【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキング

【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキング

アートコンサルティング

イギリスの調査会社 Quacquarelli Symonds(QS)が毎年発表している「QS世界大学ランキング」。その分野別版である QS World University Rankings by Subject 2026 が、2026年3月25日に発表されました。通算16回目となる今回は、55分野・1,900校以上が対象です。

そのなかのアート&デザイン部門(Art & Design)には、世界50の国と地域から 300校以上 がランクインしました。この記事ではTOP10を1校ずつご紹介しながら、「この順位はどうやって決まっているのか」「留学先を選ぶときにどう読めばいいのか」、そして日本の大学の状況まで解説します。それでは早速いってみましょう。

コンテンツ

QS世界大学ランキング(分野別)とは

QS世界大学ランキングには、大学全体を比べる「総合版」と、分野ごとに比べる「分野別版(by Subject)」があります。アート&デザイン部門が入っているのは後者です。

分野別版の良いところは、総合版では上位に出てこない小さな専門大学が、正当に評価されることです。実際、2026年版のTOP10のうち6校は美術・デザインの専門校です。この分野がランキングに加わったのは2015年で、2026年版はその12回目にあたります。

この順位はどうやって決まっているのか

順位を見る前に評価の仕組みを押さえておくと、この表の読み方がまったく変わります。QSの分野別ランキングは、次の5つの指標を組み合わせて算出されます。

  • Academic Reputation(学術評判):世界中の研究者・教員へのアンケート。「この分野で優れた大学はどこですか」と尋ねた結果です
  • Employer Reputation(雇用者評判):企業の採用担当者へのアンケート。「優秀な人材を輩出している大学はどこですか」と尋ねた結果です
  • Citations per Paper(論文あたり被引用数):論文がどれだけ他の研究に引用されたか
  • H-index:論文数と被引用数を組み合わせた研究力の指標
  • International Research Network:海外の機関とどれだけ共同研究をしているか

ただし、この5つの配分は分野ごとに変えられています。アート&デザイン部門の配分は、かなり特殊です。

指標アート&デザイン部門での重み
Academic Reputation(学術評判)90%
Employer Reputation(雇用者評判)10%
Citations per Paper(論文あたり被引用数)0%
H-index0%
International Research Network0%

つまりアート&デザイン部門は、論文の指標をいっさい使っていません。この分野は成果が作品・展示・製品として世に出ることが多く、論文の本数が統計的に十分な量にならないからです。

そのぶん、順位の9割が 「世界の研究者・教員が、その学校をどう見ているか」、残りの1割が「企業の採用担当者がどう見ているか」で決まります。これはスコアの内訳にはっきり現れます。6位のマサチューセッツ工科大学は学術評判83.3に対して雇用者評判が98.3。一方、9位のアールト大学は学術評判84.6に対して雇用者評判61.4と、正反対のかたちです。それでも総合スコアが近い値に並ぶのは、学術評判が9割を占めるからです。

つまりこのランキングは「教育の質の測定」ではなく、「その学校がどれだけ知られ、敬意を持たれているか」の測定に近いということになります。歴史が長く、卒業生が世界中の大学で教えている学校ほど有利です。逆に、良い教育をしていても設立から日が浅い学校は、実力どおりには上がってきません。

2026年版 アート&デザイン部門 TOP10

まずは全体像です。スコアはQSの総合点(100点満点)です。

順位大学国スコア前年からの変動
1Royal College of Art(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)イギリス98.5変わらず(12年連続1位)
2University of the Arts London(ロンドン芸術大学)イギリス95.5変わらず
3The New School(ザ・ニュースクール)アメリカ93.3変わらず
4Rhode Island School of Design(RISD)アメリカ93.2変わらず
5Pratt Institute(プラット・インスティテュート)アメリカ87.57位から2つ上昇
6Massachusetts Institute of Technology(MIT)アメリカ84.85位から1つ下降
7Politecnico di Milano(ミラノ工科大学)イタリア83.36位から1つ下降
8The Glasgow School of Art(グラスゴー芸術大学)イギリス82.912位から4つ上昇
9Aalto University(アールト大学)フィンランド82.38位から1つ下降
10Design Academy Eindhoven(DAE)オランダ81.1変わらず

2026年版でいちばん大きな動きは、グラスゴー芸術大学が12位から8位へ4つ上がり、TOP10に入ったことです。入れ替わるかたちで、前年9位だったシカゴ美術館附属美術大学(SAIC)が11位に下がりました。

もうひとつはアメリカの専門校の躍進です。プラット・インスティテュートが7位から5位に上がり、MITを抜いてアメリカ勢3位につけました。

TOP10を1校ずつ見ていきます

世界1位:Royal College of Art(RCA) イギリス(98.5)

栄えある世界1位は、今年もロイヤル・カレッジ・オブ・アート。この部門が始まった2015年からずっと首位を守り、12年連続の1位となりました。総合スコアは98.5。学術評判は100.0、つまり満点で、この指標でも世界1位です。世界の研究者が「アート&デザインといえばここ」と答え続けている、ということになります。

創立は1837年、ロンドン。RCAの最大の特徴は学部を持たない大学院だけの大学だったことで、公式サイトは自校を「世界最大の、大学院のみのアート&デザイン学生コミュニティ」と表現しています。MA、MArch、MDes、MFA、MRes、MPhil、PhDといった課程が並び、最初から専門性の高い教育が始まります。

ただし、ここは2026年に大きな発表がありました。RCAはノリッジ芸術大学(Norwich University of the Arts)と提携し、2027年9月から両校の共同授与による学部課程を開講します。授業はノリッジ側のキャンパスで行われ、出願は2026年9月1日から始まっています。ロンドンのRCAで学士が取れるわけではありませんが、「RCAは大学院だけ」という長年の常識が変わる節目です。

キャンパスはケンジントン、バタシー、ホワイトシティの3拠点。ケンジントン校はヴィクトリア&アルバート博物館の隣という贅沢な立地です。2024/25年度の在籍者はフルタイム換算で2,465名、修士課程の73%が英国外出身です。

ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)の解説記事はこちら

世界2位:University of the Arts London(UAL) イギリス(95.5)

世界2位は、前年と同じくロンドン芸術大学。今年もロンドンの2校がワンツーフィニッシュを決めました。

UALは6つのカレッジが集まった連合体です。キャンバーウェル・カレッジ・オブ・アーツ、セントラル・セント・マーチンズ、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ、ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーション、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッション、ウィンブルドン・カレッジ・オブ・アーツ。ファインアートもファッションもグラフィックも映像も、どれかひとつに偏らず世界水準で揃っているのが、この学校の個性です。

公式サイトは「Since 1842」と掲げており、2003年に大学の地位を、2004年に現在の校名を得ています。130か国から約23,000名が学ぶ大規模校で、学士から博士まで揃っているため、学部進学でも大学院進学でも選択肢になります。

ロンドン芸術大学(UAL)の解説記事はこちら

世界3位:The New School(ザ・ニュースクール) アメリカ(93.3)

世界3位も前年と変わらず、ニューヨークのザ・ニュースクールです。日本では、この大学が擁するパーソンズ美術大学(Parsons School of Design)の名前のほうが通りが良いかもしれません。

パーソンズの始まりは1896年。アメリカの画家ウィリアム・メリット・チェイスが「Chase School of Art」として創立し、1941年に現在の校名へ改称、1970年にザ・ニュースクールと統合しました。ザ・ニュースクール自体は1919年に、成人教育のための高等教育機関として生まれています。

公式サイトはパーソンズを「総合大学の内部に組み込まれた、唯一の主要デザインスクール」と位置づけています。デザイン、リベラルアーツ、舞台芸術、社会科学を一つ屋根の下に持つ。この組み合わせが、ここのデザイン教育を独特なものにしています。

なお、この大学は2026年秋に学内組織を再編しました。4つのカレッジが2つに統合され、パーソンズは、マンネス音楽院・ジャズ・ドラマとともに一方のカレッジに入っています(2026年8月26日付の学長メッセージ)。新しいカレッジの正式名称は、本記事の執筆時点では公表されていません。志望する方は、出願前に最新の構成を公式サイトでご確認ください。

パーソンズ美術大学の解説記事はこちら

世界4位:Rhode Island School of Design(RISD) アメリカ(93.2)

世界4位は、ロードアイランド州プロビデンスにあるRISD。3位との差はわずか0.1点で、事実上の同着といっていい接戦でした。

成り立ちは少し変わっています。1877年、ロードアイランド女性100周年委員会の34名が、余剰資金1,675ドルを美術デザイン学校の設立に投じたことから始まりました。州の繊維産業と宝飾産業を支えたいという動機があったそうです。そして設立時から「学校であり、同時に美術館である」と定められていました。

その美術館が RISD Museum です。古代から現代までの美術を約10万点収蔵し、日本美術のコレクションも厚く、歌川国芳をはじめとする浮世絵を多数所蔵していることで有名です。また Nature Lab という施設には8万点を超える自然標本が揃い、学生が自然の中のデザインを観察できるようになっています。

学位はBFA、BArchからMFA、MArch、MID、MDes、MLAまで40以上。ブラウン大学とのデュアルディグリーもあります。学生数は2,577名で60か国から集まっており、学部の国際学生比率は33%(2025年秋)です。

ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)の解説記事はこちら

世界5位:Pratt Institute(プラット・インスティテュート) アメリカ(87.5)

今年TOP5に食い込んできたのがプラット・インスティテュートです。前年の7位から2つ順位を上げ、アメリカ勢では3番手につけました。同校は「2015年にこの部門ができて以来、毎年TOP10に入り続けている」と発表しています。

創立は1887年、創立者はチャールズ・プラット。掲げた理念は「階級・肌の色・性別を問わず、すべての学生に手の届く大学教育を提供する」でした。19世紀のアメリカでこれを掲げた学校だということは、覚えておく価値があると思います。

本拠地はニューヨーク・ブルックリンの25エーカーのキャンパス。70点以上の彫刻が並ぶ Sculpture Park があり、市内でも最大級の彫刻庭園のひとつとされています。

組織は建築、美術、デザイン、情報、リベラルアーツ、継続教育の6スクール。学部課程が充実しており、大学院は33課程あります。建築、インテリアデザイン、インダストリアルデザインといった産業に近い領域に強く、実践的に学びたい人に向いています。

世界6位:Massachusetts Institute of Technology(MIT) アメリカ(84.8)

世界6位はMIT。前年の5位から1つ下げましたが、雇用者評判は98.3とTOP10で最高です。企業から見たときの評価は、依然として群を抜いています。

MITといえば科学と工学の大学という印象が強いと思いますが、アートとの関係は決して新しくありません。MITの建築課程は1865年設立で、アメリカ最古です。そして現在の建築学科は、建築学士と並んで「Bachelor of Science in Art and Design(BSAD)」という学部の学位を出しています。

アート教育の中核にあるのが Art, Culture and Technology(ACT)プログラムです。1967年にジョルジュ・ケペシュが設立した先端視覚研究センターと、1989年設立のビジュアルアーツ・プログラムが2009年に統合して生まれました。ACTは自らをこう説明しています。「伝統的な意味での美術学校ではありません」。

もうひとつが MIT Media Lab。ここの Program in Media Arts and Sciences は建築・計画学部に置かれ、200名を超える大学院生が在籍します。キャンパスには入場無料の現代美術館 List Visual Arts Center もあり、「理系の大学だからアートは片手間」というイメージは実態とかなり違います。

マサチューセッツ工科大学(MIT)の解説記事はこちら

世界7位:Politecnico di Milano(ミラノ工科大学) イタリア(83.3)

世界7位はミラノ工科大学。前年の6位から1つ下げましたが、イタリア国内では不動の1位で、常にTOP10圏内にいるヨーロッパの主要デザインスクールです。

創立は1863年。当初は土木工学と産業工学の2分野から始まり、1865年にブレラ美術アカデミーとの連携で建築学部が加わりました。工学の大学として生まれながら、早い段階でデザインと建築を取り込んだ歴史があります。

デザイン教育はSchool of Design、Department of Design、POLI.design の3つを合わせた「Politecnico Design System」という体制です。学士課程は工業製品、ファッション、インテリア、コミュニケーションの4本柱。修士課程は7つで、多くが英語で開講されています。デザイン系の在籍学生は4,793名(2025/26年度)と、単科の美大に匹敵する規模です。

ミラノ工科大学の解説記事はこちら

世界8位:The Glasgow School of Art(グラスゴー芸術大学) イギリス(82.9)

2026年版で最も大きく順位を上げたのが、グラスゴー芸術大学です。前年の12位から4つ上げて8位に入り、英国内3位、スコットランドからは唯一のTOP10入りとなりました。

創立は1845年。公式サイトは自校を「英国に残る数少ない独立系アートスクールのひとつ」と説明しています。学位はグラスゴー大学が認証するかたちで、卒業生は95か国に2万人以上。ファインアート、デザイン、マッキントッシュ建築学部、イノベーション&テクノロジーの4スクールからなり、学部から博士課程まで揃っています。

この学校を語るうえで欠かせないのが、チャールズ・レニー・マッキントッシュが設計したマッキントッシュ・ビルディングです。1897年に着工し、1899年12月に東棟が完成。1907年に着工した西棟を含む全体が1909年12月に開館し、モダニズム建築の誕生を告げた建物とされています。

ただ、この校舎は2014年と2018年の二度の火災で大きな被害を受け、いまも復旧していません。GSAは忠実な復元を目標として掲げ続けていますが、2026年7月、理事会は「学校単独では忠実な復元を進められない」と公式に発表しました。完全な復元にかかる費用は約2億6,500万ポンドと見積もられ、GSAの年間収入のおよそ5倍にあたるためです。今後は保険金を原資とする先行工事(2018年から立っている外部足場を内部の保持構造に置き換える工事)を2027年夏に着工し、並行して連携先を探す段階に入ります。つまり、いま留学してもこの建物で学べるわけではありません。日本語の情報では触れられていないことが多い点なので、志望する方はご注意ください。

グラスゴー芸術大学(GSA)の解説記事はこちら

世界9位:Aalto University(アールト大学) フィンランド(82.3)

世界9位はフィンランドのアールト大学。前年の8位から1つ下げましたが、フィンランド国内では1位です。

大学としての発足は2010年で、ヘルシンキ経済大学、ヘルシンキ工科大学、ヘルシンキ美術デザイン大学の3校が合併して生まれました。ただし芸術系の前身は古く、1871年に「Craft School」として創立されています。

校名の由来は、フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルト。公式サイトは著名な卒業生として、アアルトのほかタピオ・ヴィルカラ、カイ・フランク、エリエル・サーリネンらの名前を挙げています。フィンランドのデザイン史そのものが、この学校から出てきたと言ってもいいかもしれません。

芸術・デザイン・建築学部(ARTS)は、建築、デザイン、アート&メディア、映画の4学科構成。修士課程は25プログラムあり、その多くが英語で学べます。学生数は2,755名(2025年)。建設費の1%をアートに充てるという方針を持っているのも、この大学らしいところです。

世界10位:Design Academy Eindhoven(DAE) オランダ(81.1)

TOP10の最後は、オランダのデザイン・アカデミー・アイントホーフェン。前年と同じ10位を守りました。

1947年に「AIVE」として創立された、オランダで初めて工業デザイン教育を明確に目的とした学校です。1999年に著名なトレンド予測家リデヴィ・エデルコートが就任し、その年に現在の校名へ変更されました。所在地アイントホーフェンの名前を校名に入れたかった、というのが理由だそうです。

規模は700名あまりと小さいのですが、国際性はTOP10で最も高いと言えます。40か国以上から学生が集まり、学士の約70%、修士の約90%がオランダ国外出身です。学士課程は4年制で、2021年に学科制から8つのスタジオ制へ移行しました。修士課程は2年制で5つのプログラムがあり、社会や環境の課題にデザインで向き合う学際的な領域に強い学校です。

そしてダッチ・デザイン・ウィークの期間中に開かれる卒業制作展(Graduation Show)が、この学校の最大の見せ場です。公式サイトは「新進デザイナーの作品展として世界で最も影響力のあるもののひとつ」と表現しています。

11位から19位までの顔ぶれ

TOP10の外にも、名前を知っておく価値のある学校が並びます。

順位大学国・地域
11School of the Art Institute of Chicago(シカゴ美術館附属美術大学)アメリカ
12ArtCenter College of Design(アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン)アメリカ
13Delft University of Technology(デルフト工科大学)オランダ
14Central Academy of Fine Arts(中央美術学院)中国
15Savannah College of Art and Design(SCAD)アメリカ
16Tongji University(同済大学)中国
17University of Oxford(オックスフォード大学)イギリス
18School of Visual Arts(SVA)アメリカ
19(同順)Carnegie Mellon University(カーネギーメロン大学)アメリカ
19(同順)National University of Singapore(シンガポール国立大学)シンガポール
19(同順)RMIT University(RMIT大学)オーストラリア

注目したいのは、14位に中央美術学院、16位に同済大学と、中国の2校が20位以内に入っていることです。19位にもシンガポール国立大学とRMIT大学が並びます。

日本の大学はどうなっているのか

日本の読者にとって、いちばん気になるのがここだと思います。結論から書きます。

2026年版のアート&デザイン部門TOP50に、日本の大学は1校も入っていません。TOP50はイギリス・アメリカを中心に、イタリア、オランダ、フィンランド、中国、シンガポール、韓国、オーストラリア、メキシコなどの学校で占められています。

ただし対象は300校を超えます。51位以降は順位の幅(バンド)での発表になり、そこには日本の大学も入っています。

大学2026年版2025年版
東京大学72位30位(同順)
千葉大学98位51〜100位
筑波大学101〜150位151〜200位
京都大学151〜200位101〜150位
武蔵野大学151〜200位151〜200位
東京藝術大学151〜200位掲載なし
慶應義塾大学201〜300位201〜260位
京都工芸繊維大学201〜300位201〜260位
九州大学201〜300位151〜200位
早稲田大学201〜300位掲載なし

まず、東京藝術大学がこの分野にランクインしました(151〜200位)。QSが現在公開している2021年版以降では初めてのことで、日本を代表する芸術大学が世界の評価の土俵に名前を出したことになります。早稲田大学は2022年版を最後に外れていましたが、4年ぶりに戻ってきました。

一方で、いちばん大きな変化は東京大学です。前年の30位(同順)から72位へ、40以上も順位を落としました。日本の大学がTOP50から姿を消したのは、この下降によるものです。前年までは東京大学が1校だけTOP50に残っていました。

そして、ここがいちばん大事なところです。この表に、日本の美術大学の名前はほとんど出てきません。掲載されている10校のうち、美術・デザインの単科大学は東京藝術大学の1校だけで、あとは総合大学と工科系の大学です。なお、表にある「武蔵野大学」は武蔵野美術大学とは別の大学ですので、ご注意ください。

これは「日本の美大の教育が劣っている」という話ではありません。この順位は学術評判が9割を占めます。QSは、この調査について回答者が国内10校・海外30校まで挙げられること、そして国際的な評判を国内の評判より重視するため、自国からの回答は海外からの回答の半分の重みで集計されることを公開しています。国内でどれだけ高く評価されていても、海外の研究者に名前が届いていなければスコアは伸びにくい仕組みです。ここに出ているのは教育の質の差というより、「どれだけ世界に向かって開いているか」の差だと読むほうが正確だと思われます。

逆の見方もできます。この表で日本勢の上位を占めているのは、東京大学・千葉大学・筑波大学といった総合大学です。海外の研究者と日常的に接点を持ち、英語で発信する機会が多い環境ほど、この指標では有利に働くと考えられます。作品をつくるだけでなく、それを言葉にして世界に出す。日本の美術大学がこの表で名前を伸ばしていくとすれば、そこが道筋のひとつになりそうです。

なお、日本国内の芸術・美術大学については、Euphoric " " で国内の芸術・美術大学のアート&デザイン学部/専攻をまとめた記事もご用意しています。

学費は「順位が高いほど高い」わけではありません

このランキングを見ていて、いちばん意外に感じるかもしれないのが学費です。上位校の学費を並べてみると、桁がまるで違います。

大学留学生の学費(公式サイト記載)
Royal College of Art(1位)MA Painting(1年・45週)課程の総額 £43,000/2027年入学
University of the Arts London(2位)学部 £30,890/年(2026-27年度)
Rhode Island School of Design(4位)学費 $66,460/年(2026-27年度・総額 $93,776)
Pratt Institute(5位)学部 $64,703/年(2026-27年度)
Massachusetts Institute of Technology(6位)$33,360/学期(2026-27年度・年額では $66,720)
Politecnico di Milano(7位)年間 €3,943.04 が上限(2026/27年度・学士/修士課程)
The Glasgow School of Art(8位)学部 £24,800/年(2026/27年度・在学中据え置き)
Aalto University(9位)芸術・建築分野 学士€15,000/修士€20,000(年額・2025年8月以降の入学者に適用。EU・EEA圏とスイスの市民は無料)
Design Academy Eindhoven(10位)EU圏外 学士€12,449/修士€19,762(2026-27年度)

世界7位のミラノ工科大学は、学士・修士課程であれば非EU圏の学生でも年間 €3,943.04 が上限です(非EU圏の学生には原則この上限額が適用されます)。RISDの $66,460 と比べると10分の1以下です。ヨーロッパ大陸の公立大学は教育を公共サービスとして設計しているため、学費が低く抑えられています。「世界トップ10で学ぶ=年間800万円かかる」とは限りません。金額は課程・学科・年度で変わりますので、必ず志望校の公式サイトでご確認ください。

ランキングをどう使えばいいのか

1. 「順位の高さ」と「自分に合うか」は別の話です

じっくり手を動かして絵を描きたい人が、社会課題のリサーチを軸にした学校に入ると苦しくなりますし、逆も同じです。順位より先に、その学校が何を「良い仕事」と考えているかを調べてみてください。

2. 分野が違えば強い学校も違います

QSのアート&デザインは、ファインアート、グラフィック、プロダクト、ファッション、インテリアなどをひとまとめにした大きな括りです。志望分野が決まっているなら、その分野の教員が誰で、卒業生がどこで何をしているかを見てください。学科ページの教員一覧と卒業制作展のアーカイブが、いちばん正直な資料です。

3. 順位の上下1つ2つに意味はありません

今回でいえば、7位のミラノ工科大学(83.3)、8位のグラスゴー芸術大学(82.9)、9位のアールト大学(82.3)は1点の中にひしめいています。一方で1位のRCA(98.5)と10位のDAE(81.1)のように17点以上離れていれば、傾向として意味のある差です。順位は「何位か」ではなく「どの層にいるか」で読むのが実用的です。

留学を考えるときに確認しておきたいこと

学位の種類と修業年限を確認します

海外の学校は、日本の美大とは構成が違います。RCAのように大学院だけの大学もあれば、UALやRISDのように学士から博士まで揃う大学もあります。課程の長さもばらばらで、RCAのMA Paintingは1年(45週)、DAEの修士課程は2年制です。いま学部進学なのか大学院進学なのかで、選べる学校がそもそも変わります。

学費と生活費は必ず公式サイトで確認します

ロンドン、ニューヨーク、ミラノといった都市では、生活費が学費に迫ることもあります。DAEは月額の目安を項目ごとに公開しており、合計するとおよそ€1,737になりますが、こうした数字を出している学校ばかりではありません。まとめサイトではなく、志望校の公式サイトの「Fees」「Tuition」のページを見てください。

ポートフォリオの要件を早めに読みます

海外の美術系大学では、出願書類の中心はポートフォリオです。点数も形式も「何を見たいか」も学校ごとに違い、英語のスコアより時間がかかります。

まとめ

いかがだったでしょうか。QS世界大学ランキング2026年版のアート&デザイン部門を見てきました。今年のポイントは次の5つです。

  • ロイヤル・カレッジ・オブ・アートが12年連続の1位。総合スコアは98.5、学術評判は満点の100.0。さらに2027年9月からは共同授与の学部課程も始まります
  • グラスゴー芸術大学が12位から8位へ上昇してTOP10入り。入れ替わりでシカゴ美術館附属美術大学が11位になりました。ただし象徴であるマッキントッシュ校舎は、いまも復旧の途上にあります
  • プラット・インスティテュートが7位から5位へ。TOP5のうち3校をアメリカの学校が占めています
  • 日本の大学はTOP50から姿を消しました。前年30位だった東京大学が72位に下がったためです。51位以降には10校が掲載され、東京藝術大学が新たに加わりました
  • 順位は学術評判90%・雇用者評判10%で決まり、論文の指標は使われていません

順位表は、世界の見取り図を掴むには便利な道具です。気になる学校が見つかったら、次は順位ではなく、その学校の卒業制作展や教員の仕事を見てみてください。

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