ポジショニングとは?「選ばれる理由」を言語化する基本と3つの誤解

ポジショニングとは?「選ばれる理由」を言語化する基本と3つの誤解

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ポジショニングとは、顧客の頭の中で、自社が「他と違う、どんな位置」を占めるのかを決め、それを一貫して伝えることです。商品の機能の優劣を競うのではなく、「何で選ばれる会社なのか」という場所を定める作業ともいえます。

選ばれる理由が曖昧なままでは、価格や知名度の勝負になりがちです。この記事では、ポジショニングの意味、代表的な理論、実在の事例、作り方の手順、そしてよくある3つの誤解を整理します。

この記事で分かること

  • ポジショニングの意味と、リース&トラウト、ポーターの考え方
  • 広告、アウトドア、アート施設の事例にみる「位置の決め方」
  • 自社のポジショニングを言語化する手順と、3つの誤解

ポジショニングとは何か:基本の考え方

ポジショニングという言葉を広めたのは、アル・リースとジャック・トラウトです。2人は1981年の著書『Positioning: The Battle for Your Mind(ポジショニング戦略)』で、ポジショニングは商品そのものに何かを施す作業ではなく、見込み客の心(マインド)の中に、その商品を位置づける作業だと説明しました。情報があふれる市場では、顧客の頭の中に確保できる場所は限られており、その場所をどう占めるかが勝負になる、という考え方です。

もう1つの重要な理論が、マイケル・ポーターの論文「What Is Strategy?(戦略とは何か)」(ハーバード・ビジネス・レビュー、1996年11–12月号)です。ポーターは、業務の効率を上げること(オペレーショナル・エフェクティブネス)は必要だが、優れたやり方は他社も真似をするため、効率だけでは差別化にならないと論じました。持続的な優位をつくるには、他社と異なる活動を選び、あえて「やらないこと」を決める必要がある、という内容です。

2つの理論は、アプローチこそ違いますが、重なる点があります。それは、「全員に選ばれようとしない」ことが、選ばれる条件になりうるという考え方です。

なぜ大事か:選ばれる理由がないと、価格競争になる

商品やサービスが似通っている市場では、顧客にとって違いが分かりにくくなります。違いが分からなければ、判断の基準は価格か知名度になります。

ポジショニングを定めると得られる3つの効果(判断が速くなる、伝わりやすくなる、社内がそろう)をまとめたブランディングの図
図:ポジショニングで期待できる3つの効果

ポジショニングを定めると、次の3つの効果が期待できます。

  • 判断が速くなる:どんな顧客に、何を、どう伝えるかが決まるため、商品開発や広告の判断がぶれません。
  • 伝わりやすくなる:一言で説明できる位置があると、顧客が他の人に紹介しやすくなります。
  • 社内がそろう:「何をやらないか」が共有されるため、現場の迷いが減ります。

事例で見るポジショニング

エイビス(Avis):「2位」をあえて掲げた

レンタカー会社のエイビスは、「We Try Harder(私たちはもっと努力します)」という広告キャンペーンで知られています。リース&トラウトの本でも取り上げられた事例で、業界で2位であることを率直に認め、それを逆手に取った点が特徴です。トップ企業と同じ土俵で戦うのではなく、「2位だからこそ努力する」という位置を、顧客の頭の中に確保しました。

ここから学べるのは、ポジショニングは「1番になること」ではなく、「ある基準において、他とは違う位置に立つこと」だという点です。

パタゴニア:「環境」という基準で選ばれる

パタゴニアは公式サイトで「We’re in business to save our home planet」と掲げ、価値観の第一に「最高の製品をつくる」を置いています。耐久性、修理しやすさ、機能性を基準とする姿勢です。アウトドア衣料は機能やデザインで競う市場ですが、パタゴニアは「環境への姿勢」と「長く使える製品」という、独自の基準で選ばれる位置を築いています。

アート施設:同じ「企業美術館」でも位置が違う

アートの世界でも、ポジショニングの違いは明確です。ラグジュアリーブランドの2つの財団を比べてみます。

フォンダシオン ルイ・ヴィトン(パリ)は、ブローニュの森の庭園内に建つ、フランク・ゲーリー設計の建築で、2014年10月に一般公開されました。ガラスの帆のような外観は、都市の風景を象徴する建築としての位置づけです。

一方、フォンダツィオーネ・プラダ(ミラノ)は、2015年5月に、レム・コールハース率いるOMAの設計で開館しました。1910年に建てられた蒸留所の建物を改修し、新しい建物と組み合わせた構成で、産業遺産と現代文化の拠点という位置づけです。

どちらも「企業が運営する現代アートの拠点」ですが、顧客や来訪者の頭の中に置かれる場所は異なります。同じカテゴリでも、何を中心に据えるかで、位置は変わることが分かります。

ポジショニングの作り方:5つのステップ

マーケティングでは、セグメンテーション(市場を分ける)、ターゲティング(狙う層を決める)、ポジショニング(位置を決める)の順で考える「STP」という枠組みがよく使われます。ポジショニングはその最後の段階です。

ポジショニングの作り方を、選ばれたい相手の決定から一言で言える形にするまでの5つのステップで示した図
図:ポジショニングの作り方 5ステップ
  1. 誰に選ばれたいのかを決める:全員ではなく、特定の人々に絞ります。
  2. 比較される相手を洗い出す:顧客が、自社の代わりに検討する他社や他の選択肢をすべて挙げます。業界内の競合だけとは限りません。
  3. 顧客が重視する基準を整理する:価格、品質、速さ、体験、信頼など、選ぶときの基準を並べます。
  4. 自社が勝てる基準を選ぶ:自社が本当に優れている、または優れた状態を保てる基準を選びます。
  5. 一言で言える形にする:「〇〇なら、△△」という形で、短く言えるかを確認します。

ポジショニングマップの使い方

ポジショニングマップは、2つの軸で市場を図にして、自社と他社の位置を見える形にする方法です。軸の例は、「価格の高低」と「専門性の高低」、あるいは「伝統的か革新的か」と「大衆的か専門的か」などです。

使うときのコツは、次の3点です。

  • 軸は顧客が実際に重視する基準から選ぶ(社内の都合で選ばない)
  • 空白の位置に需要があるかを確認する(空いているだけで、誰も求めていない場所かもしれない)
  • 軸を変えて複数作り、自社が最も強く見える図に偏らないようにする

よくある3つの誤解

誤解1:ポジショニングは「競合との差」を作ること
差をつくること自体が目的ではありません。顧客が重視する基準で、自社を選ぶ理由が生まれることが目的です。顧客に関係のない差は、選ばれる理由になりません。

ポジショニングのよくある3つの誤解(競合との差、キャッチコピー、一度決めたら不変)と実際の考え方を比べた図
図:ポジショニングの3つの誤解

誤解2:ポジショニングは広告のキャッチコピーのこと
コピーは、ポジショニングを伝える手段の一つにすぎません。商品、価格、店舗、採用、取引先、空間など、会社のあらゆる接点が、同じ位置を示している必要があります。ポーターが述べたように、位置を決めるとは、何をやり、何をやらないかを決めることでもあります。

誤解3:一度決めたら変えてはいけない
市場や顧客は変わります。軸を見直す必要が生じることもあります。ただし、頻繁に位置を変えると、顧客の頭の中の場所が定まらなくなります。「軸は守り、表現は更新する」という考え方が現実的です。

アートの視点:位置を「空間」で示す

ポジショニングは言葉で整理しますが、顧客が最初に受け取るのは、空間や見た目から感じる印象であることが少なくありません。受付、店舗、オフィスに置く作品の選び方は、「この会社はどんな位置にいるのか」を、無言で伝えます。

たとえば、プラダが産業遺産の空間を現代文化の拠点として用いたように、場所や作品の選び方が、ブランドの位置を示すことがあります。自社のポジショニングが決まったら、その位置にふさわしい作品や空間かどうかを、確認する価値があります。

ポジショニング点検表

  • [ ] 誰に選ばれたいのかが、具体的に決まっている
  • [ ] 顧客が比較する相手(業界外も含む)を洗い出している
  • [ ] 顧客が重視する基準で、自社が勝てる理由がある
  • [ ] 「やらないこと」が決まっている
  • [ ] 一言で説明でき、社内の誰もが同じ説明をできる
  • [ ] 商品、空間、採用、発信が、同じ位置を示している

まとめ

ポジショニングとは、顧客の頭の中で自社が占める位置を決め、一貫して伝えることです。リース&トラウトは「心の中の位置」の重要性を、ポーターは「やらないことを決める」重要性を示しました。エイビス、パタゴニア、そしてアート施設の事例が示すように、位置は、1番になることではなく、顧客が重視する基準で、自社を選ぶ理由を持つことで決まります。広告だけでなく、Webサイトやツール、空間まで含めて一貫させることが、ブランドの力になります。節目の計画段階で専門家に相談することで、客観的な視点を取り入れることもできます。

よくある質問(FAQ)

Q1. ポジショニングとブランドコンセプトは何が違いますか。
ポジショニングは、市場の中での「位置」を決めるもので、他社との関係の中で定まります。ブランドコンセプトは、ブランドが提供する価値や世界観を表すもので、自社の内側から発想します。両者は補い合う関係で、ポジショニングを土台にコンセプトを言葉にすることが多くあります。

Q2. 小さな会社でもポジショニングは必要ですか。
必要です。経営資源が限られる会社ほど、全員に選ばれようとせず、特定の層に強く選ばれる位置を定めることが重要になります。地域、専門性、素材、手法など、絞り込む軸は多くあります。

Q3. ポジショニングを変えたいときは、どうすればよいですか。
まず、現在の顧客の頭の中の位置を把握します。そのうえで、新しい位置との距離を確認し、商品、空間、発信を段階的に変えていきます。急に変えると既存の顧客が戸惑うため、移行の期間を見込むことが大切です。リブランディングについては、本連載の別の回で扱います。


この記事を書いた Euphoric " " について

Euphoric " " は、ユアムーン株式会社が運営するアートメディアです。ユアムーンは、デザインとクリエイティブを軸にしたブランディング会社です。ブランドの言語化から、ロゴやWebサイトなどのデザイン、社内外への発信までを一貫して設計しています。ご希望に応じて、アートの選定・導入もお手伝いしています。

ポジショニングは、言葉で決めるだけでなく、ロゴやWebサイトなどの表現まで一貫させることで、顧客に伝わります。ユアムーンは、位置の言語化と、それを表すデザインの設計をつなげて行います。

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