皆さんは村上隆というアーティストを知っていますか?
日本人の中でも特に現代アートの世界で成功を収めた一人に数えられ、日本のオタク文化を現代アートの文脈に組み込んだアーティストとされています。パリのベルサイユ宮殿で個展を開いた際は賛否両論となり、大きな話題を呼びました。
村上隆の研究において様々な書籍や評論がありますが、オタクの目線から見た分析や評論は比較的少ないように感じます。そこで今回は、東京大学で過去に開催されていた講義、「東大オタク学講座」に村上隆がゲストとして呼ばれた際の講義議事録を中心に、村上隆の作品の裏側について紹介したいと思います。
村上隆がどのようにしてオタク文化を現代アートの文脈へ組み込もうとしたのか、また、現代アートとは何かをとらえようとする内容となっています。
東大オタク学講座
まず初めに、オタク学講座とは何かについて簡単に説明したいと思います。「オタク学講座」とは岡田斗司夫によって開かれた東京大学の講義です。アニメーションを中心に、オタク文化がどのように形成されたか等の”オタク文化の文脈”に着目した内容となっています。
※岡田斗司夫とは、樋口真嗣や庵野秀明とともにエヴァンゲリオン等で知られる株式会社ガイナックスを立ち上げ、日本のアニメーションの歴史を作り上げました。
そのゲストの一人に村上隆が呼ばれた回がありました。村上隆が、岡田斗司夫や海洋堂の宮脇専務などとの話からアイディアを発展させ、彫刻?作品などを作る話が赤裸々に語られています。
書籍の中では10ページほどの部分(下巻のP1~11)ですので、そこだけ読むのもありだと思います。ちなみに、こちらの本は無料で公開されています。紙で読んでみたい方は中古でかなり安く手に入れることができます。
無料版
DOB君の原点は博士論文にまで遡る
村上隆と代名詞、「DOB君」は博士論文にまで原点をさかのぼることが出来ます。
村上は、博士論文の「意味の無意味の意味」の中で”金田エフェクト”について取り扱いました。(因みに、教授たちは困惑していたそうです・・・)「DOB君」にも金田エフェクトが取り入れられています。
直接的にではないにしろ、金田エフェクトが現代アートに組み込まれたのは、ある種日本がこれまで培ってきたものが世界に通用することを証明しているのではないでしょうか。
金田エフェクトとは
金田エフェクトとは、日本の伝説的アニメーターの金田伊功が手掛けたエフェクトアニメーションです。「炎」「爆発」「光線」などのエフェクトをエネルギーに満ち溢れた動きで表現しました。
※因みにこの夏公開される「新ウルトラマン」の庵野秀明監督も金田伊功のアニメーションに強い影響を受けています(笑)。
出典:Ginzaro, 727, https://zingarokk.com/ ©2010-2020 KAIKAI KIKI CO., LTD.
Miss ko² 本当はMS少女をやりたかった
出典:幻の機体!ガンダムGP04, MEIYO2014の玩具な日記, http://2014meiyo.blog.fc2.com/blog-date-201505-9.html
講義の中で「Miss ko²」ことココちゃんについても言及されています。しかし、ここでは少し情報が足りないので、岡田斗司夫ゼミ第169回から少し内容を引っ張ってきたいと思います。
「Miss ko²」を作るきっかけとなったのは、村上隆が日本のオタク文化を世界に紹介しようとしたことに始まり、そこで岡田斗司夫に話を持ち掛け明貴美加と海洋堂の専務を紹介してもらいました。しかし、明貴美加を説得することが出来ず最終的に、海洋堂のBOMEさんという原型師と組むことになりました。
最終的に完成したのは、MS少女のような非常に個性の強いものではなく、オタクが好きな美少女をときめきメモリアル(恋愛シミュレーションゲーム)的に解釈したフィギュア(彫刻)作品となりました。オタクが創造する美少女を想起させる作品となっています。
この作品が、サザビーズで16億円で落札された「My Lonesome CowBoy」や「HIROPON」に発展していきます。
※ときめきメモリアル的というのは、オタクが好きな美処女から個性を抜いていき、標準的にしたという意味です。ときめきメモリアルについては、こちらから!
Miss ko²
出典:artnet, Past Auction,
http://www.artnet.com/artists/takashi-murakami/coco-miss-ko2-xpzZQ6Z2Qn_3gmiJFzDB8w2
My Lonesome CowBoy
出典:『現代アーティスト・村上隆(Takashi Murakami)』 日本の美の翻訳者, 日本美学研究所, http://bigakukenkyujo.jp/blog-entry-73.html
HIROPON
出典:Takashi Murakami, Hiropon, 1997, astrup fearnley museet, https://www.mynewsdesk.com/no/astrup-fearnley-museet/images/takashi-murakami-hiropon-1997-764684
現代アートの文脈性
この東大の講義では、1/1スケールの綾波レイのフィギュアが登場しました。これも海洋堂と協力して制作されたもので、これを自分(村上隆)アートの横に並べることでパラドックスを提示しようとしました。
村上隆によれば、この綾波レイはアートではなくホビーと位置付けています。アートとホビー(アニメーションなど)にはそれぞれ文脈が存在し、綾波レイのようなボビーをアートの文脈へもっていくときには、アートの文脈を踏まえた形に変換しなくてはならないと述べています。
アートの文脈において、その綾波レイが可愛く作られているかどうかが重要なのではなく、文脈に沿ったものであるかどうかが重要になります。つまり、これをアートにする発想があれば、綾波レイのフィギュアはアート作品となりうるのです。
出典:「綾波レイ」等身大フィギュア[plugsuit version]1体をプレゼント 2010年2月24日(水)より「FIELDSモバイル」にて応募受付開始のお知らせ, PR TIMES, https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000006.000001932.html
まとめ
いかがでしたでしょうか?
短いページ数ではあるものの、村上隆の作品を少しわかってきたのではないでしょうか。
Euphoric””では、今後も数多くのアーティストをご紹介していくだけではなく、弊社デザイナーが使っているAdobeソフトのイラレやフォトショのチュートリアル、3Dプリンターの解説などを記事にしています。
是非、そちらの記事も見てみてくださいね!