そして授業料にあたる包括負担金(all-inclusive contribution)の合計です。このうち包括負担金と州税が、世帯のISEE(所得・資産を総合した経済状況指標)に応じて変わります。公式サイトが案内する2026/27年度の学士・修士課程(標準的な46〜74 ECTSの履修計画の場合)は次のとおりです。

ISEEの区分包括負担金(授業料にあたる部分)年間の納付総額
0〜22,000ユーロ全額免除157.04ユーロ(州税の最低額130ユーロ+印紙税+保険料)
22,001〜30,000ユーロ所定の計算式により一部免除157.04ユーロ+算出された包括負担金
30,000ユーロ超免除なし(最大3,726.00ユーロ)最大3,943.04ユーロ

州税は2026/27年度から3段階になり、ISEEが26,887.93ユーロ以下なら130ユーロ、53,775.88ユーロまでなら160ユーロ、それを超えるか証明書を出さない場合は190ユーロです。表の「最大3,943.04ユーロ」は、包括負担金が全額(3,726.00ユーロ)で州税も最高額(190ユーロ)になる場合の合計です。納付は入学時の第1回(880.04ユーロ)と残額の第2回の2回払いです。

日本からの留学生がとくに確認しておきたいのが、修士課程(Laurea Magistrale)の扱いです。公式サイトは、EU圏外の国籍を持ち、就学目的の在留許可で、外国で取得した学士号をもって修士課程に在籍する学生のうち、奨学金を得ていない人は「包括負担金を全額支払う(required to pay the full all-inclusive contribution)」と明記しています。さらに同じページは、この区分の学生について「州税は常に最高額(190ユーロ)となる」とも書いています。公式サイトは、この区分の学生には第2回納付のためのISEEUパリフィカート(海外の所得・資産を申告する、留学生向けの相当ISEE)が必要ないとしており、所得を申告しても減額の対象にならないことを示しています。結果として2026/27年度の適用額は年間3,943.04ユーロ(包括負担金3,726.00ユーロ+州税190ユーロ+印紙税16ユーロ+保険料11.04ユーロ)です。なおこれは修士課程の規定で、学士課程(Laurea)は条件が異なります。

この金額は、自社記事【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキングで紹介した上限額と一致します。あくまで大学に納める額であって、住居費や食費を含む生活費込みの総額ではありません。イギリスのロイヤル・カレッジ・オブ・アートの1年制修士が3万3千ポンド超(およそ650万円以上)であることと比べると差は大きく、「ヨーロッパの美大・デザイン校は学費が高い」という前提が、イタリアの公立大学には必ずしも当てはまらないことが分かります。

ミラノ工科大学の学費が、ISEEの所得区分によって全額免除、一部免除、免除なしの3段階に分かれることを示した図
図:学費は所得(ISEE)で変わる

奨学金・学費減免の制度

包括負担金そのものとは別に、ミラノ工科大学には減免や現金給付を伴ういくつかの制度があります。

DSU(経済支援奨学金)

DSU(Diritto allo Studio Universitario。公式の英語名は University Financial Aid)は、ミラノ工科大学自身が毎年6月に公募(bando)を出して運営する奨学金です。給付額はロンバルディア州の決議にもとづいて決まりますが、申請先は州の機関ではなく大学のオンラインサービスですのでご注意ください。海外に所得・資産がある学生は、大学指定のCAF(税務支援センター)経由で「ISEEUパリフィカート(ISEEU Parificato)」を取得して提出することで対象になり得ます。

採用されると包括負担金(授業料にあたる部分)が全額免除になり、さらに現金給付と食事(1日1食)の支援が受けられます。ただし州税・印紙税・保険料は免除の対象外で、受給者も納付が必要です。2026/27年度の公募要項(2026年7月1日付の追補)が示す金額は次のとおりで、給付枠は全体で4,300件です。

居住形態第1区分
(ISEE 13,443.97ユーロ以下)
第2区分
(〜17,925.29ユーロ)
第3区分
(〜26,887.93ユーロ)
地元(実家から通学)2,601.00ユーロ+食事(計3,430.00ユーロ相当)2,162.00ユーロ+食事(計2,991.00ユーロ相当)1,314.00ユーロ+食事(計2,143.00ユーロ相当)
通学(遠距離)3,991.00ユーロ+食事(計4,820.00ユーロ相当)3,362.00ユーロ+食事(計4,191.00ユーロ相当)2,470.00ユーロ+食事(計3,299.00ユーロ相当)
学外から(大学寮に入居)4,620.00ユーロ+住居+食事(計8,248.00ユーロ相当)3,544.00ユーロ+住居+食事(計7,172.00ユーロ相当)2,229.00ユーロ+住居+食事(計5,857.00ユーロ相当)
学外から(寮以外に居住)7,419.00ユーロ+食事(計8,248.00ユーロ相当)6,343.00ユーロ+食事(計7,172.00ユーロ相当)5,028.00ユーロ+食事(計5,857.00ユーロ相当)

日本から留学する場合は多くが「学外から」の区分にあたります。包括負担金の全額免除と合わせると、経済的な支えとして小さくない規模です。ただし金額も枠も年度ごとに改定されますので、出願の時期には最新の公募要項をご確認ください。

そのほかの減免

  • 成績に基づく減免:前年度の修得単位数(ECTS)と加重平均点が基準を満たした学生を対象に、包括負担金を50%または100%減免する制度です(2026/27年度は加重平均27/30以上29/30未満で50%、29/30以上で100%)
  • 6歳未満の子を持つ学生:包括負担金が100%免除されます
  • 就労している学生:イタリア国内で週18時間以上・年6か月以上働いている場合などに、包括負担金が25%免除されます。その暦年に1科目以上の試験に合格していることが条件で、入学初年度は申請できません
  • 兄弟姉妹が同時に在籍している学生:これは減免ではなく、申請により所得指標(ISEE)の値が10%引き下げられ、より低い所得区分に入る可能性があるという仕組みです

なお減免には年度ごとの件数の上限があり、超えた場合は減免額が一律に圧縮されることがあると公式サイトは案内しています。

出願の進め方

ミラノ工科大学の出願は、ポートフォリオ中心の選考とは仕組みが異なります。学士課程は原則として入学試験で合否が決まり、修士課程は成績と書類で評価されます。

学士課程:TOLDとARCHED

デザイン学部の学士課程に出願するには、TOLD(Test del Design)という試験が必須です。イタリア語で開講される4課程はイタリア語版TOLD(90問・85分)を、英語で開講されるインタラクションデザインは英語版TOLD(60問・70分)を受験します。イタリア語版は、幾何学・図形表現(12問)、推論(6問)、文章読解(6問)、デザイン史と美術史(12問)、一般教養(24問)の5分野に加え、英語力を測るTENGセクション(30問)で構成されます。英語版は前半の5分野のみでTENGはありません。TENGで30問中24問以上正解すると英語力の証明とみなされ、満たない場合は追加教育義務(OFA)が課されて在学中の履修に制限がかかります。

建築学部の学士課程(Architectural Design)と単一サイクル修士課程のBuilding Engineering-Architectureには、ARCHEDという別の試験が課されます。文章読解、学習到達度と歴史(美術史を含む)、一般教養と論理的推論、図法・表現、数学と物理の5分野で、各10問の計50問です。イタリア語版・英語版の両方があります。いずれの試験もポートフォリオの提出は必須とされていません(2026/27年度の募集要項に作品集提出の規定はありません)。作品集で評価されるRCAやUALのような美術大学とは選考の仕組みが異なります。

修士課程:成績・英語力・ポートフォリオ

海外の大学を卒業して修士課程に出願する場合、必要書類は学位証明書、成績証明書、累積GPA証明、履歴書(2ページ以内)、英語力証明書に加えて、建築・都市計画系とデザイン系の志望者に限りポートフォリオ(これまでの制作物や課題をまとめたもの、20MBまで)の提出が求められます。学士課程とは異なり、修士課程では制作物の提出が選考書類に含まれます。デザイン系の志望者でデザイン以外の学歴から出願する場合は、卒業論文の要旨やインターンシップの報告書で代えることが認められています。このほか推薦状(指導教員や勤務先の上司など)と志望動機書が、提出を推奨される任意書類として案内されています。

英語力の基準は、プログラムごとではなく大学として一本の表が定められています。主なものはTOEFL iBT 78点以上(2026年1月21日以降の受験は新しい配点で4.5以上)、IELTS(AcademicまたはGeneral Training)6.0以上、ケンブリッジ英検B2 First グレードB以上、PTE Academic 59点以上などです。学士課程の履修科目の75%以上が英語だったと大学が証明できる場合は提出が免除されます。なお英語で開講される修士課程の留学生には、卒業までにイタリア語B2を取得する義務(イタリア語のOFA)が課されます。

ミラノという街との関係

ミラノ工科大学のキャンパスは、中心部から公共交通で行き来できる範囲に収まっています。レオナルド・キャンパスのあるチッタ・ストゥーディ地区は大学街として知られ、ドゥオーモ(ミラノ大聖堂)周辺の旧市街からもほど近い立地です。

ミラノ大聖堂(ドゥオーモ)とガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレ2世
ミラノ大聖堂(ドゥオーモ)とガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレ2世。ミラノ工科大学のキャンパスは、この旧市街から公共交通で行き来できる範囲にあります/撮影:Steffen Schmitz(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons
ボヴィーザ地区からミラノ市街を望む眺め。手前に校舎の屋根、遠景に高層ビル群
ボヴィーザ地区から望むミラノ市街。大学のキャンパスは、街の産業地区に根を下ろしています/撮影:Neq00(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

デザインの分野でミラノ工科大学を語るうえで欠かせないのが、毎年4月のミラノ・デザインウィークとの関わりです。まず用語を整理しておきます。サローネ・デル・モービレ(ミラノサローネ)はフィエラ・ミラノ・ロー(ロー市の見本市会場)で開かれる見本市そのものを指し、ミラノ・デザインウィークはその見本市と市内各所のフオーリサローネを含む期間全体の呼び名です。サローネ公式も、サローネを「ミラノ・デザインウィークという文脈のなかに位置づけられるもの」と説明しています。日本では同じ意味で使われがちですが、別のものです。

大学の公式発表によれば、デザイン学部・デザイン学科・POLI.designからなる「デザインシステム」は、3年連続でミラノ・デザインウィークに参加しています。2026年は4月21日から26日まで第64回サローネ・デル・モービレがフィエラ・ミラノ・ローで開催され、同大学は会場内のサローネサテリテ(35歳以下の若手と世界23校の教育機関に割り当てられるセクション)のA18/A20ブースで、デジタル&インタラクションデザイン修士課程の学生による展示「Mobility Futures」を公開しました。イタルデザイン・ジウジアーロとの協働から生まれた3つのプロジェクトです。

市内では、4月16日から26日までファッブリカ・デル・ヴァポーレ内のスパツィオ・メッシーナで、展覧会「INTERDEPENDENCE: past, present, future」が開かれました。ミラノ市の建築資料館CASVAとの共同キュレーションで、同大学と50を超える国内外のデザイン系大学の学生による作品に、CASVAの所蔵資料を組み合わせた国際展です。また4月24日には、市内のアーカイブが一斉に公開される夜間イベント「Common Archive. La Notte Bianca del Progetto」が行われました。サローネ公式のオブザバトリーが企画し、デザイン学部が協力したもので、大学は3つの取り組みで参加しています。在学中から自分の制作をミラノの街中で発表できる点は、この大学でデザインを学ぶ大きな特徴の一つです。

フィエラ・ミラノ・ロー見本市会場の中央通路。ガラスの大屋根「ヴェラ」と会期中の案内サイン
サローネ・デル・モービレの会場、フィエラ・ミラノ・ローの中央通路。ガラスの大屋根は「ヴェラ」と呼ばれます。奥に見えるのは、サローネを主催する業界団体フェデルレニョアッレードのラウンジの案内です/撮影:böhringer friedrich(CC BY-SA 2.5)/出典:Wikimedia Commons

主な卒業生

ミラノ工科大学の公式サイト(卒業生向けサイト alumni.polimi.it と、デザイン史のアーカイブ designphilology.polimi.it)で経歴が確認できる、デザイン・建築分野の卒業生を紹介します。

氏名卒業年・学位公式サイトの記載
ジオ・ポンティ(Gio Ponti)1921年・建築1928年に雑誌『ドムス』を創刊し、その2年後にコンパッソ・ドーロ賞を創設しました。画家・装飾家・デザイナーとしても活動し、ピレリタワーやスーパーレジェラ・チェアを手がけています。ミラノ工科大学の建築学部で長く教え、学内のトリフォリオ棟とナーヴェ棟も設計しました
マルコ・ザヌーゾ(Marco Zanuso)1937年・建築建築家・都市計画家・デザイナー。コンパッソ・ドーロ賞を7回、ミラノ・トリエンナーレの国際賞を6回受賞しています
フランカ・ヘルグ(Franca Helg)1945年・建築建築とインダストリアルデザインの両方で活動し、花器・取っ手・椅子・照明などを手がけました。細部は全体を定義するうえで欠かせず、細部がひとつの設計を決定づけることもある、という趣旨の言葉が紹介されています
リリアーナ・グラッシ(Liliana Grassi)1947年・建築修復の専門家。1943年の爆撃で破壊され、のちにミラノ大学の校舎となった歴史的建造物オスペダーレ・マッジョーレの修復を手がけました
アンナ・カステッリ・フェリエーリ(Anna Castelli Ferrieri)1942年・建築1966年から、夫ジュリオ・カステッリとその会社カルテルとともに、インダストリアルデザインとプラスチック製の日用品・家具の製造に身を投じた最初の女性と紹介されています
チーニ・ボエーリ(Cini Boeri)1951年・建築建築とデザインに対する民主的なアプローチで知られています
ガエ・アウレンティ(Gae Aulenti)1953年・建築作品の多くは公共空間です。パリのオルセー美術館と近代美術館、東京のイタリア文化会館のほか、ヴェネツィアのパラッツォ・グラッシの改修などで知られます
アキッレ・カスティリオーニ(Achille Castiglioni)1944年・建築家具・照明のデザインで知られます。代表作の照明「アルコ」は2020年にコンパッソ・ドーロ賞の「製品のキャリア」部門を受賞しました。本人は2000年に、ミラノ工科大学から工業デザインの名誉学位を授与されています
パトリシア・ウルキオラ(Patricia Urquiola)1989年・建築アキッレ・カスティリオーニを師として学んだデザイナーとして紹介されています。作品はニューヨーク近代美術館やヴィクトリア&アルバート博物館に収蔵されています
レンゾ・ピアノ(Renzo Piano)1964年1989年にRIBAゴールドメダル、1998年にプリツカー賞を受賞。ミラノ工科大学の公式サイトは、CERNサイエンス・ゲートウェイの設計を紹介しています

ウルキオラは2015年から家具ブランドのカッシーナでアートディレクターを務めています(出典はカッシーナ公式サイト)。ピアノの代表作としてよく挙げられるポンピドゥー・センターやザ・シャードは、大学の公式サイトに記載がないためこの表には含めていません。

このほか公式サイトは、1928年にミラノ工科大学で建築を卒業した最初の女性、カルラ・マリア・バッシとエルヴィラ・モラッシ・ベルナルディスなど、歴史に名を残した女性卒業生を紹介しています。

QS世界大学ランキング2026年版で見る位置づけ

冒頭でも触れたとおり、ミラノ工科大学はQS世界大学ランキング(分野別)2026年版のアート&デザイン部門で世界7位(総合スコア83.3)、前年の2025年版は6位でした。建築・建築環境部門でも世界6位にランクインしています。大学の公式サイトは、いずれもイタリア国内では1位だとしています。なお大学の公式発表はアート&デザイン部門を「デザイン」と短く呼んでおり、QSの正式な分野名は Art & Design です。

部門2026年版の順位前年からの変動
デザイン(Art & Design)世界7位(スコア83.3)6位から1つ下降
建築・建築環境(Architecture & Built Environment)世界6位公式発表に前年比の記載なし

アート&デザイン部門のTOP10全体の顔ぶれや、この指標の読み方については【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキングで詳しく解説しています。同記事によれば、この指標は学術評判90%と雇用者評判10%で構成されており、工学分野で培った研究基盤の評判が、デザイン分野の評価にも及んでいると見ることができます。

まとめ

レオナルド・キャンパスの本館を正面から見た外観
レオナルド・キャンパスの本館/撮影:Pasafr(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

いかがだったでしょうか。ミラノ工科大学について見てきました。要点は次の6つです。

  • 1863年にフランチェスコ・ブリオスキが創立した、イタリアで最初のポリテクニコです。2025/26年度の学生数は49,395名(別に博士課程2,240名)で、留学生は9,940名です
  • デザイン学部は1993年にイタリア初のインダストリアルデザイン学位課程として生まれ、現在は学士5課程・修士7課程を持ちます。校舎は主にボヴィーザ・キャンパスにあり、インタラクションデザインのみレッコ・キャンパスで英語により開講されています
  • 建築学部(AUIC)は1865年以来の伝統を持ち、2016年に現在の体制として再創設されました。学士1課程・修士9課程を、レオナルド・レッコ・マントヴァ・ピアチェンツァの各キャンパスで開講しています
  • QS世界大学ランキング(分野別)2026年版で、アート&デザイン部門が世界7位、建築・建築環境部門が世界6位。公式サイトによれば、いずれもイタリア国内1位です
  • 大学に納める金額はISEE(所得・資産の指標)に応じて変わります。EU圏外の国籍で、外国の学士号をもって修士課程に進み、奨学金を得ていない場合は、2026/27年度で年間3,943.04ユーロ(包括負担金3,726.00ユーロ+州税190ユーロ+印紙税・保険料)が適用されます
  • 学士の出願はTOLD・ARCHEDという入学試験、修士の出願は成績とポートフォリオ(建築・都市計画系とデザイン系)による書類選考です。修士の英語要件はTOEFL iBT 78点以上、IELTS 6.0以上などで、大学として一本の基準が定められています

金額も出願要件も年度ごとに変わります。出願を具体的に考える段階では、志望プログラムの公式ページで最新の情報を必ずご確認ください。

Euphoric " " の視点

ミラノ工科大学でデザインを教えているのは、美術学校ではありません。工科大学です。

これは、イタリアのデザインがどこから来たかを考えると腑に落ちます。ポンティもカスティリオーニもアウレンティも、作ったのは絵ではなく製品でした。照明器具、椅子、タイプライター。工場があり、職人がいて、その隣に設計する人がいた。デザインは工学の側にあったのです。

日本では、デザインを学ぶ場所は美大だと考えられがちです。けれど世界を見ると、必ずしもそうではありません。ミラノ工科はデザイン分野で世界の上位にいますし、マサチューセッツ工科大学も同じ表に並んでいます。

自分が作りたいものが、絵に近いのか、製品に近いのか。そこを見極めると、進学先の候補は変わります。学校を美大か工科大かで分ける前に、何を作る人になりたいのかを先に決めたほうが、たぶん近道です。

ポートフォリオの作り方に不安がある方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。

もっと知るには

本記事の情報は、ミラノ工科大学の公式発表をもとに確認しています。学費・日程・出願要件は年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。

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