【徹底解説】ウィリアム・モリスとは?人生と作品に迫る

こんにちは。ユアムーン 編集部です。

皆さんはウィリアム・モリスという人物をご存知ですか?

彼は「アーツ・アンド・クラフツ運動」によって20世紀のヨーロッパにモダン・デザインの潮流をもたらした「モダン・デザインの父」として知られています。

特に現代のテキスタイル・デザインに大きな影響を与え、また詩人としてロマンス・フィクションの大家としても実績を残している多才な人物です。

本記事ではそんなウィリアム・モリスの人生と作品についてご紹介します。


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ウィリアム・モリスって?

基本情報

本名 ウィリアム・モリス(William Morris)
生年月日  1834年3月24日〜1896年10月3日(64歳没)
国籍/出身 イギリス/イギリス ロンドン
学歴 イギリス オックスフォード大学
分野 プロダクト・デザイン、テキスタイル・デザイン、詩
傾向 モダン・デザイン
師事した/影響を受けた人物 ジョン・ラスキン、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ等

人生と作品

生まれと環境

モリスは1834年3月24日にイギリス ロンドンの郊外にある町・ウォルサムストウで生を授かります。父は投資会社に勤めており、中流階級の家庭の子として不自由のない幼少期を送りました。

1840年に地元を離れ<ウッドフォード・ホール>に移り住みますが、1848年の父の死没をきっかけに生まれ育ったウォルサムストウに戻ります。その時の住居<ウォーター・ハウス>は今は「ウィリアム・モリス・ギャラリー」として現存しています。

聖職者から建築家へ

1853年、聖職者を目指していたモリスはオックスフォード大学に入学し、教会の牧師になるための教育を受けるようになります。

この頃からマルクスやジョン・ラスキンの思想に触れ、特にラスキン著書を愛読して大きな影響を受けています。そんな社会・美術評論に関心のあったモリスですが、その中でも特に影響を受けたのはジョン・ラスキンの著書『ヴェネツィアの石(1994〜1996年)』でした。

芸術家のパトロンであり自身も建築設計や水彩画など多彩に芸術を嗜んだラスキンが、ヴェネツィアの建築について歴史とその変遷について書かれたこの本は、牧師を目指していたモリスを一気に芸術の世界へ引き込みました。

そして同じ頃、生涯の友人となるエドワード・バーン=ジョーンズ(1833〜1898)と知り合い、共に芸術家を目指すようになりました。

二人は中世芸術の勉強のためにフランスへ旅行に赴き、モリスは建築家を、ジョーンズは画家として働くことを目指しました。

1856年、成人したモリスはジョージ・エドマンド・ストリート事務所という建築事務所で働くことになりました。ここで後に「アーツ・アンド・クラフツ建築の父」として知られることになるフィリップ・ウェッブ(1831〜1915)に出会います。

モリスは約一年で事務所を退所し、インテリア装飾や詩集の自費出版を仕事にするようになります。

成人となり父の遺産を相続したモリスはすぐに生活に窮する環境ではありませんでしたが、だからこそこの時にインテリア装飾や作詞の仕事に触れたことは後のキャリアに影響を与えているように感じられます。

芸術が引き合わせた縁

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828〜1882)

Dante Gabriel Rossetti

モリスはジョーンズが弟子入りしているラファエル前派の画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828〜1882)の門下生になり、画家としてのキャリアも考えていたようです。

ラファエル前派とは19世紀のイギリスで活動した芸術家による運動で、モリスの弟子入りしたダンテ・ゲイブリエル・ロセッティは、ジョン・エヴァレット・ミレー(1829〜1896)などと並んでその中心的な人物でした。

印象派と共に西洋美術史の象徴主義の源流となった運動で、モリスとジョーンズは大学生の時に共に信奉していたジョン・ラスキンの著書でその存在を知り憧れを抱いていました。

1859年、ロセッティが受けたオックスフォード・ユニオン(オックスフォード大学の学生組織)の壁画制作の仕事に参加します。そこでモリスは絵画モデルとしてロセッティと懇意にしていたジェイン・バーデン(1839〜1914)という女性に出会い、あっという間に恋に落ちてすぐに婚約を決めます。

モリスはこれ以降画家としての仕事をしておらず画家の道に諦めをつけ、建築やインテリア装飾を仕事にしていくことに決めています。

モダン・デザインのはじまり

『レッド・ハウス(1859〜1865)』

By Ethan Doyle White, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=44442757

モリスは二人の新居となる家の設計をウェッブに依頼します。構想はモリスが行い、内装や家具にはロセッティ、ジョーンズも加わり、仲間の共同出資・共同制作を通して1865年に『レッド・ハウス(1859〜1865)』が完成しました。

レッド・ハウスの制作が進む中、1961年にモリスはモリス・マーシャル・フォークナー商会(後のモリス商会)を設立させます。

産業革命以降、機械産業のハードルは大きく下がりました。安価で大量の製品を高速で流通させることが可能になった一方、製品そのものは粗悪で、モリスは以前からこのことに問題意識を抱いていました。

若い頃から中世芸術に触れていたモリスにとって、プロダクト・デザインを含む全ての芸術は、どれだけ産業機械が発達しようとも職人の手を離れてはいけないという主張をします。

これは「生活と芸術の統一(一致)」という言葉に象徴され、その言葉通り芸術品としての価値を保ちつつ生活に溶け込むことができる製品をきちんと品質管理しながら流通させるために生まれたのがこの商会です。

その設立メンバーはモリス、ジョーンズ、ロセッティ、ウェッブの4人に加えてロセッティの友人である画家フォード・マドックス・ブラウン(1821〜1893)、その友人であった測量技師ピーター・ポール・マーシャル(1830-1900)、経理担当のチャールズ・ジョセフ・フォークナー(1833〜1892)を入れた7人でした。

一.絵画かパタン作品による壁面装飾。あるいは、住宅や教会や公共建築に用いられるような、もっぱら配色による壁面装飾。

二.建築に用いられる彫刻一般。

三.ステインド・グラス。とりわけ壁面装飾との調和を考慮したもの。

四.宝石細工も含む、すべての種類の金属細工。

五.家具――デザインそのものが美しいもの、これまで見過ごされてきた素材が適用されたもの、あるいは、人物画なりパタン画なりが結び付けられているもの。この項目には、家庭生活に必要とされるすべての品々に加えて、あらゆる種類の刺繍、押し型皮細工、これに類する他の素材を用いた装飾品が含まれる。

この五つを基準に手掛けることと、それらをあくまでビジネスとして執り行うことを誓い生まれたモリス・マーシャル・フォークナー商会ですが、設立してすぐは世間に蔓延る廉価品に比べてやはり高価であったため「富裕層の贅沢」と捉えられてしまいました。

設立してしばらくはモリスが慣れ親しんだ教会のステンドグラスを中心に生産を行い、1862年の第二回ロンドン万博に商会はステンドグラス、刺繍、絵付家具を出品します。これをきっかけに商会の活動は軌道に乗り、クイーンズスクエア(大英博物館をはじめとする文化施設が並ぶ街)にオフィスとショールームを構えるほどに成長しました。

1875年になるとモリスが運営を独立させ「モリス商会」として再出発させます。

100年愛されるテキスタイル・パターンとは?

『いちご泥棒(1883)』

Strawberry Thief, 1883 - William Morris

1878年になると第二回ロンドン万博でも人気を博したテキスタイル部門を拡大し、後にモリスの死後に商会を継ぐデザイナー、ジョン・ヘンリー・ダール(1859〜1932)を迎え入れています。

モリス商会の大手部門であり、ウィリアム・モリスの大きな功績として知られるテキスタイル・パターンですが、その成長にはモリスと周囲の仲間の努力と活躍が欠かせませんでした。

商会が独立して以降、モリスはテキスタイル部門を前に進めるため染色実験や染料の研究を精力的に行なっていました。陶芸家のウィリアム・ド・モーガン(1839〜1917)や染め職人のトマス・ウォードル(1831〜1909)と共同研究を行い、「インディゴ抜染」を完成させました。

モリスの代表作として知られる『うさぎ兄弟(1832)』『いちご泥棒(1883)』にも用いられているこの技法は、誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。布全体を一度インディゴという染料で染めた後にブリーチ(漂白)を行い、絵柄のパターンに合わせて色を一色ずつ足していく非常に手間のかかる技法です。

モリスの染色実験とパターン・デザイン理論の追求は生涯続き、もう一つの代表的な功績であるインテリア装飾と共に後世に受け継がれ、アーツ・アンド・クラフツ運動を通して実践の日の目を見るモリス理論の根幹を成しています。

すべての本を美しくするために。

The Rubaiyat of Omar Khayyam, text and decoration by Morris with illustrations by Burne-Jones - William Morris

モリスの代表的な功績は先述の通り「テキスタイル・パターン」と「インテリア装飾」が知られていますが、それに隠れた密かな功績に「ロマンス詩」が挙げられます。

若い頃から社会評論や思想・哲学に慣れ親しんでいたモリスは、自身で詩を書くこともありました。

1868年から1870年にかけてモリスは長編物語詩『地上の楽園 四部作(1868〜1870)』を発表したことで詩人としても名を馳せることになります。

モリスの切り開いた「架空の中世的理想郷」と「ファンタジックな冒険譚」を組み合わせたジャンルは後に「ロマンス・ファンタジー」として花開き、数々の戯曲や創作神話である『ペガーナの神々(1905)』を書いたロード・ダンセイニ(1878〜1957)や『指輪物語(1954〜1955)』などで知られるジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン(1892〜1973)にも影響を与えたと言われています。

晩年になるとモリスは私家版印刷工房「ケルムスコット・プレス」を創設します。そこで出版された初めての本『輝く平原の物語(1891)』はこれまでの作風を踏襲したロマンス・ファンタジーでありながら、その特徴は装丁にあります。

書物というのは全て<美しいもの>であるべきだ

と言うモリスはそれを実行に移すべく印刷工房を立ち上げ、外装から中の活字に至るまでをデザインして生涯に66冊もの本を出版しました。

モリスの著作『輝く平原の物語』で用いられている活字は、モリスが15世紀のヴェネツィアで活躍した印刷家ニコラ・ジャンソンが考案した書体をアレンジした通称「ゴールデン字体」が使われています。加えて装飾頭文字や縁飾りもデザインしており、同名作家による『ジェフリー・チョーサー作品集(1896)』などはジョーンズが挿絵を担当することもありました。

晩年

1890年以降は印刷工房での仕事を中心に行っていましたが、その傍ら糖尿病との闘病生活を送ってもいました。

ノルウェーへ医療旅行に向かいますが快復することなく帰国し、1896年10月3日に10年以上暮らした別荘であるケルムスコット・ハウスで息を引き取りました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

インテリア、テキスタイルを筆頭に多才な活躍をし20世紀のデザインに大きな影響を与えたモリスですが、その人生を紐解いてみるとその多才な活躍には多才な仲間が常にそばにいたことが窺えます。

現在ではモリスを発端とするモダン・デザインが至る所で見られ、百円均一ショップなのでもモリスを源流とするモダンなテキスタイル・パターンを手にすることができる時代になりました。

そんな身近なひとときに、私たちはモリスの夢見た「生活と芸術の統一」の世界に生きているのだと噛み締めてみるのはどうでしょうか?


おすすめ書籍

ウィリアム・モリスをもっと知りたい方にはこちらの書籍がおすすめです!

もっと知りたいウィリアム・モリスとアーツ&クラフツ

モリスの人生と作品について、そしてその意志を受け継いで興ったアーツ・アンド・クラフツ運動の歴史についてまとめてある本です。簡単でわかりやすく、モリスについて知りたいと思った方はまずこの本から読んでみることをおすすめします。

民衆の芸術

モリス自身の著作で、彼の信条の根幹である「民衆のための、民衆による芸術」についてが書かれています。50年以上前の書籍なので入手が大変かもしれませんが、談話方式で読みやすいのでおすすめです。

評伝 ウィリアム・モリス

モリスについてもっと詳しく知りたい!という方にはこの本がおすすめです。本記事では省略した多彩な仕事が事細かに書かれています。邦訳されている本の中でも最も詳しく書かれている「モリス図鑑」と言っても過言ではありません。


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