マンチェスター大学とは?建築大学と2つの美術館・学費・出願を徹底解説

マンチェスター大学とは?建築大学と2つの美術館・学費・出願を徹底解説

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こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんはマンチェスター大学(The University of Manchester)という大学をご存知ですか。イギリス北西部、マンチェスター中心部のオックスフォード・ロードに広がる総合大学です。現在の形になったのは2004年10月22日。ビクトリア大学マンチェスター(Victoria University of Manchester)と、マンチェスター大学工科大学(UMIST、University of Manchester Institute of Science and Technology)という、ともに1824年までルーツをさかのぼれる二つの大学が合併し、英国最大の単一キャンパス大学になりました。

理工系・医学系のイメージが強い大学ですが、キャンパスには大学直属のウィットワース美術館(The Whitworth)とマンチェスター博物館(Manchester Museum)があります。建築では、マンチェスター・メトロポリタン大学との共同運営という珍しい形をとるマンチェスター建築大学(Manchester School of Architecture、MSA)が、QS世界大学ランキングの建築・建築環境部門で4年連続世界5位です。

本記事では2026年10月時点で、マンチェスター大学、マンチェスター建築大学、ウィットワース美術館、マンチェスター博物館の各公式サイトで確認できた情報だけを使い、アート・デザイン・建築を志望する方に向けて、基本情報から学費、出願の進め方までをご紹介します。それでは早速いってみましょう。

マンチェスター大学って?

基本情報

正式名称The University of Manchester(マンチェスター大学)
現在の大学としての発足2004年10月22日。ビクトリア大学マンチェスターとUMISTの合併による
ルーツいずれも1824年。UMIST側はManchester Mechanics’ Institution、ビクトリア大学側は1872年に合流したRoyal School of Medicine and Surgery
所在地Oxford Road, Manchester, M13 9PL
学生数44,000名以上(公式サイト、2026年10月時点の表記)
教職員数12,000名以上
同窓生550,000名以上。学生・教職員・同窓生をあわせた大学コミュニティは190カ国にわたります
ノーベル賞受賞者26名(2024年のサイモン・ジョンソン氏まで)
総合ランキングAcademic Ranking of World Universities 2026で世界51位・英国6位。QS世界大学ランキング2027年版では世界40位・英国7位(いずれも大学公式ランキングページ)
QSアート&デザイン部門2026上位50校に名前はなく、大学も同部門の順位を公表していません
QS建築・建築環境部門2026マンチェスター建築大学(MSA)が世界5位(4年連続)

最後の2行が、今回いちばんお伝えしたいポイントです。QS世界大学ランキングのアート&デザイン部門(2026年版)の上位50校に、マンチェスター大学の名前はありません。大学自身も、公式のランキング一覧や学部別の発表で同部門に触れていません。順位の読み方と上位校の顔ぶれは【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキングで詳しく解説しています。

ここでとても間違えやすい点をお伝えします。マンチェスターには、名前がよく似たマンチェスター・メトロポリタン大学(Manchester Metropolitan University、略称MMU)という別の大学があります。アート&デザインで名前が挙がるのは多くの場合こちらで、MMUは公式サイトで同部門の世界トップ100入りを発表しています。2校はまったく別の法人です。「マンチェスターの大学がアート&デザインで世界ランク入り」という情報を見たら、どちらの話なのかを必ず確認してください。

なお、QSのアート&デザイン部門は50位より下が「51〜100位」のような帯で発表されるため、51位以下の学校に1位刻みの順位は付きません。「世界◯◯位」という具体的な数字を見たときは、それがQSの公表値かどうかも確かめてみてください。

一方で、後ほどご紹介するマンチェスター建築大学(MSA)は、QS世界大学ランキングの建築・建築環境部門で世界5位です。こちらはアート&デザイン部門とは別の科目区分ですが、建築という切り口では世界有数の評価を得ています。

1824年から続く二つの源流、2004年の合併

マンチェスター大学の歴史は、ひとつの大学の歴史ではありません。性格の異なる二つの機関が別々に育ち、2004年にひとつになりました。

ビクトリア大学マンチェスター側:オウエンズ・カレッジの系譜

一方の源流は、実業家ジョン・オウエンズ(John Owens)が1846年に残した96,942ポンドの遺贈金です。公式サイトによれば、これをもとに1851年、マンチェスター中心部のクエイ・ストリートにある一軒の家でオウエンズ・カレッジ(Owens College)が開校しました。冒頭の「1824年」はこちらにもあてはまります。1872年に合流した王立内科外科学校(Royal School of Medicine and Surgery)の設立が1824年でした。

1870年ごろにはカレッジが手狭になり、現在のオックスフォード・ロードの敷地で建設が始まります。最初の校舎、現在のジョン・オウエンズ・ビルディングは1873年に完成。設計はヴィクトリア朝を代表する建築家アルフレッド・ウォーターハウス(Alfred Waterhouse)です。1880年、オウエンズ・カレッジは連合制のビクトリア大学(イングランド初の市民大学)の最初の構成カレッジとなり、のちにリバプールとリーズも加わりました。1900年にバーミンガムが独自の大学勅許を得たことで連合は解かれ、1903年、オウエンズ・カレッジはビクトリア大学マンチェスター(Victoria University of Manchester)として再編されます。

ジョン・オウエンズ・ビルディングの正面入口
ジョン・オウエンズ・ビルディング(1873年、アルフレッド・ウォーターハウス設計)正面入口/撮影:FJones2123(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

UMIST側:メカニックス・インスティテュートから工科大学へ

もう一方の源流は、マンチェスター・メカニックス・インスティテュート(Manchester Mechanics’ Institution)です。公式サイトによれば、こちらも1824年、働く人々への科学教育を広げる全国的な運動の一環として設立されました。1883年にマンチェスター・テクニカル・スクールへ改組、1892年からはマンチェスター市が運営する市立工業学校となり、ドイツの工科高等学校をお手本にした巨大な新校舎が1902年に開設されます。これが現在も残るサックビル・ストリート・ビルディングです。第一次世界大戦後には市立工科カレッジへ改称されました。

1905年、この工科カレッジの教授陣がビクトリア大学マンチェスターの技術学部(Faculty of Technology)を構成する取り決めが結ばれ、カレッジの学生はビクトリア大学の学位を取得できるようになります。1956年に独立した大学カレッジとなり、1966年にマンチェスター大学工科大学(UMIST)へ改称。1994年の法改正で独自に学位を授与できる完全に独立した大学となり、その10年後にビクトリア大学マンチェスターと合併します。

サックビル・ストリート・ビルディングの外観
サックビル・ストリート・ビルディング(1902年開設、旧UMIST本館)/撮影:Stephen Richards(CC BY-SA 2.0)/出典:Wikimedia Commons(Geograph Britain and Ireland)
サックビル・ストリート・ビルディングのテラコッタ装飾
同ビルディング外壁のテラコッタ装飾/撮影:Benjamin Shaw(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

こうして長く別々の道を歩んだ二つの大学が、2004年10月22日に統合し、現在のマンチェスター大学になりました。公式サイトはこの合併をこう記しています。

「100年にわたって緊密に協力してきたのち、両機関は単一の大学を形成することに合意し、2004年10月22日、英国最大の単一キャンパス大学として正式に統合しました」(manchester.ac.uk「Our history」より要約)

なお、マンチェスターには名前の紛らわしい教育機関がもうひとつあります。MMUが運営するマンチェスター・スクール・オブ・アート(Manchester School of Art)です。本記事で扱うマンチェスター大学とも、後述する「マンチェスター建築大学(Manchester School of Architecture)」とも別の組織ですので、進学先を調べる際はどの機関の情報かをご確認ください。

マンチェスター建築大学(Manchester School of Architecture)

二つの大学による共同運営

マンチェスター大学でアート・デザインに関わる方が、まず押さえておきたいのがマンチェスター建築大学(MSA)です。公式サイトは自校をこう説明しています。

「マンチェスター建築大学は、マンチェスター・メトロポリタン大学とマンチェスター大学による、革新的な協働関係です」(msa.ac.uk「About/Who we are」より)

MSAは1996年、両大学の建築課程が統合して発足しました。マンチェスター大学側では、人文学部(Faculty of Humanities)に属する環境・教育・開発学院(School of Environment, Education and Development、SEED)が建築を担当しています。学生は両大学に在籍する扱いになり、図書館やコンピュータールーム、工作室といった両キャンパスの設備を使えます。公式サイトによれば、現在80カ国以上から1,000名を超える学生が学んでいます。

学部・大学院の課程とポートフォリオ

学部課程はBA (Hons) Architectureと、基礎年を含むBA (Hons) Architecture with Foundation Yearの2つ。大学院には建築修士(MArch)、改修・再利用を扱うMA Architecture and Adaptive Reuse、MA Architecture and Urbanism、Master of Landscape Architecture(MLA)、実務資格のPart 3、研究学位などがあります。

公式サイトによれば、MSAには100名を超える専門教員が所属しており、学部からMArch、大学院へと進む課程を通じて、設計スタジオを中心にした教育が行われています。

学位はどちらの大学から出るのか

共同運営と聞いて、いちばん気になるのがこの点だと思います。マンチェスター大学のコース公式ページは、こう説明しています。

「建築は、マンチェスター大学とマンチェスター・メトロポリタン大学という二つの大学の革新的な協働によって提供されるコースです。あなたは両方の大学の学生になり、学位証書は両機関によって承認(endorse)されます」(manchester.ac.uk「BA Architecture」コースページより要約)

同じページの「Course collaborators」欄はさらに具体的です。学位は両大学が共同で(jointly)提供し、修了時に受け取る学位証書は1通。その1通に両大学それぞれの紋章と学位授与機関名が記載されます。2通もらえるわけでも、一方の名前だけが載るわけでもありません。単独の美術大学やひとつの大学だけの建築学科とは異なる仕組みです。

世界5位という評価

MSAは、QS世界大学ランキング(分野別)の建築・建築環境(Architecture and Built Environment)部門で、2026年版まで4年連続の世界5位です。MSAが2026年3月25日に出した発表と、マンチェスター大学の学内ニュース(2026年4月7日)の双方で確認できました。2026年版の上位5校は次のとおりです。

順位大学国
1ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL。建築はバートレット建築学校)イギリス
2マサチューセッツ工科大学(MIT)アメリカ
3デルフト工科大学オランダ
4ETHチューリッヒスイス
5マンチェスター建築大学(MSA)イギリス

繰り返しになりますが、この部門は「アート&デザイン部門」とは別の科目区分です。アート&デザインに名前がないことと建築で世界5位であることは矛盾しません。

当メディアの別記事で解説しているとおり、QSのアート&デザイン部門は配点の9割を研究者へのアンケート(学術評判)が占め、美術・デザインの専門校が集まりやすい部門です。マンチェスター大学のように美術史や演劇、音楽を人文学部の一部として置く総合大学は、この種の評判調査で名前が挙がりにくい傾向があります。一方の建築・建築環境部門は建築という単独の職能を測るため、MSAのように実績のある建築課程を持つ総合大学系の学校も上位に入りやすい構造です。同じ大学でも、見る科目が変われば評価のされ方はこれだけ変わります。

ウィットワース美術館とマンチェスター博物館

マンチェスター大学は、直属のミュージアムを二つ持っています。どちらも一般公開されており、入館無料です。

ウィットワース美術館(The Whitworth)

ウィットワース美術館は1889年、実業家サー・ジョセフ・ウィットワースを記念し、ウィットワース・インスティテュート・アンド・パーク(The Whitworth Institute and Park)の名で設立されました。公式サイトによれば「マンチェスターの人々がいつまでも楽しめるように」という趣旨が掲げられていたそうです。1958年にビクトリア大学マンチェスターの一部となり、現在はマンチェスター大学直属の美術館です。

所蔵品は60,000点を超え、美術作品、テキスタイル、壁紙のコレクションで知られます。アーツカウンシル・イングランドは所蔵品全体を指定コレクション(Designated Collection)に挙げています。2015年2月14日には、建築設計事務所MUMA(McInnes Usher McKnight Architects)による1,500万ポンド規模の改修と増築が完成して再オープンしました。ウィットワース・パークに張り出す2つの翼棟と、それをつなぐガラスのプロムナード・ギャラリーが加わっています。

デザインを学ぶ方に面白いのは煉瓦の使い方です。公式の建築資料によれば、公園側の翼棟の外壁には英国ノースコット社の煉瓦を同館のために調合した特製ブレンドが使われ、積み方には織物のスラッシュワーク(切り込み装飾)を思わせるパターンが採用されました。同館のテキスタイル・コレクションから着想を得たものだと説明されています。

ウィットワース美術館、2015年増築のガラスと煉瓦の翼棟
ウィットワース美術館 ウィットワース・パーク側の増築棟(2015年、MUMA設計)/撮影:habiloid(CC BY-SA 2.0)/出典:Wikimedia Commons

学生がどう使えるのかも書いておきます。公式の建築資料によれば、増築部分の1階にはスタディ・センターがあり、よく使われる収蔵品が専用の可動収納に収められています。30名が入るグループ用の大テーブルと研究者用デスク2席が置かれ、収蔵品を実際に取り出して見られる場所です。来館者の通る位置には吹き抜けの保存修復スペースがあり、テキスタイルの修復作業を見学できます。徒歩圏内に60,000点規模の一次資料が常にある環境そのものが、美術史やテキスタイルを学ぶ方には教材になります。

マンチェスター博物館(Manchester Museum)

マンチェスター博物館は、マンチェスター自然史協会と地質学協会のコレクションを起源とし、1868年にオウエンズ・カレッジへ移管されました。1888年、現在地のオックスフォード・ロードに開館。設計はジョン・オウエンズ・ビルディングと同じアルフレッド・ウォーターハウスです。公式サイトは自館を「英国有数の大学博物館のひとつ」と紹介しており、所蔵品は約450万点にのぼります。

2023年2月、博物館は1,500万ポンド規模の改装(hello futureプロジェクト)を終えて再オープンしました。オックスフォード・ロード側に新しい入口がつくられ、1階が全面的に再構成されて、新しい展示ホールと2つのギャラリーが加わりました。

そのひとつが、大英博物館とのパートナーシップで生まれたサウスアジア・ギャラリーです。南アジア系ディアスポラの経験・貢献・歴史を扱う英国初の常設コレクションで、地域のリーダー、教育者、アーティスト、歴史家、ジャーナリスト、科学者、音楽家、学生ら30名からなる「サウスアジア・ギャラリー・コレクティブ」が共同キュレーションを担当しました。展示そのものが、キュレーションや展示デザインの実例になる場所です。この取り組みが評価され、博物館は2025年のヨーロッパ博物館賞(EMYA)を受賞しています。大学博物館としては史上初です。

もうひとつの新設ギャラリーが、香港出身の引退した実業家で大学の名誉卒業生でもあるリー・カイフン博士の支援によるLee Kai Hung Chinese Culture Gallery(中国文化ギャラリー)です。入館は無料(Free entry)。収蔵品を実際に見たいときは、博物館にも専用のリサーチ・スタジオがあり、誰でも閲覧を申し込めます。ウィットワース美術館とあわせ、学費以外の負担なく通える学びの場が目と鼻の先にあることは、マンチェスターで学ぶ利点のひとつです。

マンチェスター博物館 オックスフォード・ロード側の外観と2023年に設けられた新しい入口
マンチェスター博物館 オックスフォード・ロード側。手前の低い建物が2023年の改装で設けられた新しい入口、奥がアルフレッド・ウォーターハウス設計の1888年開館の建物/撮影:Manchester Museum(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

キャンパスと図書館

オックスフォード・ロードに面したウィットワース・ホールとウィットワース・ビルディング
オックスフォード・ロードに面するウィットワース・ホールとウィットワース・ビルディング/撮影:David Dixon(CC BY-SA 2.0)/出典:Wikimedia Commons(Geograph Britain and Ireland)

マンチェスター大学のキャンパスは、オックスフォード・ロード沿いの南キャンパスを中心に広がっています。かつてUMISTのキャンパスだったサックビル・ストリート周辺には理工系学部のオフィスが多く、人文学部やウィットワース美術館、マンチェスター博物館は南キャンパス側に集まっています。

もうひとつ見逃せないのが、市街中心部ディーンズゲートにあるジョン・ライランズ図書館(John Rylands Library)です。実業家ジョン・ライランズの妻エンリケッタが、1888年に亡くなった夫を記念して建て、1900年に開館しました。1972年にマンチェスター大学図書館と統合され、現在は同図書館の貴重書・手稿コレクションの大部分を収蔵しています。公式サイトはこの建物を「ヨーロッパで最も美しいネオ・ゴシック建築のひとつ」と紹介し、「マンチェスターの街への贈り物として、稀覯書・手稿・アーカイブの世界水準のコレクションを一般に公開するために建てられた」と説明しています。

ジョン・ライランズ図書館のネオ・ゴシック様式の外観
ジョン・ライランズ図書館(1900年開館)ディーンズゲート側外観/撮影:Phil and Juliette Platt(CC BY-SA 2.0)/出典:Wikimedia Commons

マンチェスター大学図書館は、公式サイトによれば英国に5つしかない国立研究図書館のひとつで、400万冊を超える印刷本・手稿、5万誌の電子ジャーナル、80万点の電子書籍を所蔵しています。建物そのものが、建築やデザインを学ぶ方にとっての見学先にもなっています。

学費(学部課程・2026/27年度)

公式サイトのコース別ページで確認した、2026年9月入学(2026/27年度)の学部課程の学費です。大学院の金額ではありません。アート・デザイン系の代表としてBA History of Art(美術史)、建築系の代表としてMSAのBA Architectureを挙げます。

コースHome(英国内学生)International(留学生)
BA History of Art£9,790/年£27,800/年
BA Architecture(MSA)£9,790/年(マンチェスター・メトロポリタン大学が徴収)£32,000/年(マンチェスター・メトロポリタン大学が徴収)

なぜコースによって金額が違うのか、整理しておきます。

  • 英国内学生(Home)の£9,790は、大学が決めた額ではありません。イングランドとウェールズでは政府が学部の授業料に上限を設けており、2026/27年度の上限がこの額です。どのコースでも同じになるのはそのためです
  • 留学生(International)の学費は、大学がコースごとに決めます。設計スタジオや工作室など実習の設備費がかかる建築系は高めで、BA Architectureの£32,000とBA History of Artの£27,800の差はここから生まれています

また、BA Architectureの学費はMSAが共同運営であることを反映して、Home・Internationalともマンチェスター・メトロポリタン大学(MMU)側が徴収します。マンチェスター大学のコース公式ページにも「collected by MMU」と明記されています。

2027/28年度(2027年9月入学)の目安も、すでに公表されています。英国内学生の上限は£10,050(議会の承認が条件)で、マンチェスター大学とMSAの双方の公式ページがこの額を記載しています。留学生については、BA History of Artが「翌年度以降は年最大7%の範囲で値上げすることがある」、MSAのBA Architectureは「通常の年限で修了する限り在学中は£32,000で据え置く」と案内しています。出願の際は必ず公式サイトで最新の金額をご確認ください。

出願の進め方

UCASでの出願

学部課程の出願は、英国の大学共通出願システムUCASで行います。マンチェスター大学の機関コードはM20 MANU、MSAのBA (Hons) Architectureのコース番号はK100です。公式サイトによれば、2027年度入学で「等しく検討される」出願の締切は2027年1月13日18時(GMT)。オックスフォード・ケンブリッジへの出願と、医学・歯学の専門資格につながるコースは締切が早く、2026年10月15日18時(GMT)です。

英語要件とポートフォリオ

出願要件はコースごとに異なります。BA History of ArtとMSAのBA Architectureを例に、公式ページで確認した要件を比べます。

項目BA History of ArtBA Architecture(MSA)
Aレベルの標準オファーABB(エッセイ系科目を1つ含む)AAA(理数系と人文・芸術系を組み合わせた科目構成が望ましい。必須ではない)
Aレベルの文脈考慮オファーBBCABB
英語要件GCSE英語6、またはIELTS7.0GCSE英語C/4、またはIELTS6.5(ライティング6.5、他セクションも6.0以上)
GCSEの数学グレード4以上グレード4/C以上
ポートフォリオ不要必要

美術系の科目だけで固めた出願は通りません。ここが最大の注意点です。MSAとマンチェスター大学の公式ページは、アートまたはファインアートのAレベルは特に歓迎するとしたうえで、芸術系の科目を3つ並べた場合(Art・Graphics and 3D Design、Art・Photography・Design and Technologyなど)と、美術デザインのBTEC Extended Diplomaは入学要件を満たすものとして扱わないと明記しています。得意な美術系科目でAレベルをそろえると、成績が足りていても要件を満たしません。科目の組み合わせは出願前に必ず公式ページでご確認ください。

そのうえで、入学要件を満たした出願者にのみデジタル・ポートフォリオの提出が求められます。内容は次の2点です。

  • 450語の記述:MSAを志望する理由、最近訪れた建築や展覧会についての自分なりのレビュー、好きな建築家や建物、実際に体験してみたい建築作品の4点を含めること
  • 自作の作品10〜12点の画像:ファインアートや絵画、スケッチ、実測図、グラフィックデザイン、自分が作った物を撮影した写真など。デッサン力、創造性、多様な素材・技法の使用、構想から完成までの創作プロセス(最終作品だけでなく下書きのスケッチを添えるなど)が示せるもの

提出は1つのPDFファイル(最大20MB)にまとめ、マンチェスター大学のセルフサービスからアップロードします。ファイル名は10桁のUCAS番号のみとし、パスワードはかけないよう指示されています。提出期限はTo Doリストで個別に案内され、期限までに出さないと不合格になることがあると明記されているのでご注意ください。一方のBA History of Artにポートフォリオの要件はなく、UCASの出願書類のみで選考されます。

主な卒業生

マンチェスター大学の公式サイト・公式マガジンで確認できた、アート・デザイン・建築分野にゆかりのある卒業生です。

氏名学位・卒業年代表的な功績
ノーマン・フォスター(Norman Foster)建築・都市計画学 1961年建築家。Foster + Partners創設者。ロンドンの「ガーキン」、ミレニアム・ブリッジ、大英博物館グレート・コートなど。プリツカー建築賞、高松宮殿下記念世界文化賞、RIBAロイヤル・ゴールドメダル、AIAゴールドメダルを受賞
フィル・コリンズ(Phil Collins)BA English and Drama 1994年美術家(同名の音楽家とは別人)。ターナー賞ノミネート。2006年のターナー賞展では、テート・ブリテンの館内に実際に稼働するオフィスを設置した
ヴァルデマル・ヤヌシュチャク(Waldemar Januszczak)BA History of Art 1975年美術批評家。英ガーディアン紙を経て現在はサンデー・タイムズ紙。美術をテーマにしたテレビドキュメンタリーの制作も手がける
テッサ・ジャクソン(Tessa Jackson)Dip Art Gallery and Museum Studies 1981年現代美術のキュレーター・著述家。アートへの25年にわたる貢献により2011年にOBE(大英帝国勲章オフィサー)を受章
ベネディクト・カンバーバッチ(Benedict Cumberbatch)BA Drama 1999年俳優。「イミテーション・ゲーム」でアラン・チューリングを演じ、BAFTA・エミー賞などを受賞

建築、美術批評、キュレーション、映像芸術、演劇と、分野の幅が広いのがこの大学らしいところです。総合大学だからこそ、ひとつの専門に閉じない進路が多く見られます。

なかでもノーマン・フォスターは、1961年に建築・都市計画学を卒業したのち、イェール大学建築大学院の修士課程を経てFoster + Partnersを創設しました。MSAが生まれる以前の、ビクトリア大学マンチェスター単独の建築課程で学んだ世代です。大学公式ニュースは、フォスターが母校を訪れ、MSAの「Inspirations」講演シリーズで学生500名を前に講演したことを伝えています。そこで贈った助言は「学生であり続けなさい。好奇心を持ち、すべてを問い、挑み、機会に飢え、しかし何よりも謙虚であれ」というものでした。

まとめ

いかがだったでしょうか。マンチェスター大学を、アート・デザイン・建築という切り口から見てきました。要点は次の6つです。

  • 現在のマンチェスター大学は2004年10月22日、ビクトリア大学マンチェスターとUMISTの合併で誕生しました。両者のルーツは1824年までさかのぼります
  • QSアート&デザイン部門2026年版の上位50校に、マンチェスター大学の名前はありません。この分野で名前が挙がるのは別法人のマンチェスター・メトロポリタン大学(同部門で世界トップ100入りと自ら発表)であることが多く、混同しないようご注意ください
  • 一方、マンチェスター・メトロポリタン大学との共同運営であるマンチェスター建築大学(MSA)は、QS建築・建築環境部門で4年連続世界5位です。学位は両大学の共同授与で、受け取る学位証書は1通、そこに両大学の紋章と授与機関名が入ります
  • 大学直属のウィットワース美術館(60,000点超のコレクション)とマンチェスター博物館(約450万点。2025年のヨーロッパ博物館賞受賞)が、入館無料の学びの場になっています
  • 2026/27年度の学部学費はBA History of ArtがHome£9,790/International£27,800、MSAのBA ArchitectureがHome£9,790/International£32,000(いずれも年額)。2027/28年度の英国内学生の上限は£10,050と公表されています
  • 出願はUCAS経由(機関コードM20 MANU、BA Architectureはコース番号K100)。2027年度入学の締切は2027年1月13日18時(GMT)。BA Architectureには450語の記述と作品10〜12点のポートフォリオが必要で、芸術系Aレベル3科目や美術デザインのBTEC Extended Diplomaは入学要件を満たしません
項目マンチェスター大学
現在の大学としての発足2004年10月22日
学生数44,000名以上
QSアート&デザイン部門2026上位50校に名前なし(別法人のマンチェスター・メトロポリタン大学は同部門でトップ100入りと発表)
QS建築・建築環境部門2026MSAが世界5位(4年連続)
学部学費(2026/27年度・BA History of Art)Home £9,790/International £27,800(年額)

学費も出願要件も年度によって変わります。検討を進める段階では、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。

ポートフォリオの作り方に不安がある方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。

Euphoric " " の視点

マンチェスター建築大学は、ふたつの大学が一緒に運営しています。マンチェスター大学と、マンチェスター・メトロポリタン大学。1996年に、両校の建築課程がひとつになりました。

学生はどちらの大学にも所属します。卒業のときに受け取る学位証書は1通で、そこに両方の大学の紋章が入ります。

普通、大学は学生を取り合う関係にあります。順位が付けられ、比べられ、どちらが上かを競う。そのなかで、この2校は建築に関して競うのをやめました。

どちらが得をしたのかは、外からは分かりません。ただ、学生にとっては教員の数も施設も倍になります。組織の都合より、教える中身を優先した判断だったのだろうと思います。

学校を選ぶとき、順位は便利な物差しです。けれど、順位を競うことをやめた側に、より良いものができていることもある。この学校は、その一例です。

もっと知るには

本記事の情報は、マンチェスター大学および関連機関の公式発表をもとに確認しています。学費・出願要件は年度ごとに変わります。出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。

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