ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art、通称RCA)は、イギリスのロンドンにある美術・デザインの大学院大学です。QS世界大学ランキングのアート&デザイン部門では、2015年の部門創設から12年連続で世界1位を守り続けています。
ただし、数年前までのRCAの説明をそのまま読むと、いまの姿とはかなりずれます。学部を持たない大学院大学という前提が2027年に変わり、4つあったスクールは3つに再編され、3拠点あったキャンパスも2つに集約されようとしているからです。この記事では、RCA公式サイトで確認できた最新の情報だけを使って、留学を考えている方に必要な内容をまとめました。それでは早速いってみましょう。
コンテンツ
Toggleロイヤル・カレッジ・オブ・アートの基本情報

| 正式名称 | Royal College of Art(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート) |
|---|---|
| 創立 | 1837年(Government School of Design として創立) |
| 現校名になった年 | 1896年 |
| 大学としての地位 | 1967年にロイヤル・チャーター(勅許状)を得て学位授与権を取得 |
| 所在地 | ロンドン(ケンジントン、バタシー、ホワイトシティ) |
| 性格 | 大学院のみの専門大学。公式は「世界最大の、大学院のみのアート&デザインの学生コミュニティ」と表現 |
| スクール | Arts & Humanities/Architecture/Communication & Design の3つ |
| 学生数 | 2024/25年度のフルタイム換算(FTE)で2,465名。うち修士課程(Graduate Diploma を除く)は2,319名で、その73%が英国外出身 |
| 教職員 | 約900名の教員・専門スタッフ(公式プレス資料) |
| 卒業生 | 世界に28,000名以上 |
| 学長 | Christoph Lindner(President & Vice-Chancellor、2024年4月就任) |
| QSランキング | アート&デザイン部門で12年連続1位。2026年版の総合スコアは98.5 |
順位の読み方は、【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキングで詳しく解説しています。RCAの1位は学術評判90%・雇用者評判10%という配分で決まっていることを知っておくと、この数字の意味が変わってきます。
1837年から2037年へ、RCAが歩いてきた道
「政府のデザイン学校」として始まりました
RCAは1837年、ロンドンのストランドにあるサマセット・ハウスで Government School of Design(官立デザイン学校)として始まりました。産業のためにデザインができる人材を育てるという、実務的な目的を持った学校です。


転機は1851年のロンドン万国博覧会でした。これをきっかけに規模が拡大し、美術も扱う学校へと組み替えられ、サウス・ケンジントンに移って National Art Training School と改称します。そして1896年に Royal College of Art という現在の名前になりました。20世紀に入るとイギリスの新彫刻運動(The New Sculpture)の発信地となり、この時期の学生にはバーバラ・ヘップワースやヘンリー・ムーアがいます。

ポップ・アートの中心地から、STEAMの大学へ

1930〜40年代に工業デザイン、グラフィックデザイン、ファッションの課程が加わり、1950〜60年代のRCAはイギリスのポップ・アート爆発の中心地になりました。ピーター・ブレイク、ポーリーン・ボティ、デイヴィッド・ホックニー、R・B・キタイがこの時期の在学生です。映画のリドリー・スコットとトニー・スコット兄弟もこの頃に学んでいます。
1962年にケンジントン・ゴアのダーウィン・ビルが完成し、1967年にロイヤル・チャーター(勅許状)を授与されて大学としての地位と学位授与権を得ます。同じ1967年に始まった Vehicle Design の課程からは、後にアウディ・クワトロ、アストンマーティンDB7、ポルシェ911を手がけるデザイナーが出ました。1980〜90年代にはデザイン史(1982年)やキュレーション(1992年)といった人文系の課程が整い、ファインアートからはトレイシー・エミンやチャップマン兄弟といったYBA世代が育ちます。
2000年代以降のRCAを説明するうえで外せないのが STEAM です。科学・技術・工学・アート&デザイン・数学を横断する教育構想を、美術・デザイン系の大学として世界で初めて導入したと公式に位置づけています。実際に、インテリジェント・モビリティ、材料科学、ロボティクス(いずれも2017年)、コンピューターサイエンス(2020年)の研究拠点が次々に設置されました。
2022年5月にはヘルツォーク&ド・ムーロン設計のバタシー新キャンパスが開館。2023年にはMFA、MDes、MArch、MEdという学位が加わり、2024年4月にはクリストフ・リンドナーが President & Vice-Chancellor に就任しました。2026年には「Strategic Plan 2026〜2030」が始動し、RCAは2037年の創立200周年に向けて動いています。
【重要】2026年のRCAは、3つの大きな変化のただ中にあります
ここが、古い解説といちばん食い違う部分です。
変化1:2027年9月から、学部課程が始まります
RCAは長いあいだ「学士課程を持たない、大学院だけの大学」でした。この前提が変わります。2026年7月28日、RCAはノリッジ芸術大学(Norwich University of the Arts)との提携を発表しました。2027年9月から、両校が共同で授与する学部課程が始まります。RCA公式サイトは「この提携は、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの共同授与による学部の学位を学べる、世界で唯一の機会を生み出します」と説明しています。
ただし、誤解しやすい点が2つあります。
- 授業はロンドンではなくノリッジで行われます。実施するのはノリッジ芸術大学のキャンパスです。RCAは学術水準の担保に加え、マスタークラス、企業の実課題、修了展の見学、大学院進学の助言といった形で関わります
- 出願先もノリッジ芸術大学です。2026年9月1日に出願が開き、UCAS経由または直接出願というかたちでノリッジ側が管理します
つまり「ロンドンのRCAで学士が取れるようになった」のではありません。それでも、大学院しか持たなかった学校が学部教育に名前を出すのは大きな一歩です。ノリッジ芸術大学は学生数約3,000名、イギリスの専門的な芸術系大学としては唯一、教育水準評価(TEF)で3部門すべて Gold を獲得しています。
変化2:4つのスクールが3つに再編されました
以前のRCAは、Arts & Humanities/Design/Architecture/Communication の4スクール構成でした。現在は、Design と Communication が統合され、School of Communication & Design という1つのスクールになっています。RCA公式はこの再編を「学際的な協働を促し、複雑な地球規模の課題に取り組むための戦略的な一手」と説明しています。現在のスクールは Arts & Humanities(芸術・人文)、Architecture(建築)、Communication & Design(コミュニケーション&デザイン)の3つです。
変化3:3キャンパスから2キャンパスへ
RCAは現在、ケンジントン、バタシー、ホワイトシティの3拠点で運営しています。しかし2027年8月をめどにホワイトシティのリース契約を終了し、ケンジントンとバタシーの2キャンパス体制に戻ることを公式に発表しています。ホワイトシティにあるアニメーション、ビジュアル・コミュニケーション、情報体験デザインなどは、2027年に他のキャンパスへ移ります。あわせて2025年8月から、歴史的な建物の補修と設備刷新を目的としたケンジントン校舎の改修も始まっています。
留学を検討している方にとっては、志望プログラムがどのキャンパスで開講されるかが年度によって変わりうるということです。RCA自身も、開講場所は年度ごとに見直され変更の可能性があると明記しています。出願前に必ずプログラムページの「Current location」を確認してください。
3つのスクールと主なプログラム
School of Arts & Humanities(芸術・人文)
ファインアートと応用美術に、キュレーション、批評的な執筆、デザイン史を組み合わせたスクールです。作品をつくることと、それについて考え、書き、位置づけることを同じ比重で扱います。
絵画、彫刻、写真、版画、セラミック&ガラス、ジュエリー&メタルといった実技系に加え、現代美術のキュレーション、執筆、デザイン史が並びます。デザイン史のMAはヴィクトリア&アルバート博物館との共同運営です。
School of Architecture(建築)
インテリアから都市、環境まで、空間にかかわる領域をまとめたスクールです。スタジオ中心の学びに歴史・理論・技術のセミナーが組み合わされ、実務家がメンターにつく制度が全プログラムに置かれています。イギリスの建築家資格につながる ARB/RIBA Part 2 対応の MArch もここにあります。
School of Communication & Design(コミュニケーション&デザイン)
再編で生まれた、いちばん大きなスクールです。ファッションや製品デザインのように素材と手を動かすことを起点にする領域と、XRや没入型のストーリーテリングといった技術寄りの領域が同居し、ヘルスケア、モビリティ、倫理的なAI、バイオ素材、ロボティクスまで守備範囲に入ります。Snap、CERN、アードマン、Arupなどとの協働実績があります。
主なプログラムと学費の一覧(2027年9月入学)
以下は各プログラムの公式ページで2026年9月24日に確認した、2027年9月入学の「Overseas and EU」区分(日本からの留学生が該当)の学費と、2027/28年度に予定されている開講キャンパスです。
| プログラム | スクール | キャンパス | 学費(Overseas and EU) |
|---|---|---|---|
| Painting MA(絵画) | 芸術・人文 | バタシー | £43,000 |
| Sculpture MA(彫刻) | 芸術・人文 | バタシー | £43,000 |
| Ceramics & Glass MA(セラミック&ガラス) | 芸術・人文 | バタシー | £43,000 |
| Jewellery & Metal MA(ジュエリー&メタル) | 芸術・人文 | バタシー | £43,000 |
| Contemporary Art Practice MA/MFA(現代美術実践) | 芸術・人文 | バタシー | £43,000(1年目) |
| Artificial Intelligence & Digital Art MA/MFA | 芸術・人文 | バタシー | £43,000(1年目) |
| V&A/RCA History of Design MA(デザイン史) | 芸術・人文 | ケンジントン | £43,000 |
| Photography MA(写真) | 芸術・人文 | バタシー | £40,750 |
| Print MA(版画) | 芸術・人文 | バタシー | £40,750 |
| Curating Contemporary Art MA(キュレーション) | 芸術・人文 | バタシー | £40,200 |
| MRes RCA(研究修士) | 芸術・人文 | バタシー | £39,250/年 |
| Writing MA(執筆) | 芸術・人文 | バタシー | £33,400 |
| Architecture MArch(ARB/RIBA、2年) | 建築 | ケンジントン | £30,550/年 |
| Interior Design MA(インテリアデザイン) | 建築 | ケンジントン | £40,750 |
| Environmental Architecture & Urban Design MA | 建築 | ケンジントン | £40,750 |
| Design Practice MArch | 建築 | ケンジントン | £40,200 |
| Innovation Design Engineering MA/MSc(2年) | コミュニケーション&デザイン | バタシー | £47,250(1年目) |
| Fashion MA(ファッション) | コミュニケーション&デザイン | ケンジントン | £40,750 |
| Textiles MA(テキスタイル) | コミュニケーション&デザイン | ケンジントン | £40,750 |
| Animation MA(アニメーション) | コミュニケーション&デザイン | ケンジントン | £40,750 |
| Design Futures MA | コミュニケーション&デザイン | ケンジントン | £40,750/年 |
| Intelligent Mobility Design MA/MDes(モビリティ) | コミュニケーション&デザイン | バタシー | £40,750(1年目) |
| Design Products MA/MDes(製品デザイン) | コミュニケーション&デザイン | バタシー | £40,200(1年目) |
| Digital Narrative Arts MA/MFA | コミュニケーション&デザイン | バタシー | £40,200(1年目) |
| Information Experience Design MA(情報体験デザイン) | コミュニケーション&デザイン | バタシー | £40,200 |
| Visual Communication MA(ビジュアル・コミュニケーション) | コミュニケーション&デザイン | ケンジントン | £40,200 |
| Sound Practice MA(サウンド) | コミュニケーション&デザイン | ケンジントン | £40,200 |
| Service Design MA(サービスデザイン) | コミュニケーション&デザイン | ケンジントン | £39,250 |
| MPhil/PhD(高residency・フルタイム) | 各スクール | 各キャンパス | £33,900/年 |
| MPhil/PhD(低residency・フルタイム) | 各スクール | 各キャンパス | £28,600/年 |
| Graduate Diploma Art & Design(通学・30週) | 芸術・人文 | ケンジントン | £23,550 |
発表されたばかりのプログラムは、公式サイトに学費がまだ掲載されていないため、この表に含めていません。
1年制のMAで、日本からの留学生の学費はおよそ£33,400〜£47,250という幅になります。同じRCAのMAでも£13,000以上の差があり、制作に使う設備や材料のコストが反映されているとみられます。
2027/28年度から始まる新しいプログラム
2026年9月16日、RCAは2027/28年度に向けた新プログラムを発表しました。
- Artificial Intelligence & Digital Art(AiDA)MA/MFA:アーティストのためのAI課程。クリエイティブ・コーディングと計算的な実践を批評的な問いと組み合わせ、AIの方向性そのものを芸術の側から問い直します
- Aardman/RCA Animation(Professional Residency)MFA:『ウォレスとグルミット』のアードマンとの共同課程。20か月・5学期制で、1年目はロンドンで作家性を育て、その後ブリストルのアードマン・スタジオで実務レジデンシーに入ります
- Sound Practice MA:音を「つくる対象」ではなく「世界に関わるためのレンズ」として捉え直す1年課程。音楽的な経歴がない人にも開かれています
- Graduate Diploma Architecture & Spatial Practice:建築以外の分野から空間デザインへ移りたい人のための1年の転向課程です
- Environmental Architecture & Urban Design MA:環境と都市の問題を切り離さずに扱う建築スクールの課程。デザイン主導のリサーチ、スタジオ制作、フィールドワークを通じて、生態・社会・政治の条件から空間デザインを考えます
もうひとつ重要なのが2年制ルートの拡張です。AiDA、Contemporary Art Practice、Design Products、Intelligent Mobility Design、Digital Narrative Arts(旧 Digital Direction)の5つで、1年のMAに加えて2年のMFA/MDesを選べるようになりました。1年で走り切るか、2年かけて研究と専門的なリーダーシップを育てるかを、出願時に選べます。
なお、スクールごとの専攻の中身については、Euphoric " " に個別の解説記事があります。
- ロイヤル・カレッジ・オブ・アート|芸術・人文科学スクールの各専攻を解説
- ロイヤル・カレッジ・オブ・アート|コミュニケーション&デザインスクールの各専攻を解説
- ロイヤル・カレッジ・オブ・アート|建築スクールの各専攻を解説
キャンパスは3つ(2027年8月から2つ)
RCA Kensington(ケンジントン)
ヴィクトリア&アルバート博物館、インペリアル・カレッジ・ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホールが並ぶ「アルバートポリス」と呼ばれる文教地区にあり、ケンジントン・ガーデンズとハイド・パークに挟まれた立地です。中心にあるのは、H・T・キャドバリー・ブラウン設計で1962年に開館したモダニズム建築のダーウィン・ビル。特別コレクションとカラー・リファレンス・ライブラリーを含む図書館、学生支援、学生自治会もここにあります。


RCA Battersea(バタシー)
テムズ川の南側、RCAが25年以上かけて育ててきた拠点です。2022年開館のヘルツォーク&ド・ムーロン設計の新棟が中心で、ラウジング研究・イノベーション棟には各研究センターと、起業支援組織の InnovationRCA が入ります。2004年設立の InnovationRCA は、これまでに80社以上のスタートアップを生み出してきました。

RCA White City(ホワイトシティ)
BBCメディア・ヴィレッジ内にある、いちばん新しい拠点です。アニメーション、ビジュアル・コミュニケーション、情報体験デザインなどが置かれていますが、2027年8月をめどにリースを終了する予定です。なお3つのキャンパスの間には、無料のシャトルバスが走っています。


学位と修業年限
RCAが授与する学位は次のとおりで、すべて大学院レベルです。
| 学位 | 標準的な長さ | 備考 |
|---|---|---|
| Graduate Diploma(Art & Design ほか) | 30週 | 修士課程に進む前の準備課程。1月・5月・9月入学。通信/ブレンデッド/通学から選択 |
| MA | 1年(45週) | RCAの中心となる課程。180単位 |
| MFA/MDes | 2年(90週) | 300単位。1年目はMAと共通で、2年目に研究と専門的実践を深める |
| MArch | 1〜2年 | Architecture MArch は2年・240単位でARB/RIBA Part 2に対応 |
| MSc | 2年 | Innovation Design Engineering(MA/MSc、360単位) |
| MEd | 1年 | Creative Education |
| MRes | 1年 | 研究を主体とする修士。MRes RCA など |
| MPhil/PhD | 複数年 | 高residency/低residencyの2種類があり、学費も異なる |
特徴的なのは、MAの多くが「1年・45週」の集中課程だという点です。RCAはこれを、ロンドンで学ぶ費用負担を下げるために導入した仕組みだと説明しています。日本の修士課程が2年であることを考えると、密度はかなり高くなります。
学費のほかにかかるお金
RCAはイギリス政府から補助を受けており、UK・アイルランドなどの学生は「Home」区分として減額された学費が適用されます。日本からの留学生はすべて「Overseas and EU」区分です。ただし、かかるお金は学費だけではありません。

- デポジット(入学金にあたる前払い金):公式サイト内で記載が食い違っています。学費の支払いページには、Overseas and EU は修士課程も Graduate Diploma も一律 £3,500、Home は修士課程(MA・MArch・MDes・MEd・MFA・MRes・MPhil・PhD)が £1,000 と書かれています(Home の Graduate Diploma は表記が「£3,00」と桁が欠けており確定できません)。一方、一部のプログラムの個別ページには、2027年入学分として Overseas and EU £2,000 と書かれています(Sculpture MA、Arts and Humanities MFA、Communication MFA などで確認できました。同じページにある「progression discount(進学割引)」の £2,000 とは別の項目です)。金額が確定できないため、出願前に必ず公式ページでご確認ください。学費に充当されますが返金はされません。合格通知を受けたら3週間以内に受諾とデポジット支払いをしないと、席は確保されません。なお2027年入学分の金額は確定前とされており、公式ページに出ているのは参考額です
- 材料費・設備使用料:画材や木材、金属、繊維などの購入費、レーザーカッター、3Dプリンター、CNC、印刷の使用料など。必修のフィールドトリップ費用も別途です
- 進学割引:RCAのGraduate Diplomaから修士へ進む場合は£1,000、修士から別の修士へ進む場合は£2,000の割引があります
ロンドンでの生活費
RCAは学生向けの生活費の目安を公開しています。以下は公式の「Cost of living」ページの数字です。
| 項目 | 月額の目安 | 年額の目安 |
|---|---|---|
| 住居(光熱費込み) | £900〜£2,000 | £10,800〜£24,000 |
| 食費 | £250〜£400 | £3,000〜£4,800 |
| 交通費(ゾーン1〜2) | £100〜£171.70 | £1,200〜£1,788 |
| 画材・機材 | £100〜£500 | £1,200〜£3,600 |
| フィールドトリップ | 記載なし | £600〜£1,500 |
| 合計 | 記載なし | £15,200〜£35,688 |
シェアハウスの一室が月£800前後、ワンルームのスタジオフラットが月£1,200前後、学生寮が月£800〜£1,500というのがRCAの示す目安です。国際学生にはこれに加えて移民健康保険料(IHS)が年£776、ビザ申請料が£524かかります。
学費と生活費を合わせると、日本からRCAの1年制MAに進む場合、おおよそ£50,000〜£80,000規模の資金計画が必要になる計算です。RCAには緊急困窮基金、材料費補助、生活費支援基金があり、奨学金も毎年数百件が支給されていますが、まず自分で総額を把握しておくことが前提になります。
出願の実際
出願スケジュール(2027年入学の例)
RCAの修士・MPhil・PhDの出願はラウンド制です。2027年9月入学の日程は次のとおりです。
| ラウンド | 出願開始 | 締切(英国時間 正午) | 結果通知 |
|---|---|---|---|
| Round 1 | 2026年10月12日 | 2027年1月8日 | 2027年2月19日まで |
| Round 2 | 2027年1月11日 | 2027年3月23日 | 2027年5月まで |
| Round 3 | 2027年3月24日 | 修士:2027年6月2日/MPhil・PhD:2027年7月14日 | 修士:7月14日まで/MPhil・PhD:7月25日まで |
Graduate Diploma は別枠で、2027年1月入学の締切が2026年12月7日です。重要なのは、合否がローリング(提出順)で出ること、そして奨学金の多くが早いラウンドで決まることです。RCA自身が「早く出すほど奨学金の可能性が高まります」と明記しています。なお、同じプログラムに2回出願することはできず、同一年度に出願できるのは最大2プログラムまでです。
ポートフォリオと動画
RCAの出願で中心になるのはポートフォリオです。提出物は Applicant Portal 経由でのみ受け付けられ、すべてデジタルです。

- ポートフォリオ本体:3〜5ファイル。要件はプログラムごとに異なります。たとえば Painting MA では、作品画像10〜15点、全体で15ページ以内、各作品にタイトル・制作年・寸法・素材を記載、と指定されています
- パーソナルステートメント:300語。自己紹介、志望動機、学歴・職歴、将来やりたいこと
- 2分間の動画:スマートフォンやパソコンで自分を撮影し、カメラに向かって話す形式。編集や凝った演出は不要と明記されています
- 職務経験の詳細、推薦者の連絡先
RCAのポートフォリオ助言のページには、スクールによって見たいものが違うという重要な指摘があります。芸術・人文スクールは「完成作品のみ。制作過程や進行中の作品は見せないでください」、建築スクールとコミュニケーション&デザインスクールは「完成作品と進行中の作品の両方を。スケッチブック、試作、リサーチ資料など創作の道筋が分かるものを歓迎します」としています。
そのうえでRCAは、「すでに持っている汎用のポートフォリオを出さないでください」「編集が決定的に重要です。すべてを入れないでください」と繰り返しています。志望プログラムごとに組み直す前提で準備してください。
英語のスコア
日本国籍の方は英語力の証明が必要です。RCAが認めているテストは IELTS Academic、Password Skills PLUS、LanguageCert Academic、PTE Academic の4種類のみで、プログラム開始日から2年以内の受験に限られます。個別スキルの再受験(One Skill Retake)は認められません。
必要スコアはプログラムページに記載されています。たとえば Painting MA は IELTS Academic または UKVI で総合6.5(各項目5.5以上)です。総合6.0でライティング5.5以上の場合は、大学の英語準備課程(EAP)を受けて基準に到達する道があります。学生ビザに必要なCAS(入学許可番号)は、スコアが揃うまで発行されません。RCAは「IELTSのスコアを1.0上げるには通常6か月以上かかります」と率直に書いています。ポートフォリオと英語は並行して進めてください。
奨学金と支援
RCAは毎年数百名規模で奨学金を支給しており、国際学生が対象になるものも複数あります。ブリティッシュ・カウンシルと共同の GREAT Scholarship(2026/27年度はインドとトルコの学生向けに学費£10,000相当を2件)、黒人英国人およびアフリカ系ディアスポラの学生を対象とする年間£100万規模の Sir Frank Bowling Scholarship、株式会社ポケモンによる全額学費の Pokémon Scholarship(日本のポケモン・スタジオ訪問付き)、セラミック&ガラス向けの Märit Rausing Scholarships、RCA Virgil Abloh Scholarship、LoveFrom Scholarship などがあります。
RCAは、支出総額の8%に相当する額を学生への財政支援に充てるという目標を掲げ、2024年時点で7%まで到達したと公表しています。
数字で見るRCA
RCAの年次報告書(2024/25年度)から、留学を考えるうえで知っておきたい数字を挙げます。
- 学生数はフルタイム換算で2,465名(2023/24年度は2,797名)。修士課程(Graduate Diploma を除く)は2,319名で、その73%が英国外出身です(前年度は2,607名・75%)
- Graduate Diploma には年間146名が在籍(前年度190名)。学生は80か国以上から集まっています
- 総収入は£94.7百万。うち学費収入が£72.9百万で、無制限収入の77%を占めます
ここで正直に触れておきたいのは、学生数が前年から減っていることです。RCA自身、年次報告書で「1年制のMAを主体とする大学院専門機関として、英国および国際的な学生募集市場の変動に対して、他の多くの高等教育機関より敏感である」と述べ、学費収入が5%減少したことを記しています。一方で「応募数自体は高水準を維持している」ともしており、競争が急に緩むわけではありません。
卒業生
RCAの卒業生は世界に28,000名以上います。公式サイトで修了が確認できる人物を挙げます。
- 美術:デイヴィッド・ホックニー(ARCA Diploma Painting, 1962)、トレイシー・エミン(MA Painting, 1989)、バーバラ・ヘップワース、ヘンリー・ムーア、ブリジット・ライリー、フランク・ボウリング、クリス・オフィリ、ルバイナ・ヒミッド、オスカル・ムリーリョ、ジャスリーン・カウル(2024年ターナー賞受賞)
- デザイン・エンジニアリング:ジェームズ・ダイソン(MDes Interior Design, 1971)、ジャスパー・モリソン、ロス・ラブグローブ、トルド・ボーンチェ
- ファッション・テキスタイル:ザンドラ・ローズ(MA Textiles, 1964)、オジー・クラーク、フィリップ・トレーシー、クリストファー・ベイリー、ビアンカ・ソーンダース
- 映像・文学:リドリー・スコット、トニー・スコット、アシフ・カパディア、ジャクリーン・デュラン、ダグラス・スチュアート(2020年ブッカー賞受賞)
名誉学長(Chancellor)については、RCAの沿革ページがアップルの元デザイン責任者ジョナサン・アイヴを「Chancellor of the RCA」として紹介しています。日本との関係では、アーティストのスプツニ子!がRCAの Design Interactions 修士課程を修了しています(同課程は現在は開講していません)。
日本からRCAを目指す方へ
ここまでの内容をふまえて、日本から出願する場合に実務上おさえておきたい点を整理します。
- 学部からは入れません。RCAはいまも大学院のみです。2027年9月から始まる学部課程は、ノリッジ芸術大学のキャンパスで行われ、出願先もノリッジ側です
- 学士の分野は問われません。選考は作品と志望動機で行われます。美術系以外の学部を出た方のために Graduate Diploma(30週)という準備課程があり、修士に出願して不合格でも Graduate Diploma のオファーが提示されることがあります
- 1年で終わります。多くのMAが45週です。渡英後すぐに制作が始まり、9か月後には修了制作展の準備に入ります。語学と生活の立ち上げを現地でゆっくりやる余裕は、あまりありません
- RCAは日本でイベントを開いています。東京での対面イベントや個別相談が不定期に開催され、オンラインのオープンデーやポートフォリオ相談週間も年間を通して用意されています。無料ですので、公式サイトのイベントページを定期的に見ておくことをおすすめします
RCAのような1年制の大学院は、「行けば何かが見つかる」場所ではありません。自分が何を問題だと思っていて、それをどう扱いたいのかを持って行く場所です。ポートフォリオの助言でRCAが「あなたの声、物語、そしてここで何を学びたいのか」を繰り返し尋ねているのは、そのためだと考えられます。
海外の美術系大学を広く比較したい方は、QS世界大学ランキング アート&デザイン部門の解説もあわせてご覧ください。ロンドン芸術大学(UAL)やグラスゴー芸術大学など、同じイギリスの大学の個別解説もあります。
まとめ

いかがだったでしょうか。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートについて見てきました。要点は次の6つです。
- 1837年に官立デザイン学校として創立。1896年に現校名、1967年にロイヤル・チャーターで学位授与権を取得しました。2037年に創立200周年を迎えます
- QS世界大学ランキングのアート&デザイン部門で12年連続1位。2026年版の総合スコアは98.5です
- 4つあったスクールが再編され、現在は Arts & Humanities/Architecture/Communication & Design の3つです
- 2027年9月から、ノリッジ芸術大学との共同授与による学部課程が始まります。授業と出願はノリッジ側です
- 2027年8月をめどにホワイトシティを離れ、ケンジントンとバタシーの2キャンパス体制に戻ります
- 2027年9月入学の学費は、日本からの留学生の場合1年制MAで£33,400〜£47,250。生活費は年£15,200〜£35,688が公式の目安です
金額も課程も年度ごとに変わります。出願を具体的に考える段階では、必ず志望プログラムのページで最新の情報をご確認ください。
Euphoric " " の視点
RCAは、アート&デザイン分野で12年続けて世界1位です。普通なら、そこまで評価が定まった組織は形を変えません。変えれば失うものの方が大きいからです。
ところがRCAは、いま自分から動いています。4つの学部を3つのスクールに再編し、3つあったキャンパスを2つに戻し、180年以上まもってきた大学院大学という性格すら、2027年から他大学と組んで学部課程へ広げようとしています。
1位のあいだに変えておく。これは、追い込まれてから変えるのとはまったく違う判断です。評価が高いときほど、人も組織も現状を守る側に回ります。
学校を選ぶ人にとっても、この姿勢は見るべき点です。順位が何位かより、その学校がいま何を変えようとしているのか。それが、自分が卒業する数年後の価値に直結します。
ポートフォリオの作り方に不安がある方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。
もっと知るには
本記事の情報は、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの公式発表をもとに確認しています。学費・日程・開講キャンパスは年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。






