ロイヤル・カレッジ・オブ・アート|建築スクールの6プログラムを徹底解説

ロイヤル・カレッジ・オブ・アート|建築スクールの6プログラムを徹底解説
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 建築スクール(School of Architecture)ケンジントン校舎

アートコンサルティング

ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art、通称RCA)の School of Architecture(建築スクール)は、ロンドンにある大学院だけの建築教育の場です。公式サイトはこのスクールを「空間にかかわる諸分野でデザイン研究を進めるための、他に類を見ない学際的な環境」と説明し、学びの場を「大学院のみの環境(postgraduate-only environment)」と書いています。

目につく特徴が3つあります。建築が美術とデザインの大学院のなかに置かれていること。ADS(Architectural Design Studios)と呼ばれる縦割りのスタジオ制で、1年生と2年生が同じ場所で机を並べること。実務家が学生につくメンター制度が全プログラムに置かれていることです。

この記事では、2026年10月2日にRCA公式サイト(rca.ac.uk)で確認できた記載だけを使って、建築スクールの6つの学位課程を1件ずつ見ていきます。学費も日程もプログラムごとに違い、年度で変わりますので、出願の段階では記事末尾の公式ページで必ず最新をご確認ください。それでは早速いってみましょう。

RCA建築スクールの基本情報

RCAケンジントン・キャンパスのスティーヴンス・ビル(ジェイ・ミューズ側の入口)
RCAケンジントン・キャンパスのスティーヴンス・ビル。ジェイ・ミューズ側の入口です(2020年撮影)。建築スクールが置かれているケンジントンの校舎は、ダーウィン棟とスティーヴンス棟からなります/撮影:Shadowssettle(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons
スクール名(公式表記)School of Architecture
学部長Sandra Denicke-Polcher(Interim Dean、暫定学部長)
主な所在キャンパスRCA Kensington(6プログラムすべての「Current location」がKensington)
学位課程の数6件(Graduate Diploma 1件、MA 2件、MArch 2件、MPhil/PhD 1件)
学び方スタジオを中心に、歴史・理論・メディア・技術のセミナーを組み合わせる
メンター制度実務家と学生を結ぶ Practice mentor schemes を全プログラムに設置
連携組織(公式掲載)Community Jameel/Royal Institute of British Architects/The Architecture Foundation/Prosit Philosophiae Foundation/The Building Centre/Architects Registration Board/Autonomy/Sharjah Triennale
研究の協力先(公式掲載)London Councils/Peabody/Loti/Clarion/Fundación Desierto de Atacama/Arts Catalyst, London/The Global School, Beijing/Het Nieuwe Instituut
設備(公式記載)木材・金属・プラスチック・樹脂の工房、デジタル工作機器、予約制のプロジェクト用・制作用スペース。スタジオの作業スペースはプログラムで異なり、Architecture MArch と Interior Design MA は「Studio workspace is provided for each student」(1人ずつ)、Environmental Architecture & Urban Design MA は「shared studio workspace」、Architecture MPhil/PhD は「Shared workspaces are provided for all research students」(いずれも共用)
学位課程以外Architecture Summer School、Teaching Spatial Design(いずれも短期コース)

学位課程は6件です。この6件が、建築家資格につながる専門職課程から、建築以外の分野から転向するための1年間の準備課程、そして博士課程まで、段差をつけて並んでいます。

連携組織の欄に Architects Registration Board(ARB、英国の建築家登録機構)と Royal Institute of British Architects(RIBA、英国建築家協会)が並ぶのは、このスクールに資格につながる課程があるからです。一方で同じ欄には Sharjah Triennale(公式表記のまま。実体は建築の国際トリエンナーレ Sharjah Architecture Triennial で、第1回のキュレーターは建築スクールの Adrian Lahoud 教授)や Autonomy のように、建築家登録の制度とは別の文脈の組織も並びます。この両方が1つの表に載っているのが、このスクールの性格だと考えられます。

2026年に3スクール体制へ。建築スクールは再編の対象外です

RCAについて調べると「4つの学部がある」という説明に行き当たることがありますが、これは古い情報です。RCAは2026年9月1日付でスクール(学部に相当する単位)の構成を変えました。

公式のニュースリリース(2026年9月1日公開)は、新しく School of Communication & Design を設けたと発表し、「新スクールは、RCAの既存の School of Architecture および School of Arts & Humanities と並んで運営され、大学の学術的な枠組みを3スクール構造(three-School structure)へと簡素化する」と書いています。

時期スクール構成
2021年(旧記事の時点)School of Architecture/School of Arts & Humanities/School of Communication/School of Design の4つ
2026年9月1日以降(現在)School of Architecture/School of Arts & Humanities/School of Communication & Design の3つ

大事なのは、統合されたのは Communication と Design の2つで、School of Architecture は再編の対象外だったことです。建築スクールは名前も独立性もそのままで、3つのうちの1つとして続いています。

ただし、旧スクールのURL(/study/schools/school-communication/ と /study/schools/school-design/)は現在も生きていて、開くと新しい School of Communication & Design のページが表示されます。単独の School of Design というページはもう存在しません。古い記事やまとめサイトのリンクをたどると旧名のまま案内されることがありますので、スクール名は公式のスクール一覧で確かめるのが確実です。

ShowRCA: School of Architecture(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 公式YouTube/2019年7月公開)

学び方は「スタジオが主、セミナーが従」

プログラムの中身に入る前に、スクール全体に共通する学び方を見ておきます。

公式サイトはスクール全体の進め方を、「スタジオを基盤とする学習環境を、歴史・理論・メディア・技術のセミナーが支え、そこで学生は幅広いデザイン研究の方法と考え方に出会う。各プログラムのなかで、ライブプロジェクトとフィールドワークの機会が、スタジオリーダーの教育的な狙いに沿って用意される」と書いています。授業を積み上げる形ではなく、スタジオの設計が中心にあり、セミナーや技術の授業はそこに注ぎ込むために置かれています。

ADS(Architectural Design Studios)という仕組み

専門職課程の Architecture MArch の中心にあるのがADSです。公式サイトによれば、ADSは学年をまたぐ垂直統合の仕組みで、それぞれに2名から3名の専任チューターがつき、現代の建築実践に対する独自の立場と関心のテーマ、対応する技能群を持っています。ADSごとの課題文(ブリーフ)が、その教育の枠組みです。

公式サイトは、ADSの構造にとって重要なのは学生同士の学び合いだとして、1年生と2年生が隣で作業することを挙げ、机や作業スペースもADSごとにまとめて配置していると書いています。入学した年から、1年先を行く人の手つきが見える位置に座ることになります。

メディア研究はスクール横断で行われます

もう1つの特徴が Media Studies です。この科目は建築スクール全体で教えられ、Environmental Architecture & Urban Design MA の履修表には「Media Studies (School Wide Unit)(スクール共通ユニット)」として入り、Interior Design MA の1学期にも同じ名前のユニットがあります。公式はこれを「建築スクールに置かれ、複数の空間デザイン分野から学生が集まる」科目と説明しています。空間を写真・映像・図面・模型・文章のどれで語るのかという問題を、専門職課程とインテリアと環境系の学生が同じ教室で扱う設計です。

RCA建築スクールの学び方を、縦割りのスタジオ制ADS、スクール横断のMedia Studies、実務家と結ぶメンター制度の3つの特徴で整理した図
図:建築スクールの学び方の3つの特徴

研究の重点領域と、進行中のプロジェクト

博士課程のページには、スクールが重点を置く研究領域が挙げられています。

公式表記日本語の目安
Climate Justice気候正義
Architecture & Social Movements建築と社会運動
Institutional Forms & Practices制度の形と実践
Documentary Research, Heritage & Digital Materialitiesドキュメンタリー研究、遺産、デジタルな物質性
Interior Architecture & The Culture of Careインテリア建築とケアの文化
Feeling, Fiction, Frame感情、フィクション、枠組み
Laboratory for Design and Machine Learningデザインと機械学習の研究室

実際に進んでいるプロジェクトとして、公式サイトは次のものを挙げています。

プロジェクト名公式の説明(要旨)
Data-based analysis of dwelling plans in London新しい統計と寸法のデータセットを用い、ロンドンの住宅ストックを面積基準との関係で分析する
The Home, the Household and Covid-19コロナ下でロンドン住民の住まいの使い方、体験、将来の住宅への期待がどう変わったかを調べる
Housing Studies Through the Eye of the Machine機械学習の道具で視覚データを住宅設計と政策の分析・評価に統合する可能性を探る
Designing Managed Retreat: Coastal Communities in the Green Transition地域住民と協働し、英国の海岸地域における気候変動への課題と応答を探る
Visualising Relations to Land of Traditional and Indigenous Peoples先住民や伝統的な人々と土地・領域との固有の関係を3Dデジタル環境で可視化する

研究の協力先に London Councils(ロンドン自治区協議会)やPeabody、Clarionといった住宅供給の組織が並ぶのは、これらのプロジェクトの性格と直結しています。

建築スクールの6つのプログラム

学位名は、プログラム一覧やスクールページの見出しで使われている「分野名+学位」の順で書きます。ただし公式サイト自身も、本文やニュースリリース、履修要項のPDF名では逆の語順を使っています(Graduate Diploma のページには「the RCA’s MArch Architecture」、MArch のページには「The MArch Architecture programme」、同ページのPDFは「MA Architecture programme specification 2026-27」)。表記は1つに統一されていない、というのが実際のところです。本記事はプログラム一覧の見出しの表記に合わせています。

1. Architecture MArch (ARB/RIBA)

学位MArch (ARB/RIBA)
単位240 credits
修業年限2年(フルタイムのみ)
キャンパスKensington
学費(2027年9月入学)Home £9,780/年(subsidised 表記)、Overseas and EU £30,550/年
認定RIBAとARBによる認定を1983年から継続。公式ページに「The programme is subject to approval by the Architects Registration Board (ARB) which is expected by September 2027」との注記あり
Discover Architecture MA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 公式YouTube/2025年5月公開)。動画のタイトルは旧称の「MA」表記ですが、現在の公式表記は Architecture MArch (ARB/RIBA) です

建築スクールの中心にある専門職課程で、英国で建築家として登録する道筋のうち RIBA Part 2 にあたる段階を担います。公式ページは狙いを「現代の建築実践の境界に挑み、それを広げるための知識、技能、批評的な力を学生に備えさせる」と書き、性格を「建築を目標ではなく媒体として探る、包摂的で批評的な場」と表現しています。

年次ユニット公式に書かれている評価方法(要旨)
1年目Studio IStudio II で展開する設計の土台をつくる。ライブプロジェクトへの参加を含む。1学期末レビューでの口頭発表と、研究資料・発表資料のデジタル提出で評価
1年目Studio II審査パネルへの正式な試験発表。合格が2年目進級の条件
1年目Technical Studies講義・ワークショップへの参加と Technical Studies Journal の提出
1年目Integrated Design Practice法規・計画の文脈、プロジェクト資料、重要箇所の詳細研究をまとめた Design Report
1年目History & Theory Studies歴史的・理論的な枠組みへの取り組みを示す論文
1年目Media Studies Iスクール横断で実施。メディアを用いたプロジェクト成果の提出
2年目Independent Research Project(IRP)最終プロジェクトの発表、2年分のポートフォリオ、最終展示についての批評的な振り返り
2年目Professional Practice口頭発表と、図解を伴う論文
2年目Thesis全編を文章で書く形か、文章に非文章メディアを組み合わせる形。指導教員と相談して決める
2年目Elective Units自分の実践に合わせて選ぶ。内容は定期的に入れ替わる

入学要件は、6つのプログラムのなかでもはっきり書かれているほうです(原文は後述の学力要件の表に載せました)。建築の質の高い学士号(RIBA Part I)または国際的に同等以上の学位と、設計事務所での実務経験1年以上。それ以外の学歴はポートフォリオとパーソナルステートメントで検討されるので、建築以外の出身でも門が閉じているわけではありません。ただし「RIBA Part II の免除を得たい場合は、RIBA Part I を満足に修了している必要がある」とも書かれています。

卒業後について公式ページは、修了生が主要な建築事務所や自分のスタジオのほか、研究、執筆、キュレーション、政策、都市計画、ゲーム、アニメーション、演劇、映画、ビジュアルアートの領域でも活動していると書いています。同ページが挙げる修了生は次のとおりです。

公式ページが挙げる修了生
Assemble(共同創設者のAnthony Engi Meacock、Giles Smith、Paloma Strelitz)、6a Architects(Tom Emerson、Stephanie Macdonald)、dRMM(Sadie Morgan、Alex de Rijke)、Eric Parry、Gort Scott(Fiona Scott)、Karakusevic Carson Architects(Paul Karakusevic)、PoOR Collective、Ben Kelly、Sir Edwin Lutyens、Maxwell Ayrton、Tom Coward(AOC)、Kirsten Mackay
英国建築家協会(RIBA)本部、ロンドン・ポートランド・プレイス66番地
英国建築家協会(RIBA)本部、ロンドン・ポートランド・プレイス66番地(2012年8月撮影)。ジョージ・グレイ・ウォーナム設計、1930年代のグレードII*指定建造物です。RCAの Architecture MArch はこのRIBAとARBの認定を1983年から受けています/撮影:Cmglee(CC BY-SA 3.0)/出典:Wikimedia Commons

2. Architecture & Spatial Practice Graduate Diploma

学位Graduate Diploma
単位120 credits
修業年限1年(フルタイムのみ)
キャンパスKensington
開講最初の入学は2027年9月。公式ページに「This programme is subject to validation」(認可手続き中)との注記あり
学費(2027年9月入学)Home £9,800/年、Overseas and EU £30,550/年(いずれもオンキャンパス学習)

2027/28年度から始まる新しい課程です。公式のニュースリリース(2026年9月16日公開)は、これを「建築以外の分野から空間デザインへ軸足を移そうとする人のために、分野の橋渡しをする1年間の集中的な転向ルート」と説明しています。

この課程は、進学の道がはっきり書かれています。公式ページは、Merit または Distinction を取得すれば、RCAの Architecture MArch、あるいは建築スクールの他のMAプログラムへの進学が保証されると明記しています。対象は修了した年の次の学年か、その翌年です。加えて合格者全員が、RCAのMAまたはMResについて外部の出願者と並んで必ず選考の対象になるとされ、この扱いは修了から3年間有効です。

ユニット公式の説明(要旨)
Design Workshopドローイング、模型づくり、素材の試行を通じて設計の核となる技能を組み立てる探索的な演習
Project Proposal共通の課題文のなかで自分の枠組みと提案を立て、敷地と文脈に用途・素材・空間の面から応答する
Contextual Studies構造、サステナビリティ、歴史と理論、専門職としての振る舞い、規制といった文脈を扱う中核科目
Portfolioそれまでの成果を、次の進学や仕事に使える一貫したポートフォリオへ編集し直す

公式ページは、ロンドン各所への現地訪問がカリキュラムに不可欠であり、学生が建築と建造環境を学ぶだけでなく体験し、建物が都市の文脈や構法・材料とどう関わり、地域にどんな影響を与えるのかを見ると書いています。さらにこの課程の学生は MArch のコホートと同じ場所に配置され、行事を共有し、学年暦をそろえ、教員体制も重なるとしています。

出願要件は後述の表のとおりで、学歴・職歴の分野は問われません。ただし「強い造形的な感性と、実際に示せる創造的能力が入学に必須」とされています。公式はさらに「強い出願は、批評的な文章、リサーチ、あるいはその他のまとまった仕事を通じて、創造的な潜在力と知的な好奇心の両方を示すものになる」としています。デザイン以外の出身者については、既存の知識や分析的な思考を視覚・空間・物質の形にどう翻訳してきたかを明確に示してほしいと補足されています。

建築以外の分野の出身者が、1年間のGraduate Diplomaで一定の成績を取り、Architecture MArchなどに進む道すじを3段階で示した図
図:建築以外の分野から進む道すじ

3. Design Practice MArch

学位MArch
単位180 credits
修業年限フルタイム1年(45週)/パートタイム2年(90週)
キャンパスKensington
学費(2027年9月入学)Home フルタイム £15,900、パートタイム £10,350/年/Overseas and EU フルタイム £40,200、パートタイム £26,150/年
※このページだけ、学費欄の見出しが「Fees for September 2026 entry」、直下の本文が「Fees for September 2027 entry on this programme are outlined below.」と年度が食い違っています。本記事は本文側を採って2027年9月入学として扱っていますが、金額の年度は出願前に公式でご確認ください
資格公式ページに「This is not a RIBA/ARB validated Part II programme」と明記(RIBA/ARB の Part 2 課程ではありません)
Discover MArch Design Practice at the Royal College of Art(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 公式YouTube/2023年4月公開)

同じMArchでも、こちらは資格の課程ではありません。公式ページは、建築家、デザイナー、空間や創造の実践者を対象に、キャリアのどの段階でも受け入れる1年間の課程だとしており、扱うテーマは気候と建設の関係で、素材のプロセスと革新、仕様と再利用の戦略、エンボディドカーボン(建設に伴う内包炭素)、AIへの批評的な関わり、炭素会計の手法、バイオベース素材までが並びます。

ユニット(フルタイムの場合)単位公式の説明(要旨)
Material Processes(秋学期)15素材の物理的・美的・構造的な理解から、気候的・文化的・政治的な性質の検討へ進む
Carbon Economies(秋学期)15世界の建設産業における炭素の役割、炭素のモデリングと会計、投資撤退とエネルギー改革、再生可能エネルギー
Detailing Risk(春学期)15破綻や災害から出発し、フォレンジックな手法でディテールの失敗が広がる関係をたどる。解体を通して設計する
Just Transition(春学期)15気候正義の運動の構想と戦術に触れ、現在から実施できる Design Policy Proposals をつくる
大学横断の選択ユニット(秋・春に各2つ)各15デジタルの物語づくり、創造的な教育、住宅の政治、サウンドデザインと新しいメディアなど
Independent Research Project(夏学期)60学生主導の大きな調査。研究設問の立て方から、適切で新しい調査手法と記録の仕方まで指導を受ける

とくに特徴的なのが Detailing Risk です。公式ページは、ディテール(詳細設計)が美的・法的・物質的・構造的・熱的な要求が出会って調停される場所であり、ディテールの失敗は人命や健康に関わるリスクを生むと述べたうえで、このユニットは通常の学び方を逆向きにすると書いています。完成した構法の詳細から始めて、解体を通して設計する(design through disassembly)という進め方です。設計を「うまく成立させる」方向からではなく「壊れた場所」から入る。RCAがこの課程の説明で強調している組み立てです。

パートタイムは同じ内容を2年に分け、IRPも2年に分割して各30単位ずつ履修します。ポートフォリオ要件は出身分野で分かれます。美術・デザイン・建築の出身者は 10ページのPDF で関連する 3件以上のプロジェクトを含め、共同制作については自分の寄与を明示します。社会科学、人文学、政治、NGOなどポートフォリオを持たない分野の出身者は、課程のテーマに関連する過去の仕事を 図版入りの10ページの書類にまとめます。

4. Environmental Architecture & Urban Design MA

学位MA
単位180 credits
修業年限1年/45週(公式の Key details は「Full-time study」のみ。ただし同ページのビザの節には「part-time route」「the part-time MA Environmental Architecture programme」というパートタイム前提の記述が残っており、公式内で揃っていません。パートタイムの可否は出願前に大学へ直接ご確認ください)
キャンパスKensington
学費(2027年9月入学)Home(フルタイム)£16,050、Overseas and EU(フルタイム)£40,750
備考2027/28年度の新規・改訂プログラムとして公式リリースに掲載。ページ内に旧名称「Environmental Architecture MA」の記述が一部残っています
Discover the MA Environmental Architecture at the Royal College of Art(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 公式YouTube/2023年2月公開)。動画は改称前の名称で公開されています

環境と都市を1つの課程にまとめたプログラムです。公式ページは冒頭でこう書いています。「世界の環境は驚くべき速さで変わりつつある。長引く熱波と干ばつのあとに激しい降雨と洪水が続き、変わる気候は、私たちの住まい方、移動の仕方、エネルギーの得方、生息域の分け合い方を組み替えている」。そのうえで、建築・ランドスケープ・都市デザイン・環境実践のあいだの区分が、こうした結び合った条件を扱うには不十分になっていると述べています。

中心にあるのは design-action(デザイン・アクション)という考え方です。公式ページはこれを、調査と提案、研究と実践を同時に進める方法だとし、デザインを「環境的・都市的な条件を調査し、交渉し、組み替えるための批評的なプロセス」として位置づけます。扱う題材は次のとおりです。

公式ページが挙げる探究の領域
住民主導の都市計画、持続可能な都市化の形、スチュワードシップとケア、気候への適応と環境正義、土地と環境をめぐる先住民・地域コミュニティの運動、資源採掘とその生態への影響、ポスト開発と脱成長、空間的な正義における保存の役割
学期ユニット単位
1学期Design-Action Studio 1: Spatial Investigations30
1学期Seminar I: Dispositions and Formations15
1学期Media Studies(スクール共通ユニット)15
2学期Design-Action Studio 2: Spatial Propositions30
2学期Seminar II: Strategies and Constellations15
2学期Elective(選択ユニット。一覧は2027年に公表予定)15
3学期Independent Research Project60

求める人については、「デザイン系の学位を持っていることを強く推奨する」としつつ、建築や都市計画から社会科学、地理学、ファインアート、経済学、NGO、公的部門まで幅広い出願を歓迎すると書かれています。公式ページは「環境建築と都市デザインの両方に通じた専門性を持って来てほしいとは考えていない」と書き、求めるのは多分野のコホートに独自の視点を持ち込める人、既存の専門の外にある方法や考え方に開かれている人だとしています。

5. Interior Design MA

学位MA
単位180 credits
修業年限1年/45週(フルタイム)
キャンパスKensington
学費(2027年9月入学)Home £16,050、Overseas and EU £40,750
Discover Interior Design MA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 公式YouTube/2026年8月公開)

公式ページのキャッチフレーズは「部屋から都市まで、インテリアデザインを探る(Explore interior design from the room to the city)」です。室内装飾の技術を磨く課程ではありません。公式ページは「インテリアは居住者と建造環境のあいだのインターフェースである」という見方を促し、「インテリアは社会的な変化の担い手である」という考えを支持すると書いています。

特徴的なのが Platforms(プラットフォーム)という3本立ての構造です。superFUTURES、superREUSE、superMATTER の3つで、それぞれ未来の実践、再利用、素材に重心を置いています。2025/26年度のテーマは superFUTURES: Ficta Ordo、superREUSE: Civic、superMATTER: Perishable。公式はこのPlatformsを「挑発、あるいはアイデアの発生装置」と呼び、学生が自分の研究とプロジェクトを立てるときに使うものだとしています。

学期ユニット単位公式の説明(要旨)
1学期Primer30インテリア空間における批評的な考え方の原理と方法を探り、統合する
1学期Media Studies15建築スクール内で複数の空間デザイン分野の学生とともに受けるメディア実践・研究の科目
2学期Platforms303つのPlatformsのテーマに照らして自分のプロジェクトを立ち上げ、展開する
2学期Elective(選択ユニット)公式に単位数の記載なし他プログラムの学生と一緒に学び、自分の学びを組み立てる
3学期Independent Research Project60自分で設定した課題に取り組む。展示などの外部に向けた要素を含む

手を動かすことへの言及も明確です。公式ページは、おもにデジタルな社会のなかで手を使って働くことには特別な何かがあるとして、スタジオと工房でインスタレーションを組み立てる経験と「thinking through making(つくりながら考える)」を挙げています。IRPに展示などの外部に向けた要素が含まれる理由については、「自分の仕事を専門的な文脈のなかで測るため」と書かれています。

ポートフォリオの要件は、6プログラムのなかで最も具体的です。1つにまとめた単一のPDFで、自分のプロジェクトを5件以上含めること。1件目には、自分の長所がすべて現れていると考える仕事を置くこと。画像、図面、模型、プロセスの記録に加えて、自分が心を動かされたインテリア空間についての記述を入れ、それがなぜ重要で自分の仕事をどう触発したのかを簡潔に書くことも求められています。

6. Architecture MPhil/PhD

学位MPhil/PhD
修業年限PhD:フルタイム3〜4年、パートタイム6〜7年/MPhil:フルタイム2〜3年、パートタイム4〜6年
キャンパスKensington
学費(2027年9月入学・high residency)Home フルタイム £10,750/年、Overseas and EU フルタイム £33,900/年
学費(2027年9月入学・low residency)Home フルタイム £8,800/年・パートタイム £5,700/年、Overseas and EU フルタイム £28,600/年・パートタイム £18,550
継続在籍料(Continuation)2026/27年度 £1,000/学期
統括Professor Ines Weizman(History and Theory of Architecture 教授。公式サイトに「directs our Architecture PhD」と記載)
What is the Doctoral Training Programme for PhD researchers?(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 公式YouTube/2025年10月公開)

研究課程です。公式ページは、理論・研究・メディア・批評的な空間実践の交点に立ち、実質的な公共的・社会的インパクトをめざす実践主導型・学際型の論文を支えるとし、歴史と理論、クリティカル・エコロジー、新しい唯物論、デジタル文化の交点で建築研究を育てると書いています。

研究の対象として公式ページが挙げるのは具体的です。

公式ページが挙げる研究の対象
建築家、アーティスト、映像作家、キュレーター、その他の文化的生産者たちが、グローバル化、移住と無国籍、帝国の残響と現在に続く植民地的条件、新しいデジタル技術、生態と気候変動をめぐる生政治的な対立といった危機にどう向き合ってきたのか。空間のパフォーマティヴィティ、あるいは建築の形式と実践が、気候危機、社会運動、制度の変化とどう関わるのかを考えてほしい

支援する研究の形も、文章による学術研究に加えて、建築のプロジェクト、遺産の保存の仕事、コミュニティでの活動、アーティストとしての実践、展覧会、映画制作まで幅があります。

出願で中心になるのは研究計画書です。公式ページは 短い参考文献リストを含めて1,000語以内とし、構成を次のように指定しています。

項目公式に求められている内容(要旨)
Title研究をまとめた題目(この時点では仮のもので、変更可)
Introduction分野を広く示し、自分の研究がその分野にどう貢献する見込みかを述べる
Research background and questions分野の主要な文献と手法、既存の議論との違い、既存研究への貢献、研究設問
Research methods使う資源、学際性の有無、用いる理論的資源とその理由、文献的・歴史的・視覚的分析の形式、実践の形式
Schedule of workフルタイム3〜4年で完成させる現実的な計画
Bibliographyハーヴァード方式などの標準的な書式による参考文献

論文の分量も公式に示されています。文章だけで書く場合(thesis)は6万語から8万語、作品群と論文で構成する場合(by project)は論文が2万5千語から4万語です。

学費表の「low residency」という語に注意してください。日本に住んだまま学位を取れるという意味ではありません。公式は「現在、遠隔履修(distance-learning)の形態は提供していない」と明記し、「年次試験はすべてロンドンのキャンパスで対面で受ける」としています。さらに Doctoral Training Programme への参加が進級要件の一部で、年に3回、1週間の集中週(Architecture MPhil/PhD のページでは9月・2月・7月)に出席する必要があります。PhDは Annual Progress Reviews と中間の Confirmation Examination に合格しないと次の年次に進めません。

ポートフォリオは画像、映像、文章のいずれでも可とされ、評価の観点に「研究プロジェクトの一部となりうる特定のアーカイブ、データベース、美術館コレクションへのアクセス」や「NGO、活動家、専門分野の実践者との接点の可能性」が挙がっているのが、この課程らしい点です。なお2027年9月入学の出願は 2026年10月12日に開始すると公式ページに記載されています。

RCA建築スクールの6つの学位課程について、修業年限と海外学生向けの年間学費を一覧にして比べた表
図:6プログラムの年限と学費(2027年9月入学)

出願要件(公式の記載をそのまま)

公式ページの記載を、表の形のまま並べます。

すべての修士課程に共通する提出物

項目公式の記載
身分証明An image of your passport to verify your identification.
パーソナルステートメントA 300-word written personal statement about your motivation to study on the programme.
動画A short video, up to two minutes, of yourself talking to the camera about your personal creative journey.
ポートフォリオThree to five files containing your portfolio.(プログラムごとに要件が異なり、詳細は各プログラムページに記載)
推薦者Upload contact details for your referee(s)
出願本数You may not apply for the same programme more than once, and can apply for a maximum of two (2) different programmes in the 2027 admissions year.
選考の原則Candidates are selected entirely on merit and applications are welcomed from all over the world.

結果の通知については、公式ページが「提出が早いほど結果を早く知ることができる(rolling basis)」「結果を知るのは、出願したラウンドの締切から最長6週間後」と書いています。

公式の出願手続きのページは、学位区分ごとに3本に分かれています。上の表は修士のページの記載で、Graduate Diploma と MPhil/PhD は別ページ・別内容です。

対象公式の手続きページ修士との違い(公式の列挙にあるもの)
MA・MArch・MDes・MEd・MFA・MResmaster-application-process上の表のとおり。ほかに「Predicted or previous qualifications」「Details of relevant work experience」「Any accessibility needs」も列挙
Graduate Diplomagraduate-diploma-application-process300語のステートメントと2分動画がページに列挙されていません。代わりに「Which specialism on the Graduate Diploma you choose」「Which mode of study」「Your agent’s detail, if applicable」
MPhil・PhDmphil-and-phd-application-process推薦者が必須。「You will need to name a suitable referee」。AHRCの助成を希望する場合は推薦状2通。加えて1,000語以内の研究計画書と2分動画。300語のステートメントはこのページには列挙されていません

面接

各プログラムページにないため見落としやすいのですが、RCAの選考には面接があります。記載は出願手続きページの「What happens next?」の節で、学位区分で扱いが違います。

学位区分公式の記載
修士(MA・MArch・MDes・MEd・MFA・MRes)「In a small number of instances, it may not be possible to make a decision based on an application alone. In these cases, you will be invited to attend an interview either in person or online. Receiving a request for interview does not make you any more or less likely to receive an offer of a place. … Please ensure you are available for your interview before submitting your application.」(書類だけで判断できない場合に、対面またはオンラインで案内される。面接の案内が来ること自体は合否の有利・不利を意味しない。出願前に面接に出られるか確認するよう公式が求めています)
Graduate Diploma「In a small number of instances, it may not be possible to make a decision based on an application alone. In these cases, you will be invited to attend an interview in-person or by video call.」(修士と同じ扱い。ビデオ通話も可)
MPhil・PhD「Candidates are notified that they will be called for an interview or that their application has been unsuccessful」「Interview: either in person or online.」「Once your application has been reviewed and interview completed, you will receive one of the following application outcomes」(面接が選考の工程として置かれており、面接を終えてから結果が出ます)

Architecture MPhil/PhD の個別ページにも「The mode of research will be discussed in the interview」(研究の進め方は面接で相談する)と書かれています。

出願スケジュール(2027年9月入学)

ラウンド出願開始締切(英国時間 正午)結果通知
Round 1Monday 12 October 2026Friday 8 January 2027, 12 noon (UK time)by 19 February 2027
Round 2Monday 11 January 2027公式ページの原文は「Friday Tuesday 23 March 2027, 12 noon (UK time)」公式ページの原文は「by 5 May February 2027」
Round 3Wednesday 24 March 2027修士:Wednesday 2 June 2027/MPhil・PhD:Wednesday 14 July 2027(いずれも 12 noon UK time)修士:by Wednesday 14 July 2027/MPhil・PhD:by Wednesday 25 July 2027

注意が1つあります。公式の出願日程ページには「Graduate Diploma 2027年1月入学/締切2026年12月7日正午」という日程も載っていますが、これは建築スクールの課程ではなく、全学の Graduate Diploma Art & Design(プレ修士課程)の日程です(同ページの Eligibility 節と関連リンクが明示しています)。建築の Architecture & Spatial Practice Graduate Diploma は公式に「The first intake for this programme will be September 2027」とあり、2027年9月が最初の入学です。

Round 2 については、公式ページの表記そのものに揺れがあります。締切の欄には曜日が2つ重なって書かれ、通知の欄には月名が2つ重なって書かれています。どちらが正しい日付なのかは公式サイトの記載からは判断できません。この記事では推測で日付を補わず原文のまま載せていますので、出願前に必ず公式ページで確認してください。

なお2027年入学の出願は2026年10月12日に開きます。それまでは、各プログラムページの出願締切欄に「Applications closed, please check back soon」と表示されます(2026年10月3日時点では建築スクールの6プログラムすべてがこの表示です)。日程表が正しくても、公式ページを開くと閉じて見える時期があるということです。

学力・経歴の要件はプログラムごとに違います

6件のうち学位の分野と実務経験を指定しているのは Architecture MArch だけです。要件が書かれていないプログラムもあるので、その旨も明示します。

プログラム公式に書かれている学力・経歴の要件
Architecture MArch (ARB/RIBA)「You should have achieved a high quality first degree in architecture (RIBA Part I) or an international equivalent degree or higher and should have at least one year’s work experience in a design office. Alternative undergraduate qualifications will be considered based on portfolio and personal statement.」(建築の質の高い学士=RIBA Part I または国際的に同等以上+設計事務所での実務経験1年以上。それ以外の学歴はポートフォリオとステートメントで検討)
Architecture & Spatial Practice Graduate Diploma「We welcome applications from candidates of all academic and professional backgrounds. All candidates must demonstrate creative interest and abilities. A strong artistic sensibility and demonstrable creative ability are essential for entry.」(学歴・職歴の分野は問わない。創造的な関心と能力、造形的な感性が必須)
Design Practice MArch学位の等級・分野の要件は公式に明記されていません。「Candidates are selected entirely on merit … The selection criteria considers creativity, imagination and innovation as demonstrated in your portfolio or equivalent professional experience, as well as your potential to benefit from the programme and to achieve the MArch standard overall.」(ポートフォリオまたは同等の職務経験で判断)
Environmental Architecture & Urban Design MA「A prior design degree is strongly recommended, but we welcome applications from candidates with a wide-range of academic and professional backgrounds」(デザイン系の学位を強く推奨。ただし幅広い分野からの出願を歓迎)
Interior Design MA「You will usually have a good undergraduate degree or other appropriate experience. Professional experience, either before during or after a first degree, may be a benefit. We welcome applications from candidates from other related backgrounds, such as architecture, furniture design, product design and graphic design.」(通常は良好な学士号か相応の経験。建築・家具・プロダクト・グラフィックなど近接分野からの出願も歓迎)
Architecture MPhil/PhD学位の等級要件は公式に明記されていません。「Applications are considered in terms of quality of proposal, quality of practice (where appropriate), readiness to undertake a research degree at this level and supervisory capacity.」(研究計画の質、実践の質、研究課程に取り組む準備、指導体制の受け入れ能力で判断)

2分動画は、設問がプログラムごとに違います

共通提出物の「最長2分の動画」は、各プログラムページで答えるべき内容が指定されています。ここも一般化できません。

プログラム公式が動画で求めている内容(要旨)
Architecture MArch (ARB/RIBA)自分の言葉で作品を語り、プロジェクトのプロセスと意図、作品への批評的な振り返りを示す。形式と内容は自由だが、内容は常に作品を中心に置く。RCAで何を達成したいか、どんな視点を持ち込めるか
Architecture & Spatial Practice Graduate Diplomaプログラムページに動画の設問の記載はありません(Graduate Diploma の出願手続きページにも2分動画は列挙されていません)
Design Practice MArch自己紹介、この課程が空間の実践者としての自分をどう育てると考えるか、世界にどんな貢献を支えてくれるか
Environmental Architecture & Urban Design MAこの課程に関心を持った経緯。建築が気候変動への対応にどう貢献しうるかの考察。将来の自分と、RCAで得たいもの
Interior Design MAインテリア空間のデザイナーを志す動機、課程で達成したいこと、最も強いプロジェクトの狙いと達成の仕方、ポートフォリオで挙げた「心を動かされた空間」、課程での最大の難関、5年後の自分
Architecture MPhil/PhD背景と博士を志す動機、なぜその School または Centre に研究を置くべきか、研究に持ち込めるもの(研究の専門性や職務経験)、研究コミュニティへの貢献、研究計画の要約

ポートフォリオ要件はプログラムごとに違います

プログラム公式に書かれているポートフォリオ要件
Architecture MArch (ARB/RIBA)1つにまとめた単一のPDF。プロジェクトは5件以内、1件あたり最大10ページ。映像・メディアファイルの埋め込み可。学生時代の自主的な仕事を優先し、職務上の仕事は例外的に優れた経験であった場合にのみ関心を持つ
Architecture & Spatial Practice Graduate Diploma視覚的・物質的な探究(ドローイング、写真、制作、デジタルメディア、空間的実験など)を示すポートフォリオ、または同等の図版入り書類
Design Practice MArch美術・デザイン・建築出身者:10ページのPDF、関連する3件以上のプロジェクト/ポートフォリオを持たない分野の出身者:図版入りの10ページの書類
Environmental Architecture & Urban Design MA複雑な環境・都市・空間の条件を調査し独自の応答を展開する能力、批評的思考、出身分野に応じた技術・表現の技能(ドローイング、マッピング、模型、デジタルモデリング、GIS、可視化、映像、写真、アニメーション、コーディング、展示設計、執筆など)、調査手法、協働の経験を示すこと
Interior Design MA1つにまとめた単一のPDF。自分のプロジェクトを5件以上。1件目に自分の長所がすべて現れた仕事を置く。心を動かされたインテリア空間についての記述を含める。アナログとデジタル、2次元と3次元の両方を含める
Architecture MPhil/PhD画像、映像、文章の例で構成可。加えてCV(学歴、実践経験、執筆プロジェクトなど)と、1,000語以内の研究計画書

ページ数の指定だけでも、同じスクールのなかで3通りに分かれています。「RCAのポートフォリオは○ページ」という一般化は成り立ちません。志望プログラムのページを必ずご自身で開いてください。

スクールによって「見せ方」の指示が逆になります

RCAのポートフォリオ助言のページ(最終更新2026年9月15日)に、見落としやすい記載があります。進行中の作品を入れるかどうかが、スクールで分かれているのです。

スクール公式の記載
School of Arts & HumanitiesOnly include finished projects; don’t show your process or work in progress.
Schools of Architecture, Communication and DesignInclude both finished projects and work-in-progress. / Include sketchbooks, rough prototypes, research documents, process books or however you record your creative journey.

つまり建築スクールは、完成作品と進行中の作品の両方を見たいという立場です。スケッチブック、粗い試作、リサーチ資料、プロセスブックなど、創作の道筋を記録したものが歓迎されます。芸術・人文スクール向けに整えた完成作品だけのポートフォリオをそのまま出すと、見たいものが入っていないことになります。

学費(プログラム別・2027年9月入学)

RCAの学費はプログラムごとに違います。全学で共通の金額は公式サイトに存在しません。以下は2026年10月2日に各プログラムページで確認した2027年9月入学の金額です。通貨は英ポンド(GBP、£)。円換算は為替で動いてすぐ古くなるため載せません。

プログラムHome(英国内)Overseas and EU(日本からの留学生が該当)
Architecture MArch (ARB/RIBA)(2年制)£9,780/年(subsidised)£30,550/年
Architecture & Spatial Practice Graduate Diploma(1年制)£9,800/年£30,550/年
Design Practice MArch(フルタイム1年)£15,900(subsidised)£40,200
Design Practice MArch(パートタイム2年)£10,350/年£26,150/年
Environmental Architecture & Urban Design MA(フルタイム)£16,050(subsidised)£40,750
Interior Design MA£16,050(subsidised)£40,750
Architecture MPhil/PhD(high residency・フルタイム)£10,750/年(subsidised)£33,900/年
Architecture MPhil/PhD(low residency・フルタイム)£8,800/年(subsidised)£28,600/年
Architecture MPhil/PhD(low residency・パートタイム)£5,700/年£18,550

目を引くのは、資格につながる Architecture MArch(年£30,550)と1年制のMA(£40,750)で、留学生の年額が1万ポンド近く違うことです。MArchは2年制なので総額では上回ります。「年額×年数」で並べてみることをおすすめします。

なお各プログラムページには、金額の脇に次の注記がついています。「表示の総額は、課程の詳細に書かれた年限で修了する前提のものです。学習期間が延びると追加の費用が発生することがあります」という注記です。研究課程のページには、2年目以降の学費は年ごとに大学が設定するため上がる可能性があるという記載もあります。

デポジット(入学金前払い)と進学割引

区分対象学位公式ページの記載
Home StudentsMA, MArch, MDes, MEd, MFA, MRes, MPhil and PhD£1,000
Home StudentsGraduate Diploma支払いページの原文は「£3,00」(桁が欠けた表記)/Architecture & Spatial Practice Graduate Diploma のプログラムページは「£1,000」
Overseas and EU StudentsGraduate Diploma, MA, MArch, MDes, MEd, MFA, MRes, MPhil and PhD£3,500
(脚注)Home 区分で「MA Architecture Part 2」に出願し Student Finance の学費ローンを借りる予定の志願者「This is not applicable to applicants with a fee status of Home who are applying to study MA Architecture Part 2 and who intend to take out a tuition fee loan from Student Finance.」(デポジットは適用されません)

デポジットは返金されません。支払い期限はオファーレター発行日から3週間以内で、支払った額は学費から差し引かれます。

建築スクールの6プログラムの個別ページは、いずれも Home £1,000/Overseas and EU £3,500 で、支払いページの記載と一致しています。食い違っているのは Home 区分の Graduate Diploma の1点だけです。支払いページはこれを「£3,00」と表示しており桁が1つ欠けていて、£300 なのか £3,000 なのかは判断できません。一方で Architecture & Spatial Practice Graduate Diploma のプログラムページは Home £1,000 としています。この1点は確定させずに両方を載せます。確定額はオファーレターと公式ページでご確認ください。

スクールをまたぐときにも注意が要ります。建築の6プログラムはいずれも Overseas and EU を £3,500 と記載していますが、RCAの他スクールの一部のプログラムページには £2,000 と書かれているものがあります(たとえば Sculpture MA)。建築以外の課程と並べて検討する場合は、それぞれのページでご確認ください。

表の最後の脚注は建築に直接かかわります。この脚注が旧称の「MA Architecture Part 2」のままになっていることも、公式サイトに名称の揺れが残っている例の1つです。

進学割引もあります。RCAの Graduate Diploma から修士課程に進む場合は £1,000、修士から別の修士へ進む場合は £2,000(パートタイムは年£1,000)、修士から博士課程(PhDまたはMPhil)へ進む場合は年£1,000(パートタイムは年£500)の減額が示されています。ただし表現に幅があります。プログラムページは「RCAの修士課程へ進む場合」と書く一方、支払いページの2026/27年度版は「Students progressing to an MA from Graduate Diploma」と MA のみを挙げ、MArch を列挙していません。Graduate Diploma から MArch へ進む場合の扱いは、公式に確認するのが安全です。

英語要件(学位区分ごとに違います)

「RCAはIELTS 6.5」と一括りに覚えると間に合わないことがあります。要件は学位の区分で変わります。以下は公式の英語要件ページの記載です。

学位区分IELTS 要件(公式ページの原文)
Graduate Diplomaoverall 5.5 (with a minimum of 5.5 in every skill)
MA, MArch, MDes, MEd, MFA and MRes programmesoverall score 6.5 (with a minimum of 5.5 in each skill)
同+EAP 6-week pre-sessional course6.0 overall with a minimum of 5.5 in all skills
同+EAP 10-week pre-sessional course5.5 overall with a minimum of 5.5 in all skills
MPhiloverall score 6.5 (with a minimum of 6.5 in writing and 5.5 in all other skills)
PhDoverall score 7 (with a minimum of 7 in writing and 5.5 in each other skill)

建築スクールに当てはめると、4つの修士(Architecture MArch、Design Practice MArch、EAUD MA、Interior Design MA)は総合6.5(各技能5.5以上)、Graduate Diploma は総合5.5(各技能5.5以上)、Architecture MPhil は総合6.5(ライティング6.5以上)、Architecture PhD は総合7.0(ライティング7.0以上)です。同じ研究課程でも MPhil と PhD で基準が違います。

表の3行目と4行目が大事です。公式は、修士の基準(総合6.5)に届かない人のための区分を2つ立てています。EAP(English for Academic Purposes)の6週コースを付ける場合は総合6.0・各技能5.5以上、10週コースを付ける場合は総合5.5・各技能5.5以上です。総合5.5でも、10週を経由する道が公式にあります。なお各プログラムページ側の書き方は「可能性がある(may be eligible)」なので、確約として読むのは避けたほうがよいと考えられます。

学位による免除もあります。公式の記載は「RCAの課程の開始日から5年以内に、下記の国の大学で second-class (upper division)(日本でいう上級優等、2.1)相当の学位を取得している場合は、承認された英語テストの受験を免除されます」。second-class (lower division)(2.2)相当の場合は「10週のプレセッショナル(Summer 10-week Pre-Sessional course)に参加する資格が得られます」とされています。

ただし、この免除には学位区分のただし書きが付きます。公式は免除の説明の直後に「Applicants applying for MPhil/PhD will be required to take an approved English language test.」(MPhil・PhDの志願者は、承認された英語テストの受験が必要です)と明記しています。英語圏で学位を取った方でも、MPhilとPhDはこの免除の対象外です。テストを受けないと学生ビザに必要なCAS(入学許可番号)が出ず、出願が進みません。Architecture MPhil/PhD を志望する方は、免除を自分に当てはめないようにしてください。

受理されるテストは IELTS のほか Password Skills PLUS、LanguageCert Academic、PTE Academic。受験はプログラム開始日から2年以内のものに限られます。IELTS以外の換算スコアも、公式の英語要件ページに上の6区分それぞれ掲載されています。学生ビザが必要な場合は、英国内務省(Home Office)の入国許可の最低要件も満たす必要があります。

キャンパス

ケンジントン・ゴアに面するRCAのダーウィン・ビル
ケンジントン・ゴアに面するRCAのダーウィン・ビル。H・T・キャドバリー・ブラウン設計、1962年開館のモダニズム建築で、戦後の学長ロビン・ダーウィンにちなんで名づけられました/撮影:Shadowssettle(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

6つのプログラムすべての「Current location」が Kensington と記載され、公式ページも「建築スクールは現在、歴史あるケンジントンの敷地を拠点としています」と書いています。住所は Darwin & Stevens Buildings, Kensington Gore, London SW7 2EU で、両棟への入口は Jay Mews を経由します。

ケンジントンの中心にあるダーウィン・ビルについて、公式サイトは「H・T・キャドバリー・ブラウンの設計で1962年に開館した、ケンジントン敷地の心臓部にあたるモダニズムのダーウィン・ビル。戦後の学長ロビン・ダーウィンにちなんで名づけられた」と書いています(公式原文は「grandson of Charles Darwin」ですが、一般的な記述では曾孫とされ、公式と一致していません)。

この校舎は、いま工事中です。公式サイトは「2025年8月から、ケンジントン・キャンパスで一連の改修工事に着手しています」と説明し、これを「2027年にケンジントンとバタシーの2キャンパス大学になるという将来計画の一部」と位置づけています。

キャンパス住所(公式表記)状況
RCA KensingtonDarwin & Stevens Buildings, Kensington Gore, London SW7 2EU建築スクールの拠点。メインの図書館と学生サポートも所在。2025年8月から改修中
RCA Battersea1 Hester Road, London SW11 4AY絵画、彫刻、セラミック&ガラス、デザインプロダクツなどが所在
RCA White CityGarden House, Dorando Close, London W12 7FN2027年8月をめどにリース終了予定

キャンパスの将来についても公式サイトが明確に書いています。「2027年8月から、ホワイトシティ・キャンパスのリースを終了し、ケンジントンとバタシーを拠点とする2キャンパスの大学になる見込みです」。

この変更は建築スクールの学生の引っ越しを意味しません。移転の対象はホワイトシティのプログラムです。ただし大学横断の選択ユニットを取る場合、どちらの校舎へ行くのかは実務的な関心事になると考えられます。

バタシーのヘスター・ロードに面する集合住宅アルビオン・リバーサイド
RCAバタシー校舎(1 Hester Road)と同じヘスター・ロードに建つ集合住宅アルビオン・リバーサイド(フォスター・アンド・パートナーズ設計、2008年撮影)。RCAの建物ではありません/撮影:Nigel Cox(CC BY-SA 2.0)/出典:Geograph Britain and Ireland 経由 Wikimedia Commons

なお、公式サイトの「Visiting the RCA」のページには、ホワイトシティのリース終了についての記述がありません。3キャンパスすべてが現役として案内されています。サイト内で記述の粒度が違うので、キャンパスの将来について確かめるときは「Our campus」のページを見るのが確実です。

日本からRCAの建築スクールを目指す方へ

RCAサウス・ケンジントン・キャンパスのフレイリング・ビル(ジェイ・ミューズ側の入口)
RCAサウス・ケンジントン・キャンパスのフレイリング棟。ジェイ・ミューズ側の入口です(2020年撮影)。建築スクールが置かれているのはダーウィン棟とスティーヴンス棟で、この棟には講堂・学生食堂・図書館・学籍課・学生自治会などが入ります。2014年に Kensington Common Room Block から、元学長クリストファー・フレイリングにちなんで改称されました/撮影:Shadowssettle(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

日本から出願する場合に、実務上おさえておきたい点を整理します。

  • 資格を取りたいのか、実践を組み替えたいのかで入口が変わります。英国の建築家登録につながるのは Architecture MArch (ARB/RIBA) です。Design Practice MArch は公式ページに「RIBA/ARB の Part 2 課程ではない」と明記されています。同じMArchという学位名なので、読み違えないようにしてください
  • MArch は実務経験を求めています。建築の学士(RIBA Part I)または国際的に同等以上の学位に加えて、設計事務所での1年以上の実務経験が求められています
  • 建築以外の出身なら、転向ルートがあります。2027年9月に始まる Architecture & Spatial Practice Graduate Diploma が1年間の準備課程です。Merit または Distinction を取れば MArch または同スクールの他のMAへの進学が保証されます。ただし公式ページに「subject to validation」(認可手続き中)の注記があるため、出願前に開講の確定をご確認ください
  • 多くの課程が1年、45週です。Design Practice MArch、Environmental Architecture & Urban Design MA、Interior Design MA はいずれも45週で、3学期目には修了制作と展示の準備に入ります。語学と生活の立ち上げを現地でゆっくり進める余裕は、あまりありません
  • 英語のスコアは学位区分で違います。修士は総合6.5(各技能5.5以上)、Graduate Diploma は総合5.5(各技能5.5以上)、MPhil は総合6.5(ライティング6.5以上)、PhD は総合7.0(ライティング7.0以上)です。テストは開始日から2年以内の受験に限られますので、受験の時期も逆算が必要です
  • ポートフォリオはプログラムごとに組み直す前提です。建築スクールは完成作品と進行中の作品の両方を見たいという立場で、スケッチブックや試作、リサーチ資料も歓迎されます。ページ数の指定はプログラムごとに違います
  • 短期コースで先に触れてみる道もあります。建築スクールは Architecture Summer School と Teaching Spatial Design を設けています(2026年10月3日時点では、公式ページの両コースに「Bookings not yet open」と表示)。RCAの短期コースは1日から3週間です
  • 日付と金額は、必ず公式で確認してください。2027年入学の Round 2 の日付は公式ページ自体の表記に揺れがあり、Graduate Diploma のデポジットも桁が欠けた表記です。この記事では推測で補わず原文のまま載せています
Architecture Summer School(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 公式YouTube/2020年1月公開)

まとめ

ジェイ・ミューズ側から見たRCAケンジントン・キャンパス
ジェイ・ミューズ側から見たRCAケンジントン・キャンパス/撮影:Shadowssettle(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

いかがだったでしょうか。RCAの建築スクールについて見てきました。要点は次の6つです。

  • RCAは2026年9月1日付で3スクール体制になりました。統合されたのは Communication と Design で、School of Architecture は再編の対象外です
  • 学位課程は6件です。Architecture MArch (ARB/RIBA)、Architecture & Spatial Practice Graduate Diploma、Design Practice MArch、Environmental Architecture & Urban Design MA、Interior Design MA、Architecture MPhil/PhD
  • 英国の建築家資格(RIBA Part 2)につながるのは Architecture MArch です。Design Practice MArch は公式に「Part 2 課程ではない」と明記されています
  • 学費はプログラムごとに違います。2027年9月入学の Overseas and EU 区分では、MArch(2年制)が年£30,550、1年制の課程(Design Practice MArch と、EAUD・Interior Design の2件のMA)が£40,200から£40,750、博士課程(high residency・フルタイム)が年£33,900です
  • 英語要件は学位区分ごとに違います。修士は総合6.5(各技能5.5以上)、Graduate Diploma は5.5、MPhil は6.5(ライティング6.5以上)、PhD は7.0(ライティング7.0以上)。プレセッショナル付きの区分もあり、MPhil・PhD は学位による免除の対象外です
  • 建築スクールの拠点はケンジントンです。大学全体は現在3キャンパスで、2027年8月から2キャンパスになる見込みと公式に記載されています

金額も日程も課程の名前も、年度ごとに変わります。今回調べたかぎりでも、公式サイトのなかに名称の揺れや表記の誤りが残っている箇所がありました。出願を具体的に考える段階では、志望プログラムのページを必ずご自身で開いてご確認ください。

Euphoric " " の視点

このスクールの学位課程は6件で、規模は大きくありません。けれどもその6件のなかに、建築家資格につながる専門職課程から、建築以外の分野から移ってくるための1年間の準備課程、そして博士課程までが並んでいます。

目を引くのは準備課程です。建築を学んでこなかった人が、ここから建築に入れるということになります。

美術大学のなかに建築のスクールを置くというのは、この入口をつくることだと考えられます。構造や法規の側から積み上げるのではなく、ものをつくる側から建築に入る道です。

進路を決めるのが遅かったと感じている方には、この課程があること自体が情報になるのではないかと思います。入口は一本ではありません。

ポートフォリオの作り方に不安がある方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。

もっと知るには

本記事の情報は、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの公式サイト(rca.ac.uk)の記載をもとに、2026年10月2日に確認しています。学費・日程・開講キャンパスは年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。

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