ブランド認知とは?「再認」と「想起」の違いと高め方を解説

ブランド認知とは?「再認」と「想起」の違いと高め方を解説
写真:Rodhullandemu / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0。トリミング・文字入れ。この画像もCC BY-SA 4.0で提供)

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ブランド認知とは、消費者がそのブランドを知っている程度、つまり、ブランドを見たり思い出したりできる度合いのことです。マーケティング研究では、ブランド認知を「再認(recognition)」と「想起(recall)」の二つの側面に分けて考えます。

「知られていない」ことは、選ばれる以前の問題です。しかし、認知を高めれば何でも良いわけではありません。この記事では、再認と想起の違いと、それぞれの測り方・高め方を、事例を交えて整理します。

この記事で分かることは、次の3点です。

  • ブランド認知の定義と、再認・想起の違い
  • 認知の測り方(助成想起・純粋想起など)と、数字の読み方
  • 草間彌生とテートの事例から見る、「覚えられる」ための条件

ブランド認知とは何か

ブランド認知は、ブランドと消費者の関係の入口にあたります。商品やサービスを選ぶ前に、そのブランドが頭にあるかどうかで、選択肢に入るかが決まるからです。

マーケティング研究者のケビン・レーン・ケラー(Kevin Lane Keller)は、1993年の論文「Conceptualizing, Measuring, and Managing Customer-Based Brand Equity」(Journal of Marketing, 57巻1号, 1-22頁)で、消費者の頭の中にあるブランドの知識を、ブランド認知とブランドイメージの二つの要素で捉えました。そして、ブランド認知は、再認と想起の成績に関わるものだと整理しています。

再認と想起の違い

二つの違いは、「手がかりの量」にあります。

ブランド認知を構成する再認と想起の違いを、意味・場面の例・手がかり・強く働く場面で比較した図。Euphoric
図:再認と想起の違い
項目再認(recognition)想起(recall)
意味ブランドを見せられて、見覚えがあると分かる手がかりから、自力でブランドを思い出す
場面の例店頭の棚でロゴを見て気づく「〇〇を買おう」と思ったとき、ブランド名が浮かぶ
手がかりブランドそのもの(ロゴ・商品)カテゴリーや状況など、ブランド以外
強く働く場面店頭、画面上の選択来店前、検索前、相談先を探すとき

BtoBのサービスや、ホテル、専門的な事業のように、購入前に「どこに頼むか」を思い浮かべる必要があるカテゴリーでは、想起が重要になります。一方、店頭やネット上で選択肢が並ぶ場面では、再認が働きます。

「知られている」だけでは足りない理由

認知が高いことと、選ばれることは同じではありません。知られていても、印象が曖昧だったり、イメージが好ましくなかったりすれば、選択につながらないためです。ケラーが認知とイメージを並べて論じたのも、この点によります。

また、研究者のバイロン・シャープ(Byron Sharp)は、著書『How Brands Grow: What Marketers Don’t Know』(Oxford University Press, 2010年)で、ブランドの成長に関する実証的な知見をまとめています。同書では、購買の場面でブランドが思い浮かぶ可能性は「メンタル・アベイラビリティ(心理的な利用可能性)」と呼ばれ、ロゴや色、音などの「ブランドを思い出させる資産」がそれを支えると説明されています。

整理すると、認知を高めるとは、多くの人に、必要な場面で、自社を思い出してもらいやすい状態をつくることだといえます。

事例1:草間彌生の水玉が「一目で分かる」理由

アートの世界で、再認の強さを示す例が、草間彌生の水玉です。

ルイ・ヴィトンは、草間彌生と2012年に最初のコラボレーションを行い、2023年に二度目のコレクションを発表しました。LVMHの公式ニュースによると、二度目の協業は最初から約10年後のもので、第1弾では「ペインテッド・ドット」「メタル・ドット」「インフィニティ・ドット」「サイケデリック・フラワー」などのコレクションが示され、第2弾は2023年3月31日から販売されました。コレクションの名称は「Creating Infinity(無限をつくる)」で、水玉が一貫した題材になっています。

赤いおかっぱ頭に水玉の赤い服を着た草間彌生の蝋人形
2012年のルイ・ヴィトン×草間彌生のコレクション発表に合わせて店頭に置かれた、草間彌生の蝋人形
写真:Garry Knight / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
れんが造りの百貨店の外壁に色とりどりの水玉が付き、その前に筆を持つ草間彌生の巨大な像が立っている
2023年1月、ロンドンの百貨店ハロッズの外壁に設置された草間彌生の巨大な像。手には水玉のルイ・ヴィトンのバッグ
写真:Peter Trimming / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

ここで注目したいのは、水玉という一つの特徴が、作家個人を一目で連想させる点です。ブランドとの協業で水玉が使われると、見た人は、作品を知らなくても「草間彌生だ」と分かります。作家側から見れば、水玉が再認を支える資産になっています。企業のブランドでも、同じように、見た目の特徴を一貫して使い続けることが、再認を高めます。

事例2:テートの「変えない核」という選択

トンマナの回(第28回)でも触れた英国のテート(Tate)は、再認の設計の例にもなります。

デザイン情報サイトによると、現在のテートのマークは、2000年のテート・モダン開館に合わせて、ウルフ・オリンズが組織全体のリブランディングとしてつくりました。2016年には、ノース(North)が、ゼロから作り直さず「進化させる」方針で見直しを行い、複数の美術館とデジタル領域で一つのロゴを共通で使えるようにしました。ノースのパートナーは、「一目でテートと分かりながら、より動的に使えるロゴ」を目指したと説明しています。

海を望む石造りの壁に掛けられた、青地に白いぼかし文字で「TATE ST IVES」と書かれた縦長のサイン
テート・セント・アイヴスの入口のサイン。ぼかしのかかった「TATE」のマークが使われています
写真:Rod Allday / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)
赤れんがの倉庫の入口に「TATE」の文字を連ねたサインが掲げられ、ガラス窓に展覧会の告知が並ぶ
テート・リバプールの入口。館名のサインと展覧会の告知に同じマークが使われています
写真:Rodhullandemu / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

美術館のように、展覧会ごとに内容が大きく変わる組織でも、変えない核を持つことで、再認が積み重なることが分かります。毎回まったく違う見た目にすると、せっかくの接点が積み上がりません。

認知の測り方

ブランド認知は、調査で測るのが一般的です。主な質問の種類は、次のとおりです。

ブランド認知度の測り方として、純粋想起・助成想起・認知経路の3つの質問と、分かることをまとめた図。Euphoric
図:認知の測り方 3つの質問
指標質問のイメージ何が分かるか
純粋想起(非助成想起)「〇〇という分野で、思い浮かぶ会社を挙げてください」手がかりなしで思い出される強さ
助成想起「次の会社名のうち、知っているものを選んでください」名前を見せられて知っているか(再認に近い)
認知経路「どこで知りましたか」どの接点が効いているか

測る場合は、数字の大小だけでなく、誰に聞いたか(対象者の条件)を揃えることが大切です。母集団が変わると、数字を比較できません。また、BtoBでは、対象者の数が限られるため、数字よりも「どの層に、どの接点で届いているか」を丁寧に見るほうが、役立つことが多いと考えられます。

認知を高める4つの方法

ブランド認知を高める4つの方法(見た目と言葉の一貫、カテゴリーでの位置づけ、接点を増やす、続ける)を示した図。Euphoric
図:認知を高める4つの方法

1. 見た目と言葉を一貫させる

ロゴ、色、書体、言葉づかいを揃えて使い続けます。接点ごとに違うと、再認が積み上がりません。トンマナとブランドガイドラインを整えておくことが、前提になります。

2. 「このカテゴリーといえば」の位置を決める

想起は、カテゴリーとの結びつきで生まれます。「何の分野で思い出してほしいのか」を一つに絞り、その文脈で繰り返し発信します。

3. 接点を増やす

ウェブサイトだけでなく、空間、展示、イベント、寄稿など、人が実際にブランドと出会う場所を増やします。アートを取り入れた空間は、来訪者に印象を残しやすい接点の一つです。

4. 小さくても、続ける

認知は一度の施策では定着しません。同じ形で続けることで、少しずつ積み上がります。

認知施策のチェックリスト

  • 「どの場面で思い出してほしいか」を、一文で書ける
  • ロゴ・色・言葉づかいが、主要な接点で揃っている
  • 認知を測る質問と、対象者の条件が決まっている
  • 認知とあわせて、イメージ(どう思われているか)も確認している
  • 施策を最低でも1年は続ける前提で計画している

よくある誤解

誤解1:広告を増やせば認知は上がる

広告は接点を増やす手段の一つですが、見た目や言葉が接点ごとに違えば、再認は積み上がりません。量の前に、一貫性を整えることが先決です。

誤解2:認知度の数字が高ければ成功

認知の数字は、誰に聞いたかで大きく変わります。自社が届けたい相手に、必要な場面で思い出されているかを見ることが大切です。

誤解3:SNSのフォロワー数=認知

フォロワー数は接点の一つの指標にすぎません。フォロワーが、必要な場面でブランドを思い出す状態にあるかは、別に確かめる必要があります。

小さな会社の認知の考え方

規模の小さい会社は、広い範囲に知られることを目指すより、狭い範囲で確実に思い出される状態を先に作るほうが現実的です。たとえば、特定の地域、特定の業種、特定の課題の中で、「あの分野ならあの会社」と言われることです。範囲を絞ることで、発信の内容も、接点の選び方も明確になります。

そのうえで、空間やアート、展示、寄稿といった、実際に人と出会う場所を持つと、印象が記憶に残りやすくなります。

アートの視点:作家は「認知の設計者」でもある

美術の世界では、作家が自分の作品を「覚えられる形」に磨き上げています。草間彌生の水玉はその代表例ですが、色や素材、モチーフを一貫して使い続けることで、作品が作家と結びつきます。

企業も同じように、「何を変えず、何を変えるか」を決めることが、認知の設計の出発点です。空間やアートを取り入れる場合も、ブランドの核となる表現と合っているかを確認すると、印象が積み上がりやすくなります。節目の計画段階で専門家に相談しながら、認知の目的と接点を整理しておくと、施策がぶれにくくなります。

まとめ

ブランド認知とは、消費者がそのブランドを知っている程度で、再認と想起の二つの側面があります。手がかりを見て分かるのが再認、自力で思い出せるのが想起です。草間彌生の水玉やテートの事例のように、変えない核を持ち、一貫して使い続けることが、認知を積み上げる基本になります。測るときは、質問の種類と対象者の条件を揃えて読むことが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q1. ブランド認知度と知名度は同じですか。

近い意味で使われることが多いですが、厳密には使う人によって異なります。調査では「純粋想起」「助成想起」のように、何をどう聞いたかを明示して数字を読むことが大切です。

Q2. 認知度が低いと、必ず不利になりますか。

そうとは限りません。BtoBや専門性の高い分野では、広く知られていることよりも、必要な人の頭に、必要な場面で思い浮かぶことのほうが重要な場合があります。誰に認知してほしいのかを先に決めることが大切です。

Q3. 認知とブランドイメージは、どちらを先に高めるべきですか。

どちらか一方ではなく、両方を並行して見ていく考え方が一般的です。ケラーも、ブランドの知識を認知とイメージの二つで捉えています。認知だけが高く、イメージが曖昧なままだと、選択につながりにくくなります。

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この記事を書いた Euphoric " " について

Euphoric " " は、ユアムーン株式会社が運営するアートメディアです。ユアムーンは、デザインとクリエイティブを軸にしたブランディング会社です。ブランドの言語化から、ロゴやWebサイトなどのデザイン、社内外への発信までを一貫して設計しています。ご希望に応じて、アートの選定・導入もお手伝いしています。

認知は、一貫した表現と接点の設計で積み上がります。ブランドの核となる表現を定め、ロゴやWebサイト、発信を通じた接点づくりまでを、一続きで設計しています。

参考資料

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