チェルシー・カレッジ・オブ・アーツとは?専攻・学費・出願を徹底解説

チェルシー・カレッジ・オブ・アーツとは?専攻・学費・出願を徹底解説
チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ(Chelsea College of Arts)ミルバンクの校舎

アートコンサルティング

こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんはチェルシー・カレッジ・オブ・アーツ(Chelsea College of Arts)という学校をご存知ですか。ロンドン芸術大学(University of the Arts London、UAL)を構成する6つのカレッジのひとつで、ファインアート、テキスタイルデザイン、インテリアデザイン、グラフィックデザイン・コミュニケーション、プロダクト&ファニチャーデザインという5つの分野を扱うカレッジです。ファッションで知られるセントラル・セント・マーチンズやロンドン・カレッジ・オブ・ファッションとは違い、チェルシーにはファッションデザインの学位課程がありません。そのかわり、現代美術と、空間や物をつくるデザインの領域に重心が置かれています。

もうひとつチェルシーを特徴づけているのが立地です。校舎はロンドン中心部のピムリコ地区にあり、テート・ブリテンのすぐ隣に建っています。建物じたいも、もとは王立陸軍医学校(Royal Army Medical College)だった歴史的建造物です。本記事ではそんなチェルシー・カレッジ・オブ・アーツについて、成り立ち、校舎と設備、学部・大学院の全コース、出願要件、学費、アクセス、卒業生まで、2026年10月2日にUAL公式サイト(arts.ac.uk)で確認できた情報をもとにご紹介します。それでは早速いってみましょう。

チェルシー・カレッジ・オブ・アーツの基本情報

チェルシー・カレッジ・オブ・アーツのミルバンク校舎、赤レンガと石造の建物とパレードグラウンド
チェルシー・カレッジ・オブ・アーツのミルバンク校舎(ノース・ブロック、2008年撮影)。もとは王立陸軍医学校の建物です/撮影:Entangle/出典:Wikimedia Commons(CC BY 3.0)

基本情報

正式名称Chelsea College of Arts(チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ)
所属University of the Arts London(UAL、ロンドン芸術大学)を構成する6カレッジのひとつ
所在地16 John Islip Street, London, SW1P 4JU
地区ピムリコ(ロンドン中心部)。テート・ブリテンとテムズ川を望む立地
学生数約1,800人(UAL公式「Student life」ページの記載)
扱う分野ファインアート、デザイン、キュレーティング
学内ギャラリーChelsea Space(チェルシー・スペース)
前身校の開校1895年、マンレサ・ロード(Victoria County History の記載「Chelsea School of Art, part of the polytechnic, opened in 1895.」)
校舎グレードII指定の旧王立陸軍医学校(Royal Army Medical College)の建物。2005年に移転
電話+44 (0)20 7514 7751

UAL全体は、公式サイトによれば1842年から創造教育を定義してきた6つのカレッジで構成され、130か国から集まるおよそ23,000人が在籍します。その中でチェルシーは学生数およそ1,800人の比較的小さなカレッジです。公式のチェルシー紹介ページは、その性格を「ロンドン中心部に拠点を置き、今日を代表するアーティストやデザイナーを輩出してきたという評価を得ている」「学生たちは現代のファインアートとデザインの実践に根本から関わることを促される」と説明しています。

チェルシーの位置づけを一言でいえば、ファッションを扱わないかわりに、現代美術と、空間・物・表面をつくるデザインを深く掘るカレッジです。UALの学費や奨学金、ファウンデーション課程といった大学全体の仕組みについては、ロンドン芸術大学(UAL)とは?の記事で解説していますので、あわせてご確認ください。

5つの分野で成り立つカレッジ

Studying in the heart of London | Chelsea College of Arts, UAL(Chelsea College of Arts 公式YouTube)

チェルシーの学位課程は、学部・大学院を通じてファインアート、テキスタイルデザイン、インテリアデザイン、グラフィックデザイン・コミュニケーション、プロダクト&ファニチャーデザインという5つの領域に、キュレーティングを加えた構成になっています。セントラル・セント・マーチンズのように8つの大きなプログラムに分かれているわけではなく、分野の数そのものが絞られています。

この構成には、ひとつの傾向が読み取れます。平面と立体、作品と製品のあいだを行き来する分野が並んでいるということです。テキスタイルは布という素材、インテリアは人が入る空間、プロダクト&ファニチャーは手に取る物を扱います。隣り合う分野が互いに素材や方法を貸し借りしやすい並びです。

UAL公式のBA Fine Artコースページは、この課程を「幅広い基盤を持つコース」とし、「映像、写真、デジタル技術、プリント、サウンド、パフォーマンス、絵画、彫刻、ドローイング、そして執筆」という広い範囲のメディアで制作すると記しています。コース内に専攻の枝分かれ(pathway)を設けない設計で、公式の学生紹介映像でも教員が「私たちはファインアートのコースですが、パスウェイに分かれてはいません。それが形式上の流動性をもたらし、どうやって作品をつくりうるかを学生が常に別の角度から考えるよう促しています」と語っています。

テキスタイルデザインも、ひとつの技法に閉じていません。公式ページはプリント、ニット、ステッチ、織り、スマートテキスタイルという5領域を挙げ、新しい技術と伝統的な工程の相互作用、気候・人種・社会の正義という観点、テキスタイル産業の地球規模の影響への批判的な省察を学びに統合すると明記しています。インテリアデザインは外部との接続がとくに強く、デザイナー公認協会(Chartered Society of Designers、CSD)の専門認定を受けたコースで、Fletcher Priest、Conran Studio、Aedas、Brinkworth といったデザイン事務所との提携があります。

プロダクト&ファニチャーデザインは「つくることをデザイン制作の中心に据える」と宣言し、実技を確実に身につけたうえで物への批判的で調査的なアプローチと組み合わせる、という順序を示しています。グラフィックデザイン・コミュニケーションは、ブランディング、UXとUI、動画、エディトリアルデザイン、アートディレクションを扱い、印刷と画面とインタラクティブな体験を横断します。

テート・ブリテンの隣という立地

夕景のテート・ブリテン、テムズ川沿いの歩道から見た新古典主義の正面
テムズ川沿いの歩道から見たテート・ブリテン。チェルシーの校舎はこの建物のすぐ隣にあります/撮影:Julian Herzog/出典:Wikimedia Commons(CC BY 4.0)

チェルシーの立地は、この学校を語るうえで外せない要素です。UAL公式の「Local area guide」は、「チェルシー・カレッジ・オブ・アーツはロンドン中心部のピムリコに位置しています。テート・ブリテンとテムズ川を望む、アートとデザインを学ぶのにすばらしい立地です」と記しています。さらにアクセス案内のページは、空港からの行き方を説明する文の中でテート・ブリテンを「カレッジの隣」と書いています。

学生紹介映像の中でも、インテリアデザインを学ぶ学生が「少し行けばビッグ・ベンがあって、テートはすぐ隣です。川の向こうにはガーデン・ミュージアムがあります」と話しています。

美術大学の立地として、これは特殊な条件だと言えます。常設の国立コレクションがすぐ隣にあるという環境は、課題の合間に実物を見に行くことを日常の動作にします。画集や画面で見た作品を実際の大きさと筆跡で確認できる距離にあるかどうかは、制作の質に少なからず影響すると考えられます。

ミルバンクの校舎は、もと王立陸軍医学校でした

チェルシーの校舎に残る王立陸軍医学校の紋章の石彫
校舎に残る王立陸軍医学校の紋章。現在は使われていない旧正面扉の上部にあります/撮影:PAUL FARMER(Geograph Britain and Ireland)/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

チェルシーの校舎には、アートスクールになる前の長い歴史があります。UAL公式のチェルシー記事は「1900年から2000年のあいだ、チェルシーのミルバンクの建物には王立陸軍医学校が入っていました」と記しています。UALがホストするキャンパス案内のページには、1907年5月に国王エドワード7世とアレクサンドラ王妃が王立陸軍医学校を開設し、1999年に閉鎖されたという記述もあります(公式のカレッジ記事ではなく、学内のブログ上の記述です)。腸チフスやインフルエンザのワクチンの研究で知られた施設でした。

建物そのものの年代は、英国の文化財を所管するヒストリック・イングランド(Historic England)の登録記録で確認できます。敷地内の建物は3件が別々にグレードIIに指定されており、いずれも1998年9月24日付です。パレードグラウンドを囲む兵舎棟(登録番号1376571・1376572)は1898年頃、王立工兵隊(Royal Engineers)の設計、将校食堂と司令官住宅の棟(1376570)は1904年から1907年にかけて建てられたと記録されています。校舎は一度に建ったのではなく、1898年頃から1907年にかけて段階的にできた建物群です。「1907年5月」は開設式の年月、「1900年から2000年」はおおよその使用期間だと読むと、3つの記述が無理なくつながります。

チェルシーがこの建物に移ってきたのは2005年です。UAL公式の記事は「2005年、テート・ブリテンの向かいにあるグレードII指定の旧王立陸軍医学校の建物に移転して以来、カレッジはこの地域のランドマークになった」と書いています。歴史的な重要性から主要な意匠を保存する必要があり、その結果、かつて将校食堂だった大広間(Banqueting Hall)、ビリヤード室、カードルームといった壮麗な部屋が、そのまま学びの場になっています。旧軍医学校の図書室も現在の図書館の中心部分として残っています。

19世紀のミルバンク刑務所を描いた銅版画、テムズ川沿いに広がる放射状の巨大な監獄
ミルバンク刑務所(Millbank Penitentiary)を描いた銅版画。T・H・シェパードの原画にもとづくJ・ティングルの版画/出典:Wellcome Collection 経由 Wikimedia Commons(CC BY 4.0)

土地そのものの来歴も独特です。ミルバンクという地名はテムズ川の岸にあった水車小屋(mill)に由来しますが、この一帯がもっともよく知られているのは1816年に開いたミルバンク刑務所(Millbank Penitentiary)によってです。かつてイングランド最大の監獄で、1843年からはオーストラリアへの流刑者を収容する施設となりました。校舎の敷地内には、囚人を運ぶ艀をつないでいた川の階段の係留柱が残されています。

刑務所は1890年に閉鎖され、その煉瓦は裏手のミルバンク・エステート(Millbank Estate)という公営住宅の建設に使われました。そして同じ跡地にテート・ブリテンが開館し、残った空き地に王立陸軍医学校が建てられました(開館年は、UALのキャンパス案内が1897年、ヒストリック・イングランドの登録記録が1898年としています)。監獄の跡地が美術館と医学校になり、そのうち医学校がアートスクールになったという流れです。

学内ギャラリー Chelsea Space

ミルバンク側から見たアタベリー・ストリート、左手にチェルシーの校舎が並ぶ
ミルバンクから見たアタベリー・ストリート。左手の建物がチェルシー・カレッジ・オブ・アーツと旧王立陸軍医学校です/撮影:PAUL FARMER(Geograph Britain and Ireland)/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

チェルシーにはChelsea Space(チェルシー・スペース)という公開ギャラリーがあります。UAL公式のページは、このギャラリーを「チェルシー・カレッジ・オブ・アーツの公開ギャラリー」と位置づけたうえで、その方針を「私たちの重点は、アイデアを試すことと、創作の過程を外にさらすことにあります」と説明しています。完成作を見せる場というより、途中を見せる場だということです。

活動は、アーティストや文化機関、学内の各コースとの協働と、UALの研究の支援という2本立てで、プログラムにはトーク、ワークショップ、上映会、展覧会が含まれます。公式サイトに掲載されていたのは、アーティストで教育者でもあるアンドリュー・ピエール・ハート(Andrew Pierre Hart)との「If you like rice, you’ll understand – Collective Noise」という、複数の会場にまたがる展覧会と関連イベント、刊行物のプログラムで、会期は2026年10月2日から12月11日です。

この学内ギャラリーは、後述するMA Curating and Collections(キュレーティング&コレクションズ)と直結しています。公式のコースページは、このコースが「キュレーティングの実践的な要素と理論的な要素を組み合わせる」ものであり、アーカイブとコレクションを扱うことに特別な重点を置いていると説明しています。学生はChelsea SpaceとUALのアーカイブ群にアクセスでき、学内のギャラリーで実際に展覧会をつくるところまでが課程に組み込まれています。

チェルシーはまた、UALの研究拠点をいくつも抱えています。公式の「About us」ページによれば、Transnational Art, Identity and Nation(TrAIN)研究センター、Decolonising Arts Institute、Inivaがチェルシーに置かれています。

工房と設備

A tour in and around Chelsea College of Arts, UAL(Chelsea College of Arts 公式YouTube)

UAL公式の設備ページは、チェルシーについて「専門的な工房と設備の幅広い揃えを持ち、経験豊富な専門技術者のチームが常駐している」と説明しています。

3D工房では金属(溶接、曲げ、ろう付け、切断、旋盤)、木工、鋳造、キャスティング、陶芸、レーザーカットが扱えます。テキスタイルはデジタルプリントとスクリーンプリントの工房、編み機とミシン、プリントと染色の設備、織機。そのほか視聴覚編集スタジオ、デジタルプリントスタジオ、4つの写真スタジオ(全コースの学生が予約できます)があり、業界標準のプリントサービスはチェルシーの学生だけでなくUALの全学生と教職員が使えます。

展示に使える場所も複数あります。小さなスタジオからTriangle Spaceのような大きな展示空間までプロジェクトスペースが用意され、学生主導のメイカースペースもあります。屋外にはルートスタイン・ホプキンス・パレードグラウンド(Rootstein Hopkins Parade Ground)という中庭があり、UAL公式の記事はこれを「3方を校舎に囲まれた大きな広場で、年間を通じて壁のないギャラリーとして、またパフォーマンスやイベントの会場として機能している」と説明しています。公式映像では学生が「チェルシーには本当に良い工房があって、降りていって予約して、試せるんです。自分の制作に100パーセント関係している必要はありません」と語っています。専攻の外側の工房を試せる設計は、分野を5つに絞ったカレッジの強みだと言えます。

学部課程(BA)の構成

チェルシーの学部課程は5つです。いずれも3年制で、UCAS(イギリスの大学出願サービス)を通じて出願します。2026年10月2日時点で、各コースページは2027年9月入学の募集内容を掲載していました。

コース名UCASコード年限内容の要点(公式ページより)
BA (Hons) Fine ArtW1043年実験的な思考と、ものごとを実現すること。映像、写真、デジタル技術、プリント、サウンド、パフォーマンス、絵画、彫刻、ドローイング、執筆を横断。パスウェイに分けない設計
BA (Hons) Graphic Design CommunicationW2163年ブランディング、UXとUI、動画、エディトリアルデザイン、アートディレクション。印刷・画面・インタラクティブを横断
BA (Hons) Interior DesignW2523年デザイナー公認協会(CSD)の専門認定コース。家具、プロダクト、公共・民間の大規模インテリア提案まで
BA (Hons) Product and Furniture DesignW2483年つくることをデザイン制作の中心に据える。社会的デザイン、デザイナーメイカー、量産のためのデザインといった方向性
BA (Hons) Textile DesignW2313年プリント、ニット、ステッチ、織り、スマートテキスタイル。責任あるデザインと持続可能性を学びに統合

UCASの大学コードはいずれもU65(UAL共通)です。学部の学修形態について、BA (Hons) Graphic Design Communicationのページは「フルタイム。3学年にわたる3つのステージに分かれ、各ステージは30週の授業週で構成される。週あたり平均40時間を課程に充てることが求められる」と説明しています。

大学院課程(MA)と Graduate Diploma

大学院課程は、修士(MA)が3つ、Graduate Diploma(グラデュエート・ディプロマ)が4つ掲載されています。ただしこれから出願できるのは修士3コースだけです。Graduate Diplomaは4コースとも、新たに出願することができません。

コース名課程の種類年限募集状況(2026年10月3日時点)
MA Curating and Collections修士15か月(45週)2026/27年度入学は締切済み。2027/28年度入学の出願は2026年秋に開始
MA Fine Art修士15か月(45週、夏に休みを挟む)同上
MA Textile Design修士15か月(45週・4ターム)同上
Graduate Diploma Graphic Design学士後ディプロマ1年(30授業週)2026/27年度入学は締切済み。2026/27年度の入学者を最後に休止
Graduate Diploma Interior Design学士後ディプロマ1年(30授業週)2026/27年度入学は締切済み。2026/27年度の入学者を最後に休止
Graduate Diploma Fine Art学士後ディプロマ1年(30授業週)募集停止(2026/27年度・2027年9月入学とも)
Graduate Diploma Textile Design学士後ディプロマ1年(30授業週)募集停止(2026/27年度・2027年9月入学とも)

Graduate Diplomaの状況は、2段階に分かれています。

Fine Art と Textile Designは、大学院コース一覧ページの「Courses suspended 2026/27(2026/27年度 募集停止のコース)」欄に置かれています。さらにそれぞれのコースページの最上部に「Course suspended」という表示が出ており、本文にも「2027年9月入学の学生を募集していません」と記されています。2026/27年度だけでなく、2027年9月入学も対象です。

Graphic Design と Interior Designは一覧では通常のコースとして扱われていますが、コースページに「2026/27年度の入学者を最後に、大学院課程の見直しの一環としてGraduate Diplomaの各コースを休止します」と明記され、その2026/27年度入学の出願もすでに締め切られています(在学生については「このページに記載したとおりの内容を最後まで受けられます」と添えられています)。

つまりこの記事をお読みの時点で、チェルシーのGraduate Diplomaに新たに出願する道はありません。学士号を持っていて分野を変えたい方は、修士課程に直接出願するか、UALの他カレッジの課程を検討することになります。状況は変わりうるので、コースページ最上部のステータス表示と、コース一覧ページの募集停止欄の両方をご確認ください。

修士3コースはいずれも15か月・45週で、イギリスの修士として一般的な1年制より少し長く、2つの学年度にまたがります。公式ページはどのコースについても「教育時間と自主学習を含め、週あたり平均40時間を課程に充てることが求められる」と記しています。MA Fine Artは「制作、批評性、そして自身の実践を言葉にする力を高めるように設計されている」、MA Textile Designは「変革的で、複数の分野にまたがり、協働的なデザインのアプローチを促す」ものとされています。

Graduate Diplomaは日本では馴染みの薄い課程で、学士号は持っているがその分野の学士ではない人が、修士に進むための1年間という位置づけです。Graduate Diploma Fine Artのページには「Graduate Diplomaに合格すれば、チェルシーのMA Fine Art、またはキャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツのMA Fine Artの各パスウェイについて、翌年度からの条件付きオファーを保証します」という記載もありました。

出願要件

ここは最も間違いやすい箇所です。公式ページの記載をそのまま表にします。要約した形で覚えると実際の条件と食い違うおそれがありますので、必ず志望コースのページで原文をご確認ください。

学部課程(BA)の出願要件

チェルシーの学部5コースは、2026年10月2日時点でいずれも同一の要件が掲載されていました。

項目公式ページの記載
基準112 UCAS tariff points, which can be made up of one or a combination of the following accepted full Level 3 qualifications(以下の認められるLevel 3資格の1つ、またはその組み合わせによる112 UCASタリフポイント)
Aレベル112 UCAS tariff points from 2 or more A Levels
BTECDistinction, Merit, Merit at BTEC Extended Diploma
UAL Extended DiplomaMerit at UAL Extended Diploma
ファウンデーションDistinction at Foundation Diploma in Art and Design
AccessAccess Diploma or 112 tariff new UCAS points from the Access to HE Diploma
その他のLevel 3資格112 UCAS tariff points from an equivalent full Level 3 qualification
EU・国際資格Or equivalent EU/International qualifications, such as International Baccalaureate Diploma at 25 points minimum(国際バカロレア・ディプロマは最低25点など)
GCSEAnd three GCSE passes at grade 4 or above (grade A*-C)
英語(学部5コース共通)IELTS level 6.0 or above, with at least 5.5 in reading, writing, listening and speaking
パーソナルステートメントUCASのサイトから提出。The total character limit is 4,000 characters or less(全体で4,000字以内)。UCASが示す3つの設問に答える形式
ポートフォリオbe maximum 30 pages(最大30ページ)
面接You may be invited to an interview following our review of your application. All interviews are held online and last 15 to 20 minutes(出願の審査後に招かれることがある。すべてオンラインで15分から20分)
出願締切13 January 2027, 6pm (GMT)(2027年9月入学分)

各コースページにはAPEL(事前の経験的学習の認定)の説明もあり、「これらのコース出願要件を満たさない志願者も、例外的な場合には選考の対象となることがあります」として、関連する学歴や職歴、パーソナルステートメントの質、強い推薦状が例に挙げられています。ただし「オファーを保証することはできません」とも明記されています。この仕組みは大学院・Graduate Diplomaの各ページにも共通して置かれています。

大学院課程(MA)の出願要件

大学院はコースによって求めるものが違います。とくにMA Curating and Collectionsは、ポートフォリオの提出がなく、代わりにキュレーション企画の提案書を求めます。

コース学歴要件(Entry requirements の記載)提出物英語
MA Fine ArtBA (Hons) degree or equivalent academic qualifications/Alternative qualifications and experience will also be taken into considerationArtist’s statement(アーティストステートメント)/Portfolio of workIELTS level 6.5 or above, with at least 5.5 in reading, writing, listening and speaking
MA Textile DesignBA (Hons) degree or equivalent academic qualifications/Alternative qualifications and experience will also be taken into considerationPersonal statement/Portfolio of work/Video task(動画課題。要件欄ではなく How to apply に記載)IELTS level 6.5 or above, with at least 5.5 in reading, writing, listening and speaking
MA Curating and CollectionsBA (Hons) degree in a related subject or equivalent academic qualifications(関連分野の学士)Statement about your interests(関心についてのステートメント)/Curatorial project proposal(キュレーション企画の提案)※ポートフォリオの提出はなしIELTS level 6.5 or above, with at least 5.5 in reading, writing, listening and speaking

Graduate Diploma の出願要件

4コースとも新規の出願はできませんが、今後の再開に備えて要件を残しておきます。

コース学歴要件(Entry requirements の記載)提出物英語
Graduate Diploma Graphic DesignBA (Bachelor of Arts) (Hons) degree or equivalent academic qualifications/Evidence of ability in art or design/Alternative qualifications and experience will also be taken into considerationPersonal statement/Portfolio of work/Video task(動画課題)IELTS level 6.0 or above, with at least 5.5 in reading, writing, listening and speaking
Graduate Diploma Interior DesignBA (Hons) degree or equivalent academic qualifications/Evidence of ability in art or design/Alternative qualifications and experience will also be taken into considerationPersonal statement/Portfolio of workIELTS level 6.0 or above, with at least 5.5 in reading, writing, listening and speaking
Graduate Diploma Fine Art(募集停止中)BA (Hons) degree or equivalent academic qualifications/Evidence of ability in art or design/Alternative qualifications and experience will also be taken into considerationPersonal statement/Portfolio of workIELTS level 6.0 or above, with at least 5.5 in reading, writing, listening and speaking
Graduate Diploma Textile Design(募集停止中)BA (Hons) degree or equivalent academic qualifications/Evidence of ability in art or design/Alternative qualifications and experience will also be taken into considerationPersonal statement/Portfolio of work/Video task(動画課題。要件欄ではなく How to apply に記載)IELTS level 6.0 or above, with at least 5.5 in reading, writing, listening and speaking

提出物の分量と選考の流れ(全12課程)

ここがいちばん見落とされやすい箇所です。UALは出願要件を「Entry requirements」と「How to apply」の2か所に分けて書いており、動画課題・ポートフォリオの上限・面接は、要件欄ではなく How to apply 側にだけ書かれています。

課程ステートメントポートフォリオ動画課題面接
学部5コース(BA)UCAS経由・4,000字以内最大30ページなしオンライン15〜20分
MA Fine Art最大500語+CVページ数の上限の記載なしなしオンライン15〜20分
MA Textile Design最大500語+CV最大30ページ(動画課題を含む)2〜3分オンライン15〜20分
MA Curating and Collections最大500語+CV提出なし。代わりにキュレーション企画の提案書(単一のPDF・画像を含めて最大5ページ)なしオンライン15〜20分
Graduate Diploma Graphic Design最大500語+CV最大30ページ(動画課題を含む)ありオンライン15〜20分
Graduate Diploma Interior Design最大500語+CV最大30ページなしオンライン15〜20分
Graduate Diploma Fine Art最大500語+CVページ数の上限の記載なしなしオンライン15〜20分
Graduate Diploma Textile Design最大500語+CV最大30ページ2〜3分オンライン15〜20分

動画課題について、Graduate Diploma Textile Designのページは「2分から3分の動画を提出してください。撮影の際はカメラに向かい、英語で話してください」と指示し、設問も「ポートフォリオの中から、自分と、自分が理解する持続可能なテキスタイルデザインに挑戦を突きつけたプロジェクトを1件挙げ、その経験がどう出願につながったかを説明してください」と具体的です。MA Textile Designも同じく2分から3分の動画を求めています。撮影と編集の時間が要るので、締切直前に気づくと間に合いません。

MA Curating and Collectionsのキュレーション企画の提案書については、公式ページが「展覧会のアイデアを示すもの」「コース上で実現するための提案ではなく、現在の関心と思考を示すプロジェクト」と説明し、「画像を含めて最大5ページの単一PDFファイル」という形式を指定しています。

英語のスコアを整理すると、学部5コースはIELTS 6.0(各技能5.5以上)、修士3コースはIELTS 6.5(各技能5.5以上)、Graduate Diploma 4コースはIELTS 6.0(各技能5.5以上)です。つまりチェルシーの中では、修士だけが総合スコアで0.5高く設定されており、各技能の最低点はどの課程も5.5で共通です。IELTS以外の試験も認められていますので、UALの英語要件ページで対応表をご確認ください。

学費

学費はどの年度のどの課程を見ているかで金額が変わります。2026年10月2日時点で、チェルシーの学部コースページはすでに2027年9月入学の金額に切り替わっており、大学院コースページは2026/27年度入学の金額を掲載していました。表は通貨をポンド(£)で、公式表記のまま載せます。

課程Home(国内)International(国際)公式ページの年度表記
学部5コース(BA Fine Art/Graphic Design Communication/Interior Design/Product and Furniture Design/Textile Design)£10,050/年£31,510/年2027年9月入学の金額。2028年9月入学分は変更の可能性あり
MA Fine Art£15,790£34,8852026/27年度入学(45週・higher rate)
MA Curating and Collections£14,420£30,8902026/27年度入学(45週・standard rate)
MA Textile Design£14,420£30,8902026/27年度入学(45週・standard rate)
Graduate Diploma(4コース共通)£14,420£30,8902026/27年度入学

ここで気をつけていただきたい点が3つあります。

1つめは、大学院の金額は年額ではなくコース全体の費用だということです。UALの大学院学費ページは「表示されている学費はコース全体の費用をまかなうもので、1学年あたりの金額ではありません」と明記しています。一方、学部の£10,050/£31,510は年額です。

2つめは、修士のコースによって適用される料率が違うことです。UALの大学院学費表では45週の修士に higher rate(Home £15,790/International £34,885)と standard rate(Home £14,420/International £30,890)があり、チェルシーではMA Fine Artがhigher rate、他の2コースがstandard rateにあたります。同じ15か月の修士でも、国際学生で£3,995の差です。

3つめは、学部の金額が年度によって動いていることです。UALの学部学費ページでは、2026/27年度に始める学生がHome £9,790/International £30,890。チェルシーのコースページの£10,050/£31,510は、その1年後の2027年9月入学の金額です。さらに国際学生には「この学費は2026/27学年度についてのものであり、在学中の後年度には最大5パーセントまで上がる可能性があります」という注記があります。初年度の金額が3年間そのまま続くとは限りません。

学費以外にかかるお金と奨学金

項目金額公式ページの年度表記
学費デポジット(国際学生)£4,000(学費に充当)年度の記載なし
生活費の目安(年間)£19,7502025/26年度
材料費(BA Textile Design の例)スケッチブック1冊£5から£20/テキスタイルの道具と材料£50から£500/ドローイングと絵画の道具と材料£50から£5002027年9月入学のコースページ
材料費(BA Graphic Design Communication の例)Adobe Creative Cloud 年間£42/外付けハードディスク1台£50から£150同上
交通費の割引Student Oyster photocard でトラベルカードとバス・トラムのパスが30パーセント割引年度の記載なし

まず学費デポジットです。UALの国際学生向けページは「国際学生の志願者は、コースの席を確保するために£4,000の学費デポジットを支払う必要があります」と記しています。学費に充当され、残りの初年度学費は在籍登録の前に支払います。

次に生活費です。UALの生活費ページには「UALの学生部長室は、2025/26年度の生活費として年間に必要な平均額を£19,750と見積もっています」と記載されています。これは学費とは別にかかるお金で、大学に払う額ではありません。住居費や食費など、生活のために必要な額の目安です。

気をつけていただきたいのは、学費と生活費で公式が示している年度が違うことです。学部の学費£31,510は2027年9月入学、生活費の目安£19,750は2025/26年度の金額です。年度の違う数字を足した合計額は公式には存在しませんので、本記事では合算した数字を示しません。資金計画を立てるときは、出願する年度の学費と、その時点の生活費の目安を、それぞれ最新のページで確認して足し合わせてください。

材料費はコースごとに目安が示されています(上の表を参照)。制作を伴う課程では、学費以外の出費が年を追うごとに積み上がります。

奨学金は、チェルシー独自ではなくUAL全体の制度が適用されます。国際学生向けの代表格がUAL International Postgraduate £10,000 Scholarshipsで、公式ページによればUALのカレッジまたはインスティテュートで修士課程を学ぶ学生に£10,000の学費免除を提供し、2026/27学年度には最大288件が用意されています(UAL Onlineのコースは対象外)。応募にはオファーの保持、Overseas区分の学費ステータス、学部での上位第二級優等(upper second-class honours)以上の成績または見込みが必要です。件数に上限がありますので、奨学金を前提にした資金計画は立てないほうが安全です。

出願の進め方

ミルバンク通りから見たチェルシー・カレッジ・オブ・アーツの校舎と赤い電話ボックス
ミルバンク通りから見たチェルシー・カレッジ・オブ・アーツの校舎/撮影:Robin Sones(Geograph Britain and Ireland)/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

学部課程はUCASを通じた出願です。2027年9月入学分の締切は2027年1月13日18時(グリニッジ標準時)で、チェルシーの学部5コースすべてに共通でした。UCASコードは前掲の表のとおりコースごとに異なり、大学コードはいずれもU65です。

学部も、書類を出して終わりではありません。流れはUCASでの出願(パーソナルステートメントは全体で4,000字以内)、PebblePadでのデジタルポートフォリオ提出(最大30ページ)、オンライン面接(15分から20分)の3段階です。面接について公式ページは「出願の審査後に面接へ招かれることがあります。面接はすべてオンラインで行われ、15分から20分です」と記しており、学部5コースすべてで同じ記載でした。必ず実施されるとは書かれていませんが、招かれる前提で準備しておくほうが安全です。

大学院課程とGraduate Diplomaは、志望コースのページから直接UALに出願します。修士3コースのページには「2026/27年度入学の出願は現在締め切られています。2027/28年度入学の出願は2026年秋に開始します」と表示されていました。

大学院の手順も3段階です。ステップ1が初回出願で、パーソナルステートメント(最大500語)とCVを提出します。ステップ2がデジタルポートフォリオで、提出先はUALが使うPebblePadというオンラインのツールです。ステップ3が面接で、オンラインで15分から20分です。ただしMA Curating and Collectionsだけはポートフォリオの提出がなく、ステップ2が面接になります。

ポートフォリオについて公式ページは「自分の創造的な強みを反映する最近の作品で構成すること」「あらゆるメディアの完成作品を含めること。時間に基づくメディアは閲覧できるURLを示すこと」「作品を理解する助けになる視覚的な参照や制作過程を含めること」とし、避けるべきものとして「自分のものではない作品、スケッチブックのページ、詰め込みすぎたページレイアウト、マインドマップ図」を挙げています。動画課題のあるコースでは1ページ目に動画を置き、その後にポートフォリオを続けるよう指示されています。完成作だけを並べるのではなく、過程と参照を見せることが明示的に求められている点が、チェルシーのポートフォリオ指示に共通する特徴です。

キャンパスの所在地とアクセス

ロンドン地下鉄ピムリコ駅の地上出入口
ロンドン地下鉄ピムリコ駅。チェルシーの校舎までは徒歩5分です/撮影:Oscar Taylor(Geograph Britain and Ireland)/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

チェルシー・カレッジ・オブ・アーツは単一キャンパスです。UAL公式の「Find us」「Contact us」、カレッジのトップページ、Chelsea Spaceのページのいずれも住所を16 John Islip Street, London, SW1P 4JUと記載しており、ほかの校舎は示されていません。2005年の移転時に「すべてのコースをひとつの敷地に集めた」とUAL公式の記事が述べているとおりです。アクセシビリティ案内のAccessAbleのガイドも「Chelsea College of Arts Millbank」の1件です。

手段公式「Find us」ページの案内
地下鉄ピムリコ(Pimlico)駅から徒歩5分、ヴォクソール(Vauxhall)駅から徒歩10分。いずれもヴィクトリア線
鉄道最寄りはヴォクソール駅とヴィクトリア駅
バス2番、C10、36番、87番、88番、185番が近くに停車
自転車アタベリー・ストリート側の正面入口に駐輪ラックあり
車敷地内に駐車場なし。アタベリー・ストリートとジョン・イズリップ・ストリート沿いにメーター式の駐車枠が若干。混雑課金区域(Congestion Charge Zone)内
タクシージョン・イズリップ・ストリート側のゲートハウス入口での降車が推奨
ヒースロー空港からピカデリー線で東行き、グリーンパークでヴィクトリア線の南行きに乗り換えてピムリコへ。そこから徒歩5分
ガトウィック空港からロンドン・ヴィクトリア駅まで鉄道。そこから徒歩15分
ジョン・イズリップ・ストリートの街並み
ジョン・イズリップ・ストリート。カレッジの正式住所がある通りです/撮影:Stephen Craven(Geograph Britain and Ireland)/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

UAL公式の周辺案内は、チェルシーで学ぶことは「ロンドンでもっとも接続のよい場所のひとつに拠点を置くこと」だとして、ウエストエンド、サウスバンク、ブリクストン、ペッカムが近いこと、ウェストミンスター橋まで徒歩20分であることを挙げています。

校舎のまわりの街

ミルバンク・エステートの赤レンガの集合住宅
ミルバンク・エステート。ミルバンク刑務所の煉瓦を使って1897年から1902年にかけて建てられた公営住宅です/撮影:Anthony O’Neil(Geograph Britain and Ireland)/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

カレッジの裏手には、前述のミルバンク・エステートが広がっています。1897年から1902年にかけて建てられた17棟の建物には、それぞれ英国の画家の名が付けられています。監獄の煉瓦を解体して積み直した住宅に、画家の名が付いているという土地の重なりは、この場所でアートを学ぶことの背景として覚えておく価値があります。

UAL公式の周辺案内は、学生向けに具体的な店や場所も挙げています。「地域運営でベジタリアンとヴィーガンのメニュー」のBonnington Café、「川の眺めとおいしいコーヒー」のCafé Society、「生鮮と屋台の食べ物」のTachbrook Street Market。緑のある場所としては「隠れた、地域運営のオアシス」Bonnington Square、「入館料に学生割引がある静かな場所」Garden Museum、「キャンパスのすぐ近くで、夏の昼食に最適」なMillbank Gardensなどです。

同じページの、近隣のギャラリーを紹介する欄にはテート・ブリテンが挙がっており、「節約のヒント:UALのテート・ブリテン・カードを受け取れば、特別展に無料で入れます」と記されています。常設展はもともと無料ですが、有料の企画展まで無料になるのは隣で学ぶ学生の特典です。国会議事堂やテムズ川に近い一帯でありながら、学生が日常的に使える店と割引の案内が公式に出ているのは、この地区が観光地であると同時に生活の場でもあることの表れです。

卒業生

UAL公式の「About us」ページは、チェルシーの卒業生として次の名前を挙げています。このうち数名については、テート(Tate)やデザイン・ミュージアムといった英国の公的な美術館・博物館の資料で、具体的な実績を確認できました。

名前確認できる情報
森万里子(Mariko Mori)1992年にチェルシーのBA (Hons) Fine Artを修了。UAL公式記事は「過去50年で日本から登場したもっとも重要な現代アーティストのひとりとして高く評価されている」と紹介。2015年にUALから名誉博士号を授与
クリス・オフィリ(Chris Ofili)テートの資料によれば、1968年マンチェスター生まれ。1991年にChelsea School of Art and Designを、1993年に王立美術大学(RCA)を修了。1998年にターナー賞を受賞し、2003年の第50回ヴェネツィア・ビエンナーレで英国代表を務めた
スティーヴ・マックィーン(Steve McQueen)テートの資料によれば1999年にターナー賞を受賞。映像作家・美術家として活動し、監督した4本の長編映画にはアカデミー賞を受賞した『それでも夜は明ける(12 Years a Slave)』が含まれる
マーク・ウォリンジャー(Mark Wallinger)テートの資料によれば2007年にターナー賞を受賞
マーガレット・カルヴァート(Margaret Calvert)デザイン・ミュージアムの資料によれば1936年南アフリカ生まれ。十代で英国に移り、チェルシーのNational Diploma in Designでイラストレーションを専攻。当時チェルシーで非常勤講師をしていたジョック・キニアの学生で、1957年から1967年にかけてキニアとともに英国の道路・高速道路の標識システムを設計。1964年にパートナーとなり事務所はKinneir Calvert Associatesに改称
ヘレン・チャドウィック(Helen Chadwick)UAL公式「About us」の卒業生一覧に記載
ローズ・フィン=ケルシー(Rose Finn-Kelcey)同上
ハルーン・ミルザ(Haroon Mirza)同上。2015年の「Chelsea 10」卒業生展にも出品
ラナ・ベグム(Rana Begum)同上
トーマス・J・プライス(Thomas J Price)同上
ジェームズ・リチャーズ(James Richards)同上。公式ページにBA Fine Art出身として作品《Rosebud》(2013年)の図版が掲載

注目していただきたいのは、ターナー賞の受賞者が3名いることです。テートが主催する、英国の現代美術でもっとも注目される賞です。1998年のクリス・オフィリ、1999年のスティーヴ・マックィーン、2007年のマーク・ウォリンジャーと、2年続けて、そして10年後にもう1人、チェルシーで学んだ人が受けています。

もうひとり、日本の読者にも身近な仕事をしたのがマーガレット・カルヴァートです。デザイン・ミュージアムの資料は、カルヴァートとジョック・キニアが1957年から1967年にかけて手がけた英国の道路標識システムを「英国でこれまでに実行されたもっとも野心的で効果的な情報デザインの仕事のひとつ」「世界中の近代的な道路標識の手本になった」と評しています。標識の書体Transportは、大文字だけより大文字と小文字を混ぜたほうが読みやすいという判断から2人が開発したものです。カルヴァートが描いた絵記号には自身の生活が反映されており、家畜に注意を促す標識の牛は親類の農場にいた「ペイシェンス」という牛、通学路の標識は彼女自身の子どもの頃の写真をもとにした女の子が元になっています。チェルシーでイラストレーションを学んだ学生が、国じゅうの道路で毎日見られる絵を描いたことになります。

日本の読者にとって最も身近なのは森万里子でしょう。UAL公式のインタビュー記事によれば、森はもともとファッションに関心があり東京の服飾系の学校に進みました。渡英後に受けたファウンデーション課程がファッションではなく純粋なファインアートの課程だったことが転機になり、「幸運な偶然でした。それが私の考えを変え、絵画や彫刻を探求することができ、そこに完全な自由を見つけたのです」と語っています。

同じ記事で森は、在学時のチェルシーがキングス・ロードにあったことにも触れています。1年次の指導教員のひとりが彫刻家のロジャー・アックリングで、「ロジャーはいつも励ましてくれました。とても褒めてくれる人で、若いアーティストだった私に大きな自信を与えてくれました」と振り返っています。1年次のあとは時間に基づくメディア(time-based media)を学び、著名なゲスト講師が多かったことがチェルシーの魅力だったと述べています。

この一覧を見て気づくのは、チェルシーの卒業生がファインアートの領域に厚いことと、そこにマーガレット・カルヴァートのようなグラフィックデザインの仕事をした人物が混ざっていることです。カレッジが5つの分野を並べて置いていることが、人の広がり方にも表れていると見ることができます。

まとめ

パレードグラウンド越しに見たチェルシー・カレッジ・オブ・アーツの主要校舎
パレードグラウンド越しに見たチェルシー・カレッジ・オブ・アーツの校舎/撮影:David Hawgood(Geograph Britain and Ireland)/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

いかがだったでしょうか。チェルシー・カレッジ・オブ・アーツについて見てきました。要点は次の7つです。

  • UALを構成する6カレッジのひとつで、学生数はおよそ1,800人。ファインアート、テキスタイル、インテリア、グラフィックデザイン・コミュニケーション、プロダクト&ファニチャーの5分野にキュレーティングを加えた構成で、ファッションデザインの学位課程はありません
  • 校舎はピムリコの単一キャンパス(16 John Islip Street, London, SW1P 4JU)で、テート・ブリテンの隣。グレードII指定の旧王立陸軍医学校の建物に2005年に移転し、将校食堂だった大広間が現在の学びの場になっています
  • 学内には公開ギャラリーChelsea Spaceがあり、MA Curating and Collectionsはここでの実践が課程に組み込まれています
  • 学部5コースは3年制、出願はUCAS経由で、2027年9月入学の締切は2027年1月13日18時(GMT)。IELTS 6.0(各技能5.5以上)、ポートフォリオ最大30ページ、そのうえでオンライン面接(15分から20分)があります
  • Graduate Diplomaは4コースとも、新たに出願することができません。 Fine ArtとTextile Designは2026/27年度・2027年9月入学とも募集停止。Graphic DesignとInterior Designは2026/27年度の入学者を最後に休止する旨が公式に記され、その2026/27年度の出願も締切済みです。これから出願できる大学院課程は修士3コースです
  • 提出物は課程ごとに違います。MA Textile Design と Graduate Diploma Textile Design には2分から3分の動画課題があり、MA Curating and Collections はポートフォリオの提出がなく、代わりに最大5ページのキュレーション企画提案書を出します
  • 学費は、学部が2027年9月入学でHome £10,050/International £31,510(年額)、修士とGraduate Diplomaは2026/27年度入学でHome £14,420から£15,790/International £30,890から£34,885(コース全体の費用)です

学費、出願日程、コースの開講状況は年度ごとに変わります。とくに募集停止は、コースページ最上部のステータス表示とコース一覧ページの募集停止欄の2か所に分かれて出ますので、必ず両方をご確認ください。

Euphoric " " の視点

ロンドン芸術大学と聞いてファッションを思い浮かべる方は多いと思います。けれどもチェルシーに、ファッションデザインの学位課程はありません。公式が扱う分野に挙げるのは、ファインアート、デザイン、キュレーティングです。

このキュレーティングという一語に、この学校の立地が効いています。校舎はテート・ブリテンのすぐ隣にあり、学内にはChelsea Spaceという展示の場があります。見る場所と、見せる場所が、どちらも歩いて行ける範囲にあるということです。

つくる訓練と、人の前に置く訓練は別の技術です。後者は、置き方を決める人がいて初めて成立します。公式が扱う分野にキュレーティングを並べているのは、そこを引き受けているということだと考えられます。

進学先を選ぶとき、何がつくれるようになるかは、先に気になるところだと思います。つくったものをどう人の前に出すのかまで学校が見てくれるか、そこも見る価値があります。

ポートフォリオの作り方に不安がある方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。

もっと知るには

本記事の情報は、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツおよびロンドン芸術大学の公式サイト(arts.ac.uk)をもとに確認しています。学費・出願日程・コースの開講状況は年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。

内容公式ページ
チェルシー公式トップページChelsea College of Arts(英語)
カレッジの紹介Chelsea College of Arts「About us」(英語)
学部課程コース一覧Chelsea College of Arts「Undergraduate courses」(英語)
大学院課程コース一覧(募集停止コースの確認もこちら)Chelsea College of Arts「Postgraduate courses」(英語)
学内ギャラリー Chelsea SpaceChelsea College of Arts「Chelsea Space」(英語)
所在地とアクセスChelsea College of Arts「Find us」(英語)
設備・工房Chelsea College of Arts「Facilities」(英語)
校舎の文化財登録(グレードII)Historic England「Millbank Barracks South West Range, Royal Army Medical College」(英語)

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