【ポップカルチャー解説】サンリオのあゆみ〜日本のカワイイから世界のKAWAIIへ〜

©︎ 2026 SANRIO CO., LTD. 著作 株式会社サンリオ

アートコンサルティング

こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんはサンリオをご存知ですか?

サンリオとは、株式会社サンリオの展開するキャラクターブランドを指します。

サンリオには1974年に生まれたハローキティをはじめ、400種類以上のキャラクターが存在します。毎年サンリオキャラクター大賞という人気投票で盛り上がりを見せています。

50年以上に渡り展開してきたキャラクターブランドは、日本のポップカルチャーの中心となり老若男女に親しまれています。

またサンリオのキャラクターブランドは、その歴史の長さと魅力からアートシーンへも大きな影響を与えています。

本記事ではサンリオの歴史とアートとの関わりについてご紹介します。

サンリオって?

サンリオの始まり カワイイは世界を救うと信じて

株式会社サンリオの始まりは1960年、東京都千代田区で設立された株式会社山梨シルクセンターです。

山梨県庁の職員であった辻信太朗が、山梨県の特産品である絹製品の販売を行うために創業した会社でしたが、事業に苦戦し雑貨の販売に転向します。

雑貨販売事業で初めて成功したのは、ノートや食器、草履などにいちごのパターンをプリントした「いちご」シリーズでした。

1960年代は戦後の不況も収拾し、高度成長期のはじまりを見せた時代でした。物質的満足感を求め、家財や日用品の流通が激しくなりました。

そんな中、サンリオはただ必要な雑貨を売るだけではなく、カワイイという付加価値を足すことで人々が感動し、商品が売れることに気づきました。

サンリオが現在も大切にしている、日常に寄り添うカワイイを届けるという理念の誕生でした。

1960年半ば、人気イラストレーターを登用した雑貨を展開して成功します。水森亜土、内藤ルネ、田村セツコ、やなせたかしなどが参加し、魅力的なイラストには詩的な言葉が添えられました。

サンリオが「センチメント」と呼ぶこの文章は、雑貨を手に取った人の心を明るく灯し、実用品よりも身近で大切な持ち物へと変える仕掛けとして機能しました。

またサンリオの事業に参加したイラストレーターは、サンリオが立ち上げた出版社から詩画集や絵本を発売しました。

読み物としてはもちろんのこと、ギフトやインテリアとしても楽しむことができる商品として人気になりました。

サンリオを羽ばたかせたやなせたかしの「愛」

愛する歌 第1集: 詩集

描かれた気球はリンゴのかたち。

美しいものに向かっていく私たちの心のメタファーでしょうか。

出版事業の第一号書籍は、やなせたかしの初めての詩集『愛する詩』でした。仕事を通じて親交のあったやなせたかしから自費出版しようとしていた詩集を見せてもらった辻信太郎は、出版部門の立ち上げを即決したといいます。

『愛する詩』には次のような言葉が書かれていました。

美しいものには永遠性があり、美しいものを求める心には無限の夢があるのです。

しかし、繁雑な現代人の生活の中では、

ともすれば、この大切な心を人々は見失いがちなのです。

我々は皆様とともに美しいものを求め、

美しい心をはぐくむべく各種の本を出版していくつもりです。

やなせたかしの思いに共鳴し出版事業を立ち上げたサンリオは『愛する詩』に続いて、抒情詩と絵の季刊本を自身の編集で出版したいというやなせたかしの強い要望に応え1971年に『詩とメルヘン』が刊行されました。

詩の雑誌は売れないという当時のジンクスを打ち破って人気を博し、たくさんの詩の応募を受けて季刊から月刊に移行しました。

子どもからの応募が多かったことを受けて子ども向けの『いちごえほん』が刊行されます。

2003年に『詩とメルヘン』が廃刊になるまで約30年、やなせたかし自身が「(荒れた)世に対するレジスタンス」と表現した美しく理想的な精神世界を届けました。

オリジナルキャラクターへの挑戦 自分たちの“かわいい”

キティちゃんの誕生秘話。1975年のデビュー当時は名無しの「ねこ」だった | ハフポスト アートとカルチャー

ハローキティのグッズ第一号である「プチパース」。

ハローキティがサンリオのオリジナルキャラクター躍進のきっかけを作った。

これまではパターンデザインやイラストレーターとの共同制作で雑貨や出版をしていたサンリオですが、イラストレーターの中にはグッズに際してデザインをアレンジすることに難色を示す人もいました。

こうして「借り物じゃない自分たちの“かわいい”を作ろう」とサンリオはオリジナルキャラクターの開発をスタートさせました。

オリジナルキャラクター開発の前夜とも言える商品がLoveコレクションです。果物やリボン、花などのシンプルでアイコニックなオリジナルイラストに、詩文を添えた雑貨シリーズです。

ちょうど、サンリオ黎明期のヒット商品である、いちごシリーズとセンチメントを組み合わせたシリーズと言えます。

そんなLoveコレクションのために描かれたイラストに、詩文を添えていたデザイナー。だんだんと感情移入し、単なるイラストではなくキャラクターへと変わっていきました。

こうして生まれたサンリオオリジナルキャラクターのひとつがパティ&ジミーです。

1973年に誕生したサンリオ初のオリジナルキャラクターがコロちゃん

1974年にLoveコレクションのイラストから派生してパティ&ジミーが誕生しました。

ふたりのキャラクターが誕生したことでサンリオは本格的にオリジナルキャラクターの制作を行います。社内コンペを通してノウハウのないキャラクターデザインを洗練させていきました。

こうして同年1974年にサンリオの看板的存在であるハローキティが誕生しました。

ハローキティのここがすごい サンリオのキャラクターデザイン

ここでサンリオの沿革から脇道に逸れ、サンリオキャラクターの魅力について紹介します。

ハローキティは1974年に誕生した、リボンを身につけた白猫のキャラクター。

デビュー当時はそれほど期待されておらず、名前も発表されていませんでした。グッズの絵柄としてのみ描かれたハローキティは、セリフもなければストーリーもありません。

しかし社内の評判に反して人気を呼び、現在まで愛され続けているハローキティ。一体その魅力はどこに宿っているのでしょう。

ハローキティは語らない

キティ「YouTubeで『ハロー』っていうのにずっと憧れていました」/YouTube「HELLO KITTY CHANNEL(ハローキティチャンネル)」PR映像

いちサンリオファンとしては、YouTubeでキティちゃんの「ハロー♪」が聞けた時は感動しました。

むしろSNSではよくしゃべる印象すらあります。

ハローキティをキャラクターデザインとして見た時、最大の特徴は口がないことではないでしょうか。

言われてみれば!と思った方もいるかもしれません。

口がないということは、感情表現が極端に狭まります。どんな気持ちか読み取れないキャラクターが人気になるだろうかと考えてしまいます。

しかし、逆でした。口がないシンプルで垢抜けたデザインは、どんなシーンで使われる雑貨であってもマッチし、ユーザーがどんな気持ちであっても寄り添ってくれる寛容さを演出しました。

何も語らないからこそ、いつでもそばにいてくれる、お守りのような存在になったことがハローキティの魅力の秘密ではないでしょうか。

わたしが変わるとキティも変わる

仕事を断らない「ハローキティ」がわかさ生活「ブルブルくん」にまさかのNG 頼みのダンスが命運を分ける、その結果は… | 株式会社わかさ生活のプレスリリース

ハローキティも「仕事の断らなさ」を自覚している様子。

ハローキティの特徴といえばリボン、白い猫耳、青いオーバーオール。このシンプルさゆえに、ハローキティは時代やユーザーの変化に寛容に対応できます。

例えば2000年代、ギャルブームに合わせてヒョウ柄のファッションとアイメイクをしたハローキティが登場。さらに2020年代の平成レトロ・平成ギャルブームによって同様のデザインが再登場しています。

またサンリオが手広く行っている他社企業とのコラボレーションにも同様の強みが活かされています。

ハローキティをはじめ、サンリオのキャラクターの多くはイメージカラーやアイコンとなるパーツやモチーフが決まっていて、企画やデザインに取り入れやすいのです。

どんな世界観にもマッチするサンリオのブランディングは、まさに現在の企業理念にある「みんななかよく」の表れではないかと思います。

経営戦略として見ても興味深い点があります。

サンリオはそのブランディング上、女性や子供に人気のコンテンツです。

そんなサンリオがコラボ事業を推進している理由の一つに、サンリオに触れる時間や人々を増やす「サンリオ時間」の拡大があります。

また、辻信太郎は企業理念として「面白いと思うものが売れなくて困っていたらサンリオとコラボするように言ってほしい。そうすればコラボして売れるようにする。」という旨を表明しています。

少し前まで「ハローキティは仕事を選ばない」という冗談の言葉もありましたが、三方よしを目指してコラボは惜しまないというサンリオの企業理念は素晴らしいと思います。

2024年にハローキティの50周年を記念して開催された「Hello Kitty展 ―わたしが変わるとキティも変わる―」。この展示名にある「わたしが変わるとキティも変わる」という言葉は、ハローキティが持つ魅力をシンプルに表現していると思います。

ちなみにコラボ事業の先駆けとも言える「ご当地キティ」の始まりは1998年、初めてのコラボレーションは2001年にアメリカのデザイナー、ポールフランクが描いた猿のキャラクター「ジュリアス」とのものでした。

このコラボは、ハローキティの担当デザイナーがサンフランシスコでサイン会を行っていた時、ポールフランクも同じ施設でサイン会をしており、興味を持った担当デザイナーがサインをもらいにいくと、ポールフランクがハローキティのファンであることが発覚。すぐにコラボの話が持ち上がったというのです。

いちご新聞の創刊 サンリオファンが起こした奇跡

いちご新聞50周年スペシャルサイト-いちご新聞って?

記念すべき創刊号の表紙はスヌーピーでした。

これはスヌーピーの作者チャールズ・M・シュルツ氏とサンリオが懇意だったためのようです。

1975年、『いちご新聞』の刊行が始まります。

いちご新聞は現在にいたるまでサンリオファンに向けて刊行され続けている機関紙です。

いちご新聞は単なる広告雑誌ではありません。最大の特徴は読者参加型の企画。読者から届いた手紙をもとに、家族や学校の話題を取り上げ、ファン同士の間接的な交流の場にもなっていました。

また、サンリオとファンとの交流で起こった奇跡的な出来事があります。

1985年8月、田園調布にあったサンリオショップ「いちごの家」が1000日の期間限定営業を終えるという内容の記事が掲載されました。

すると全国のサンリオファンから「いちごの家を壊さないで」という嘆願の手紙が4000通以上も届きます。

これを受けていちごの家は存続が決定し、2011年まで営業が続けられました。

サンリオがファンと作り上げたコミュニティの力を感じさせるエピソードですね。

夢の国サンリオピューロランドの誕生

Kakidai – 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=156221043による

いちごの家の一件からも分かる通り、サンリオとファンの結びつきに欠かせないものが実店舗の存在でした。

1987年1月に株式会社サンリオ・コミュニケーション・ワールド(現・株式会社サンリオエンターテイメント)を設立、サンリオのテーマパーク「多摩サンリオコミュニケーションワールド」建設の検討が始まります。

同年3月、初のテーマパークとして千葉県船橋市の「ららぽーと2」屋上に「サンリオフォンタージェン」がオープンします。

そして1990年12月7日に東京都多摩市の多摩ニュータウンに「サンリオピューロランド」が、翌年の1991年1月に大分県に「ハーモニーランド」がオープンしました。

実はサンリオピューロランドは日本初の屋内型テーマパークで、世界でも1989年にオープンした韓国のロッテワールドに次ぐ2番目という前例の少ない娯楽施設でした。

アートとサンリオ

ここからはサンリオとアートの結びつきについてご紹介します。

現代日本のカワイイを形造ったと言っても過言ではない影響力を持つサンリオは、ポップカルチャーのみならずアートの世界にも影響を与えています。

森貴也×ハローキティ

はじめにサンリオ創業60周年を記念して開催された「サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史」で発表された、彫刻家・森貴也の作品『脱皮するキティ』を紹介します。

木材とチタンを組み合わせ、まるでハローキティが脱皮しているかのようです。

作者の森貴也は、サンリオの創業者である辻信太郎が戦争を経験し、世界中が仲良くなることを願ってカワイイを立ち上げたことを踏まえ、次のように語っています。

金属を使って作品を作って、平和な世界を次の世代につないでいきたい。

悲しくなるような出来事、戦争も他の国では続いていますから、

どんどん境界線がサンリオのキャラクターでなくなっていって、

笑顔は世界共通なのでたくさんの人の笑顔を作っていってもらいたいと思っています。

ハローキティのリボンは世界中の人が平和に結ばれるように、という意味が込められていると言われています。

「脱皮するキティ」のリボンは今まさにチタンに生まれ変わっているように見えます。

サンリオが60年間願い続けている平和を思わせる、希望的な作品です。

名作日本画×サンリオキャラクター

見返り美人

日本の美術館で展開されている「Sanrio Characters museum series 日本画コレクション」では、名作日本画の中に人気サンリオキャラクターが大胆に登場。

和装を身につけて表情豊かに絵の世界を楽しむサンリオキャラクターたちは作品の雰囲気をより際立たせるものになっています。

緻密に再現された名画とスーパーフラットのサンリオキャラクターが絶妙なコントラストを生んでいます。現代人にとって身近な存在であるサンリオキャラクターの存在は、名画への関心を開く扉のようです。

レディー・ガガ×ハローキティ

シンガーや女優など幅広いキャリアを持つレディー・ガガはファッショントレンドにも影響を与えるインフルエンサーとしても活躍しています。

そんなレディー・ガガはハローキティのファンとして有名で、米国サンリオ35周年記念イベントではハローキティのぬいぐるみで構成されたドレスを着用して話題を呼びました。

このドレスはもちろん商品化されていませんが、「サンリオ展」では再現ドレスの展示が行われています。

ハビエル・マリスカル×ハローキティ

バルセロナ五輪のキャラクターなどを手がけたスペインのグラフィックデザイナー、ハビエル・マリスカルとハローキティがスペイン日本交流400周年記念事業の企画でコラボレーション。

口が描かれない余白のある表情が特徴のハローキティですが、本企画のハローキティはデザインの一環で口が描かれています。

無垢なハローキティを、キャンバスに見立てデザインしたというマリスカル。シンプルなハローキティのデザインをアーティスティックに解釈し、新しい姿を描き出したといえるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。

サンリオの歴史から、アートとの繋がりまでをご紹介しました。

アートの項を見ると顕著ですが、サンリオのカワイイがKAWAIIとして世界に羽ばたき受け入れられている様子が見て取れます。

サンリオはこの記事では語り尽くせないほど魅力的なコンテンツに溢れています。ぜひ興味を持った方はサンリオの世界に飛び込んでみてください。

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