セントラル・セント・マーチンズ(CSM)とは?ファッションだけじゃない8つのプログラムを解説

セントラル・セント・マーチンズ(CSM)とは?ファッションだけじゃない8つのプログラムを解説

アートコンサルティング

こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんはセントラル・セント・マーチンズ(Central Saint Martins、略称CSM)という学校をご存知ですか。ロンドン芸術大学(University of the Arts London、UAL)を構成する6つのカレッジのひとつで、アレキサンダー・マックイーンやジョン・ガリアーノを輩出したファッションの名門として知られています。ただ、CSMはファッションだけの学校ではありません。ファインアート、グラフィック、プロダクト、建築、宝飾、舞台芸術まで、8つのプログラムで幅広い分野を扱うカレッジです。

本記事ではそんなCSMについて、組織の仕組み、沿革、学部・大学院の構成、学費、出願の進め方、そして世界的に注目されるMAファッションショーまで、2026年10月2日にUAL公式サイト(arts.ac.uk)で確認できた情報をもとにご紹介します。それでは早速いってみましょう。

セントラル・セント・マーチンズの基本情報

基本情報

グラナリー・スクエアの噴水越しに見るセントラル・セント・マーチンズの校舎、入口にUALのサインが見える
グラナリー・スクエアからグラナリー・ビルを望む。入口には「UAL」のサインが掲げられています/撮影:John Sutton(Geograph Britain and Ireland)/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)
正式名称Central Saint Martins(セントラル・セント・マーチンズ、略称CSM)
所属University of the Arts London(UAL、ロンドン芸術大学)を構成する6カレッジのひとつ
所在地1 Granary Square, King’s Cross, London, N1C 4AA(ほかアーチウェイにも拠点あり)
組織3つの Schools of Thought(C School・S School・M School)と、その上に成り立つ8つのアカデミック・プログラム
前身セント・マーチンズ美術学校(St Martin’s School of Art、1854年設立)とセントラル・スクール・オブ・アーツ・アンド・クラフツ(Central School of Arts and Crafts、1896年設立)
統合年1989年に両校が統合してCSMが誕生
キングス・クロスへの移転2011年

CSMは、UALを構成する6つのカレッジのひとつで、ファッションからファインアート、建築、宝飾、舞台芸術、経営までを8つのプログラムで扱うカレッジです。UAL自体の全体像や6カレッジの違いについては、ロンドン芸術大学(UAL)とは?6つのカレッジの違いと学費・出願・キャンパスを徹底解説でまとめていますので、あわせてご覧ください。UALはQS世界大学ランキングのアート&デザイン部門2026年版で世界2位の評価を受けていますが、このランキングはUAL全体に対するもので、カレッジ単位では算出されていません。CSMの評価は、このUAL全体の評価のなかに含まれていると理解しておくのが正確です。

日本語では「セントラル・セント・マーチンズ」という表記のほか、「セントラル・セント・マーチン」と呼ばれることもありますが、本記事では公式の英語表記 Central Saint Martins に対応する「セントラル・セント・マーチンズ」で統一しています。略称の「CSM」は、公式サイト自身も頻繁に使っている呼び方です。

ファッションだけではない、8つのプログラムで成り立つカレッジ

CSM公式サイトは、前身の2校について「つくることを通して学ぶことの根本的な重要性を信じ、アートとデザインへの急進的な取り組みで知られていた。その価値観は、いまも私たちの教育の核にあります」と説明しています。この姿勢を受け継ぎながら、CSMは「ファッション学部」のような分野別の学部に分かれていないという、他の多くの美術大学とは違う組織の仕組みを持っています。

CSMの土台になっているのは、C School(Culture=文化)、S School(Systems=システム)、M School(Material=素材)という3つの「Schools of Thought(思考のスクール)」です。公式サイトによれば、C Schoolは「アート、パフォーマンス、キュレーションを横断し、文化を探究と表現の重要な形として扱う」スクール、S Schoolは「私たちの世界を支え、形づくっている複雑なシステム。人、技術、資本、コミュニケーション、資源、自然といったシステムであり、それらは入り混じり、たがいに依存し合っている」を扱うスクール、M Schoolは「伝統的な工芸から新しいテクノロジーまで、またテキストや映像から最先端のデジタル・インターフェースや生きたシステムまで、素材についての広い理解」を扱うスクールとされています。ファッション、グラフィック、プロダクト、建築、宝飾といった分野別の専攻は、この3つのスクールを基盤にした8つのアカデミック・プログラムとして編成されています。

プログラム名扱う主な分野
Art(アート)ファインアート、写真理論、アート・アンド・サイエンスなど
Fashion(ファッション)ファッションデザイン、ファッションコミュニケーション
Graphic Communication Design(グラフィック・コミュニケーション・デザイン)グラフィックデザイン全般
Product, Ceramic and Industrial Design(プロダクト・セラミック・インダストリアルデザイン)プロダクトデザイン、陶芸、工業デザイン
Spatial Practices(空間実践)建築(MArch)、都市、物語的な空間デザイン
Jewellery, Textiles and Materials(宝飾・テキスタイル・マテリアル)ジュエリーデザイン、テキスタイルデザイン
Performance(舞台芸術)舞台美術、キャラクターアニメーション、パフォーマンス映像
Creative Enterprise(クリエイティブ・エンタープライズ)ビジネス・経営・起業領域

ファッションで名前を知られているカレッジではありますが、こうして見るとCSMはファッションを含む8つの柱を持つカレッジであることが分かります。志望分野で「学部」を選ぶのではなく、考え方の系統によってスクールとプログラムが分かれている大学だと捉えると、コース一覧が見通しやすくなります。

沿革:2つの学校の統合からキングス・クロスまで

サウサンプトン・ロウにあるセントラル・スクール・オブ・アーツ・アンド・クラフツの旧校舎
セントラル・スクール・オブ・アーツ・アンド・クラフツの旧校舎(サウサンプトン・ロウ)。初代校長ウィリアム・レサビーの記念プレートが掲げられています。CSM公式の現行ページでは校名を Central School of Art and Crafts と表記しています/撮影:Spudgun67/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

CSMは、もともと別々に生まれた2つの学校が統合してできたカレッジです。1854年設立のセント・マーチンズ美術学校(St Martin’s School of Art)と、1896年設立のセントラル・スクール・オブ・アーツ・アンド・クラフツ(Central School of Arts and Crafts)がその母体です。セントラル・スクールはロンドン州議会(London County Council)によって1896年に設立され、建築家ウィリアム・レサビーが初代校長に就きました(UALのアーカイブは彼を「founding principal」と記しています。旧校舎に掲げられた記念プレートには在任期間が1896年から1911年と刻まれています)。1966年にはセントラル・スクール・フォー・アート・アンド・デザインへと改称しています。

2つの学校は1989年に統合し、現在のセントラル・セント・マーチンズが誕生しました。その後も統合は続きます。1999年にはドラマ・センター・ロンドン(Drama Centre London)、2003年にはバイアム・ショー美術学校(Byam Shaw School of Art)がそれぞれCSMに加わりました。ドラマ・センター・ロンドンの統合により、CSMは舞台芸術・演劇の領域でも実績を持つカレッジになっています(この点は後ほど卒業生の項でご紹介します)。

そして2011年、CSMはロンドン中心部からキングス・クロスへと拠点を移します。この移転が、CSMの現在のキャンパスの姿を決定づけました。次の章で詳しく見ていきます。

キングス・クロスのキャンパス

夕暮れのグラナリー・スクエアから見たセントラル・セント・マーチンズのグラナリー・ビル
夕暮れのグラナリー・スクエアから見たグラナリー・ビル/撮影:David Anstiss(Geograph Britain and Ireland)/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

CSMの校舎であるグラナリー・ビル(Granary Building)は、もともと大学の建物として建てられたものではありません。キングス・クロス周辺の開発資料によれば、この建物は1852年、キングス・クロス駅の設計も手がけたルイス・キュビットの設計によるものです。かつてはロンドンのパン屋に卸す小麦を納めておく穀物倉庫として使われていました。

この旧穀物倉庫を美術大学の校舎へと改修したのが、建築設計事務所スタントン・ウィリアムズ(Stanton Williams)です。2011年、改修を終えたグラナリー・ビルにCSMが移転し、約5,000名の学生・教職員を迎えて開校しました。倉庫の骨格を活かしながら、アトリエ、工房、ギャラリー、図書館を備えた現在のキャンパスに生まれ変わっています。

キャンパスが面するグラナリー・スクエアは、噴水と広い石畳の広場を中心に、カフェやレストランが並ぶ開放的な空間です。キングス・クロス駅・セント・パンクラス駅から徒歩圏内にあり、周辺には旧石炭取引所を再開発した商業エリアコール・ドロップス・ヤードも広がっています。かつて石炭や穀物を運んだ鉄道と運河の跡地が、いまはロンドンでも有数のクリエイティブ地区になっている、というのがこのエリア全体の性格です。CSMはメインキャンパスのほかにアーチウェイにも拠点を持っています。

グラナリー・スクエアの石畳から噴き上がる噴水と、奥に見えるコール・ドロップス・ヤードの建物
グラナリー・スクエアの噴水。奥に見えるのがコール・ドロップス・ヤードの建物です/撮影:Stephen McKay(Geograph Britain and Ireland)/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

もともと物流のための倉庫群だった街並みが、デザイン教育の拠点に生まれ変わったという経緯は、CSMという学校の性格をよく表しています。実用のためにつくられた無骨な建物を、つくり手のための空間へと転用する発想は、CSMが前身校から受け継いだという「つくることを通して学ぶ」姿勢とも重なります。志望者の方がキャンパスを訪れる機会があれば、グラナリー・ビルの煉瓦とガラスの対比や、広場を行き交う学生たちの様子から、この学校の空気を感じ取っていただけるはずです。

波打つ屋根が架けられたコール・ドロップス・ヤードと、背後のガスホルダーを改修した集合住宅
旧石炭置き場を改修した商業エリア、コール・ドロップス・ヤード。奥はガスホルダーの鉄骨を残した集合住宅です/撮影:AndyScott/出典:Wikimedia Commons(CC0)

学部課程(Undergraduate)の構成

CSMの学部課程は、前の章でご紹介した8つのプログラムと、プログラムとは別に公式サイトが「Curation courses(キュレーションのコース)」としてまとめている領域にわたって開講されています。ファッション、ファッションコミュニケーション、ファインアート、グラフィック・コミュニケーション・デザイン、プロダクト・セラミック・インダストリアルデザイン、宝飾・テキスタイル、舞台芸術、建築、キュレーションの各分野です。

分野主なコース名
ファッションデザインFashion Design: Communication/Knit/Menswear/Print/Womenswear
ファッションコミュニケーションFashion Communication: Histories and Theories/Image and Promotion/Journalism
ファインアートFine Art
グラフィックGraphic Communication Design
プロダクト・セラミックCeramic Design/Product and Industrial Design
宝飾・テキスタイルJewellery Design/Textile Design
舞台芸術Performance: Design and Practice
建築MArch Architecture (Integrated)(学部・大学院一体型)
キュレーションCulture, Criticism and Curation

CSM公式サイトは、ファッションデザインの各コースについて、たとえばニットウェアのコースを「糸、構造、技術を探りながら、革新的で責任ある素材主導のファッションを生み出す」コースと説明しています。ウィメンズウェアは「コンセプト主導のデザイン、素材の探究、批評的なリサーチを通してウィメンズウェアを探求し、ファッションデザインとファインアートの実践、責任あるものづくりを橋渡しする」コース、メンズウェアは「文化やアイデンティティ、身の回りの世界に応答するリサーチ主導のデザインで、メンズウェアを前進させる」コースとされています。プリントのコースは「色、パターン、表面のデザインを、ストーリーテリングと大胆なものづくりに組み合わせながら、プリントを通してファッションを再構想する」コースです。ここまで細かく専攻が分かれている点は、CSMがファッション分野で長く評価されてきた理由のひとつと言えます。

ファッション以外にも目を向けると、ファインアートを扱うArt programmeは「アーティストは、私たちが共有する未来の文化的な資源をつくる」という理念を掲げています。建築を学ぶSpatial Practices programmeには、学部と大学院を一体にした4年制のMArch Architecture (Integrated) があり、公式サイトは「創造的な探求と専門的な建築教育を組み合わせた、統合型のBAとMAを通じて、人と地球のためにデザインする」コースと紹介しています。舞台芸術を学ぶPerformance programmeは「学際的で実験的、そしてしばしば協働的なアプローチで舞台づくりに取り組む」としており、「多様な生態系こそがもっとも創造的に生き生きとしたものであり、私たちは違いを積極的に称える」という言葉でプログラムの姿勢を説明しています。

グラフィックを学ぶGraphic Communication Design programmeは、「考えることとつくることは互いを前進させる」という考え方を核に据え、「多様で意味のある形で、グラフィックとコミュニケーションデザインを通じて学生と教員が生き生きと活動できる、幅広く躍動的なコミュニティをつくる」ことを掲げています。宝飾・テキスタイルを学ぶJewellery, Textiles and Materials programmeは、「自由な発想によるデザインの思索から、手を動かす工芸まで」を含む、もっとも広い意味での素材の探究をプログラムの核に置いています。公式サイトは「カリキュラムの脱植民地化、学びのリソースの多様化、表象の優先、地球にとってプラスになるデザイン戦略の開発」に取り組む姿勢も明言しており、素材を扱う工芸系の教育が、環境や社会正義といった現代的な課題と結びついていることが分かります。

大学院課程(Postgraduate)の構成

大学院課程もまた、学部以上に分野が広がっています。ファッション分野ではMA FashionやMA Fashion Communicationの各コース、アート分野ではMA Fine Art、MA Fine Art: Digital、MA Art and Science、MA Contemporary Photography and Theoryのほか、研究に重心を置くMRes Artの各コースがあります。

分野主なコース名
ファッションMA Fashion/MA Fashion Communication: Fashion Image/MA Fashion Communication: Fashion Journalism/MA Fashion Communication: Histories and Theories/Graduate Diploma Fashion
アートMA Fine Art/MA Fine Art: Digital/MA Art and Science/MA Contemporary Photography and Theory/MRes Art(Exhibition Studies/Moving Image/Theory and Philosophy)
デザイン・マテリアルMA Biodesign/MA Material Futures/MA Design: Ceramics, Furniture, Jewellery/MA Industrial Design/MA Regenerative Design/MA Design for Industry 5.0
建築・空間MArch: Architecture/MArch Architecture (Integrated)/MA Cities/MA Narrative Environments
グラフィック・コミュニケーションMA Graphic Communication Design/MA Communicating Complexity
舞台芸術MA Performance(Design and Practice/Screen/Society/Writing)/MA Intercultural Practices/MA Character Animation
ビジネス・経営MA Innovation Management/MA Applied Imagination/MA Creative Leadership (Online)/Master of Business Administration (MBA)
文化・キュレーションMA Arts and Cultural Enterprise/MA Culture, Criticism and Curation

建築分野には、学部からの一体型であるMArch Architecture (Integrated) のほかに、建築系の学士号を持つ人向けのMArch: Architectureも用意されています。公式サイトはこのコースについて「確立された慣習やシステム、構造がますます不安定になる世界では、これまでとは異なる建築的思考が必要になります」と説明しています。デザイン・マテリアル系では、バイオデザインや再生型デザインといった、環境や生命科学と接続する新しい領域のコースが目立ちます。ビジネス系にMBAまで含まれている点も、CSMが創作だけでなく事業化・運営までを視野に入れたカレッジであることを示しています。

学費(2026年10月2日確認)

学費は、出願のタイミングによって参照する年度が変わるため注意が必要です。2026年10月2日の時点で、CSMの学部課程の個別コースページの多くは2027年9月入学向けの金額を掲載していました。ただし後述のとおり、ページによって掲載されている年度がそろっていません。

課程Home(国内)International(国際)コースページの記載
学部:BA Fashion Design の Communication/Menswear/Print/Womenswear、BA Fine Art£10,050/年£31,510/年2027年9月入学の金額
学部:MArch Architecture (Integrated)£9,790/年£30,890/年2027年9月入学の金額
学部:BA Fashion Design: Knit£9,790/年£30,890/年2026年9月入学の金額(開講は2027年9月)
大学院:MA Fashion(45週・17か月)1年目£10,385/2年目£6,2301年目£27,720/2年目£16,6302026/27年度入学の金額
大学院:MA Fine Art(60週・2年)£7,550/年£19,845/年2026/27年度入学の金額

学部の金額は、同じ2027年9月入学でもコースページによって載っている数字が違います。BA Fashion Design の Communication・Menswear・Print・Womenswear と BA Fine Art のページは Home£10,050・International£31,510 を「2027年9月入学の金額」として掲載しています。一方、MArch Architecture (Integrated) のページは Home£9,790・International£30,890 を同じく「2027年9月入学の金額」として掲載しており、BA Fashion Design: Knit のページは同額を「2026年9月入学の金額」と注記しています。

この£9,790・£30,890という金額は、UALの学費一覧ページでは2026/27年度の金額として示されているものです。したがって「分野によって学費が違う」と読むよりも、コースページごとに更新のタイミングがそろっていないと見るほうが実態に近いと思われます。志望コースのページで必ず個別にご確認ください。いずれのページも、翌年度の入学分は金額が変わる可能性があると明記しています。

大学院は、コースの週数(45週か60週か)と、Home・Internationalといった区分によって金額が変わる仕組みです。CSMの大学院のなかでもMA Fashionは特殊で、45週・17か月の課程が2つの学年度にまたがり、学費も1年目と2年目に分けて支払う方式になっています。UAL全体の大学院学費の仕組みと、学費以外にかかる生活費の目安については、ロンドン芸術大学(UAL)とは?の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

出願の進め方

学部はUCAS経由、大学院は直接出願

CSMの学部課程は、UALの他のカレッジと同じくUCAS(イギリスの大学出願サービス)を通して出願します。2026年10月2日時点で確認できた2027年9月入学分の出願締切は、2027年1月13日18時(グリニッジ標準時)です。BA (Hons) Fashion Design: WomenswearのUCASコードはW23W、BA (Hons) Fine ArtはW100、MArch Architecture (Integrated) はK102というように、コースごとに専用のコードが割り振られています(大学コードはいずれもU65)。大学院課程は、志望コースのページから直接UALに出願する方式です。MA Fashionの場合、2026/27年度入学の出願はすでに締め切られており、2027/28年度入学の出願は2026年秋に開始するとCSMは案内しています。

ポートフォリオ

ファッション系のBAコースでは、最大25ページのデジタル・ポートフォリオが求められます。内訳の目安として、ファッションデザインのリサーチ画像3ページ、ファッションデザインのスケッチ3ページ、カラーで仕上げたファッションイラスト2ページが示されており、残りのページで自分の創造力を補う作品を加える形です。MA Fashionの出願は3段階に分かれており、最大500語のパーソナルステートメントとCVによる初期出願、PebblePadを使った最大25ページのデジタル・ポートフォリオ提出、15分から20分のオンライン面接という流れで進みます。

英語のスコア

英語力の基準はコースによって異なります。ファッション系のBAコースはIELTS 6.0以上(各技能で最低5.5以上)、MA FashionはIELTS 6.5以上(各技能で最低5.5以上)が目安として示されています。UAL全体では、コースによってIELTS 5.0から7.5までの幅があることをUALの解説記事で確認していますので、志望コースのページで必ず最新の基準をご確認ください。

日本の高校からCSMの学部へ直接進むのは、教育制度の違いもあって簡単ではありません。UALにはFoundation Diploma in Art and Designという1年制のファウンデーション課程があります。これはCSMが運営するものではなく、CSMとキャンバーウェルの旧ファウンデーション課程をひとつにまとめ、UALのSchool of Pre-degree Studiesが運営している課程です。公式サイトによれば、修了するとUALの学部コースから少なくとも1つのオファーを受けられ、UALの6つのカレッジまたはCreative Computing Instituteへ進む道がひらけます。1年かけて制作の幅を広げ、ポートフォリオを組み立てたうえで学部に進む流れです。ファウンデーションの詳しい内容と学費は、ロンドン芸術大学(UAL)とは?の記事で解説していますので、あわせてご確認ください。

MAファッションショー

CSMが世界的に注目される理由のひとつが、毎年開催されるMAファッションショーです。このショーは、ロンドン・ファッション・ウィークの公式スケジュールの一部として開催される学生ショーで、CSM公式サイトは2026年2月に開催されたショーについて、「CSM MA Fashion ’26の卒業生23名が、ロンドン・ファッション・ウィークの公式スケジュールの一環として、180ストランドの満席の会場で最終コレクションを発表した」と伝えています。なお公式記事には開催日の明記がなく、2026年2月24日付の記事中で「先週の木曜日」と記されているのみです。

項目内容(2026年開催分)
開催時期・会場2026年2月(ロンドン・ファッション・ウィーク)/180 Strand
発表した学生数23名
審査員Sophia Neophitou-Apostolou(『10 Magazine』創刊者・編集長)
L’Oréal Professionnel Creative AwardFinnerty Mackay、Maxina Brewerが受賞
Topshopとのコラボレーション定番デニム「Jamie」「Joni」の再構想。50案から10デザインが選ばれ、制作のうえMAのランウェイで発表された。選ばれた学生にはそれぞれ1,000ポンドが贈られた

審査員を務めたソフィア・ネオフィトゥ=アポストル氏は、「予測可能でも、画一的でもありませんでした。それこそがCSMの素晴らしいところで、自分の芸術的な直感に従う力を後押ししているのです」とコメントしています。

このショーが注目される理由は、過去の修了生の顔ぶれにも表れています。CSM公式サイトのMA Fashionコースのページは、修了生としてアレキサンダー・マックイーン、クリストファー・ケイン、キム・ジョーンズ、シモーネ・ロシャ、ダニエル・リー、リチャード・クイン、キコ・コスタディノフといった名前を挙げています。CSMミュージアムの収蔵品を紹介する公式記事では、マックイーンの「バムスター・スーツ」が「Alexander McQueen, MA Fashion (1992)」、フセイン・チャラヤンの「フローラル・ペーパー・ジャケット」が「Hussein Chalayan, BA Fashion (1993)」として紹介されており、在籍した課程と年がここで確認できます。学部のショーについても、CSM公式サイトのFashion programmeのページが「CSMのBAファッションショーは、ジョン・ガリアーノ、ダニエル・リー、ステラ・マッカートニー、トル・コーカー、グレース・ウェールズ・ボナーなど、世界的なデザイナーやクリエイターのキャリアを後押ししてきた」と説明しています。

CSMのファッション教育の土台をつくった人物として、公式サイトはムリエル・ペンバートンを挙げています。CSMミュージアムの公式記事は「ペンバートンは80年以上前にファッションのプログラムを立ち上げた」「彼女はセントラル・セント・マーチンズにおけるファッションの出発点であり、その遺産は疑いようがない」と記しています。また別の公式ページは、彼女が「高等教育におけるファッション課程の青写真を1930年代以降つくりあげるうえで、中心的な役割を果たした」人物であり、「ファッションを学ぶ学生、つまり未来のデザイナーは、技術だけでなく、美学・歴史研究・創造性のすべてにわたって訓練される必要があるという彼女の信念は、画期的なものだった」と紹介しています。80年以上前の考え方が、いまのプログラムの組み立てにもつながっていることになります。

主な卒業生

CSM公式サイトで確認できる卒業生には、ファッション以外の分野も含めて幅広い顔ぶれがいます。

分野卒業生
ファッションアレキサンダー・マックイーン(MA Fashion、1992年)、フセイン・チャラヤン(BA Fashion、1993年)、クリストファー・ケイン、キム・ジョーンズ、シモーネ・ロシャ、リチャード・クイン、キコ・コスタディノフ、ジョン・ガリアーノ、ステラ・マッカートニー、ダニエル・リー、グレース・ウェールズ・ボナー、トル・コーカー
演劇・映画(ドラマ・センター・ロンドン出身)マイケル・ファスベンダー(『Steve Jobs』でアカデミー賞候補)、トム・ハーディ(『The Revenant』でアカデミー賞候補)
衣装デザインサンディ・パウエル(『Cinderella』『Carol』でアカデミー賞候補)、ジェニー・ビーバン(同部門での受賞経験があり、8回の候補歴。『Mad Max: Fury Road』で候補)
アート・音楽シャンテル・マーティン(アーティスト。2003年にBAグラフィックデザインを修了、MBE受勲)、M.I.A.(音楽家。CSMでファインアート、映画、映像を学ぶ)

ファッション分野の顔ぶれの強さはもちろんですが、1999年にCSMに加わったドラマ・センター・ロンドンの演劇教育の系譜から、アカデミー賞候補に名を連ねる俳優や衣装デザイナーが輩出されている点は、CSMがファッションだけのカレッジではないことをよく表しています。公式サイトの卒業生紹介ページには、グラフィックデザインやファインアートの分野で活動する若手卒業生の紹介記事も随時掲載されており、ショーやコンペティションでの受賞が報じられるたびに更新が続いています。

音楽家のM.I.A.は、UALの名誉フェローのページで「スリランカ・タミル人の難民として10歳でロンドンに来て、その後セントラル・セント・マーチンズでファインアート、映画、映像を修めた」と紹介されています。CSMのニュース記事では、ロンドンのサウスバンク・センターで毎年開かれる音楽フェスティバル「Meltdown」のキュレーターを務めたことも報じられています。ファッションショーの華やかさとは違う角度から、CSMが音楽やカルチャーの領域にも人材を送り出してきたことが分かる一例です。

まとめ

キングス・クロスでガスホルダーの鉄骨を残して集合住宅に転用された建物
キングス・クロスに残るガスホルダーの鉄骨。内側は集合住宅に転用されています/撮影:The wub/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

いかがだったでしょうか。セントラル・セント・マーチンズについて見てきました。要点は次の6つです。

  • CSMは1854年設立のセント・マーチンズ美術学校と1896年設立のセントラル・スクール・オブ・アーツ・アンド・クラフツが1989年に統合してできたUALのカレッジです。1999年にドラマ・センター・ロンドン、2003年にバイアム・ショー美術学校も加わりました
  • CSMは「ファッション学部」のような分野別の学部ではなく、C School・S School・M Schoolという3つのSchools of Thoughtと、その上に立つ8つのプログラムで構成されています
  • ファッションだけでなく、ファインアート、グラフィック、プロダクト、建築、宝飾、舞台芸術、ビジネスまで扱う、分野の幅が広いカレッジです
  • 2011年、1852年築の旧穀物倉庫グラナリー・ビルを改修したキングス・クロスの校舎に移転しました
  • 学部の学費は、2027年9月入学でHome£10,050・International£31,510と掲載しているコースページと、Home£9,790・International£30,890と掲載しているコースページが混在しています。後者はUALの学費一覧では2026/27年度の金額なので、志望コースのページで必ず確認してください
  • 毎年のMAファッションショーはロンドン・ファッション・ウィークの公式スケジュールの一部で、アレキサンダー・マックイーンをはじめ多くのデザイナーを世に送り出してきました

学費・出願日程・プログラムの内容は年度ごとに変わります。出願を具体的に考える段階では、必ず志望コースの公式ページで最新の情報をご確認ください。

Euphoric " " の視点

CSMは、学科を「文化」「システム」「素材」という3つの考え方で束ねています。グラフィックやプロダクトといった、作るものの種類で分けていません。

これは、分野の名前より先に、何を手がかりに世界を見るかを置いた分け方です。素材から考える人と、仕組みから考える人では、同じ椅子を作っても出てくるものが違う。その違いを学科の名前にしたわけです。

校舎にも似たところがあります。キングス・クロスのグラナリー・ビルは、もともとパン屋に卸す小麦を納めていた穀物倉庫でした。1852年の建物です。何かのために作られた箱が、まったく別の用途で生き直している。

進学先を選ぶとき、学科の名前は分かりやすい手がかりです。ただ、その名前がどういう考えで付けられたのかまで見ると、その学校が何を大事にしているのかが見えてきます。名前は、たいてい思想の要約です。

ポートフォリオの作り方に不安がある方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。

もっと知るには

本記事の情報は、セントラル・セント・マーチンズおよびロンドン芸術大学の公式サイト(arts.ac.uk)をもとに確認しています。学費・出願日程・コース内容は年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。

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