皆さんはアール・デコと聞いて思いつく建物やデザインはありますか?
アール・デコとは1910年から1930年の間で発展した芸術の様式を表します。それ以前に主流だった植物などの有機的な曲線美をデザインに取り込むアール・ヌーヴォーとは対極的に、アール・デコは幾何学的なデザインが特徴です。
計算しつくされた直線、円弧と規則的な模様で装飾されたアール・デコ建築は合理的ながらもインパクトのある印象を与えます。
この記事では、世界恐慌まっただ中にニューヨークのマンハッタンに建てられた建築家達の気迫あふれるアール・デコ建築を紹介していきます!
目次
クライスラー・ビルディング
竣工 | 1930年 |
建築家 | ウィリアム・ヴァン・アレン |
アメリカ合衆国国定歴史建造物に認定されているクライスラー・ビルディングはマンハッタンのランドマークであり、アール・デコ建築の代表作とも言われる建物です。その名の通り、米自動車メーカーのクライスラー社が所有していた建物で、ビルのデザインの要所には自動車メーカーならではのデザインが施されています。現在は、オフィスビルとして使われておりロビーフロア以外の建物の内部を見物することは出来ません。
建築家はブルックリン出身のウィリアム・ヴァン・アレン。当時マンハッタンでは世界一の摩天楼を建てようと様々な建築家が競っていました。クライスラー・ビルディングはわずか11ヶ月の間ではありますが世界一の高さを誇るビルとなり、その期間アレンは建築家としてその称号を手に入れました。
上層部分のアーチのなかに規則的にちりばめられたウロコ模様の三角形の窓やエントランス部分の矢印模様はアール・デコの古典的なモチーフです。
天空に向かって美しくそびえるクライスラー・ビルディングはマンハッタンの街の女王のように感じます!
ロックフェラー・センター
竣工 | 1932年-1940年 |
建築家 | レイモンド・フッド |
アメリカの名門ロックフェラー家のジョン・D・ロックフェラー2世によって建設されたロックフェラー・センターはアール・デコの傑作です。オフェス、販売店、娯楽施設や飲食店などを含む複合施設であるロックフェラー・センターの中央にそびえるスカイクレーパー(30 ロックフェラー・プラザ)以外にも敷地内の小型のビルはアール・デコ様式に統一されています。
建築家はレイモンド・フッド。当時最も人気のあった建築家の1人で、同じくマンハッタンに位置するアメリカン・ラジエター・ビルディングもフッドによって設計され、アール・デコ建築の代表作として有名です。
冬にはスケートリンクやクリスマスツリーが登場することで人気の高いロックフェラー・センターですが、1年を通して様々なアートの展示や季節ごとに変わるガーデニングを楽しむことが出来ます。
建物の外観だけでなく完璧なシンメトリーに設計された屋上庭園や一ミリの狂いもない見事なアーチ型をしたラジオ・シティ・ミュージック・ホールの内部のデザインもアール・デコを象徴しています。
「街の中の街」と表されるロックフェラー・センターは、まさにアール・デコで統一されたマンハッタンに浮かび上がるもう一つの街のようです!
エンパイア・ステート・ビル
竣工 | 1931年 |
建築家 | シュリーヴ、ラム、ハーモン |
ニューヨークといえばエンパイア・ステート・ビルを思い描くように、言わずと知れたマンハッタンの景色の主役です。それもそのはず、地上100階を越すエンパイア・ステート・ビルは完成後から42年間もの間その高さで世界一に君臨し続けていました。
エンパイア・ステート・ビルの頂上部分のセットバック(階段状にした壁面のつくり)と尖塔はクライスラー・ビルディングとよく似ていますが、比べてみるとこちらは派手な装飾は見当たらず実にシンプルなアール・デコの装いをしています。
昼には無駄のないスマートな気品を感じるエンパイア・ステート・ビルが夜の明りに照らされることで一気に華やかさが増すのは、アール・デコのマジックですね!
まとめ
いかがだったでしょうか?
テレビや雑誌などで見かけることの多いニューヨーク マンハッタンの夜景のひとつひとつには、実はアール・デコ様式によって創られた建物の魅力が溢れています。
幾何学的デザインと聞くと、はじめに少しご説明したアール・ヌーヴォーの有機的デザインに比べて柔らかなエレガントさに欠けてしまいそうですが、合理的で堂々としたアール・デコの建築には特有の風格を感じます。
みなさんもアール・デコ建築に触れ、建設当時のニューヨークにタイムスリップしたような気分を味わってみてください!