【書籍紹介】「デザインとは何か」に迫る デザイン初心者から読める本5選

こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

「デザイン」という言葉を聞いてどんなことを思い浮かべるでしょうか。

専門的で、感覚的な印象を浮かべる方もいると思います。美術や芸術とどう違うの?と思う方もいるかもしれません。

日本では「アノニマスデザイン」という考えが一般的で、デザインを作る人が表立つことをきらう傾向にあります。ですので、デザインの界隈に踏み込んでみないとデザインがどのようなものか説明できる人は少ないかと思います。

本記事ではデザイン初心者から楽しめる「デザインとは何か」がわかる本を5冊ご紹介します。紹介した本を通して、デザインってこんな身近にあったんだ!と思っていただければ幸いです。

デザイン初心者から読める「デザインとは何か」が分かる本5選

誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論

著者 D.A.ノーマン
訳者 岡本明

安村通

伊賀総一郎

野島総一郎

出版社 新曜社
定価 3300円

<使う“ヒト”と作られる“モノ”を見つめて生まれた 人間中心デザインの原典>

アメリカの認知科学者、D.A.ノーマンによる著作。この本は主にプロダクトデザイン(工業生産される製品のこと)について、「ユーザーが使い方を間違えない様にデザインすべき」というユーザー中心設計を提唱し、プロダクトデザインの設計理念に大きく影響を与えました。

たとえば、生態心理学における概念・アフォーダンスをデザイン領域に持ち込み、シグニファイアという新しい概念を提唱したことは本書がもたらした影響の代表でしょう。現代のプロダクトデザインにおいて、このアフォーダンスとシグニファイアを撤廃することはおよそ不可能に思えるほど広く認知され、また活用されています。本書ではそのほか、「ヒューマンエラー?いや、デザインが悪い」、「わざと難しくする」、「複雑さは良いことだ。悪いのは混乱だ」などユニークながら専門性の高いトピックスが多く、デザイナーはもちろん、身の回りのモノがどのように考えられて作られているのか興味のある方は一読をおすすめします。

本文のみで411ページと骨太な本ですが、学者が書いているだけあって得られる知見は深く、デザイン業界では名著として取り上げられることの多い本です。同じく名著として知られている『口紅から機関車まで(1951年 鹿島出版会)』は、フランスのデザイナー、レイモンド・ローウィの著作です。工業デザインの歴史と発展について、更に専門的な知見を得たい方はこちらもおすすめです。

デザインのデザイン

著者 原研哉
出版社 岩波書店
定価 2090円

<デザインをわかりたい人たちへ 現代デザインの決定版>

日本を代表するグラフィックデザイナー・原研哉が、テクノロジーの発展によって日々揺らぐものづくりへの価値観に対して、現代におけるデザインとはどのようにあるべきかを綴った本です。ヨーロッパから出立したデザインの歴史から始め「リ・デザイン展」や「無印良品」など原研哉自らの仕事を振り返り、原研哉自身がデザインに向き合う際の美学や哲学、影響を受けたもの、これからのデザインについての考えなどが肉厚に語られています。

本書には「欲望のエデュケーション」という言葉が登場します。この言葉は、顧客の感受性を豊かに育てることが、より良い製品デザインを生む、という意味で紹介されており、この理念は原研哉の代表的なキャリアである「無印良品」のデザイン設計理念にも導入されています。例をあげれば無印良品で30種類以上も展開されているレトルトカレー。インドやタイなど本場で調査し商品化されたこのシリーズは、人気商品のバターチキンカレーから、「ダール」「チャナマサラ」など聞き馴染みのない種類も多くあります。日本に馴染みのない商品でも品質を保って展開することで、知ってもらい、需要を生み、カレーに関する感性を育む。この流れはまさに「欲望のエデュケーション」の好例と言えるでしょう。タイトルにもある「デザインのデザイン」の言葉通り、現代のデザインを俯瞰で見つつ、日本を代表するデザイナーとして説得力のある言葉で書かれた本書はデザイナーであれば必読の一冊です。

原研哉について更に知りたい方は『白(2008年 中央公論新社)』『日本のデザインーー美意識がつくる未来(2011年 岩波新書)』などもおすすめです。

デザインの輪郭

著者 深澤直人
出版社 TOTO出版
定価 1800円

<Super Normal.と評された第一線のデザイナーが語る、デザインについて>

著者の深澤直人は、無印良品のデザインなどで知られるプロダクトデザイナーです。本書では深澤直人がデザインについて、様々なかたちで語られています。様々なかたちで、というのは本書の構成の特徴的なところで、章ごとにインタビューであったり、詩であったり、いろいろな形式を織り交ぜた構成を取っているのです。ある章では対話の中で答えを探すように、ある章では自問自答するように、ある章では飾らず感性豊かに。この幅広い感性がそのままデザインに対する姿勢であるかのように感じられ、一度読んだだけでは味わいきれない奥深さのある一冊です。

内容とは別に、本書の魅力の一つに装丁があります。表紙に薄く透けたフィルムのような紙が使われているのですが、これは深澤直人が本書の中でデザインについて表現した一節を上手に装丁に落とし込んだものと思われます。

その一節とは

「ジュンサイのぶよぶよのように、その見えない感触を掴みたい。(中略)見えないものを見せることが、デザインの目的ではない。適正な心地を強く自覚することはなくとも、それがわかるために、あるべきものの輪郭を見いだすことができればいい。」

つまりデザインとは、かたちある具体的なものを作ることに留まらず、そのかたちがもたらすかたちのない仕草や感覚を作ることであるという考えです。そしてこの考えがそのまま本書のタイトル「デザインの輪郭」に戻ってくるのです。読み物としても面白く、その装丁までこだわった、まさにデザインされたデザイン書の代表と言えるでしょう。

要点で学ぶ、デザインの法則150

著者 ウィリアム・リドウェル

クリティナ・ホールデン

ジル・バトラー

訳者 郷司陽子
出版社 BNN
定価 2000円

<必読ならぬ必携!デザインの本質がぎゅっと詰まった一冊>

デザイン心理学や工業心理学の専門家ウィリアム・リドウェルらによる本書は、先述した3冊とはやや趣のことなる構成になっています。まず、本書はデザインされたものと、それを使うユーザーの心理の間に何が生じているか、行動心理学や認知学の側面から明らかになった法則や作用について、要点を抑えて実に150、紹介されているものです。実例を示した写真や図が豊富で、文章も簡潔。数学やマーケティングなど幅広いジャンルを網羅していながら、時流を問わず通用する普遍的なものだけが収録されており、装丁に書かれている通りまさに「絶対に古びない、デザインの本質」がぎゅっと詰まった一冊です。

さらに本書の最大の特徴はそのサイズです。127mm✕127mm/320ページというポケットサイズで、常に持ち歩くのもよし、机や引き出しにポンと置いておいて、さっと取り出すもよし。腰を据えて読み込むというよりも、困った時に参照するツールのような本です。

同じくBNNから『要点で学ぶ、リサーチ&デザインの手法100(2018 BNN)』『要点で学ぶ、色と形の法則150(2020 BNN)』『要点で学ぶ、ロゴの法則150(2021 BNN)』などそれぞれマーケティング、グラフィック、ロゴデザインに特化した本も出ていますので、興味のある方はこちらも合わせておすすめです。

なるほどデザイン

著者 筒井美希
出版社 MdNコーポレーション
定価 2200円

<ノンデザイナーにもおすすめ!広く長く使えるテクニックが網羅された一冊>

広報デザインを多く手掛けるアートディレクター・筒井美希の著作である本書。Noritake氏のイラストが載ったシンプルながらインパクトのある表紙で一度は見たことが有るのではないでしょうか。内容は主にエディトリアルデザイン、グラフィックデザインを中心に、「良いビジュアル」とはどのようなものか、シンプルでわかりやすい図と解説で紹介されています。

デザインの機能の一つである「伝える」を主なテーマに、専門的な知識ながらデザイン初心者でも読みやすく平易に書かれていることが特長です。

例えば「Chapter2 デザイナーの七つ道具」では、「1.ダイジ度天秤」で情報の優先度を考えて方向性を定める、「6.虫めがね」を使って細部までこだわって仕上げる…と実践的なデザインの進め方を紹介した後、七つ目に登場するのは「7.愛」。デザインされるものとデザインすることを好きであることが肝要、という現役デザイナーならではのユーモアと含蓄に富んだオチがつきます。

広告やポスターに限らず、プレゼン資料やレジュメなど、ノンデザイナーでも使えるテクニックが紹介されているため、デザインを学びたい人の入門書としておすすめの一冊です。

まとめ

今回はいわゆる「デザイン本」の中から、デザインとはどのようなものか、知見を深めるための知識書にあたるものから、実際にデザインを学び、手がける人のための実践書まで広く紹介しました。

近年では「デザイン思考」「ノンデザイナー」などの言葉がビジネスシーンで飛び交うようになり、デザインは専門的な職能ではなく、社会人が身につけるスキルの一つになりつつあります。

それもそのはず、私たちの身の回りはデザインされたもので溢れています。産業革命以降、デザインはそれまでの芸術・職工から意味を離れ、日常生活に取り込まれていきました。デザインの造り手を目指す人だけでなく、デザインに興味のある人はぜひ紹介した本をご一読してみてはいかがでしょうか。身の回りにあるデザインの数だけ、見る目が変わることをお約束します。