こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。
皆さんはジム・ジャームッシュという映画監督をご存知ですか?
ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch)は、アメリカ・オハイオ州アクロン生まれの映画監督・脚本家です。ニューヨーク大学大学院の卒業制作『パーマネント・バケーション』で注目され、2作目の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』でカンヌ国際映画祭のカメラ・ドールを受けました。その後も『ダウン・バイ・ロー』『ミステリー・トレイン』『ナイト・オン・ザ・プラネット』『コーヒー&シガレッツ』『パターソン』と、独自のスタイルの作品を40年以上にわたって撮り続けています。
2025年には『ファーザー マザー シスター ブラザー』で、ヴェネツィア国際映画祭の最高賞である金獅子賞を受けました。日本では2026年11月20日に公開される予定です。
本記事ではそんなジム・ジャームッシュの人生と作品についてご紹介します。受賞歴はカンヌ国際映画祭とヴェネツィア国際映画祭の公式記録で、作品の邦題と日本公開の年は日本の配給会社の公式サイトで確認したものだけを、表と図解にまとめています。
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Toggleジム・ジャームッシュって?
ジム・ジャームッシュは、アメリカのインディペンデント映画(大手の映画会社に頼らずにつくる映画)を代表する監督のひとりです。日本の配給会社ギャガの公式サイトは、映画監督、脚本家、ミュージシャン、プロデューサー、アーティストと、その幅広い肩書きを紹介しています。
日本語では「ジム・ジャームッシュ」と中黒を入れて書くのが一般的ですが、検索では「ジムジャームッシュ」「ジム ジャームッシュ」、名字だけの「ジャームッシュ」で調べられることも多い監督です。いずれも同じ人物を指しています。本記事では、配給会社ロングライドとギャガの公式サイトの表記にそろえて「ジム・ジャームッシュ」と書きます。
基本情報
| 名前 | ジム・ジャームッシュ(Jim Jarmusch) |
| 生年月日 | 1953年1月 |
| 国籍・出身 | アメリカ。オハイオ州アクロン生まれ、ニューヨーク在住 |
| 学歴 | コロンビア大学で英文学を学んだのち、ニューヨーク大学大学院で映画を専攻 |
| 分野 | 映画監督・脚本家(ミュージシャン、プロデューサーとしても活動) |
| 代表作 | 『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984年)、『ダウン・バイ・ロー』(1986年)、『ミステリー・トレイン』(1989年)、『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991年)、『コーヒー&シガレッツ』(2003年)、『ブロークン・フラワーズ』(2005年)、『パターソン』(2016年)、『ファーザー マザー シスター ブラザー』(2025年) |
| 主な受賞 | カンヌ国際映画祭 カメラ・ドール(1984年)、同 最優秀芸術貢献賞(1989年)、同 短編部門パルム・ドール(1993年)、同 グランプリ(2005年)、ヴェネツィア国際映画祭 金獅子賞(2025年) |

経歴と作品
オハイオからニューヨークへ(1953〜1970年代)
ジム・ジャームッシュは1953年1月、アメリカ中西部のオハイオ州アクロンで生まれました(ロングライド、ギャガの公式サイト)。ギャガの公式サイトによると、コロンビア大学で英文学を学んだあと、ニューヨーク大学大学院で映画を専攻します。
ニューヨーク大学の芸術学部ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アーツの卒業生紹介によると、ジャームッシュが大学院の映画学科で学んだのは1970年代の後半で、同じ学科にはスパイク・リーもいました。最初の長編映画は、この大学院にいるあいだに形になります。
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で世界へ(1980〜1986年)
『パーマネント・バケーション』(1980年)
ジャームッシュの最初の長編映画です。ロングライドの特集上映の公式サイトによると、ニューヨーク大学在学中に卒業制作として撮影された作品で、社会になじめない少年パーカーが、ニューヨークの裏通りをあてもなく歩き、さまざまな人と出会っては別れながら、自分の行き先を見つけていく物語です。ニューヨーク大学の卒業生紹介によると、ドイツのマンハイム=ハイデルベルク国際映画祭で初めて上映され、ヨーゼフ・フォン・シュテルンベルク賞を受けました。
『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984年)
2作目となるこの作品で、ジャームッシュは世界に知られるようになります。ロングライドの公式サイトによると、ニューヨークで気ままに暮らすウィリーが、ハンガリーから来たいとこのエヴァを預かることになり、親友のエディも加わって、3人のとりとめのない日々が始まる物語です。
カンヌ国際映画祭の公式記録によると、作品は1984年の監督週間で上映され、その年のカメラ・ドールを受けました。カメラ・ドールは、カンヌ国際映画祭の各部門で上映された長編第1作(監督の最初の長編)の中から選ばれる賞です。ニューヨーク大学の卒業生紹介は、この作品がほかにもロカルノ国際映画祭の金豹賞などを受けたことを紹介しています。
『ダウン・バイ・ロー』(1986年)
ロングライドの公式サイトによると、ニューオーリンズの刑務所の同じ房で出会った3人の男が、偶然見つけた抜け道から外へ出て、行くあてのない珍道中を繰り広げる物語です。出演はトム・ウェイツ、ジョン・ルーリー、ロベルト・ベニーニ。カンヌ国際映画祭の公式記録によると、ジャームッシュの作品として初めてコンペティション部門に選ばれました。
ロングライドの公式サイトによると、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』は1986年4月に日本で劇場公開されました。同じ公式サイトは、1986年をジャームッシュの作品が日本で初めて劇場公開された年として紹介しており、同じ年の7月には『パーマネント・バケーション』、11月には『ダウン・バイ・ロー』も公開されています。
日本の俳優と、オムニバスの形(1989〜1999年)
『ミステリー・トレイン』(1989年)
エルヴィス・プレスリーを生んだ街メンフィスを舞台に、3つの物語が交差するオムニバス形式(いくつかの短い物語を1本にまとめた形)の作品です。ロングライドの公式サイトによると、それぞれの物語の人物が同じ夜汽車を眺め、エルヴィスの「ブルー・ムーン」を聞く、ひと晩の物語です。
出演者には日本から工藤夕貴と永瀬正敏が加わっています(同公式サイト)。カンヌ国際映画祭の公式記録によると、作品は1989年のコンペティション部門で最優秀芸術貢献賞を受けました。映画祭の公式ページに残るジャームッシュ自身の言葉では、この作品は、メンフィスで24時間のうちに起きる出来事を描いた「時間のコメディ」で、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』『ダウン・バイ・ロー』とあわせて三部作の最後の作品のように考えている、と語られています。
『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991年)
ロングライドの公式サイトによると、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの5つの都市で、同じ夜にタクシーの運転手と客がめぐり合う様子を、オムニバス形式で描いた作品です。出演はウィノナ・ライダー、ジーナ・ローランズ、ロベルト・ベニーニら。同じ空の下の5つの街を並べることで、場所ごとに違う物語が浮かび上がります。
『デッドマン』(1995年)と『ゴースト・ドッグ』(1999年)
1990年代の後半、ジャームッシュはジャンル映画の形を借りた作品にも取り組みます。『デッドマン』はジョニー・デップ主演の、アメリカ西部を舞台にした作品です。『ゴースト・ドッグ』は、武士道の書『葉隠』を愛読する孤独な男を主人公にしています(いずれもロングライドの公式サイト)。カンヌ国際映画祭の公式記録によると、2作ともコンペティション部門で上映されました。
短い会話を積み重ねる(1993〜2009年)
『コーヒー&シガレッツ』(2003年)
コーヒーとタバコを囲んだ会話を、11のエピソードとしてつづった短編集です(ロングライドの公式サイト)。ジャームッシュ作品の常連の俳優のほか、ミュージシャンやコメディアンも登場し、それぞれが思い思いの話をくり広げます。
この作品には前史があります。カンヌ国際映画祭の公式記録によると、同じ題名を持つ短編『コーヒー&シガレッツ(サムウェア・イン・カリフォルニア)』が1993年の短編コンペティション部門に出品され、短編部門のパルム・ドールを受けました。映画祭の作品紹介によると、イギー・ポップとトム・ウェイツがカリフォルニアのどこかのバーで出会い、コーヒーとタバコを前に、禁煙のこつなどについて語り合う短編です。短い会話の場面を10年かけて積み重ね、1本の長編にまとめたことになります。
『ブロークン・フラワーズ』(2005年)
カンヌ国際映画祭の作品紹介によると、恋人に去られたばかりの独身の男ドンのもとに、差出人のわからないピンク色の手紙が届きます。昔の恋人のひとりからのもので、ドンには19歳の息子がいて、父親を探しているかもしれないと書かれていました。手紙をきっかけに、ドンは自分の過去を振り返ることになります。
作品は2005年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリを受けました(映画祭の公式記録)。グランプリは、最高賞のパルム・ドールに次ぐ賞です。2009年には『リミッツ・オブ・コントロール』を発表しています(ロングライドの公式サイト)。
『パターソン』と日常の詩(2013〜2019年)
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(2013年)
ロングライドの公式サイトによると、アダムとイヴという名の2人の吸血鬼を主人公にした、異色のラブ・ストーリーです。スマートフォンやインターネットを使いこなす2人は、現代の街でひっそりと暮らしています。出演はトム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン。2013年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映されました(映画祭の公式記録)。
『パターソン』(2016年)
ニュージャージー州パターソンに住む、街と同じ名前のバス運転手パターソン(アダム・ドライバー)の7日間の物語です。ロングライドの公式サイトによると、彼の1日は隣で眠る妻ローラにキスをして始まります。仕事に向かい、乗務の合間に心に浮かんだ詩を秘密のノートに書きとめ、帰宅して妻と夕食をとり、愛犬マーヴィンと夜の散歩に出て、バーで1杯だけ飲んで帰る。そんな変わりばえのしない毎日を、ユーモアと優しさをこめて描いています。
日本からは永瀬正敏が「日本の詩人」の役で出演しています。公式サイトのキャスト紹介によると、永瀬正敏にとっては『ミステリー・トレイン』以来、27年ぶりのジャームッシュ作品への参加でした。作品は2016年のカンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され(映画祭の公式記録)、日本では2017年8月に公開されました。
同じ2016年のカンヌ国際映画祭では、イギー・ポップが率いたバンド、ザ・ストゥージズを描いたドキュメンタリー『ギミー・デンジャー』もコンペティション外で上映されました(映画祭の公式記録)。ロングライドの公式サイトによると、長年ジャームッシュの友人でもあるイギー・ポップ自身が制作を依頼した、ストゥージズの公式ドキュメンタリーです。
2019年の『デッド・ドント・ダイ』は、第72回カンヌ国際映画祭のオープニング作品に選ばれました(映画祭の公式記録)。ビル・マーレイ、アダム・ドライバー、ティルダ・スウィントンら、ジャームッシュ作品になじみの俳優が多く出演しています。
ヴェネツィアで金獅子賞(2025〜2026年)
『ファーザー マザー シスター ブラザー』(2025年)
ギャガの公式サイトによると、『デッド・ドント・ダイ』から6年ぶりとなる新作です。舞台は3つの街。ニューヨークを対岸に眺めるニュージャージーでは、隠居した父と久しぶりに顔を合わせる子どもたちを、古都ダブリンでは、生真面目な母が開く年に一度のアフタヌーンティーに集う2人の娘を、パリでは、双子のきょうだいを描きます。出演はトム・ウェイツ、アダム・ドライバー、シャーロット・ランプリング、ケイト・ブランシェットらです。
ヴェネツィア・ビエンナーレの公式発表によると、作品は2025年の第82回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門で、最高賞の金獅子賞を受けました。製作国はアメリカ、アイルランド、フランスと記されています。
ギャガの公式サイトに寄せたコメントで、ジャームッシュはこの作品を「“アンチ・アクション映画”」と呼び、そのスタイルを、3つの繊細なフラワーアレンジメントに花を一輪一輪、注意深く置いていくような作業にたとえています。日本ではギャガの配給で、2026年11月20日に公開される予定です。
ジム・ジャームッシュの主な作品と受賞歴
本記事で紹介した主な作品を表にまとめます。制作年と日本公開の年はロングライドとギャガの公式サイト、映画祭での上映と受賞はカンヌ国際映画祭とヴェネツィア国際映画祭の公式記録によります。
| 制作年 | 作品 | 日本公開 | 映画祭での上映・受賞 |
|---|---|---|---|
| 1980年 | パーマネント・バケーション | 1986年 | ニューヨーク大学大学院の卒業制作 |
| 1984年 | ストレンジャー・ザン・パラダイス | 1986年 | カンヌ 監督週間、カメラ・ドール |
| 1986年 | ダウン・バイ・ロー | 1986年 | カンヌ コンペティション部門 |
| 1989年 | ミステリー・トレイン | 1989年 | カンヌ 最優秀芸術貢献賞 |
| 1991年 | ナイト・オン・ザ・プラネット | 1992年 | 記載なし |
| 1993年 | コーヒー&シガレッツ(サムウェア・イン・カリフォルニア)※短編 | 記載なし | カンヌ 短編部門パルム・ドール |
| 2003年 | コーヒー&シガレッツ | 2005年 | 記載なし |
| 2005年 | ブロークン・フラワーズ | 記載なし | カンヌ グランプリ |
| 2013年 | オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ | 2013年 | カンヌ コンペティション部門 |
| 2016年 | パターソン | 2017年 | カンヌ コンペティション部門 |
| 2019年 | デッド・ドント・ダイ | 2020年 | カンヌ オープニング作品 |
| 2025年 | ファーザー マザー シスター ブラザー | 2026年11月(予定) | ヴェネツィア 金獅子賞 |
表の「記載なし」は、本記事で確認した公式情報に記載がないことを示します。


ジム・ジャームッシュ作品を楽しむ手がかり
作品を並べてみると、いくつかの特徴が見えてきます。
ひとつ目は、短い物語を並べる形です。『ミステリー・トレイン』は3つの物語、『ナイト・オン・ザ・プラネット』は5つの都市、『コーヒー&シガレッツ』は11のエピソード、『ファーザー マザー シスター ブラザー』は3つの街の家族を並べています。ひとつの大きな筋で引っぱるのではなく、別々の場面を並べることで、見る人がそのあいだのつながりを感じ取るつくりです。
ふたつ目は、音楽家との仕事です。トム・ウェイツは『ダウン・バイ・ロー』と短編『コーヒー&シガレッツ(サムウェア・イン・カリフォルニア)』に出演し、『ファーザー マザー シスター ブラザー』では父親を演じています。イギー・ポップは同じ短編に出演し、ドキュメンタリー『ギミー・デンジャー』の題材にもなりました。ジャームッシュ自身もミュージシャンとして活動しています(ギャガの公式サイト)。
みっつ目は、日本とのつながりです。『ミステリー・トレイン』には工藤夕貴と永瀬正敏が出演し、永瀬正敏は27年後の『パターソン』でも日本の詩人を演じました。『ゴースト・ドッグ』の主人公は『葉隠』を愛読しています。日本で初めて作品が劇場公開されたのは1986年で、2021年には初期作から最新作までの12作品を集めた特集上映も開かれました(ロングライドの公式サイト)。

まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、アメリカの映画監督ジム・ジャームッシュをご紹介しました。
オハイオ州アクロンに生まれたジャームッシュは、ニューヨーク大学大学院の卒業制作『パーマネント・バケーション』で注目され、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で1984年のカンヌ国際映画祭カメラ・ドールを受けました。その後も『ミステリー・トレイン』で最優秀芸術貢献賞、短編『コーヒー&シガレッツ』で短編部門のパルム・ドール、『ブロークン・フラワーズ』でグランプリと、カンヌで評価を重ねます。『パターソン』ではバス運転手の何気ない7日間を描き、2025年には『ファーザー マザー シスター ブラザー』でヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受けました。
短い物語を並べる形、音楽家との仕事、日本とのつながり。どこから見ても、ジャームッシュの作品には共通する手ざわりがあります。気になった一本から、ぜひ触れてみてください。
Euphoric " " の視点
ジャームッシュの映画は、ひとつの大きな筋で観客を引っぱるのではなく、別々の場面を並べ、そのあいだのつながりを見る人に委ねます。短い会話を10年かけて1本の長編にまとめた『コーヒー&シガレッツ』や、バス運転手の7日間を描いた『パターソン』は、何気ない時間の中にこそ豊かさがあることを静かに伝えています。
1984年のカンヌでのカメラ・ドールから2025年のヴェネツィアでの金獅子賞まで、自分の形を貫きながら評価を重ねてきた歩みは、作り手が自らの手ざわりを大切にし続けることの力を示しています。
作品に触れるには
ジム・ジャームッシュの作品は、日本の配給会社や映画祭の公式サイトで紹介されています。上映やソフトの発売、配信の状況は時期によって変わるため、最新の情報は各公式サイトをご確認ください。






