現在、新型コロナウイルスにより世界中の”生活”が大きく変化しています。日本も例外ではなく、飲食店や旅行代理店などを中心に大きな打撃を受けています。社会が大きく疲弊している時だからこそ、弊社のデザインの力を活かし、コロナ下の生活の課題にアプローチすることで社会に貢献できないかと考え、このプロジェクトを始めました。
この記事では、ユアムーンデザイン部がコロナ下にあると考える”課題”の一つに焦点を当て、プロダクトを開発するストーリーを紹介します。デザインデータは無料公開していますので、ぜひ活用してください。
目次
制作の過程・ストーリー
1:共感/調査
コロナ下の現在、全国的にリモートワークが浸透し、家にいる時間が多くなりました。今まで以上に家にいる時間が増え、生活様式が変わり様々な課題が生じたと思います。今では、家の空間をより広く快適に使うため、断捨離をする人が増えているニュースやリモートワークで使いやすい椅子の話題がありましたね。

ユアムーン デザイン部では、まず初めに、こうした社会の話題や自分たちが感じる課題をリストアップしました。下記のリストの中で、”マスクをどこにしまうか”というキーワードが非常に身近かつ重大な課題であることが一致しました。

家にいる時間が多くなる半面マスクを着用する習慣が一般化し、外出時には必ずマスクを着用するようになりました。
医療用の使い捨てマスク不足の深刻さが叫ばれ、洗濯して使いまわせる布マスクが多く普及しました。更に、政府からも布マスクの全戸配布(通称:アベノマスク)が行われ、マスクを所持しない家庭は事実上無くなったと言えます。

ここからは、マスクについての調査を見ていきましょう。
下記のデータは、「あなたは、同じマスクを使用している間、何回ぐらい口(顔)から外しますか。」という問いに対する回答です。このデータから多くの人にとって、マスクを一時的にしまう場所が必要であることがわかります。
また、マスクを着用している人のデータも見てみましょう。現在、東アジアの国を中心に多くの人がマスクを着用していることがわかります。

また、家庭内感染を中心とした室内での感染が多くなっています。室内でもマスクを着用していると思いますが、外さざるを得ない状況もあります。また、自宅などでは外出時に比べ、気のゆるみが生じやすいと思います。

2:分析
「1:共感/調査」の調査結果をもとに、下記の画像のような要件にまとめることが出来ます。マスクの管理課題に着目し、「マスクを片づける」をキーワードに設定しました。
家庭内でバラバラにマスクを置くことは(特に大家族)、家庭内感染が拡大していることを考慮すると衛生的観点から望ましいこととは言えません。
また、基本的に布マスクは使い捨てではないため、これまで普及していた使い捨ての医療用マスクとは異なり、何処かに片づける必要があります。加えて、各ブランドが新商品を発表してきたこともあり、ファッションアイテムとしての要素も強くなりました。こういった背景により、衣類と一緒に片づける・分類することが多くなったのではないでしょうか。そこで、布マスクを衛生的かつスタイリッシュに片づけるという課題をプロダクトによって解決し、日常生活に新しい価値を創り出すことを目指しました。

3:アイデアスケッチ
ここからアイディアを展開します。この段階のスケッチでは、大まかな方向性を決めるために描くもので、ディテール、テキスチャーなど、細かい部分は決めません。あくまで、チーム内でアイディアを共有するためのものと位置付けています。
今回は大きな方向性として3つの布マスクを片づけるプロダクトの案を出しました。



4:プロトタイピング
ユアムーン デザイン部のミーティングでは、前述した3枚目のアイディアで進めていくことに決定しました。この案は、これまでのプロダクトには無い造形的新規性があり、機能面でもマスクと他のものと触れないことが決め手となりました。
次に実際のプロトタイプ作成を行います。今回のプロトタイプ作成では、3Dプリンターを活用します。スケッチを何度も繰り返すというより、スケッチとモデリングを頻繁に行き来する「スケッチ⇆モデリング」といった形で進めています。
これまでに細かい修正を含めると30モデル以上の検証を行いました。
プロトタイプ-1
プロトタイプ-1では、重心の位置とカバーの大きさが課題となりました。持ち手を持つと傾いてしまい、使用に耐えうるものではありません。また、カバーが小さくマスク同士の間隔の確保や手を入れた時の使用性に問題がありました。


プロトタイプ-2
プロトタイプ-2では、プロトタイプ-1での問題点を踏まえたデザインの改修を行いました。カバーをより大きくし、掛けたときに傾かないようにスライド部分のデザインを変更しました。
問題点として、スライドしてマスクを取り出すことが、非常にやりずらいことがわかりました。使用法について再検討する必要があります。


プロトタイプ-3
プロトタイプ-3では、スライド機構を回転機構に変更しました。スライドでマスクをかける場合に比べ、安定した重心位置でマスクを取り出すことが出来、より使いやすいものにすることが出来ました。
また、持ち手の部分もプロトタイプ-1,2に比べ太くし、持ちやすさも向上させています。マスクをかける横棒も長くし、外側に一時的にかけやすい形状に変更しています。
スケッチだけではわからない”かたち”が多くあります。プロジェクトの期間にもよりますが、プロトタイプはなるべく数多く回しましょう。


3DCADを使用し、動作の確認を行います。また、画像を簡単に合成し、チーム内で使用シーンを共有します。


5:製造/まとめ
最後に製造についてまとめます。今回の製品開発では、3Dデータの無料公開、小ロット生産を目的とし進めていました。大量生産を視野に入れる場合、プロトタイピングの過程で、金型設計師との情報の共有をするとその後の工程がよりスムーズに進むでしょう。せっかくいいものをデザインしたとしても、その製品が金型で作り出せない形状であったり、金型代がとても高くなってしまっては元も子もありません。
3Dプリンターは金型では作り出せないような形状まで作れる便利な機械です。だからと言って、その性能の良さに使われてしまってはいけません。3Dプリンターで出力した先の工程まで見通せるデザイナーこそ一流と言えるのではないでしょうか。
3Dデータを取得する

下記のフォームにて、アンケートにご回答いただければ3Dデータを無料で配布させていただきます。
また、2021年3月より限定的に3Dプリンターで出力した試作品を販売したいと思います。こちらも是非お申込みください!
ご利用規約/注意事項
※当サイト素材/3Dデータを改変したりそのままの素材/3Dデータとして再配布、または販売する事は禁止です。
※当3Dデータ素材は、個人、法人を問わず、使用可能です。(商用利用不可)
※マスクをかけることを目的としています。それ以外の用途での使用は控えてください。
※現在、ユアムーン株式会社にて意匠権申請中です。(出願番号:2021000046)