【徹底解説】ベル・エポックとは?20世紀フランスの美しき時代を解説!

【徹底解説】ベル・エポックとは?20世紀フランスの美しき時代を解説!

こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんはベル・エポックという時代をご存知ですか?

ベル・エポック(Belle Époque=美しい時代)とは、19世紀から20世紀のフランス、パリを中心に文化の発展が起こった時代を総称する言葉です。

産業革命を迎えたヨーロッパで、1900年に開催された第五回パリ万国博覧会を大きなきっかけに芸術を中心とした華々しい文化の発展が起こります。

本記事ではベル・エポックの歴史と作品についてご紹介します。

歴史と作品

世紀末のパリ

ベル・エポックを迎える前のパリは、どのような情勢だったのでしょうか。

1871年5月10日に終戦した普仏戦争に敗北し、当時のパリは混乱の真っ只中でした。

フランス第二帝政は崩壊し、戦勝国であるプロイセン王国の和平交渉に蜂起を起こしたパリ・コミューン(革命自治体)の結成が起こります。

このパリ・コミューンには画家ギュスターヴ・クールベも参加しており、帝政フランスの記念碑的モニュメントであるヴァンドーム広場の破壊に加担した罪で逮捕されています。

その後パリ・コミューン自体は約2ヶ月で解体され、動乱の尾を引きながらもフランス第三共和政を据えて世紀末へと歩み出します。

万国博覧会

「彫刻『ラ・パリジェンヌ』を戴くパリ万国博覧会入場門」

1900年4月14日、フランスで19世紀最後を飾る第五回パリ万国博覧会が開かれることになります。

第二回近代オリンピックにあたるパリオリンピックに附随しての開催となった当万博は、新世紀の到来を祝う世紀末の空気感も相まって過去最大の動員を記録します。

パリ万博の入場門に設けられた記念碑的彫刻「ラ・パリジェンヌ」、新たにセーヌ川に架けられた「アレクサンドル3世橋」など20世紀のフランスを象徴するシンボル的な作品が注目されました。

特に注目を浴びたのはアール・ヌーヴォー(新しい芸術)でした。

この言葉はパリ万博で装飾美術を担当した美術商サミュエル・ビングの店の名前に由来するとされ、ビングが取り扱っていた日本の浮世絵や工芸品を世界に広め、アール・ヌーヴォーおよびジャポニズムの発展に大きく寄与しました。

さらに、ビングが扱っていたルネ・ラリックティファニーなどの同時代に活躍していたアーティストの工芸品も世界の来客と市民の目に留まり、同じくアール・ヌーヴォーの工芸デザインの見本として知られるようになります。

また企画展『フランス美術100年展』が開催されたグラン・パレでは、パリ万博のテーマである「過去を振り返り20世紀を展望する」に合わせて新古典主義から印象派までの19世紀のフランス芸術を代表する約3000点の作品が展示されました。

過去の芸術と新しい芸術が交差するパリ万博という舞台をきっかけに、フランスの文化が世界的に注目を浴びたのです。

大衆文化の立役者・劇場と、不滅の女神・サラ

ジョルジュ・クレラン作『サラ・ベルナール(1876)』

サラ・ベルナール

万博を終えて、広く知れ渡った芸術はしだいに大衆文化へと下っていきます。

大衆文化が発展する背景に欠かせないのが劇場の存在でした。

文化人の交流の場として親しまれていたコーヒーハウスに続き、劇場(特にキャバレーや娼館)が文化の発展に大きく寄与します。

劇場では衣装、音楽、舞台美術など様々な芸術のかたちが発展し、市民の間に広まる場所として文化人の憩いの場となりました。

アルフォンス・ミュシャアンリ・ド・ロートレックエドガー・ドガなどの画家はその様子を絵に描き、現代を生きる私たちに当時の様子と芸術文化を伝えています。

特に、これら劇場芸術の中心にいたのは、演劇の花形女優でした。

数多くのスターが生まれた時代でしたが、サラ・ベルナールという女性はたくさんの観客とアーティストの関心を集め、20世紀フランスの劇場を代表するシンボル的存在でした。

エドモン・ロスタン(フランスの劇作家)は彼女を「言葉と仕草の女神」と呼び、半ば神格化され不滅の女神とまで評され、新しい劇に出る時は無数の貼り紙が貼られ、ジョルジュ・クレランの描いたサラの肖像画はサロンで上位を勝ち取るなど、華々しい人気を誇りました。

広告をポスター芸術に変えた3人の画家

ベル・エポックの中で、特に特徴的な発展を遂げたジャンルのひとつがポスター芸術でしょう。

劇場とそれにまつわる芸術が大衆文化を根付かせる大きなきっかけとなった時代に、劇の演目と出演女優を直感的に伝えることができる広告は強い力を持っていました。

中でもイラスト(およびイラスト的なモダン絵画)を用いたポスター芸術は、ベル・エポックの時代に花開いた一大ジャンルと言えます。

現代でも名の知られる劇場であるムーラン・ルージュをはじめ、パリ中の劇場では日夜、公演内容が書かれたポスターが所狭しと貼り出されていました。

ある広告芸術の専門家は、ポスター芸術の威力についてこのように述べています。

商業とは現代思想の神である。

そして広告は、女性であろうともその預言者なのだ。

広告は9人のミューズに指図する、

彼女たちはそれぞれ、名声というトランペットよりも鳴り響く無数の声を持っているのだ。

ポスター芸術の発展には、1900年に差し掛かり発見されたリトグラフ(油脂を多く含む画材で描いた図を塗料で浮かび上がらせる版画の手法)が大きく関わっています。

リトグラフによって絵図の量産が可能になり、多くの画家が作品に取り入れたのと同時にすぐに広告に利用されます。

ベル・エポックでは、一点ものの作品を個人に買い取ってもらったりサロンに出展するために描かれていた絵画と、図版の量産が可能になるリトグラフの交差点が生まれていたのです。

この交差点を生き、ポスター芸術という新たな芸術表現を生み出した代表的な画家が3人います。

アルフォンス・ミュシャ作『ジスモンダ(1894)』

1人目はアルフォンス・ミュシャです。

ミュシャはチェコ出身の画家で、アール・ヌーヴォーを代表する画家である彼は、現代的な曲線と寓意を用いたイラストチックな作品の数々は、今でも広く知られ根強い人気を誇るアーティストです。

実は彼の出世作である『ジスモンダ』は先ほど紹介した女優サラ・ベルナールの公演のために描かれたポスターでした。

急きょ劇の再演が決まったサラのために飛び込みで依頼された仕事をミュシャが担当することになり、ポスターの出来を気に入ったサラがミュシャと独占契約を結んだことでポスター画家としてのキャリアを歩み出したというドラマの隠された作品です。

アンリ・ド・ロートレック作『ディヴァン・ジャポネ(1892)』

Le Divan Japonais, 1892 - 1893 - Henri de Toulouse-Lautrec

2人目はアンリ・ド・ロートレックです。

ロートレックはフランスの画家で、劇女優や踊り子、娼婦、大衆文化などを多く書き残しました。

幼少期に足を骨折して成長不良になり、身体障害者として差別を受けながらも大衆文化に生きる希望を見出し、ムーラン・ルージュをはじめとする劇場のポスターやタイポグラフィを精力的に描き「偉大なる芸術家」と評されるも36歳の若さでこの世を去ってしまいます。

リトグラフも制作に積極的に取り入れて劇場のポスターを多く制作し、パリの大衆文化を芸術という形で支えた立役者と言えるでしょう。

ジュール・シェレ作『マリアーニ・ワイン(1894)』

マリアーニ・ワイン(Vin Mariani,1894)

3人目はジュール・シェレです。

幼い頃からリトグラフの教育を受け、パリ万国博覧会で金メダルを獲得したり自身の工房を構えるなどポスター芸術の父と言われるほど華々しい活躍をします。

生き生きとした女性を現代でいうアメコミのようなタイポグラフィと共に描いた陽気なポスターはシェレットという独特なスタイルで人気を博しましたが、失明によって筆を折ってしまいます。

この三人は、同時代にリトグラフを中心としたポスター芸術を手がけ、まさに広告のために用いられたイラストレーションを芸術へと昇華したキーパーソンと言えるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか?

ベル・エポックの成り立ちと作品を、パリ万国博覧会、劇場、ポスター芸術の三つの観点からご紹介しました。

ベル・エポックには他にも劇や衣装、音楽など記事だけでは魅力をお届けしにくいジャンルがたくさんあります。

興味のある方はぜひ書籍や展覧会などにも足を伸ばして、20世紀を風靡した華々しい芸術の魅力を体験してみてください。


おすすめ書籍

ベル・エポックについての知識を深めたい方はこちらの書籍もおすすめです!

世紀末とベル・エポックの文化

ベル・エポックについて詳しく知りたい方はこの本がおすすめです。教科書的で通読しやすい本ではありませんが、コンパクトなブックレットタイプなので気になった部分から読むと良いかもしれません。


図説 ベル・エポック 1900年のパリ

ベル・エポックの文化的な背景や幅広いジャンルについてたくさんの図版と共に紹介されている書籍です。アーティスト個人の解説は少なめなので、この本で興味のある作家を見つけて深掘りするのも良いかもしれません。




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