ブランドパーパスとは?意味と作り方、きれいな言葉で終わらせない5つの問い

ブランドパーパスとは?意味と作り方、きれいな言葉で終わらせない5つの問い

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パーパスとは、「その会社が、利益を生むこととは別に、社会の中で何のために存在しているのか」を示す存在意義の言葉です。「目的」「存在意義」と訳され、近年は企業ブランドの中心に置く考え方として広く使われるようになりました。

ただ、パーパスは「きれいな言葉を作って掲げる」だけでは機能しません。言葉と実際の行動がずれると、かえって信頼を損ねることがあります。この記事では、パーパスの意味、ミッションとの違い、注目された背景、事例、そしてきれいな言葉で終わらせないための5つの問いを整理します。

この記事で分かること

  • パーパスの意味と、ミッション・ビジョンとの違い
  • パーパスが注目された背景と、実在の企業の事例
  • 自社のパーパスを考えるための5つの問いと点検表

パーパスとは何か:ミッション・ビジョンとの違い

パーパスは、企業が存在する根本的な理由を示します。「何をするか」よりも「なぜそれをするのか」に重点があります。

パーパス、ミッション、ビジョン、バリューの違いを、中心になる問いと特徴で比較した図
図:パーパスと3つの言葉の違い
項目中心になる問い特徴
パーパスなぜ存在するのか社会の中での存在意義。長く変わらない
ミッション何を担うのかパーパスを実現するための使命
ビジョンどこへ向かうのか実現したい未来の姿
バリューどう判断するのか行動の基準

ただし、この使い分けは企業によって異なります。パーパスとミッションを同じ意味で使う会社もあれば、パーパスを最上位に置く会社もあります。大切なのは、自社の中で言葉の意味を決めておくことです。3つの言葉の関係については、本連載の「ミッション・ビジョン・バリューとは」の回も参考にしてください。

パーパスが注目された背景

パーパスが経営の言葉として広がった背景には、いくつかの出来事があります。

パーパスが経営の言葉として広がった背景を、シネック、フィンクの書簡、ビジネス・ラウンドテーブルの声明の流れで示した図
図:パーパスが広がった3つの出来事

サイモン・シネックの「ゴールデンサークル」(2009年)
作家のサイモン・シネックは、2009年のTEDxでの講演と同年刊行の著書『Start with Why』で、「Why(なぜ)」から始める考え方を示しました。「Why → How → What」の順に、内側から外側へ伝えるという枠組みで、優れたリーダーやブランドは、何をするかよりも先に、なぜそれをするのかを伝えている、という主張です。この考え方が、パーパスという言葉を一般にも広めました。

ラリー・フィンクの手紙(2018年)
世界最大級の資産運用会社ブラックロックのCEO、ラリー・フィンクは、2018年に投資先企業のCEOへ宛てた年次書簡「A Sense of Purpose」を公表しました。この書簡は、社会は企業が社会的な目的を持つことを期待していること、その目的がなければ企業は長期的に社会からの信頼(事業を続ける許可)を失うおそれがあること、などを述べています。投資家の側から、パーパスの重要性が語られたことで、経営者の関心が高まりました。

ビジネス・ラウンドテーブルの声明(2019年)
米国の大企業の経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブルは、2019年8月19日に「企業の目的に関する声明(Statement on the Purpose of a Corporation)」を発表しました。株主だけでなく、顧客、従業員、取引先、地域社会といった関係者全体に価値を提供するという方向への転換を、公に示したものとして報じられました。

こうした流れの中で、パーパスは「CSRの延長」から「経営の中心」へと位置づけが変わってきました。

事例で見る:パーパスと行動がつながっている企業

パタゴニア

アウトドア衣料のパタゴニアは、公式サイトで「We’re in business to save our home planet(私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む)」と掲げています。サイトでは、事業、投資、発信、想像力を通じて、この使命に取り組むと説明しています。

この事例が示すのは、パーパスが商品づくりの基準にまで届いていることです。公式サイトでは、価値観の第一に「最高の製品をつくる」が挙げられ、耐久性、修理しやすさ、機能性が基準として示されています。大きな目的が、日々の製品の基準につながっている構造です。

エルメス財団

エルメスは2008年に企業財団を設立しています。財団の使命は、技能の伝承、創造の支援、環境の保護、連帯の促進の4つとされ、「私たちの身振りが、私たち自身を規定し、示す」という趣旨の確信が示されています。本業である手仕事の価値観が、財団の活動の言葉と連続している例です。詳しくは、本連載のラグジュアリーブランドと美術財団の回で扱っています。

美術館のパーパス

美術館は、パーパスを考えるうえで参考になる組織です。ロンドンのTateは、1992年の法律(Museums and Galleries Act)に基づく使命として、英国美術と国際的な近現代美術について、人々の理解と楽しみを高めることを使命としています。「誰のために、何を高めるのか」が、明確です。収益の最大化ではなく、公共の価値が存在意義の中心にあるため、日々の判断にぶれが生まれにくい構造です。

きれいな言葉で終わらせない5つの問い

パーパスづくりの失敗で多いのは、きれいな言葉が先に決まり、中身が伴わないことです。次の5つの問いに、自社なりの答えがあるかを確認します。

パーパスをきれいな言葉で終わらせないための5つの問いを、点検の観点として整理した図
図:パーパスを点検する5つの問い

問い1:その言葉は、自社がなくなったときに誰が困るかを説明できるか
自社が存在しなくなったとき、困るのは誰か。何が失われるのか。ここに具体的な答えがなければ、パーパスは抽象的な標語になります。

問い2:他社の名前に入れ替えても成り立つ文章になっていないか
「豊かな社会をつくる」「人々を笑顔にする」といった言葉は、業種を問わず使えます。自社の歴史、強み、地域性などが反映されているかを確認します。

問い3:その言葉のために、何かを「やめる」覚悟があるか
パーパスは、何をやるかだけでなく、何をやらないかを決める基準でもあります。利益の出る仕事でも、パーパスに合わなければ断る。そうした判断が一度もないなら、言葉が機能していない可能性があります。

問い4:現場の人が、自分の言葉で説明できるか
経営陣が考えた言葉を、現場の社員が自分の仕事に結びつけて語れるか。語れないなら、日々の判断には使われません。

問い5:言葉と行動を、外部の人が確認できる形で示せるか
空間、商品、採用、取引、発信。外から見えるところで、言葉と行動が一致しているか。一致していなければ、「言っていることとやっていることが違う」と受け取られるおそれがあります。

アートの視点:パーパスを「見える形」にする

パーパスは言葉であるため、そのままでは見えません。そこで、空間や作品が補助線になります。

たとえば、オフィスの受付や会議室に置く作品は、その会社が何を大切にしているかを、来訪者や社員に無言で伝えます。作品の選び方、作家との関係の築き方、置き方には、企業の姿勢が表れます。

重要なのは、作品の「有名さ」よりも、パーパスとの関係です。なぜその作品なのか、なぜその作家なのかを説明できるとき、アートはパーパスを体現する手段になります。説明できない作品は、単なる装飾にとどまります。

自社のパーパスを考える進め方

  1. 歴史を振り返る:創業の経緯、転機、大切にしてきた判断を事実として整理します。
  2. 社内外の声を集める:社員、顧客、取引先に、自社が選ばれている理由を聞きます。
  3. 候補を複数つくる:1つに絞る前に、複数の言い回しを出して比べます。
  4. 5つの問いで点検する:上の5つの問いに照らして、言葉を磨きます。
  5. 使う場面を決める:採用、評価、商品開発、空間づくりなどに組み込みます。

点検表

  • [ ] 自社がなくなったとき、誰が困るかを説明できる
  • [ ] 他社の名前に入れ替えても通じる文章ではない
  • [ ] 言葉のために断った仕事、やめた取り組みがある(または決めている)
  • [ ] 現場の社員が自分の言葉で言い換えられる
  • [ ] 外から見える行動が、言葉と一致している

まとめ

パーパスは、会社が利益とは別に、社会の中で何のために存在するのかを示す言葉です。シネック、フィンク、ビジネス・ラウンドテーブルといった流れの中で、経営の中心に位置づけられるようになりました。ただし、言葉だけを整えても機能しません。誰が困るのか、何をやめるのか、誰が語れるのか、どう見せるのかという5つの問いに答えながら、行動と空間で裏づけていくことが重要です。節目の計画段階で専門家に相談し、客観的な視点を入れることも、言葉の質を高める手段の一つです。

よくある質問(FAQ)

Q1. パーパスとミッションの違いは何ですか。
一般的には、パーパスは「なぜ存在するのか」という存在意義、ミッションは「その実現のために何を担うのか」という使命として使い分けられます。ただし、同じ意味で使う企業もあるため、自社内で定義を決めておくことが大切です。

Q2. パーパスは必ず作る必要がありますか。
法律上の義務ではありません。ただし、採用、商品開発、取引先の選定などで判断が分かれる場面が増えているなら、判断の軸を言葉にしておく意味は大きいと考えられます。名称は「パーパス」でなくても構いません。

Q3. パーパスは、どのくらいの期間で作れますか。
企業の規模や進め方によって異なり、一概にはいえません。言葉をつくる作業そのものより、社内外の声を集める時間と、使う場面を設計する時間に、多くの時間がかかる傾向があります。


この記事を書いた Euphoric " " について

Euphoric " " は、ユアムーン株式会社が運営するアートメディアです。ユアムーンは、デザインとクリエイティブを軸にしたブランディング会社です。ブランドの言語化から、ロゴやWebサイトなどのデザイン、社内外への発信までを一貫して設計しています。ご希望に応じて、アートの選定・導入もお手伝いしています。

パーパスは、言葉を整えるだけでなく、デザインや発信を通じて「見える形」にすることで、社内外に伝わります。ユアムーンは、言語化とデザイン・発信の設計を一つの流れとして行います。

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