こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。
皆さんはC215という人物をご存知ですか?
C215(本名:クリスチャン・ゲミー、Christian Guémy)は、1973年生まれのフランスのアーティストです。型紙を切り抜いてスプレーで絵を写しとる「ステンシル(フランス語でポショワール)」の技法で、街の壁や郵便受け、扉などに人の顔や猫を描いてきました。
作家の公式サイトは、C215を世界のストリートアートの中でもっとも評価されたステンシル作家の一人と紹介しています。2018年にはパリのパンテオンの周りに偉人たちの肖像を描き、2019年にはフランス文化大臣の大臣令(アレテ)で芸術文化勲章のシュヴァリエを受けました。本記事ではそんなC215の人生と作品についてご紹介します。
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基本情報
| 本名 | クリスチャン・ゲミー(Christian Guémy)。作家名は C215 |
| 生年月日(没年月日) | 1973年生まれ(月日は公式の資料で確認できなかったため記載していません。訃報は確認されていません) |
| 国籍・出身 | フランス |
| 学歴 | ソルボンヌ大学で外国語(英語・ドイツ語)の学士。歴史学の修士、美術史・建築史の修士(公式サイトによる) |
| 分野 | ストリートアート、ステンシル(ポショワール)、絵画 |
| 傾向 | 人物の肖像と猫。公式サイトは、集団の記憶を問い、模範となる行いや英雄的な業績に敬意を表す作品と紹介しています |
| 師事した人物・影響を受けた人物 | 公式の資料で確認できなかったため記載していません |
| 拠点 | フランス・イヴリー=シュル=セーヌ(公式サイトによる) |
| 主な受章 | 芸術文化勲章シュヴァリエ(2019年9月16日付の文化大臣の大臣令)ほか |
C215と同じストリートアートの流れや、同じ時代に街で活動した作家については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
経歴と作品
詩のペンネームから生まれた「C215」(1973年〜)
C215ことクリスチャン・ゲミーは、1973年にフランスで生まれました。公式サイトによると、パリのソルボンヌ大学で外国語(英語とドイツ語)の学士号を取り、さらに歴史学の修士号と、美術史・建築史の修士号を取得しています。
「C215」という名前は、もともと絵の署名ではありませんでした。公式サイトは、ゲミーが自作の詩を C215 というペンネームで発表したことから、芸術の道を歩み始めたと紹介しています。のちにその名前が、街に残すステンシル作品の署名になりました。詩とのつながりはその後も続き、公式サイトの文献一覧には、2018年に出版された詩集『Petits poèmes vagabonds(さすらいの小さな詩)』も載っています。
公式サイトによると、C215は2000年代の初めから、世界各地の街で制作を続けてきました。物やカンバスに描いた作品はフランス国内外の画廊で展示され、国立の美術館でも数多く発表されています。公的機関や文化施設、社会福祉の団体とも、定期的に協力しているといいます。2026年10月時点の公式サイトでは、パリ近郊のイヴリー=シュル=セーヌに暮らし、制作していると紹介されています。
ストリートアートとC215のステンシル
ストリートアートは、街の壁や道路など、誰もが通る公共の場所に描かれる美術の総称です。その中でもステンシルは、厚紙などに絵柄を切り抜いて型をつくり、その上からスプレーを吹きつけて絵を写しとる技法です。
公式サイトは、アメリカのアーティスト、シェパード・フェアリー(OBEY)がC215について寄せた言葉を載せています。フェアリーは、ステンシルは像を平らにし静止させがちだが、C215は描写とステンシルの方法を発展させ、描く人物の人柄を印象派のように照らし出す作風を生み出したと書いています。さらに、その技法は細やかに磨かれているのに、形式を超えて思いやりと人間の精神への信頼の核心に届いているように見える、とも述べています。
C215は、ステンシルの技法そのものを伝える本も出しています。公式サイトの文献一覧には、2019年の『L’art du pochoir(ステンシルの技法)』(アレッサンドラ・マッタンツァとの共著)や、2020年の『Manuel du pochoir(ステンシルの手引き)』が並んでいます。

画廊での個展とロンドンのステンシル祭(2008〜2014年)
公式サイトの展覧会の一覧で、もっとも早い個展は2008年のものです。この年、ニューヨークのアド・ホック・ギャラリーで「Junk Store」を、ブラジル・サンパウロのプラスティック・ギャラリーで「Nina mon amour」を開きました。同じ2008年には、ロンドンの国際ステンシル祭「Banksy’s Cans Festival」にも参加しています。
その後も、2010年にパリのイティネランス・ギャラリーで「Community Service」、2011年にサンフランシスコのシューティング・ギャラリーで「Smoke gets in your Eyes」、2014年にロンドンのストールン・スペース・ギャラリーで「Back to Black」と、各地で個展を重ねていきます。2014年には、イスタンブールのペラ美術館のグループ展「Language of the Wall」や、ホノルル美術館の「POW WOW」にも参加しました。
街角の猫を描く
C215の作品で、人の肖像と並んでよく知られているのが猫です。本人のYouTubeチャンネルでは、2009年4月にモロッコのカサブランカの旧市街で、扉に猫を描いたときの動画が公開されています。動画の説明でC215は、通りがかりの人たちと良い時間を分かち合いながら街で描くことこそ、自分が街でステンシルを描く理由だと書いています。
2012年5月には、ローマのトラステヴェレ地区で、昼間に通りで猫を描く様子も撮影されています。
科学者の肖像「E=MC215」と「Radium215」(2015〜2016年)
2010年代の半ばから、C215は美術館や科学の施設と組んで、テーマを決めた肖像の連作に取り組むようになります。2015年には、パリの国立工芸院博物館(Musée des Arts et Métiers)で個展「E=MC215」を開きました。同じ題の本も、エティエンヌ・クラインとの共著として2015年に出版されています。
2016年には、パリのキュリー博物館と組みました。博物館の公式の案内冊子は、2016年の出来事として、C215がキュリー夫妻とジョリオ=キュリー夫妻、その近しい協力者たちの肖像を描き、博物館の正面とその周りに展示したと記しています。公式サイトの展覧会一覧では、この企画は「Radium215」と呼ばれています。
スポーツと機械の肖像(2017年)
2017年には、ニースの国立スポーツ博物館で個展「Athlètes」を開きました。同じ年には、ミュルーズの国立自動車博物館で「Saga mécanique」も開いています。
本人のYouTubeチャンネルでは、国立スポーツ博物館の「Athlètes」を紹介する1分ほどの動画が公開されています。
パンテオンを囲む28人の肖像「Illustres !」(2018年)
2018年、C215はパリのパンテオンで「Illustres ! C215 autour du Panthéon(偉人たち! パンテオンのまわりのC215)」を開きました。パンテオンはフランスの偉人をまつる建物です。フランス観光開発機構の公式サイトによると、この企画はフランス国立モニュメントセンターの文化シーズン「壁の上の、グラフィティの歴史」の一つで、2018年10月8日まで開かれました。
C215は、パンテオンとその周りの通りに作品を散りばめました。郵便受けや壁、標識の角、レストランのメニュー立てなどに、フランスでもっとも有名な28人の顔が現れます。同じ公式サイトは、ヴォルテール、アレクサンドル・デュマ、ヴィクトル・ユゴー、マリー・キュリー、ジャン・ジョレスの名を挙げ、地下の納骨堂(クリプト)の展示で制作の舞台裏も見られる、宝探しのような企画だったと紹介しています。同じ年には、企画の記録として本『Illustres! C215 autour du Panthéon』も出版されました。
C215は、ルーヴル美術館のオンラインの連続動画「Dialoguer avec le street-art(ストリートアートと対話する)」にも登場しています。ルーヴル美術館の公式サイトには、「C215 et le Caravage au Louvre(C215とカラヴァッジョ)」「C215 et Delacroix au Louvre(C215とドラクロワ)」「C215 et Géricault au Louvre(C215とジェリコー)」の回が並んでいます。このうちカラヴァッジョの回は、2018年4月に美術館の公式YouTubeで公開されました。
空と宇宙の英雄たち「La Légende des Cieux」(2019〜2020年)
2019年9月25日、C215はパリ北郊ル・ブルジェの街と、国立の航空宇宙博物館(Musée de l’Air et de l’Espace)で「La Légende des Cieux(空の伝説)」を始めました。博物館の創設100周年の記念行事の一つです。
博物館によると、RER(郊外鉄道)のル・ブルジェ駅から街の中心を通って博物館まで、およそ30人の肖像をたどる宝探しのような道筋がつくられました。そのうち7点は博物館の中で展示されました。描かれたのは、モンゴルフィエ兄弟からニール・アームストロングまで、ルイ・ブレリオからクローディ・エニェレまで、空と宇宙の大きな冒険をつくってきた女性と男性たちです。館内の展示は2020年9月27日まで延長されました。
博物館の報道資料は、30人の肖像を3つのまとまりに分けて紹介しています。ルイ・ブレリオやシャルル・リンドバーグ、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリなどの「空の伝説」、ニール・アームストロングやユーリ・ガガーリン、トマ・ペスケなどの「宇宙の伝説」、そしてジョルジュ・メリエス、ジュール・ヴェルヌ、レオナルド・ダ・ヴィンチの「科学と芸術の伝説」です。飛行機をつくった人や飛んだ人だけでなく、空を飛ぶことを想像した作家や映画監督まで含めたところに、この企画の広がりがあります。
館内では、制作の舞台裏を見せる展示も開かれました。博物館は、C215の仕事机や型紙の一部、肖像の制作中に撮った写真が並べられ、子どものころや若いころに親しんだ文学や映画を手がかりに、日常の物の上に描いた作品も展示されたと紹介しています。
『Amelia Earhart』(2019年発表)
博物館の報道資料に「Amelia Earhart」として載っている肖像です。画面では、黒い地を背景に、飛行帽をかぶり額にゴーグルを上げた女性が、少し首をかしげてこちらを見ています。顔は黄色とピンクで明るく塗られ、周りには赤や黄、紫のスプレーの線が勢いよく走っています。左には C215 の六角形のマークが描かれています。

『Thomas Pesquet』(2019年発表)
同じ報道資料に「Thomas Pesquet」として載っている肖像です。資料は、トマ・ペスケが欧州宇宙機関(ESA)の宇宙飛行士として国際宇宙ステーションに向かい、8か月の滞在で62の実験を行ったと紹介しています。画面では、ヘッドセットのマイクを口元につけた宇宙飛行士が、ヘルメットの中でほほえんでいます。顔の周りを、青や赤、黄の筆跡のようなスプレーの線が渦を巻くように取り囲んでいます。

勲章と近年の活動(2019年〜)
公式サイトによると、C215は2019年9月16日付のフランス文化大臣の大臣令で、芸術文化勲章のシュヴァリエを受けました。公式サイトの「Distinctions(受章)」には、国家功労勲章のシュヴァリエや、パリ市議会の名誉賞なども並んでいます。
作品はフランス各地の美術館や公的機関にも収められています。公式サイトの「Public collections(公的コレクション)」には、パリのカルナヴァレ博物館、ニースの近現代美術館(MAMAC)、アメリカのセントルイス美術館、スイス・ローザンヌのオリンピック博物館、国民議会、パリ市のコレクションなどが載っています。
2024年には、南フランス・カルパントラのアンガンベルティーヌ図書館・博物館で回顧展が開かれました。館の発表によると、この館が初めて開いた企画展で、6か月の会期に1万8019人が訪れました。230平方メートルの展示で、20年以上にわたって街の建物や道の設備をステンシルで彩ってきた仕事を紹介しました。会期の終了後も、館の常設コレクションから着想して描かれた36点の作品が、カルパントラの歴史地区の街並みに残されています。
パンテオンの偉人を描く仕事は、フランスの外にも広がりました。在シカゴ・フランス文化部の公式YouTubeの動画説明によると、2021年11月、ジョセフィン・ベーカーがパンテオンに祀られるのに合わせ、彼女の生まれた町アメリカ・セントルイスで、C215がさまざまな年齢と角度からベーカーを描いた肖像を制作しました。肖像はアリアンス・フランセーズ・ド・セントルイスなどの壁や、ジョセフィン・ベーカー通りなどに描かれ、動画説明はこの仕事を、28人をたたえた「Illustres !」に続く偉人の肖像の連作と位置づけています。

まとめ
いかがだったでしょうか。C215の人生と作品について、ご紹介してきました。
C215ことクリスチャン・ゲミーは、1973年にフランスで生まれ、ソルボンヌ大学で外国語と歴史、美術史を学びました。詩のペンネームだった C215 を署名にして、2000年代の初めから世界各地の街でステンシルの作品を描いてきました。
カサブランカやローマの街角に描いた猫から、キュリー博物館の科学者たち、パンテオンを囲む28人の偉人、ル・ブルジェの空と宇宙の英雄たちまで、その仕事は街と美術館をつなぐ肖像の連作へと広がりました。2019年には芸術文化勲章のシュヴァリエを受け、2024年にはカルパントラで回顧展が開かれています。
型紙とスプレーという限られた道具で、人の表情を明るく照らし出すこと。郵便受けや扉のような身近な物を画面にすること。機会があれば、街で出会う C215 の肖像に、足を止めて目を向けてみてください。
Euphoric " " の視点
C215の作品は、型紙とスプレーという限られた道具から生まれます。郵便受けや扉、標識の角といった、街で見過ごされがちな場所を画面にし、そこに人の表情を描き出してきました。カサブランカやローマの街角の猫と、パンテオンを囲む28人の偉人が、同じ手法で並ぶところに、この作家の仕事の広がりがあります。
キュリー博物館や航空宇宙博物館との企画は、街の表現と公的な文化の場が互いに歩み寄れることを示しています。足を止めて見上げれば、身近な街角が肖像の展示室に変わる。その気づきを、C215の作品は届けてくれます。
この作品を見に行くには
C215の作品は、街の壁や設備に描かれたものと、美術館・公的機関に収められたものがあります。2026年10月時点で、アンガンベルティーヌ図書館・博物館は、カルパントラの歴史地区に36点の作品が残されていると案内しています。展示の状況は変わることがあるため、最新の情報は公式サイトをご確認ください。






