皆さんこんにちは!Euphoric編集部です。
皆さんは、2020年に生誕100年を迎えたフランス映画の巨匠エリック・ロメールをご存じですか!?
今回は、今回はそんなエリック・ロメールとその作品についてを紹介します!
エリックロメールとは
本名 | エリック・ロメール (Jean-Marie Maurice Sherer) |
生年月日 | 1920年3月21日 |
没年月日 | 2010年1月11日 |
国籍 | フランス |
職業 | 映画監督、脚本家、映画批評家 |
エリック・ロメールとヌーヴェル・ヴァーグ
来歴
フランス中部にあるヌーヴェル・アキテーヌ地域圏(アメリカでいう州)のコレーズ県チュール(県庁所在地のような場所)に生まれました。大学では文学を学び、教師の資格を得ます。卒業後はパリのリセ(日本でいう高校)で古典文学を教え、その傍らで映画評論を執筆しました。
彼の教え子の一人によって創られた「シネクラブ・デュ・カルティエ・ラタン」(カルティエ・ラタン地域の映画鑑賞クラブのようなもの)にて、ロメールは主宰と映画の解説役を担っていた。当時のフランスにはこのようなシネマクラブがいくつかあり、それに参加していた人物たちが後のヌーヴェル・ヴァーグの中心人物となります。
ロメールは彼自身のシネクラブについて、「我々にあっては、なんでも上映し、我々と我々の観客には傑作とはこれであり、しかもこれではないと言うことが許されていたのだ」と述べている。その思想に基づき、上映される作品は差別なく、他の作品を比較する事もなく網羅的であったといわれている。
1950年当時は彼のシネクラブによる機関誌を創刊していたが早めに廃刊し、ヌーヴェル・ヴァーグの精神的父と称される「アンドレ・バザン」らと共に「カイエ・デュ・シネマ」を創刊に合流する。バザンの死後、ロメールは編集長を引き継ぎ、6年務めた。
彼は映画の批評だけでなく、小説をはじめとした執筆活動や映画監督に携わり、数多くの作品を世に残し、2010年1月に当時89歳で他界した。
彼の活躍や歴史を振り返ると、一層作品や作風が気になってきますよね!
よりロメールの作品を楽しんでもらうためにも、度々登場している単語「ヌーヴェル・ヴァーグ」について説明します。
フランス映画の歴史を創ったヌーヴェル・ヴァーグ
何やら聞きなれない単語の「ヌーヴェル・ヴァーグ」ですが、「新しい波」(ニューウェーブ)という意味です。
意味はそのまんま。いわば、フランス映画の転換期ですね。一般的な定義としてよく挙げられるのは、1950年代末から1960年代中盤にかけて制作された、若い作家達のロケ撮影中心、同時録音、即興演出といった手法に共通した一連の作品です。
また、当時の映画監督は制作会社にて助監督などの経験を積んだ者が多かったのですが、ヌーヴェル・ヴァーグに関連する人物は脚本経験を持つものや、当時の映画批評家のように執筆主義の側面も持ち合わせています。
ロメールはこの若い監督たち、トリフォーやゴダールと比べると10歳離れており、バザンとは1つ差であるように年長ですが、「親愛なるモモさん」「モモお兄さん」と呼ばれるように慕われる存在でした。
そんなヌーヴェル・ヴァーグですが、実は定義があいまいで、関わった彼らが称したのではなく、そもそもフランスの週刊誌が載せた「新しい波来る!」というキャッチコピーがそのまま定着したものといわれています。そのため明確な始まりと終わりは決まっていません。
精神的な父アンドレ・バザン
ヌーヴェル・ヴァーグを語るならば忘れてはならないのがアンドレ・バザンです。
彼は先に紹介したようにエリック・ロメールらと共に、「カイエ・デュ・シネマ」の創刊に尽力し、ロメールに後任するまで編集長を務めました。彼は批評家であり、監督の一面も持つ人物で後に有名となるフランソワ・トリュフォーを引き取って育てた意味でも父のような人物です。白血病により40歳という若さでこの世を去りましたが、彼の残した教え子や仲間たちがヌーヴェル・ヴァーグの主要人物になりました。
ちなみに、ヌーヴェル・ヴァーグの監督紹介でよく右岸派・カイエ派、左岸派と耳にする機会もあると思います。これは「カイエ・デュ・シネマ」がセーヌ川の右側にあったのに対し、セーヌ側の左側、モンパルナス界隈に集まった人々のことを指しています。
ロメール作品の自然光、リアルさ
キャストは20代の若者を多く起用しています。特に素人の俳優を使うことを好みました。そして編集作業はほとんどせず、ドキュメンタリー性のある生っぽさを残すことにこだわりました。
舞台はパリの街角や避暑地のビーチが多く、彼の作品は自然光にあふれ、青い空や青々とした緑、澄んだ海や雄大な山々など詩的な情景を映し出します。また撮影は物語の時系列に沿い、時間帯もシーンの時間に合わせて撮影しました。「私の映画は気象学に基づいています。毎日気象局に電話しなければ、外の天気に合わせて撮影されているため、映画を作ることができませんでした。私の映画は天気の奴隷です。」と述べているほどです。
そして、何より彼の作品の特徴は登場人物の長い会話にこそあります。男女関係についての会話や、休暇の場所を探すなどのありふれた問題について。ロメール作品の登場人物はほとんど中産階級で大学教育を受けていたため、文学や哲学的な余談も時折登場します。
彼のゆったりとした間のある会話で構成されたストーリー展開や、映像の自然なまばゆさ、衣装のレトロさなど、現代でいう「エモい」といわれる映画達の原点ではないでしょうか。
作品紹介
ロメールは数多くの短編映画や長編映画を生み出しましたが、それらの映画にもさらにシリーズ構成された作品があります。
主演や物語の内容は毎回違いますが、テーマごとにシリーズ化された、そんな「六つの教訓話」シリーズ、「喜劇と格言劇」シリーズ、そして「四季の物語」シリーズ、から一作品ずつ取り上げて紹介しようと思います!
モード家の一夜(1969)
「六つの教訓話」シリーズ
- 第一話 モンソーのパン屋の女の子(1962)
- 第二話 シュザンヌの生き方(1963)
- 第三話 コレクションする女(1967)
- 第四話 モード家の一夜(1969)
- 第五話 クレールの膝(1970)
- 第六話 愛の昼下がり(1972)
はじめに紹介するのは「六つの教訓話」シリーズから第四話モード家の一夜です。
雪の降る冷たい空気の中、交わされる言葉の後に来る沈黙。距離を紡ぐ男女のドラマが繊細なモノクロームで描かれています。
アカデミー賞、ゴールデングローブ賞ノミネート、全米映画批評家協会賞受賞などアメリカでの成功を収めた作品です。優柔不断且つ恋愛に対して真面目な主人公と、彼を誘惑するモード。リアルな会話に二人の駆け引き、ドキドキする展開に、小気味よくもバサッと次のシーンに飛ぶところも見どころです。
原題 | Ma Nuit Chez Maud |
キャスト | ジャン=ルイ・トランティニャン
フランソワーズ・ファビアン マリー・クリスティーヌ・バロー |
監督・脚本 | エリック・ロメール |
製作年 | 1968年 |
上映時間 | 111分 |
あらすじ
主人公はクリスマスが近づく頃、内気な男はミサで出会った女性が自分の妻になると直感する。その後、再開した友人に誘われて女友達モードの家で一夜を過ごすことに。さらに翌日、主人公はヴィダルの友人で小児科医の女性モードの家に一人で泊まることになる。美しい黒髪を持つ奔放な無神論者のモードは主人公を誘惑するが…。
海辺のポーリーヌ(1983)
「喜劇と格言劇」シリーズ
- 第一話 飛行士の妻(1980)
- 第二話 美しき結婚(1981)
- 第三話 海辺のポーリーヌ(1983)
- 第四話 満月の夜(1984)
- 第五話 緑の光線(1985)
- 第六話 友達の恋人(1987)
次に紹介するのは「喜劇と格言劇」シリーズから、第三話海辺のポーリーヌです。
ベルリン国際映画祭、フランス映画批評家協会賞、ボストン映画批評家協会賞を受賞した作品です。
美しい海辺の風景に男女のゴタゴタ。物語の枠を超えたリアルさに、好き嫌いの感情を飛び越えて「あぁ、こんな人いるな」「その気持ちちょっとわかる」と共感してしまう人もいるのではないでしょうか。
原題 | Pauline a la plage |
キャスト | アマンダ・ラングレ
アリエル・ドンバール パスカル・グレコリー |
監督・脚本 | エリック・ロメール |
製作年 | 1983年 |
上映時間 | 94分 |
あらすじ
まだ恋を知らない15歳の少女ポーリーヌは、いとこのマリオンとノルマンディーの避暑地で無計画なバカンスを楽しむことに。海に近い丘の上に建つ空き家を借りた2人は、マリオンの元恋人でいまだ彼女に未練があるピエールと、その知人であるプレイボーイのアンリと出会う。マリオンはたちまちアンリに惹かれるが、アンリはキャンディ売りの娘ルイゼットを部屋に誘う。一方ポーリーヌもサーファーのシルヴァンと急接近する。それぞれの恋の行方は…。
冬物語(1992)
「四季の物語」シリーズ
- 第一話 春のソナタ(1990)
- 第二話 冬物語(1992)
- 第三話 夏物語(1996)
- 第四話 恋の秋(1998)
最後に紹介するのは「四季の物語」シリーズから、第二話冬物語です。
ベルリン港再映画祭にて国際映画批評家連盟賞を獲得した作品。
主人公の行動に翻弄されつつも憎めない。臨場感あふれる映像に、会話に、素敵だと思いつつ「ロメールって乙女だなぁ」なんて感じてしまう作品です。
原題 | Conte D’Hiver |
キャスト | シャルロット・ヴェリ
フレデリック・ヴァン・デン・ドリーシュ ミシェル・ヴォレッティ |
監督・脚本・音楽 | エリック・ロメール |
製作年 | 1991年 |
上映時間 | 114分 |
あらすじ
女の信念と奇跡的な偶然を描く現代のおとぎ話。主人公は夏休みにブルターニュ地方の島で出会ったシャルルと情熱的な恋に落ちた。彼女は彼と別れパリへ戻る際、彼に自宅の住所を教える。5年後の朝、彼女はパリ郊外にあるロイックの家のベッドで目覚め、パリのベルヴィルにあるマクサンスの経営する美容院に出勤する。彼女はマクサンスとも付き合っているが、彼は妻と別れ、店を売り、故郷のヌヴェールで新たな店を開業するという。
無教養な彼女は本好きのロイックを心から愛せない。彼女が本当に愛する調理師のシャルルはアメリカで働いていたが、彼女が自分の住所を間違えたため音信不通になってしまった。
ある日主人公は、心から愛していない男性と結婚すべきではないと思いなおし、パリに戻り、運命の愛に人生を賭けることにする…。
まとめ
今回はフランス映画界の巨匠、エリック・ロメールを紹介しました。
映像美に癒されたくなったとき、フランス映画を手に取ってみようかなと思い立った時、リアルな恋愛を見たくなったとき、人生で一度は観てみることをおすすめします。
では、また次回。