ロイヤル・カレッジ・オブ・アート|芸術・人文科学スクールの15プログラムを徹底解説

ロイヤル・カレッジ・オブ・アート|芸術・人文科学スクールの15プログラムを徹底解説
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 芸術・人文科学スクール(School of Arts & Humanities)バタシー校舎のある一帯

アートコンサルティング

ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art、通称RCA)の School of Arts & Humanities(芸術・人文スクール)は、絵画や彫刻をつくる場所でありながら、それについて書き、調べ、展示する人も同じ建物で育てているスクールです。公式サイトはこのスクールを「ファインアートと応用美術の研究と学修を、キュレーション、執筆、デザイン史とつなぐ」場所だと説明しています。

絵画・彫刻・版画・写真の修士と、キュレーションの修士と、デザイン史の修士と、文章を書くための修士がひとつのスクールに並ぶ構成は多くありません。つくる人と、つくられたものを言葉にする人を分けずに置いているのが、このスクールの最大の特徴だと考えられます。

この記事は2026年10月2日から3日にRCA公式サイト(rca.ac.uk)で確認できた内容だけで書いています。RCAは2026年9月にスクール構成を変え、2027/28年度の新プログラムも発表しました。プログラム名も学費も英語の要件も、数年前の情報とは一致しません。15のプログラムを1件ずつ見ていきます。それでは早速いってみましょう。

School of Arts & Humanities とは

ロイヤル・カレッジ・オブ・アート サウス・ケンジントンの校舎
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート、サウス・ケンジントン(2015年撮影)。School of Arts & Humanities は現在バタシーとケンジントンの2拠点に分かれて置かれています/撮影:Chris Whippet(CC BY-SA 2.0)/出典:Geograph Britain and Ireland 経由 Wikimedia Commons
英語の正式名称School of Arts & Humanities
日本語での呼び方芸術・人文スクール(公式の日本語名は公開されていません)
学部長(Dean)Professor Chantal Faust
所在するキャンパスRCA Battersea/RCA Kensington(スクールページの記載)
学位課程の数15(Graduate Diploma 1/MA 9/MA・MFA併設 2/MFA 1/MRes 1/MPhil・PhD 1)
研究のテーマ「The Urgency of the Arts」
研究クラスターCuratorial Thinking/Health & Care/Material Engagements/Radical Matter(Proto-Centre)/Sites & Situations/Spatial Value
スクール共通の公開プログラム「SoAH presents」「Urgency of the arts lectures」

公式サイトはこのスクールを「修士からPhDまで、知的・概念的につながった大学院の学位」で学ぶ場と位置づけ、専門を深く掘ると同時にスクール全体の多様な立場にも触れることを前提にしていると書いています。

2026年9月の再編で、このスクールは対象外でした

RCAは2026年9月1日付で、4つあったスクールを3つに再編しました。統合されたのは School of Communication と School of Design で、この2つが School of Communication & Design という1つのスクールになりました。

誤解されやすいのですが、School of Arts & Humanities は再編の対象ではありません。School of Architecture と同じく独立したスクールとして続いています。現在のRCAは Architecture、Arts & Humanities、Communication & Design の3スクール体制で、公式のニュースリリースはこれを「three-School structure」と呼んでいます。

「Fine Art」という学科は置かれていません

日本語の解説でよく見かける「MA Fine Art: Painting」という表記は、RCA公式サイトには見当たりません。公式の表記は分野名を先に置く形で、絵画は Painting MA、彫刻は Sculpture MA、版画は Print MA、写真は Photography MA です。「MA Painting」という語順も、プログラム一覧では使われていません。

これらを束ねる「Fine Art」という学位課程の名称もありません。絵画・彫刻・版画・写真は、それぞれ独立した1年制のMAとして横に並んでいます。ただしArt & Design Graduate Diploma には Fine Art という専修がありますので、「Fine Art」という語そのものが使われていないわけではありません。学位名を書き間違えると出願ページを探せなくなるので、調べるときはこの語順で検索してください。

15のプログラム一覧

以下は School of Arts & Humanities のスクールページに掲載されている学位課程です。各プログラムの個別ページで、2026年10月2日から3日に学位区分・単位数・年数・開講キャンパスを確認しました。

公式表記学位単位年数キャンパス
Painting MAMA1801年(45週)Battersea
Sculpture MAMA1801年(45週)Battersea
Print MAMA1801年(45週)Battersea
Photography MAMA1801年(45週)Battersea
Contemporary Art Practice MA/MFAMA/MFAMA 180/MFA 300MA 1年(45週)/MFA 2年(90週)Battersea
Ceramics & Glass MAMA1801年(45週)Battersea
Jewellery & Metal MAMA1801年(45週)Battersea
Artificial Intelligence & Digital Art MA/MFAMA/MFAMA 180/MFA 300MA 1年(45週)/MFA 2年(90週)Battersea
Curating Contemporary Art MAMA1801年(45週)Battersea
Writing MAMA1801年(45週)Battersea
V&A/RCA History of Design MAMA1801年(全日制)/2年(パートタイム)Kensington
Arts & Humanities MFAMFA1801年(45週)Battersea
Master of Research RCA MResMRes1801年(45週)。パートタイムありBattersea
Arts & Humanities MPhil/PhDMPhil/PhD記載なしPhD 3〜4年(全日制)・6〜7年(パートタイム)/MPhil 2〜3年(全日制)・4〜6年(パートタイム)Battersea
Art & Design Graduate DiplomaGraduate Diploma120(FHEQ Level 6)30週White City(2027年8月から Kensington)

スクールページにはこのほか短期コースも載っていますが、学位課程ではありません。

RCA芸術・人文スクールのプログラムを、つくることを軸にした5つ、素材から考える2つ、技術と芸術の接点、展示する書く調べるの4つのまとまりに整理した図
図:15のプログラムの大まかな分け方

つくることを軸にした5つのプログラム

Explore the Royal College of Art workshops…(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 公式YouTube/2026年9月21日公開)

Painting MA(絵画)

1年・45週・180単位。バタシー。公式は絵画への姿勢を「inclusive and expansive(包括的で、広がりのある)」と表現し、絵画を素材を扱う実践であると同時に「ものの考え方」として扱うと書いています。絵画を自己再帰的で批評的な活動として捉え、歴史・素材・概念の蓄積を踏まえながら、いまも変わり続けているものとして向き合う、という組み立てです。

3学期制で、1学期が Positioning Painting(45単位)、2学期が Painting in Focus(30単位)と選択科目、3学期が Independent Research Project(60単位)。最後は公開展示での発表に向かいます。なお1年制MAはどれも、公式が単位数を明記しているのは3つのユニットの135単位分までで、残りの45単位はスクール共通ユニットと選択科目です。

Sculpture MA(彫刻)

1年・45週・180単位。バタシー。ここで言う彫刻は、物体をつくることだけを指しません。公式は、オブジェの制作、パブリックアート、パフォーマンスに加え、ムービングイメージ、AI、サウンドまで扱うとし、彫刻を「美術の生産を前に進めるための方法」として見ると書いています。

単位構成は Sites and Situations(45単位)、The Expanded Field(30単位)、Independent Research Project(60単位)。社会的・政治的・経済的な文脈に自分の制作を置き直すことが求められます。

Print MA(版画)

1年・45週・180単位。バタシー。扱うのは印刷されたものが積み上げてきた文化的な蓄積と、技術的に媒介された画像が世界をつくりかえていく仕組みです。制作に加えて、アーカイブや世界のメディアに触れること、そして発表と出版の方法まで含みます。出願要件のなかでは「技法をただ学ぶためのコースではないので、技術的な話を長く書かないでください」とまで書かれています。

単位構成は Orientation, Induction and Experimentation(45単位)、Development and Context(30単位)、Independent Research Project(60単位)。ファインアート以外にデザイン、文学、建築の出身者や、実務で実践を育てた人も受け入れてきたとしています。

Photography MA(写真)

1年・45週・180単位。バタシー。公式は「商業的なアプローチではなくファインアートの実践に根ざしている」と明記しています。写真を、静止画と動画、出版、パフォーマンス、インスタレーション、サウンド、合成メディア、テキストまで含む実践として捉えます。

特徴的なのは、入学時に教員が率いるテーマ別の「practice group」に加わる仕組みです。単位は Situating Photography: Practice and Discourse(45単位)、The Making Public(30単位)、Independent Research Project(60単位)です。

Contemporary Art Practice MA/MFA(現代美術実践)

1年のMA(180単位・45週)と2年のMFA(300単位・90週)の2ルート。バタシー。MFAの学生は1年目にMAのカリキュラムを受けます。インスタレーション、ムービングイメージ、パフォーマンス、新しい技術などを使い、理論と制作を混ぜながら作品をつくる構成で、CAP Festival という発表の機会もあります。

単位は Situating Contemporary Art Practice(45単位)、Demonstrating Contemporary Art Practice(30単位)、Independent Research Project(60単位)で、MFAの2年目には Advanced Practice in Context(30単位)と Advanced Practice Portfolio(90単位)が置かれます。

注意が必要なのは2点です。ひとつは、MAの初回入学が2027年9月だと公式に書かれていること。もうひとつは、MAからMFAへの進級は保証されていないことです。公式は「学びたいほうに出願してください」「期間を途中で変えると学生ビザや資金計画に支障が出る可能性があります」と添えています。

RCAのContemporary Art Practiceについて、MAとMFAの期間、単位、注意点を比べた表
図:MAとMFAの違い(現代美術実践)

素材から考える2つのプログラム

応用美術(Applied Art)の系統に、素材そのものを出発点にする2つのMAがあります。どちらも1年・45週・180単位でバタシー、単位構成も Interrogating Your Practice and Deconstructing Assumptions(45単位)、Developing Methodologies(30単位)、Independent Research Project(60単位)で共通です。

項目Ceramics & Glass MAJewellery & Metal MA
ポートフォリオ作品・プロジェクトを5点まで、各3画像で合計15画像以内作品・プロジェクトを5点まで、各3画像で合計15画像以内
映像短い作品を3点まで短い作品を3点まで
公式が特に書いていること「素材はセラミックやガラスでなくてもかまいません」。複数画像と文字を1枚に詰め込んだ画像は不可作品そのものがはっきり見えること。凝ったレイアウトのページで実践を埋もれさせないこと。工程の紹介は、それ自体が実験的でない限り強調しない

Ceramics & Glass MA(セラミック&ガラス)

素材が変わっていく力を通して世界を理解する、という考え方が軸にあります。公式は「どの画像も複雑な物質的現実のなかに置かれています」と書き、伝統的な工芸技法と最新の技術革新の両方からその複雑さに触れることを勧めています。卒業生にはフィービー・カミングスがいます。

Jewellery & Metal MA(ジュエリー&メタル)

公式の説明が印象的です。「金属は周期表の8割以上を占め、素材としての可能性は限りがありません」。社会・技術・芸術・科学が交わるところを探る構成です。

このプログラムの卒業生ジャスリーン・カウル(2010年修了)は、2024年のターナー賞を受賞しています。RCA公式がニュースとして伝えている事実です。

技術と芸術の新しい接点

Artificial Intelligence & Digital Art(AiDA)MA/MFA

2027/28年度に向けて新設された、AIを主題にするアーティストのためのプログラムです。1年のMA(180単位・45週)と2年のMFA(300単位・90週)。バタシー。公式は「初回入学は2027年9月」「validation(認可)の手続き中」と明記しています。

出発点は「AIは文化の外側にあるのではない」という立場です。AIがどう想像され、データ・労働・計算資源・インフラを通じてどうつくられ、日常でどう経験されているかを調べます。

ルート内容(公式の記載)
MA(1年)Conditions(実験的なスタジオと研究環境)/Creative Coding/Systems の3つの筋を並行して進め、Independent Research Project で統合してRCAの修了展で発表する
MFA(2年)1年目はMAのカリキュラム。2年目は「芸術的なリーダーシップ」を育てる段階として、外部組織との連携も含めた実践研究を進める

AIやコーディングの経験は「歓迎するが必須ではない」とされ、志望理由では固まった計画ではなく「どう考える人なのか」を見ると書かれています。

所属スクールを補足します。AiDA は School of Arts & Humanities のプログラムで、個別ページの Key details もスクールページの一覧も一致しています。同時期に新設された Sound Practice MA は School of Communication & Design 側で、こちらも両ページが一致しています。新設プログラムはスクールをまたいで一度に発表されたため混同されやすいのですが、公式の分類は明確です。

展示する、書く、調べる

MA Curating Contemporary Art 2019(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 公式YouTube/2019年6月27日公開)

Curating Contemporary Art MA(現代美術のキュレーション)

1年・45週・180単位。バタシー。単位は Curatorial Thinking(30単位)、Ecologies of Curating(15単位)、Curating in a Collaborative Context(30単位)、Independent Research Project(60単位)。公式は「協働して働くことに本当に重きを置いている」と書き、修了すると47か国・500人を超えるCCA同窓のネットワークに加わります。

卒業生にはM WOODS美術館(北京)のアーティスティック・ディレクターを務めるヴィクター・ワン(2014年修了)がいます。

Writing MA(執筆)

1年・45週・180単位。バタシー。美術大学のなかに置かれた、文章を書くための修士です。公式の言い方を借りれば「あなたの文章を、世界についてのものではなく、世界の一部にする」ためのプログラムです。

単位は15単位のユニットが5つ(Distance and Proximity/Attention/Publics and Counterpublics/The Practical Past/How to Live Together)と Independent Research Project(60単位)。合計135単位分で、残りの45単位はスクール共通ユニットと選択科目です(選択科目の一覧は2027年に公開予定とされています)。

出願は文章2点(レビューとエッセイ)です。公式は「ポートフォリオで見ているのは、読み進めたくなる理由です」と書いています。

卒業生には The White Review の編集に携わる人や、Granta、Zero Books、Fitzcarraldo Editions から刊行している人がいると紹介されています。学費はこのスクールの1年制MAのなかで最も低く設定されています(Graduate Diploma や MRes のパートタイムには、これより低い金額があります)。

V&A/RCA History of Design MA(デザイン史)

1907年の版画『ロンドン、ヴィクトリア&アルバート博物館の新しいエントランスホール』
作者不詳『ロンドン、ヴィクトリア&アルバート博物館の新しいエントランスホール』(1907年の版画)アムステルダム国立美術館蔵。V&A/RCA History of Design MA は、このヴィクトリア&アルバート博物館とRCAの共同プログラムです/出典:アムステルダム国立美術館 経由 Wikimedia Commons(CC0)

1年(全日制)または2年(パートタイム)・180単位。ケンジントン。学位課程のなかでバタシー以外に置かれているのはこの1件です。ヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)との共同運営で、公式は「博物館の空間への特別なアクセス」を挙げています。

扱うのは1500年ごろから現在までの「もの」のデザイン史です。ファッションとテキスタイルの歴史から、グラフィック、建築、都市のデザイン、写真の物質文化まで広がり、デジタルの物質性も工芸や装飾美術の歴史と同じ比重で扱われます。授業は教室の外、スタジオ、アーカイブ、ギャラリー、公共空間でも行われます。

出願で出すものも他と違います。ポートフォリオには作品ではなく最近書いた文章を2点(各1,000〜6,000語)入れ、2分の動画では1900年より前につくられた物をひとつ想像して話すという課題が出ます。

研究として美術に向き合う3つの課程

課程学位年数性格(公式の記載から)
Arts & Humanities MFAMFA(180単位)1年(45週)既にある実践を深める・組み直す。外部組織との公共プロジェクトが核。2027年は入学の受け入れがありません
Master of Research RCA MResMRes(180単位)1年(45週)。パートタイムあり建築・コミュニケーション・デザイン・ファインアート・実験的人文学が1つのプログラムに同居する学際課程
Arts & Humanities MPhil/PhDMPhil/PhDPhD 3〜4年(全日制)・6〜7年(パートタイム)/MPhil 2〜3年(全日制)・4〜6年(パートタイム)理論研究と実践主導の研究の両方。V&A/RCA PhD in History of Design を含む

Arts & Humanities MFA

180単位・1年・45週。バタシー。まず最初にお伝えしておくべき点があります。公式ページに「このプログラムは2027年に入学の受け入れがありません(This programme will not have an intake in 2027)」と明記されています。学費の表示も2027年入学ではなく2026年9月入学のままです。進学先として検討する場合は、まずこの一文を確認してください。

内容は特徴的です。健康とケア、空間の実践、実験的な芸術、AIやデジタルといったテーマを扱い、外部パートナーと組む「live project」が核にあります。公式が挙げる例は、病院と組んで患者とソングライティング・キャンプを開いたこと、川沿いの一帯をパフォーマンスとポッドキャストで動かしたことなどです。

もうひとつ重要な条件があります。この課程では在籍中に個人のスタジオが与えられません。出願時のポートフォリオでも「個人スタジオなしに、協働・集団での仕事にどう貢献するつもりか」を書くよう求められます。公式は「米国と英国のMFAは同じものではありません」とも添えています。

Master of Research RCA MRes

180単位・1年・45週。全日制とパートタイムの両方があり、バタシー。建築、コミュニケーション、デザイン、ファインアート、実験的人文学という異なる分野の学生がひとつのプログラムに集まるという設計です。学生は自分で選んだテーマを、論文と実践の両方で進めます。

公式の文章に考え方が出ています。「inter」はラテン語で「あいだ」を意味し、相互性や交換の状態も表す言葉である。大学が普段は分けている学科や専門のあいだに自分の仕事を置くことで得られるものを重視する、とのことです。

Arts & Humanities MPhil/PhD

バタシー。PhDは全日制3〜4年、パートタイム6〜7年。MPhilは全日制2〜3年、パートタイム4〜6年です。公式は、美術と執筆の実践、美術とデザインの歴史と理論、キュレーションと批評の全域で指導できるとし、理論研究、実践主導の研究、産業との共同研究の提案を受け入れるとしています。V&Aとの共同で授与される V&A/RCA PhD in History of Design もこの課程に含まれます。

出願で出すのは、8〜16点をまとめたPDF、2,000〜5,000語の文章、そして1,000語以内の研究計画書(タイトル、導入、研究の背景と問い、研究方法、作業スケジュール、参考文献を含む)の3点です。推薦者も1名必要で、AHRCの資金を希望する場合は2名になります。

修士の前に置かれた30週、Art & Design Graduate Diploma

120単位(FHEQ Level 6)・30週。修士に進む前の準備課程です。公式は対象者を4つ挙げています。①修士に進む学歴はあるが英語力をもう少し伸ばしたい方 ②美術・デザインの学部出身ではないが志望分野で可能性を示せる方 ③学部での学びがRCAの修士に向けた準備として十分でなかった方 ④どの分野を専門にするかを見極める期間として使いたい方、です。Communication、Design、Fashion & Textiles、Fine Art、Research の5つの専修から選びます。学び方は、概要の節では on-campus/online/dual-learning、学費の表では on campus/blended/distance learning と、公式内で語が違います。

入学時期期間修了修士への接続(公式の記載)
1月入学30週8月に修了間を置かず9月から修士に進める
5月入学30週12月に修了9か月の間をはさんで翌9月から修士に進む
9月入学30週4月に修了5か月の間をはさんで9月から修士に進む

修了成績と進学の関係も明文化されています。Distinction(最優秀)を取ると、希望するRCAのMAまたはMResへの進学が保証されます。ただし Architecture MArch、Innovation Design Engineering、Painting、Visual Communication の4つは例外で、検討はされますが保証はされません。ここで大事なのは、その4つに出願して不合格だった場合でも、専修に関連するMAまたはMResのオファーは保証されると公式が明記していることです。つまり絵画を志望して通らなくても、進学先そのものが無くなるわけではありません。Merit は専修に関連するMAまたはMResへの進学が保証され、Pass は外部の出願者と並んで検討されます。この扱いは修了から3年間有効で、MFA・MDes・MPhilへの進学保証は付きません。

実際の数字も公開されています。2025/6年度にGraduate Diplomaで学んだ学生のうち約60%がRCAでの進学を認められました(年によって変動するとの注記付き)。さらにこの課程を修了するとRCAのMAの英語要件が免除されます。対象者の1つ目(英語力を伸ばしたい方)に直結する仕組みです。

キャンパスは2026/27年度はホワイトシティ、2027年8月からケンジントンに移ります。出願では公式が「結果だけでなく、そこまでの道筋を見せてください」と書いています。なお2027/28年度に向けて内容の見直し(revalidation)が進んでいるとも記載されています。

出願に必要なもの(公式の表のまま)

ここはいちばん間違いが起きやすい箇所です。プログラムによって要件が大きく違うため、まとめずに公式の表記のまま並べます。

先にお伝えしておきます。RCAの出願手続のページは学位区分ごとに3本に分かれています。提出物も選考の流れもこの3本で違うため、ひとつのページだけを見ると要件を取りこぼします。

学位区分出願手続のページ
修士(MA, MArch, MDes, MEd, MFA, MRes)Master’s application process(冒頭に「Ready to apply for an MA, MArch, MDes, MEd, MFA or MRes at the RCA?」と明記)
Graduate DiplomaGraduate Diploma application process
MPhil・PhDMPhil/PhD application process

次の表は修士課程(MA・MArch・MDes・MEd・MFA・MRes)に共通する提出物です。Graduate Diploma と MPhil・PhD には当てはまらない項目があるので併記しました。

項目修士(MA等)Graduate DiplomaMPhil・PhD
ポートフォリオ「Three to five files containing your portfolio」(3〜5ファイル。枠数と仕様はプログラムごとに異なります。下の表を参照)公式ページの共通記載はなく、プログラムページに「5つのスロット」と指定「Three to five files」(出願手続ページ)。プログラムページは「8〜16点を1つのPDFに」と指定
パーソナルステートメント300語。自己紹介と志望動機、学歴・職歴の要約、将来やりたいこと300語(プログラムページに記載)共通記載なし。代わりに1,000語以内の研究計画書
動画(2分)必要。最長2分、カメラに向かって話す形式。高い制作品質は不要要件なし。Requirements に Video の見出しそのものがありません必要(出願手続ページに記載)
推薦者連絡先を提出公式ページに記載なし1名(AHRCの資金を希望する場合は2名)
職歴関連する職務経験の詳細公式ページに記載なし共通記載なし
その他パスポート画像、英語力の証明(該当者)パスポート画像、専修と学び方の選択、英語力の証明(該当者)パスポート画像、英語力の証明(該当者)、研究提案が属するスクールの研究領域の明示
出願本数異なるプログラムに最大2件まで。同一プログラムへの複数回出願は不可同じ同じ
面接応募書類だけで判断できない場合に実施(下記参照)応募書類だけで判断できない場合に実施選考の標準ステップ

とくに注意が必要なのは、Graduate Diploma に2分動画の要件がないことです。Requirements に Video の見出しそのものがなく、出願手続のページにも記載がありません。残る14件には全件あります。

面接

面接についての記載は、プログラムページではなく出願手続のページにあります。学位区分ごとに扱いが違います。

学位区分公式の記載
修士(MA, MArch, MDes, MEd, MFA, MRes)「In a small number of instances, it may not be possible to make a decision based on an application alone. In these cases, you will be invited to attend an interview either in person or online.」「Receiving a request for interview does not make you any more or less likely to receive an offer of a place.」「Please ensure you are available for your interview before submitting your application.」
Graduate Diploma「In a small number of instances, it may not be possible to make a decision based on an application alone. In these cases, you will be invited to attend an interview in-person or by video call.」
MPhil・PhD選考の流れのなかに置かれています。「Candidates are notified that they will be called for an interview or that their application has been unsuccessful」「Interview: either in person or online.」さらにプログラムページには「The mode of research will be discussed in the interview, and should be indicated in the application process.」

ポイントは2つです。修士とGraduate Diploma の面接は「書類だけで判断できないとき」に限られ、呼ばれたことが有利でも不利でもないと公式が明記しています。一方で修士の出願者は、出願する前に面接に出られる日程を確保しておくよう公式に求められています。MPhil・PhD は面接が選考の標準ステップで、研究の進め方(プロジェクト型か論文型か)もそこで相談します。

そのうえで、ポートフォリオの中身はプログラムごとに別物です。

プログラム公式のポートフォリオ要件
Painting MAPDF 1点。画像10〜15点以上、全体15ページ以内。各作品にタイトル・制作年・寸法・素材。200語以内のポートフォリオ・ステートメントを付ける。1分以内の映像2点まで埋め込み可
Sculpture MAPDF 1点。全体15ページ以内、画像10〜15点。各作品にタイトル・制作年・サイズ・素材。制作過程の画像は少数のみ可
Print MAスロット5つ、各スロットに画像4点まで。全スロットを使う。動画は2分以内
Photography MA作品5点まで(1枠に1点)。画像・PDF・動画・音声のいずれかに、タイトル・制作年・サイズ・媒体と短い説明を添える
Contemporary Art Practice MA/MFA媒体は自由。映像・音は各5分以内の抜粋
Ceramics & Glass MA作品・プロジェクト5点まで、各3画像で合計15画像以内。映像は短い作品3点まで
Jewellery & Metal MA作品・プロジェクト5点まで、各3画像で合計15画像以内。映像は短い作品3点まで
Artificial Intelligence & Digital Art MA/MFA作品5点まで(1枠に1点)。各作品にタイトル・制作年・サイズ・媒体と、文脈・方法・意図を書いた短い説明
Curating Contemporary Art MA2点の提出物。①最近訪れた現代美術の展覧会またはプロジェクトの批評(500語以内) ②自分が企画するとしたらというキュレトリアル提案(画像込みでA4 4ページ以内)
Writing MA文章2点。①重要だと思う展覧会・書籍・映画の新しいレビュー(750語以内) ②主題自由のエッセイ(3,000語以内。大学の課題でも可)
V&A/RCA History of Design MA最初の2枠に最近書いた文章を2点(各1,000〜6,000語)。補足の画像・動画も追加可
Arts & Humanities MFA600語程度の文章を先頭に置き、全体10ページ以内、文字は11ポイント以上、1ページに画像5点まで。時間をもつ作品は2分の抜粋。創作文を含める場合は文章に加えて1,000語以内
Master of Research RCA MResPDFポートフォリオに5点以内。研究の問い・方法・進め方を示せること
Arts & Humanities MPhil/PhDPDF 1点に8〜16点の画像・ファイル。加えて2,000〜5,000語の文章と、1,000語以内の研究計画書
Art & Design Graduate Diploma5つのスロットに、5つのプロジェクトまたは5つの作品群。画像の点数に上限なし。結果だけでなく過程を示す

学歴要件

全学共通の学歴規定は公式サイトにありません。だからこそプログラムごとに書かれています。強さがかなり違うので全15件を並べます(出典は各プログラムページの「What you need to know before you apply」)。

プログラム公式の学歴要件
Painting MA「Typically, our students will have a good BA (undergraduate) fine art degree, however we welcome applications from candidates with other backgrounds.」近年は保存修復、デザイン、テキスタイル、建築、美術史などの出身者も入学
Sculpture MA「You must have a good first degree in sculpture or a relevant subject」。素材と技法を扱える力、関連分野の歴史と文化的意義についての知識も求められます
Print MA「You’re expected to have completed a BA degree.」版画の経験がなくてもよいが、複製される画像への強い関心が必要
Photography MA「You are generally expected to have a good BA degree from a photography or fine art course.」
Contemporary Art Practice MA/MFA「Candidates are generally expected to have a good BA degree from a fine art course.」
Ceramics & Glass MA「You should have a good undergraduate degree in Ceramics or Glass or equivalent professional experience.」テキスタイル・彫刻・建築・工業デザインなどの出身も歓迎。実務経験は大きな利点とされています
Jewellery & Metal MA「You must possess a good undergraduate degree (or non-UK equivalent qualification) in metalwork, jewellery or a related subject」。推薦状(できれば学術的なもの)と実技の幅も求められます。正規の訓練や学位がない場合も、他分野の専門知識を持ち込めることを明確に示せれば検討されます
Artificial Intelligence & Digital Art MA/MFA学位要件の記載なし。「Previous coding experience is welcomed but not essential.」技術の習熟度ではなく実践の質で評価すると明記
Curating Contemporary Art MA「You are generally expected to have a good undergraduate degree from an arts or humanities background」。加えて「have some practical experience of working within the visual arts or cultural sector that is relevant to the field of curatorial practice」(美術・文化セクターでの実務経験)
Writing MA学歴要件の記載なし
V&A/RCA History of Design MA「You should have a good first degree in an arts and humanities or an art, design, photography or performance practice background.」社会科学や専門職の出身者にも出願を呼びかけており、年齢を問わないとしています
Arts & Humanities MFA「You will typically require one or more of the following」として3択。①芸術・人文系の学士または Graduate Diploma(レベル6) ②修士(レベル7) ③修士水準の関与を示せる芸術実践(ポートフォリオで証明)
Master of Research RCA MRes学位要件の記載なし。RCAや他大学のMA修了者、中堅の作家やデザイナー、キャリアチェンジを考える人まで広く開かれているとされています
Arts & Humanities MPhil/PhD学位要件の記載なし。「Applications are considered in terms of quality of proposal, quality of practice (where appropriate), readiness to undertake a research degree at this level and supervisory capacity.」
Art & Design Graduate Diploma学位要件ではなく対象者像を4分類で記載(下記)

とくに効くのは次の3件です。

  • Curating Contemporary Art MA は、美術・文化セクターでの実務経験が要件に入っています。学歴だけ見て出願すると足りません
  • Sculpture MA と Jewellery & Metal MA は「must」です。Painting MA の「typically(たいていは)」「他の背景も歓迎」とは強さがまるで違います
  • Arts & Humanities MFA は、学士がなくてもポートフォリオで修士水準の実践を示せば出願できるという、15件のなかで唯一の開き方をしています

プログラム別の要件一覧

間違いが起きやすい5項目(学歴要件・ポートフォリオの上限・ステートメントの語数・動画課題・面接)を1つの表にまとめます。「記載なし」も記載なしと書いてあります。

プログラム学歴要件ポートフォリオの上限ステートメント動画課題面接
Painting MAファインアートの学士が通常。他分野も歓迎PDF 1点・画像10〜15点・15ページ以内300語+ポートフォリオ内に200語以内2分。絵画実践の定義、実践を支えるもの、リサーチ、RCA志望理由書類で判断できない場合
Sculpture MAmust。彫刻または関連分野の学士PDF 1点・画像10〜15点・15ページ以内300語2分。彫刻の構想と制作、駆り立てる問題、現代の文脈への位置づけ書類で判断できない場合
Print MABA修了が前提5枠・各枠に画像4点まで(動画は2分以内)300語2分。この領域の何に惹かれるか、最も成功した作品とその理由、RCAで発展させたい仕事書類で判断できない場合
Photography MA写真またはファインアートの学士が通常作品5点(1枠に1点)300語+ポートフォリオ内に文章(語数指定なし)2分。実践と現代美術の議論との関係、写真の歴史的・概念的・経験的理解書類で判断できない場合
Contemporary Art Practice MA/MFAファインアートの学士が通常点数の上限指定なし(映像・音は各5分以内の抜粋)300語2分。RCAで学びたい理由、社会的・政治的・経済的条件への位置づけ書類で判断できない場合
Ceramics & Glass MAセラミックまたはガラスの学士、または同等の実務経験5件×各3画像=15画像以内(映像は短い作品3点まで)300語2分。ここまでの道筋、着想と影響、方法と工程、目標、作品が置かれる文脈書類で判断できない場合
Jewellery & Metal MAmust。金工・ジュエリーまたは関連分野の学士。推薦状も求められます5件×各3画像=15画像以内(映像は短い作品3点まで)300語2分。創作の動機、このプログラムが適切な理由、自己管理の方法、ポートフォリオの1件の詳述書類で判断できない場合
Artificial Intelligence & Digital Art MA/MFA記載なし。コーディング経験は必須ではない作品5点(1枠に1点)語数の指定なし(共通の記載は300語)2分以内。現在の実践、重要なプロジェクト、志望理由、AIについて探りたい問い書類で判断できない場合
Curating Contemporary Art MA芸術・人文系の学士が通常。加えて美術・文化セクターでの実務経験2点(500語以内の批評+A4 4ページ以内のキュレトリアル提案)300語2分。動機となる問い、キュレーションの役割と価値、このプログラムを選ぶ理由、協働の経験書類で判断できない場合
Writing MA記載なし文章2点(750語以内+3,000語以内)300語2分。書き手として来る理由、誰に影響を受け何を読んでいるか書類で判断できない場合
V&A/RCA History of Design MA芸術・人文系、または美術・デザイン・写真・パフォーマンスの学士文章2点(各1,000〜6,000語)+補足資料300語2分。1900年より前につくられた物を想像し、それが何で、何を知りたいか、どこを調べるかを話す書類で判断できない場合
Arts & Humanities MFA3択(レベル6の学位/修士/ポートフォリオで示す修士水準の実践)全体10ページ以内・1ページに画像5点まで・文字11pt以上600語程度をポートフォリオの先頭に。ポータルのステートメント欄には「ポートフォリオを見てください」と書くよう指示2分以内。MFAで学びたい理由、実践を同時代の条件に位置づける書類で判断できない場合
Master of Research RCA MRes記載なし。中堅の作家・キャリアチェンジも対象5点以内のPDFポートフォリオ300語2分以内。自己紹介とMResで得たい知識・技能・機会。本人が映り声で話すこと。形式は avi/mp4/mov/wmv書類で判断できない場合
Arts & Humanities MPhil/PhD記載なし。提案の質・実践の質・この水準で研究する準備・指導体制で判断1つのPDFに8〜16点+2,000〜5,000語の文章ステートメントではなく1,000語以内の研究計画書2分(出願手続ページの共通記載)。プログラムページに個別の課題指定は見当たりません選考の標準ステップ
Art & Design Graduate Diploma学位要件ではなく対象者像を4分類で記載5枠。画像の点数に上限なし300語要件なし書類で判断できない場合

出願スケジュール(2027年9月入学)

ラウンド出願開始締切(英国時間 正午)結果通知
Round 12026年10月12日(月)2027年1月8日(金)2027年2月19日まで
Round 22027年1月11日(月)公式ページの表記は「Friday Tuesday 23 March 2027, 12 noon (UK time)」公式ページの表記は「by 5 May February 2027」
Round 32027年3月24日(水)修士:2027年6月2日(水)/MPhil・PhD:2027年7月14日(水)修士:2027年7月14日まで/MPhil・PhD:2027年7月25日まで
Graduate Diploma(2027年1月入学)受付中2026年12月7日公式サイトに記載が見つかりません

Round 2 については、公式ページの表記そのものに揺れがあります。締切の曜日が「Friday Tuesday」と重なり、通知の月名が「5 May February 2027」と重なっています。どちらが正しい日付なのかは公式サイトから判断できませんでした。出願前に必ず公式ページで最新の日付をご確認ください。

合否は提出順のローリングで出され、遅くとも出願したラウンドの締切から6週間で結果が届くとされています。奨学金の多くが早いラウンドで決まるため「早く出すほど可能性が高まります」とも書かれています。

学費(2027年9月入学)

RCAの学費はプログラムごとに違います。「RCAの修士はいくら」という全学共通の金額は公式サイトに存在しません。以下は各プログラムの個別ページで2026年10月2日から3日に確認した金額です。通貨は英ポンド(GBP)、表示は2027年9月入学分(1件のみ例外あり)。日本からの留学生は「Overseas and EU」区分です。

プログラムHome(補助あり)Overseas and EU
Painting MA£17,850£43,000
Sculpture MA£14,450£43,000
Ceramics & Glass MA£17,850£43,000
Jewellery & Metal MA£17,850£43,000
Contemporary Art Practice MA/MFA(MAとMFA 1年目)£17,850£43,000
同(MFA 2年目以降)£14,650£35,600
Artificial Intelligence & Digital Art MA/MFA(MAとMFA 1年目)£17,850£43,000
同(MFA 2年目以降)£14,650£35,600
V&A/RCA History of Design MA(全日制)£17,850£43,000
同(パートタイム)£11,650/年£27,950/年
Print MA£16,050£40,750
Photography MA£16,050£40,750
Curating Contemporary Art MA£15,900£40,200
Master of Research RCA MRes(全日制)£15,600/年£39,250/年
同(パートタイム)£10,150/年£25,550/年
Writing MA£14,450£33,400
Arts & Humanities MPhil/PhD(high residency・全日制)£10,750/年£33,900/年
同(low residency・全日制)£8,800/年£28,600/年
Arts & Humanities MFA ※2026年9月入学として表示£15,450£38,650

金額に「/年」が付いていないものは、課程全体の額です。公式は「Total cost is based on the assumption that the programme is completed in the timeframe stated in the programme details. Additional study time may incur additional charges.(在籍が延びれば追加の費用が発生することがあります)」と注記しています。

Art & Design Graduate Diploma は学び方によって金額が変わります。以下は2027年1月入学および2027年5月入学の金額です。

学び方HomeOverseas and EU
通信(distance learning)£7,300£16,500
デュアル(blended learning)£10,400£23,550
通学(on campus learning)£10,400£23,550

同じページには2027年9月以降(2028年1月・5月入学を含む)の金額も出ていますが、Overseas and EU の区分の行がそろっていません(通信区分にあたる行が見当たりません)。この年度で検討される場合は公式ページで直接ご確認ください。

研究課程には「2年目以降の学費は年ごとにカレッジが設定するため、上がる可能性があります」という注記が入っています。為替で円に換算した金額はすぐ古くなるので、ポンドのまま把握しておくことをおすすめします。学費のほかに画材や素材の購入費、レーザーカッター・3Dプリンター・CNC・印刷の使用料、必修のフィールドトリップの費用がかかると明記されています。

デポジット(前払い金)

合格を受諾するときに支払う返金不可の前払い金で、学費に充当されます。オファー通知の日から3週間以内に支払います。

区分対象金額
HomeMA, MArch, MDes, MEd, MFA, MRes, MPhil, PhD£1,000
HomeGraduate Diploma公式ページの表記は「£3,00」(桁が欠けていると思われます)
Overseas and EUGraduate Diploma, MA, MArch, MDes, MEd, MFA, MRes, MPhil, PhD£3,500

この金額は、公式サイトのなかで一致していません。学費の支払いページは Overseas and EU を一律 £3,500 としていますが、個別プログラムページには £2,000 と表示しているものがあります(このスクールでは Sculpture MA と Arts & Humanities MFA。他のスクールのプログラムにも £2,000 表示があります)。Home の Graduate Diploma も、支払いページの表記が「£3,00」と桁の欠けた形になっています。金額を前提に資金計画を立てる前に、オファー通知に書かれた金額をご確認ください。

なお進学割引があり、Graduate Diplomaから修士へは£1,000、修士から別の修士へは£2,000、修士から研究課程へは年£1,000の減額です。

英語の要件

IELTSの必要スコアは学位の区分ごとに違います。「RCAはIELTS 6.5」と一括りにできません。以下は公式の英語要件ページに掲載されている表です。

学位区分IELTS AcademicPassword Skills PLUSLanguageCert AcademicPTE Academic
Graduate Diploma総合5.5(各技能5.5以上)総合5.5(各技能5.5以上)総合60(各技能60以上)総合59(各技能59以上)
MA, MArch, MDes, MEd, MFA, MRes総合6.5(各技能5.5以上)総合6.5(各技能5.5以上)総合70(各技能60以上)総合59(リスニングとリーディング59以上、スピーキングとライティング60以上)
同(EAP 6週間コースを受ける場合)総合6.0(各技能5.5以上)総合6.0(各技能5.5以上)総合65(各技能60以上)総合55(各技能54以上)
同(EAP 10週間コースを受ける場合)総合5.5(各技能5.5以上)総合5.5(各技能5.5以上)総合60(各技能60以上)総合46(各技能45以上)
MPhil総合6.5(ライティング6.5以上、他の技能5.5以上)総合6.5(ライティング6.5以上、他の技能5.5以上)総合70(ライティング65以上、他60以上)総合59(リスニング・リーディング59以上、スピーキング60以上、ライティング65以上)
PhD総合7(ライティング7以上、他の技能5.5以上)総合7(ライティング7以上、他の技能5.5以上)総合75(ライティング70以上、他65以上)総合66(リスニング・リーディング59以上、スピーキング・ライティング66以上)

受理されるテストは上の表の4種類だけで、プログラム開始日から2年以内に受けたものに限られます。技能別の再受験(One Skill Retake)はIELTSもPassword Plusも認められません。

免除の条件も明記されていますが、ここに学位区分のただし書きが付きます。

区分公式の記載
修士・Graduate Diplomaプログラム開始日から5年以内に、公式が挙げる英語圏の国(英国、アイルランド、米国、オーストラリア、ニュージーランド、マルタ、カリブ海地域の複数国など19か国・地域)の大学で上位second class(upper division)相当の学士を取得している場合は、試験が免除されます
同(下位second class の場合)免除ではなく、10週間のサマー・プレセッショナル・コースに参加できる資格が与えられます
MPhil・PhD「Applicants applying for MPhil/PhD will be required to take an approved English language test.」(承認されたテストの受験が必須)

つまり英国の学士を持っていても、MPhil・PhD に出願するなら英語のテストが必要です。ここを読み飛ばすと、免除されるつもりで出願して手続きが止まります。免除国以外でも、英語で教えられ英語で試験された学士(過去5年以内・英国のupper second class相当)なら通常は追加の証明が不要ですが、その事実を大学側が示す書類は必要です。

公式は「IELTSのスコアを1.0上げるには通常6か月以上かかります」と書き、出願前から英語に取り組むことを勧めています。基準に届かない場合は、EAP(English for Academic Purposes)のプレセッショナル・コースが10週間と6週間の2種類あります。

スコアの提出期限にも注意点があります。公式は2か所で「2026年6月9日(火)までに公式のスコアを提出すること」としていますが、2027年入学を案内しているページにこの日付が残っており、年度として整合しません(前年度の記載が残ったものと考えられます)。ここは重い項目です。公式は「この情報がそろうまでCAS(入学許可番号)を発行できません」と明記しているため、学生ビザが必要な方はCASの発行がスコア提出に連動します。出願前に必ず公式ページで最新の期限をご確認ください。

キャンパス

ジェイ・ミューズ側から見たRCAスティーヴンス・ビルの入口
RCAケンジントン、スティーヴンス・ビルの入口(ジェイ・ミューズ側、2020年撮影)。V&A/RCA History of Design MA はケンジントンに置かれています/撮影:Shadowssettle(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

RCAは2026年10月3日現在、ロンドンに3つのキャンパスを持っています。ただし2027年に2か所になる予定です。公式サイトは「ホワイトシティ・キャンパスのリースを終了し、ケンジントンとバタシーの2キャンパスの大学になると見込んでいます」と書いています。ただしリースを終了する時期は、公式サイト内で「2027年8月から」(キャンパスのページ)と「2027年6月から」(問い合わせのページ)の2通りの記載があります。ホワイトシティにあるプログラムが他のキャンパスへ移る時期は、どちらのページも2027年8月で一致しています。

キャンパス住所(公式表記)School of Arts & Humanities のプログラム
RCA Battersea1 Hester Road, London SW11 4AYPainting MA/Sculpture MA/Print MA/Photography MA/Contemporary Art Practice MA/MFA/Ceramics & Glass MA/Jewellery & Metal MA/Artificial Intelligence & Digital Art MA/MFA/Curating Contemporary Art MA/Writing MA/Arts & Humanities MFA/Master of Research RCA MRes/Arts & Humanities MPhil/PhD
RCA KensingtonDarwin & Stevens Buildings, Kensington Gore, London SW7 2EU(両棟へのアクセスは Jay Mews 経由)V&A/RCA History of Design MA。2027年8月から Art & Design Graduate Diploma も移転。メインの図書館と学生サポートもここにあります
RCA White CityGarden House, Dorando Close, London W12 7FNArt & Design Graduate Diploma(2026/27年度)。2027年8月にリース終了予定

つまり実技系のほぼすべてがバタシーに集まり、デザイン史だけがケンジントンにある配置です。ケンジントンでは2025年8月から、歴史的な建物の補修と設備の刷新を目的とした改修工事が行われています。

公式が開講場所を示すラベルは「Current location(現在の所在地)」です。Graduate Diploma が2027年8月にホワイトシティからケンジントンへ移るように、年度によって変わることが実際にあります。出願前に志望プログラムのページの「Current location」を必ずご確認ください。

卒業生

What Makes An Artist? Tracey Emin at the Royal College of Art(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート 公式YouTube/2019年3月1日公開)

スクールページは卒業生を次のように挙げています。かっこ内は公式ページの記載どおりの専攻名です。

  • トレイシー・エミン、バーバラ・ヘップワース、クリス・オフィリ、フランク・ボウリング、ルバイナ・ヒミッド、ブリジット・ライリー、デイヴィッド・ホックニー
  • フィービー・カミングス(セラミック&ガラス)
  • クロエ・アブラハムス(現代美術実践)
  • ヴィクター・ワン、シアヴァシュ・ミヌカデ(現代美術のキュレーション)
  • アナベラ・チャン、ジャスリーン・カウル(ジュエリー&メタル)
  • アンシア・ハミルトン、オスカル・ムリーリョ(絵画)
  • 單Sin 慧Wai 乾Kin(版画)
  • ジョアンナ・ピオトロフスカ(写真)
  • ステフ・ホアン(彫刻)
  • ジェレミー・アサートン・リン、パトリック・ラングリー(執筆)
  • ディーピカ・スリヴァスタヴァ、ゾエ・ウィットリー(V&A/RCA デザイン史)
  • カトリーナ・パルマー(PhD)

このうちジャスリーン・カウル(ジュエリー&メタル2010年修了)は2024年のターナー賞を受賞しています。Painting MA のページには、ほかにハーヴィン・アンダーソンの名前も並んでいます。

まとめ

テムズ川にかかるバタシー橋(2022年)
テムズ川にかかるバタシー橋(2022年)。School of Arts & Humanities の学位課程は、ほとんどがこの南側のバタシー地区に置かれています/撮影:amandabhslater(CC BY-SA 2.0)/出典:Wikimedia Commons

いかがだったでしょうか。School of Arts & Humanities について見てきました。要点は次の8つです。

  • RCAは2026年9月1日付で3スクール体制になりましたが、統合されたのは Communication と Design で、School of Arts & Humanities は再編の対象外です
  • 学位課程は15。公式の表記は「Painting MA」で、「MA Fine Art: Painting」は公式サイトにありません。「Fine Art」という括りの学科もありません
  • MAの多くは1年・45週・180単位。2年のルートは Contemporary Art Practice と Artificial Intelligence & Digital Art のMFA(300単位・90週)です
  • Arts & Humanities MFA は2027年の入学受け入れがありません。Contemporary Art Practice のMAとAiDAは、どちらも初回入学が2027年9月です
  • 学費はプログラムごとに違い、2027年9月入学のOverseas and EU区分で1年制MAは£33,400(Writing MA)から£43,000まで開きがあります
  • 出願で出すものはプログラムごとに別物で、Painting MA はPDF 1点に画像10〜15点、Curating Contemporary Art MA は500語の批評とA4 4ページのキュレトリアル提案です。「RCAのポートフォリオは何点」という一般化はできません
  • 面接の記載はプログラムページではなく、学位区分ごとに3本ある出願手続のページにあります。修士は出願前に面接の日程を空けておくよう求められ、MPhil・PhD は面接が選考の標準ステップです
  • 学歴要件もプログラムごとに違います。Sculpture MA と Jewellery & Metal MA は「must」、Curating Contemporary Art MA は美術・文化セクターでの実務経験が要件、Arts & Humanities MFA は学士がなくてもポートフォリオで示せます
  • キャンパスは3か所から2か所へ。実技系はバタシー、デザイン史はケンジントンです

最後に正直にお伝えしておきます。RCA公式サイトのなかには記述が食い違っている箇所があります。デポジットの金額と、Round 2 の締切日です。いずれも読者の判断を左右する項目なので、この記事では断定せずに両方の表記を載せました。

Euphoric " " の視点

このスクールには、ファインアートという名前の課程がありません。絵画、彫刻、版画、写真が、それぞれ別の課程として並んでいます。素材と手つきで分けた構成です。

これは、ひとつ前の段階を終えた人が来る前提の分け方だと考えられます。何をやるかがまだ決まっていない人には、分かれていることが不便かもしれません。逆に、すでに決まっている人には、同じものを続けている人が周りにいることが支えになるのではないかと思います。

同じスクールには、分野をまたぐContemporary Art Practiceも置かれています。分けた課程と、またぐ課程が、並んで存在しているわけです。

どちらが優れているという話ではありません。自分がいま、絞る段階にいるのか、広げる段階にいるのか。学科の分け方は、その問いを先に投げてきます。答えが出ている人にとっては、分かれているほうが近道になるかもしれません。

ポートフォリオの作り方に不安がある方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。

もっと知るには

本記事の情報は、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの公式サイト(rca.ac.uk)で2026年10月2日から3日に確認したものです。学費・日程・開講キャンパス・プログラムの構成は年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。

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