グリーンウォッシュ(グリーンウォッシング)とは、実際の環境への取り組みや効果以上に、環境にやさしいと見せかけることを指す言葉です。「緑(グリーン)」と、取り繕うことを意味する「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた表現で、環境をめぐる企業の発信が信頼を失う原因として、各国で規制や議論の対象になっています。
サステナビリティを発信するブランドにとって、「伝えること」と「実際にやっていること」の差は、最も大きな信頼リスクのひとつです。この記事では、グリーンウォッシュの意味と語源、国内外の規制の動き、アートの世界で起きた「アートウォッシュ」の議論を整理し、企業が点検できる項目をまとめます。
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Toggleこの記事で分かること
- グリーンウォッシュの定義と語源、よくある表現の型
- EU(2026年9月27日から適用)と日本(景品表示法・環境表示ガイドライン)の規制の動き
- アートとスポンサーシップをめぐる事例(BPとTate Britain)と、点検リスト
※この記事は、一般的な情報提供を目的としています。個別の表示や契約の適法性は、最終的な判断を弁護士などの専門家にご確認ください。
グリーンウォッシュとは:語源と意味
語源:ホテルのタオルの話
グリーンウォッシュという言葉は、1986年に、環境保護活動に関わる生物学者のJay Westerveld氏が書いたエッセイが由来とされています。資料によると、きっかけは、ホテルが「タオルの再利用にご協力ください」と客に呼びかける案内でした。氏は、実際にはホテル側が環境負荷を減らす取り組みをほとんど行っておらず、タオルの再利用が節約するのは主に洗濯の費用であり、動機は利益ではないか、と指摘したとされます。なお、舞台となったホテルについては、フィジーのリゾートとする資料もあれば、特定しない資料もあり、記述に幅があります。

写真:Teda13 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
この由来が示すのは、環境への配慮を訴える言葉そのものが問題なのではなく、「本当の動機や実態との差」が問われるという点です。
よくある「型」
グリーンウォッシュと指摘されやすい表現には、次のような型があります。

| 型 | 例(想定) | 何が問題になりやすいか |
|---|---|---|
| 曖昧で大きな言葉 | 「地球にやさしい」「エコ」 | 何をもってそう言えるのかが示されていない |
| 一部を全体のように見せる | 一部の素材だけ再生素材なのに「環境配慮型商品」と表示 | 商品や会社全体の話に見える |
| 根拠のないラベル | 独自のマーク、認証に見えるデザイン | 第三者の認証だと誤解される |
| 将来の目標だけを前面に出す | 「2050年に実質ゼロを目指します」だけを強調 | 現在の取り組みが見えない |
| 本業の問題から目をそらす | 小さな寄付や活動を大きく見せる | 事業全体の影響が見えにくくなる |
表の例は、分かりやすさのための想定です。実在する特定の企業の表示を示すものではありません。
規制の動き:EUと日本
EU:2026年9月27日から適用が始まった新ルール
EUでは、2024年に成立した「Empowering Consumers for the Green Transition Directive(指令2024/825)」が、グリーンウォッシュ対策の中心になっています。この指令は、不公正取引方法指令(UCPD)などを改正し、加盟国は2026年3月27日までに国内法化する必要があり、規則は2026年9月27日から適用されると定められています(欧州委員会のEU Retail Platformの解説による)。

法律事務所の解説によると、禁止される行為として次のようなものが挙げられています。
- 認められた認証制度に基づかない持続可能性ラベルを表示すること
- 商品や事業の一部にしか当てはまらない環境の主張を、全体の話のように示すこと
- 「環境に優しい」など、一般的な環境表示を、認められた優れた環境性能を示せないまま行うこと
つまり、2026年10月の時点では、EU域内で事業を行う企業や、EU向けの商取引・広告を行う企業にとって、すでに適用が始まっています。加盟国ごとの国内法化の状況に差がありうるため、EU向けの取引がある場合は、現地の最新の状況を確認する必要があります。
日本:景品表示法と環境表示ガイドライン
日本には、環境に関する主張だけを対象にした法律はありません。環境に関する誤解を招く表示は、景品表示法の「優良誤認表示」(第5条第1号)として規制されうるとされています。優良誤認表示とは、商品やサービスの品質などについて、実際よりも著しく優良であると示す表示です。「著しく」かどうかは、事業者の認識ではなく、一般の消費者がどう受け取るかで判断されると解説されています。
また、環境省は、環境主張を正しく行うための「環境表示ガイドライン」を公表しています。ただし、これは法的な拘束力のない「ソフトロー」にあたります。ガイドラインは改定されることがあるため、最新の版を環境省の公開資料で確認してください。
日本での具体的な事例としては、2022年12月に消費者庁が、生分解性をうたった製品を販売する10事業者に対し、十分な根拠がないのに自然に分解されるかのように表示したのは優良誤認表示にあたるとして、景品表示法に基づく措置命令を出しています。個別の表示の適否は、消費者庁の公表資料や専門家に確認することをおすすめします。
アートの世界のグリーンウォッシュ:「アートウォッシュ」の議論
グリーンウォッシュに近い言葉に、アートウォッシュ(artwashing)があります。企業が文化・芸術への支援を通じて、自社の事業の問題から注意をそらし、評判を整えようとすることを批判する言葉として使われます。ここでは、報じられた事実をもとに、1つの事例を見ます。
事例:BPとTate Britainのスポンサーシップ
英国の石油会社BPは、1990年から、テート(Tate)の美術館に対するスポンサーを続けていました。しかし2016年3月、BPはテートとのスポンサーシップを更新せず、終了すると発表しました。報道によると、スポンサーシップは26年間続き、BPは「非常に厳しい事業環境」を理由に挙げ、2017年に終了しました。The Art Newspaperは、1990年から2006年の間にBPがテートに提供した額を約400万ポンドと報じています。

写真:Richard Sutcliffe / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)
この終了の背景には、環境団体や市民団体(Liberate Tate、Platform London、Art Not Oilなど)による長年の抗議活動があったと報じられています。Liberate Tateは2010年1月に結成され、2010年の石油流出事故(Deepwater Horizon)に関連するパフォーマンスなども、テートの館内で行ったとされています。一方で、BP側は事業環境を理由としており、終了の本当の動機については、見方が分かれています。

写真:Julian Herzog / Wikimedia Commons(CC BY 4.0)
この事例から読み取れる点は次のとおりです。
- 文化支援は、支援先の評判を企業の評判と結びつける。一方で、企業の事業が社会から批判されている場合、支援そのものが批判の対象になりうる
- 美術館側も、資金の出し手を選ぶことが、信頼の問題になる
- 「支援しているからよい会社」ではなく、事業の実態と発信が一致しているかが問われる
文化支援を考えている企業にとっては、「メセナ」の考え方(本連載の「企業メセナとは?社会貢献で終わらせず、ブランドの資産にする考え方」)と合わせて、支援の動機と事業の実態を点検しておくことが重要です。
グリーンウォッシュを避けるための5つの点検
発信の前に、次の5つを確認する習慣をつけると、リスクを下げられます。

点検1:主張を「具体」にする
「環境にやさしい」ではなく、何が、どれだけ、何と比べて変わったのかを書きます。数値と、比較の対象、測定の範囲を示します。
点検2:根拠を残す
表示の根拠となるデータ、証明書、取引先の資料を保管します。後から根拠を示せない表現は、使わないのが原則です。
点検3:範囲を正確に示す
商品の一部の話なのか、会社全体の話なのかを、読む人が誤解しないように書きます。
点検4:将来の目標と現在の実績を分ける
目標は目標として、実績は実績として示します。目標だけを大きく語ると、現在の取り組みが少ないことが、かえって目立ちます。
点検5:本業との整合を確認する
寄付やイベントなどの取り組みを発信する場合、本業の環境負荷についても、誠実に触れているかを確認します。発信が、事業の実態から目をそらすためのものに見えないかを、社内の複数の立場の人で確認します。
発信前チェックリスト
- [ ] 「エコ」「サステナブル」などの言葉が、何を指すか説明できる
- [ ] 数値には、比較の対象と測定の範囲を併記している
- [ ] 根拠資料を保管している
- [ ] 第三者の認証に見えるマークを、独自に作っていない
- [ ] 一部の取り組みを、全体のように見せていない
- [ ] 目標と実績が混ざっていない
- [ ] EU向けの取引がある場合、新しい規則の対象かを確認した
- [ ] 日本国内の表示は、景品表示法と環境表示ガイドラインの観点で確認した
- [ ] 最終的な表現を、専門家にも確認してもらった
よくある誤解:「何も言わなければ安全」ではない
グリーンウォッシュを恐れるあまり、環境への取り組みを一切発信しない、という判断をする会社もあります。しかし、取り組みを正確に伝えることまで控える必要はありません。
私たちは、問題は「語ること」ではなく、「根拠のない語り方」にあると考えています。具体的な数値、範囲、比較対象、第三者の確認がそろっていれば、取り組みを伝えること自体は、顧客や取引先、採用候補者にとって有益な情報です。

写真:Nicolás Boullosa / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
想定例:控えめで正確な発信
分かりやすさのために、仮の例を挙げます。「たとえば、包装の一部に再生紙を使っている会社を想定すると」、「環境にやさしいパッケージ」と書くのではなく、「外箱の再生紙を使用(外箱のみ。内袋は対象外)」と書く方法があります。範囲を限定した書き方は、地味に見えても、後から指摘されにくく、読んだ人の信頼を損ないません。
美術館・アート関連の発信で気をつけたいこと
アートに関わる企業や美術館の発信でも、同じ観点が当てはまります。
- 展覧会や作品の「環境配慮」を打ち出す場合、梱包、輸送、会場運営のどこまでが対象かを明示する
- スポンサー企業の名前を出すときは、その企業との関係を隠さず、情報として開示する
- 支援先の判断基準(どんな企業の支援を受けるか)を、あらかじめ言葉にしておく
BPとTate Britainの事例が示したとおり、資金の出し手を選ぶ基準を言葉にしておくことは、美術館にも企業にも信頼の土台になります。
よくある質問(FAQ)
Q1. グリーンウォッシュと景品表示法は、どう関係しますか。
A. 日本では、環境に関する誤解を招く表示は、景品表示法の優良誤認表示として規制される場合があります。ただし、グリーンウォッシュという言葉自体が法律上の用語というわけではありません。個別の表示が違法になるかは、表示の内容や受け手の認識によって変わりますので、専門家にご確認ください。
Q2. 小さな会社でも、グリーンウォッシュに気をつけるべきですか。
A. はい。規模にかかわらず、消費者向けの表示には景品表示法が適用されます。大きな言葉を避け、できていることを具体的に書くことが、小さな会社にとって最も確実な方法です。控えめでも正確な発信は、長い目で見て信頼につながります。
Q3. アートや文化を支援することは、アートウォッシュになりますか。
A. 文化を支援すること自体がアートウォッシュになるわけではありません。批判されるのは、事業の実態から注意をそらす目的で支援が使われていると受け取られる場合です。支援の目的、事業との関係、情報の開示を正直に整理しておくことが、備えになります。
まとめ
グリーンウォッシュは、環境への配慮を語ることをやめる理由ではなく、語ることと実際のことを一致させるための視点です。EUでは2026年9月27日から新しいルールが適用され、日本でも景品表示法の優良誤認として問題になりうる状況があります。BPとTate Britainの事例が示すように、文化への支援も、事業の実態と切り離しては評価されません。発信の前に、主張の具体性、根拠、範囲、本業との整合を、確認してみてください。
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この記事を書いた Euphoric " " について
Euphoric " " は、ユアムーン株式会社が運営するアートメディアです。ユアムーンは、デザインとクリエイティブを軸にしたブランディング会社です。ブランドの言語化から、ロゴやWebサイトなどのデザイン、社内外への発信までを一貫して設計しています。ご希望に応じて、アートの選定・導入もお手伝いしています。
サステナビリティなどを語るときに、実態と言葉をそろえるための整理もお手伝いしています。
参考資料
- Jay Westerveld(Wikipedia)https://en.wikipedia.org/wiki/Jay_Westerveld
- -washing(Wikipedia)https://en.wikipedia.org/wiki/-washing
- Is It Green or Greenwashed?(Center for Health, Environment & Justice)https://chej.org/?p=29695
- Environmental claims after 27 September 2026: strengthening consumer protection against greenwashing(COS Law)https://coslaw.eu/directive-eu-2024-825-generic-environmental-claims-and-practices-banned-in-the-eu-from-27-september-2026/
- Directive to empower consumers for the green transition has been adopted(Bird & Bird)https://twobirds.com/en/insights/2024/global/directive-to-empower-consumers-for-the-green-transition-has-been-adopted
- Empowering consumers for the green transition(DWF Group)https://dwfgroup.com/es-es/news-and-insights/insights/2026/2/empowering-consumers-for-the-green-transition
- グリーンウォッシュ・環境表示に関する法務ニュース(PwC Japan)https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/news/legal-news/legal-20250225-1.html
- グリーンウォッシュ(見せかけの環境対応)の代償と法的リスクの予防(西村あさひ法律事務所, 2023年11月)https://www.nishimura.com/sites/default/files/newsletters/file/competition_law_international_trade_231122_ja.pdf
- 環境問題に取り組む法律家団体からのグリーンウォッシュに対する視点(JELF・小島寛司弁護士の講演資料。景品表示法第5条と環境表示ガイドラインの基本項目を掲載)https://www.env.go.jp/content/000345675.pdf
- Directive empowering consumers for the green transition(EU Retail Platform)https://transition-pathways.europa.eu/retail/legislation/directive-eu-2024825-empowering-consumer-green-transition
- BP ends 26 year sponsorship deal with Tate(The Art Newspaper, 2016)https://theartnewspaper.com/2016/03/11/bp-ends-26-year-sponsorship-deal-with-tate
- End of BP Tate sponsorship(ArtReview, 2016)https://artreview.com/news-11-mar-2016-end-of-bp-tate-sponsorship/
- Liberate Tate(Wikipedia)https://en.wikipedia.org/wiki/Liberate_Tate











