マサチューセッツ工科大学(MIT)とは?アート&デザイン世界6位の理由を解説

マサチューセッツ工科大学(MIT)とは?アート&デザイン世界6位の理由を解説
マサチューセッツ工科大学(MIT)とは?アート&デザイン世界6位の理由を解説

アートコンサルティング

こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんはマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology、通称MIT)という大学をご存知ですか。1861年にアメリカ・マサチューセッツ州ボストンで創立され、1916年に対岸のケンブリッジへ移転した、科学と工学の分野で世界最高峰とされる大学です。そんなMITが、実はQS世界大学ランキングのアート&デザイン部門2026年版で世界6位にランクインしていることは、意外に知られていません。

本記事では2026年10月時点で、MIT公式サイト(mit.edu、architecture.mit.edu、media.mit.edu、act.mit.edu、listart.mit.edu、mitadmissions.org、sfs.mit.edu)で確認できた情報だけを使って、工科大学がなぜアート&デザイン部門で評価されているのかという核心から、建築・計画学部の構成、MIT Media Labの実態、学費と学費援助、出願の進め方までをご紹介します。それでは早速いってみましょう。

マサチューセッツ工科大学の基本情報

正式名称Massachusetts Institute of Technology(マサチューセッツ工科大学、通称MIT)
創立1861年4月10日にマサチューセッツ州から勅許。最初の授業は1865年、ボストンのMercantile Buildingで開始
設置形態私立・非営利
所在地マサチューセッツ州ケンブリッジ(1916年にボストンから移転。キャンパス面積168エーカー)
モットーMens et Manus(ラテン語で「精神と手」の意)
学生数11,816名(学部4,561名・大学院7,255名)
教員数教授職1,087名(2025年10月時点)
学部専攻・副専攻数56専攻/62副専攻
QSランキングアート&デザイン部門2026年版で世界6位、総合スコア84.8
MITのグレート・ドーム、キリアン・コートから見た外観
キリアン・コートから見たグレート・ドーム(Building 10)/撮影:Peacearth(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

QSランキングの読み方は【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキングで詳しく解説しています。同じ記事で1位のロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)、2位のロンドン芸術大学(UAL)も紹介していますので、あわせてご覧ください。

なぜ工科大学がアート&デザインで世界6位なのか

MITと聞くと、理系の学生だけが集まる大学というイメージを持つ方が多いと思います。ではなぜ、美術・デザインの専門校がひしめくQSアート&デザイン部門で6位に入っているのでしょうか。

QSのアート&デザイン部門は、配点が特殊です。学術評判が90%、雇用者評判が10%を占め、論文の被引用数などの研究指標はいっさい使われていません。MITの2026年版のスコア内訳は、学術評判83.3に対して雇用者評判は98.3で、TOP10のなかで最も高い数字です。つまり企業の採用担当者から見たとき、MIT出身のアート・デザイン人材への評価は、専門校を含めても群を抜いているということになります。

この背景にあるのが、建築学科の長い歴史とMIT Media Labの存在です。建築(Course 4)は、土木工学・機械工学・冶金学と並ぶMIT創立時の4学科のひとつでした。MITが開学した1865年の秋、最初の建築学教授としてウィリアム・R・ウェア(William R. Ware)が着任します。ウェアはMITと民間の資金でヨーロッパの教育機関を視察して教材を集め、建築学科の公式資料によれば、実際の授業は1868年10月に始まりました。

「アメリカ合衆国で最初となる建築の課程は1868年10月に開講し、4名の学生が理学士の学位候補として在籍しました」

工学の大学でありながら、創立とほぼ同時に建築という設計分野を取り込んでいたわけです。そこから150年以上をかけて、建築・計画学部(School of Architecture and Planning、通称SA+P)という独自の学部が育っていきました。

もうひとつ見落とされがちなのが、MITでは専攻にかかわらず全学生が人文学・芸術・社会科学(HASS)の科目を履修するという制度です。MIT Bulletin(学修要覧)は「学士の学位を目指すすべての候補者は、人文学・芸術・社会科学の科目を最低8科目修了していなければならない」と定めています。この8科目は各分野に振り分けて履修する決まりで、美術・音楽・演劇などの芸術系科目もそこに含まれます。工学専攻の学生でも、在学中に必ず芸術の科目に触れる仕組みになっているわけです。

建築・計画学部(School of Architecture and Planning)

MIT公式サイトによると、SA+Pは次の4つの正式なユニットで構成されています。

ユニット内容
Department of Architecture(建築学科)建築・アート・デザインの学部および大学院課程。学位は7種類
Department of Urban Studies and Planning(DUSP)都市計画・地域計画
Program in Media Arts and Sciences(MAS)MIT Media Labの大学院プログラム
Art, Culture, and Technology(ACT)現代美術の実践と批評のプログラム

このほかに、Center for Real Estate(不動産)、MIT Media Lab、Morningside Academy for Design(MAD)、Norman B. Leventhal Center for Advanced Urbanism(都市研究)の4つの研究拠点がSA+Pの傘下にあります。「理系の大学の片隅にアートがある」のではなく、アート・デザイン・建築・都市計画が、ひとつの学部として正式に組織されているというのが実態です。

MITの建築・計画学部を構成する4つの正式なユニットとして、建築学科、都市計画学科、Media Labの大学院プログラムMAS、現代美術のプログラムACTを示した図。
図:建築・計画学部SA+Pを構成する4ユニット

2022年設立のMorningside Academy for Design(MAD)

MADは2022年3月14日、Morningside Foundation(T.H.Chan家の財団)からの1億ドルの寄付を受けて発足しました。公式サイトは自らをこう位置づけています。

「MIT MADは、マサチューセッツ工科大学とその外に向けて、デザインが持つ変革の力を称える学際的な拠点です」「MADは、イノベーションを育み、個人に力を与え、私たちの学び方をつくり変えるために存在しています」

寄付のうち6,000万ドルはデザイン活動を永続的に支える基金、4,000万ドルは立ち上げ費用と後述する建物の改修費に充てられました。工学・科学・経営・建築・都市計画・アートを横断してデザインの仕事を育てることが狙いで、フェローシップや教授職、学部生向けの機会などに使われています。

2026年8月、学部の新しい拠点がオープンしました

SA+Pにとって、2026年は節目の年になりました。マサチューセッツ通り134番地に建つMetropolitan Storage Warehouse(通称Met Warehouse、Building W41)の改修が完了し、2026年8月に建築・計画学部の新しい本拠地として開館したのです。

MITのメトロポリタン・ストレージ・ウェアハウス、Building W41の外観
Metropolitan Storage Warehouse(Building W41)。改修前の2017年に撮影されたもの。2026年8月にMIT建築・計画学部の新拠点として開館しました/撮影:Beyond My Ken(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

もとは1894年から1923年にかけて段階的に建てられた倉庫で、長さ500フィート(約152メートル)、5階建ての赤レンガの巨大な建物です。改修の設計はニューヨークのディラー・スコフィディオ+レンフロ(DS+R)が率いました。建築学科、DUSP、Leventhal Center、そしてMADが入り、スタジオ、教室、講堂、ギャラリー、共用空間が設けられています。

学部長のハシム・サルキス氏は、この移転についてMITニュースでこう語っています。

「マサチューセッツ工科大学にあるこの前衛的な建築学校が、歴史的な建物へ移り、それを未来のために手直しして使うというのは、とても良いメッセージを発していると思います」

建築学科(Department of Architecture)

建築学科はMITで最も学位の種類が多い学科のひとつで、MIT Bulletinによれば7つの学位課程を持っています。

区分学位
学部Bachelor of Science in Architecture(BSA、通称Course 4)
学部Bachelor of Science in Art and Design(BSAD、通称Course 4B)
大学院Master of Architecture(MArch)
大学院Master of Science in Architecture Studies(SMArchS)
大学院Master of Science in Building Technology(SMBT)
大学院Master of Science in Art, Culture, and Technology(SMACT)
大学院Doctor of Philosophy(PhD)

学部課程は2つに分かれます。ひとつは建築家を目指すBSA(Course 4)で、公式サイトは「建築、デザイン、建築技術、コンピュテーション、そして建築・アート・デザインの歴史・理論・批評のあいだにある、相互に結びついた関係」を重視すると説明しています。

もうひとつがBSAD(Course 4B)です。公式サイトは「アートとデザインの基本原理を学びながら、幅広い可能性のなかから専門領域を追求する、厳格でありながら柔軟なプログラム」と説明しています。カリキュラムはMITの建学の精神である「mens et manus(精神と手)」に深く根ざしており、プロダクトデザインからビジュアルコミュニケーション、情報デザイン、2D・3Dのアート実践まで、アートとデザインの多様な進路に備えることを目的としています。

学科はこのほかに、建築/デザイン/建築・美術・デザイン史/アート・カルチャー・テクノロジーの4つの副専攻と、3つのHASSコンセントレーションを用意しています。建築学科に進まない学生でも、副専攻やコンセントレーションの形でアートとデザインに踏み込めるということです。

ここで押さえておきたいのは、MITの学部出願はそもそも学科別ではないという点です。建築学科の公式ページははっきりとこう書いています。

「MITに出願する高校生は特定の専攻に出願するわけではなく、学部入試にポートフォリオは必要ありません」

そして専攻については、同じページが「1年目の終わりに、学部生は専攻を届け出ることが推奨されます」と説明しています。美術大学のように出願時点でポートフォリオの出来が合否を左右する仕組みとは、根本的に設計が違う大学だということです(出願の詳細は後述します)。

Art, Culture and Technology(ACT)プログラム

SA+Pのなかでもうひとつアートに直結しているのが、ACTプログラムです。公式サイトは自らをこう位置づけています。

「MITのArt, Culture, and Technology(ACT)プログラムは、建築・計画学部のなかにある、批評的なアート実践と言説のための学術プログラムであり拠点です」「ACTは伝統的な意味での美術学校ではありませんが(not an art school in the traditional sense)、このプログラムの使命は、批評的な芸術実践におけるリーダーシップを育てることです」

ACTの起源は、1967年にハンガリー出身の美術家ジョルジュ・ケペシュ(György Kepes)が設立したCenter for Advanced Visual Studies(CAVS)です。科学者・技術者と芸術家が共同で、都市規模の環境アートに取り組む拠点として始まりました。1979年にはMaster of Science in Visual Studies(SMVisS)の課程が設けられ、1989年に発足したVisual Arts Program(VAP)と2009年に統合して、現在のACTになっています。

大学院課程としてMaster of Science in Art, Culture and Technology(SMACT)を授与しており、修業年限は2年です。出願要件は後の章で詳しく触れますが、大学院は学部とは正反対に、ポートフォリオの提出が必須です。

MIT Media Lab

アート・デザインの観点でMITを語るうえで欠かせないのが、MIT Media Labです。公式サイトは自らをこう説明しています。

「40年にわたり、MIT Media Labは学術的な卓越性にしっかりと根ざした、躍動的で学際的な創造のサンドボックスであり続けてきました。数十の研究グループ、イニシアチブ、プログラム、センターの協働によって、イノベーションが生まれ続けています」

設立は1985年、ニコラス・ネグロポンテとMIT元学長のジェローム・B・ウィーズナーによるものです。ウィーズナーは1971年から1980年までMITの学長を務めた人物で、Media Labが開設された1985年の時点では学長職を退き、インスティテュート・プロフェッサーの地位に戻っていました。前身は1967年にネグロポンテがレオン・グロイサーとともに設立したArchitecture Machine Group(建築機械グループ)で、コンピューテーションと建築のあいだに生まれつつあった関係を研究する組織でした。

ラボが入る建物はウィーズナー・ビルディング(Building E15)といい、ウィーズナー夫妻の名を冠して1985年に献堂されました。設計を手がけたのはI.M.ペイ。実はペイ自身もMIT建築学科の1940年卒業生で、母校のキャンパスに自らの設計で建物を残した一人です。建物の内外は白いアルミパネルと濃色のリボンウィンドウで構成され、画家のケネス・ノーランド、彫刻家のスコット・バートン、環境芸術家のリチャード・フライシュナーがペイと協働して空間をつくりました。

MIT Media LabとList Visual Arts Centerが入るウィーズナー・ビルディングの外観
ウィーズナー・ビルディング(Building E15/I.M.ペイ設計、1985年)。白いアルミパネルの外壁と、ケネス・ノーランドによる色面が見えます。入口の看板と左の幟はList Visual Arts Center/撮影:Beyond My Ken(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

ラボはその後さらに広がります。隣接地に建てられたMedia Lab Complex(Building E14)は、プリツカー賞建築家の槇文彦(まき ふみひこ)率いるMaki and Associatesの設計による6階建ての建物です。2009年に竣工し、2010年3月5日に正式オープンしました。ウィーズナー・ビルディングとは複数の階でつながっています。

Media Labの大学院プログラムはProgram in Media Arts and Sciences(MAS)といい、修士(SM)から始まり、2年目以降に希望者がPhDへ進む仕組みです。公式サイトのFAQは重要な一言を添えています。

「Media Labは、大学院課程のみを持つ学術研究ラボです」

つまり、学部生がMASに直接入学することはできません。そのかわり、MIT公式のFAQはこう説明しています。

「MITの学部生は、MITのUROPプログラムの一環として、ラボの研究プロジェクトに取り組むことができます」

UROP(Undergraduate Research Opportunities Program、学部生研究機会プログラム)は、1969年に物理学者のマーガレット・マクヴィカーがわずか25名の学生とともに始めた制度です。現在では年間6,000件近いプロジェクトを支え、卒業する4年生の93%が在学中に少なくとも一度はUROPを経験しています。教員の58%も関わっており、MITの教育文化そのものといえる仕組みです。Media Labも例外ではなく、公式サイトによればMIT全体でも最大級のUROP受け入れ先で、各学期およそ150名の学部生が働いています。

What is the MIT Media Lab?(MIT Media Lab公式YouTube、2023年9月25日公開)

キャンパス

MITのキャンパスは、20世紀以降を代表する建築家たちの作品が並ぶことでも知られています。理工系の大学というイメージからすると意外かもしれませんが、建築・デザインを学ぶ場所としても見どころの多いキャンパスです。

ベーカー・ハウスは、フィンランドの建築家アルヴァ・アアルトが設計した学生寮です。建築学科の公式資料によれば、アアルトは1940年から41年にかけてMITで教えており、この建物は1949年に竣工しました。アメリカでアアルトが手がけた2作目の建物にあたります。チャールズ川に面した部屋をできるだけ多く確保するため、建物全体が蛇行するような曲線を描いているのが特徴です。

アルヴァ・アアルト設計のベーカー・ハウス、MITの学生寮
ベーカー・ハウス(アルヴァ・アアルト設計、1949年竣工)/撮影:Daderot(CC BY-SA 3.0)/出典:Wikimedia Commons

クレスギ講堂とMITチャペルは、フィンランド系アメリカ人建築家エーロ・サーリネンの設計です。サーリネンは1950年11月に設計者として指名され、2つの建物は1955年5月の献堂式でクレスギ財団からMITへ引き渡されました。クレスギ講堂は球体の8分の1を切り取ったような薄いコンクリートシェルの屋根が特徴で、屋根は銅板で葺かれ、三方はガラスのカーテンウォールで開かれています。内部には1,200席の主ホールと200席の小劇場があります。

エーロ・サーリネン設計のクレスギ講堂
クレスギ講堂(エーロ・サーリネン設計、1955年)。球体の8分の1を切り取った薄いコンクリートシェルの屋根/撮影:ajay_suresh(CC BY 4.0)/出典:Wikimedia Commons

向かいに建つMITチャペルは、高さ33フィート(約10メートル)の円筒形のレンガの建物で、まわりを浅い堀が取り囲んでいます。外から見ると壁面に窓はなく、代わりに基壇部に低いアーチ状の開口が設けられていて、そこから堀の水面に反射した光が内部へ入る仕組みです。サーリネンはこのチャペルを「自己完結した、内へ向かう雰囲気(self-contained, inward-feeling environment)」を感じさせるものとして構想したと書き残しています。屋上のアルミ製の尖塔と鐘塔は翌1956年に加えられたもので、彫刻家セオドア・ロザックの設計によります。

エーロ・サーリネン設計のMITチャペル、円筒形のレンガ建築と堀
MITチャペル(エーロ・サーリネン設計、1955年)。円筒形のレンガ壁、基壇部の低いアーチ開口と堀、屋上にセオドア・ロザックによる1956年の尖塔/撮影:Gunnar Klack(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

もう少し新しい建物では、レイ・アンド・マリア・スタタ・センターが目を引きます。設計はフランク・ゲーリーで、2004年に完成しました。戦時中に建てられた「仮設」のはずの木造建物Building 20の跡地に建てられ、傾いた塔や多角形の壁が折り重なる、研究棟のイメージを覆すような外観をしています。

フランク・ゲーリー設計のレイ・アンド・マリア・スタタ・センター
レイ・アンド・マリア・スタタ・センター(フランク・ゲーリー設計、2004年竣工)/撮影:Rhododendrites(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

学生寮のシモンズ・ホールは建築家スティーブン・ホールの設計で2002年に完成しました。床と壁の厚みを完全に同じにすることで、格子状のファサードが実現しています。表面には5,538個もの窓が散りばめられ、窓の内側は赤・黄・青に塗り分けられています。MIT List Visual Arts Centerの解説は、この小さな正方形の開口を「デジタル画面を横切るピクセルの体験を思わせる」と表現しています。

スティーブン・ホール設計のシモンズ・ホール、格子状のファサード
シモンズ・ホール(スティーブン・ホール設計、2002年竣工)/撮影:Gunnar Klack(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

キャンパスの2つの美術館・博物館

先ほど触れたウィーズナー・ビルディングの中にあるList Visual Arts Centerは、1985年10月2日に開館したMITの現代美術館です。公式サイトは「ギャラリーとすべてのプログラムは無料で、一般に開かれています」と明記しており、入館は無料。年に6〜9本の現代美術の企画展を開催しています。

さらにList Visual Arts Centerは、キャンパス各所に置かれた66点の恒久設置作品からなるパブリック・アート・コレクションの管理も担っています。ヘンリー・ムーア、アニッシュ・カプーア、蔡國強(ツァイ・グオチャン)、アレクサンダー・カルダーといった作家の彫刻が屋外に並び、近年はサラ・ジーの作品も加わりました。

なお、同じキャンパス内にはMIT Museumという別の博物館もあります。ホログラフィー、ロボット工学、AI、MITの歴史などを扱う展示施設で、List Visual Arts Centerとは違って有料です。

区分料金
一般(大人)20ドル
シニア(65歳以上)15ドル
大学生(学生証提示)10ドル
6〜18歳10ドル
5歳以下無料
MITの学生・教職員・卒業生(身分証提示)と同伴者1名無料

現代美術専門のList Visual Arts Centerと、科学技術史を扱うMIT Museumは、名前が似ていますが別の施設ですのでご注意ください。料金は変わることがありますので、訪問前に公式サイトでご確認ください。

学費と学費援助(2026-27年度)

以下は公式サイトの学費ページで確認した、2026-27年度の金額です。アメリカの私立大学らしく、学費そのものは高額ですが、MITは家計の状況に応じた給付型の学費援助が手厚いことでも知られています。

区分金額
授業料(年間、$33,360×2学期)$66,720
Student Life Fee$420
住居費(見積り)$14,090
食費(見積り)$8,104
教科書・教材費(見積り)$930
個人支出(見積り)$2,496
総額(Cost of Attendance)$92,760

ここで授業料の$66,720と、総額$92,760を混同しないようにご注意ください。大学に直接払うのは授業料とStudent Life Feeを合わせた$67,140の部分だけです。残りの住居費・食費・教科書代・個人支出は、大学が公開している生活費の見積りであり、大学への支払いではありません。アメリカの大学が出す「Cost of Attendance(就学費用)」はこの生活費込みの数字であることがほとんどですので、どちらを見ているのか毎回確かめると安全です。

世帯年収で決まる学費援助

MITが強調しているのは、この金額を実際に全額払う学生はむしろ少数だという点です。公式サイトは「申告された経済的必要性の100%を満たす支援を提供することを約束します」としたうえで、具体的な目安を次のように示しています。

世帯年収(通常の資産状況の場合)公式サイトの記載
10万ドル未満保護者の負担額は0ドル
20万ドル未満授業料は全額免除

さらに2026年卒業生の88%が、学生ローンを組まずに(debt-free)卒業しています。MIT奨学金を受け取った学生が実際に支払った額は、2024-25年度で年間の中央値が$10,268でした。$92,760という表示価格と、実際に支払われている中央値の差は、記憶しておく価値があると思います。

【重要】この学費援助は留学生にも適用されます

日本から進学を考える方にとって、ここがいちばん大事なところです。アメリカの大学の多くは、給付型の学費援助を自国の市民・永住者に限定しています。MITは、その数少ない例外のひとつです。

MIT Student Financial Servicesの公式ページは、MITが「学部生全員に対して、国内学生・留学生を問わず、ニードブラインドかつフルニードである」と明記しています。MIT Admissionsの学費ページも、MITを「アメリカ合衆国のなかで、アメリカ人学生にも留学生にもニードブラインドかつフルニードを実施している、ごく少数の教育機関のひとつ」と説明しています。

ニードブラインド(need-blind)とは、合否の判定に「その家庭が学費を払えるかどうか」をいっさい持ち込まないという方針です。フルニード(full need)は、認定された必要額の100%を援助でまかなうという方針を指します。つまり、日本からの出願者も前掲の世帯年収による学費援助の対象になります。「世界トップ水準の大学だから必ず高額を払う」とは限らない仕組みが、留学生にも開かれているということです。ただし金額は家計の状況によって変わり、別途の申請書類も必要です。検討の際は必ず公式サイトの試算ツールでご確認ください。

出願の進め方

MITの出願で最初に押さえておきたいのは、Common Appを使わず、MIT独自の出願ポータルを使うという点です。そして前述のとおり、学部出願は専攻別ではなく大学全体への出願で、ポートフォリオは必須ではありません。

区分出願締切結果通知テスト受験期限
Early Action11月1日12月中旬11月30日まで
Regular Action1月4日3月中旬12月31日まで

学部の出願要件

MIT Admissionsの公式ページによれば、必要なものは次のとおりです。

項目内容
出願フォームMIT出願ポータル上の独自フォーム(経歴・エッセイ・課外活動・学業・推薦状・テストスコア)
学校報告書と成績証明書在籍したすべての高校・大学の成績証明書
推薦状教員から2通
標準化テストSATまたはACTが必須
出願料75ドル(免除制度あり)

推薦状について公式サイトは「数学または理科の教員から1通、人文・社会科学・語学の教員から1通をお勧めします」と書いています。必須条件としてではなく、推奨という形で示されている点が特徴です。標準化テストは「SATまたはACTを必須とします」と明記されており、SATの筆記エッセイやACTのライティング・理科セクションは不要です。

英語能力試験について、公式サイトの表現は「必須」ではなく「強く推奨」です。対象は、英語を母語としない受験者のうち英語を使い始めて5年未満の方、または家庭や学校で英語を話していない方とされています。Regular Actionの受験者は1月31日までに受験を終える必要があります。

試験最低スコア推奨スコア
TOEFL iBT(2026年1月20日以前)9090以上
TOEFL iBT(2026年1月21日以降)5.0記載なし
IELTS7.07.5
Duolingo English Test120125
Cambridge English(C1/C2)185190
PTE Academic6570

TOEFLは2026年1月21日から1〜6の尺度(0.5刻み)に変わるため、新形式での最低スコアは5.0という表記になっています。古い90点とは別の尺度ですので、受験時期によって見る数字が変わる点にご注意ください。

任意のクリエイティブ・ポートフォリオ

アート・デザインに関心がある受験者にとって見逃せないのが、任意のクリエイティブ・ポートフォリオの制度です。MITは4種類を用意しています。

種類対象
Visual Art & Architecture Portfolio造形・デザイン・建築の分野で突出した創作の才能を持つ受験者
Maker Portfolio自分で設計し、自分でつくった、本格的で独創的かつ技術的に創造性のあるエンジニアリング・工作のプロジェクト
Music & Theater Arts PortfolioMITでも演奏・上演を続けたい実演者
Research Supplement高校の授業外で本格的な研究に取り組んだ受験者

美術・デザイン志望の方が中心に見ることになるのは、最初のVisual Art & Architecture Portfolioです。提出はSlideRoom経由で最大10点。各作品にタイトル・素材(メディウム)・完成年・そのコンセプトや着想の簡単な説明を添えます。デザイン、ドローイング、絵画、デジタルメディア、写真、彫刻、建築作品まで、あらゆる種類のメディアアートが対象です。ものづくり寄りの方にはMaker Portfolioという選択肢もあります。提出料は1件10ドルで、免除申請もできます。

公式サイトはこの制度について、次のように釘を刺しています。

「クリエイティブ・ポートフォリオは本当に任意のものであり、あなたにとって意味があり、かつMITへの出願に関係のある作品を収めている場合にのみ提出してください」

合否を左右する必須書類ではなく、建築・デザイン志望であることを伝える補足材料という位置づけです。そして繰り返しになりますが、専攻としてBSA・BSADを選ぶかどうかは、入学後1年目の終わりに届け出ることになります。高校生の時点で進路を絞り切っていなくても出願できる設計だといえます。

大学院(ACT・Media Lab)の出願要件

アート・デザイン分野で大学院から進学する場合は、学部とは出願の仕組みが大きく変わります。

項目ACT(SMACT)Media Lab(MAS)
修業年限2年修士(SM)から、2年目以降に希望者がPhDへ
ポートフォリオ必須電子ポートフォリオが必須
推薦状2〜3通3通
志望理由書必要必要(冒頭に志望する研究グループ・教員3つを記載)
成績証明書非公式のもので可必要
GRE不要不要
締切1月7日前後(翌年9月入学)12月15日(9月15日受付開始)
出願料公式サイトで要確認90ドル

ACTのポートフォリオについて、公式サイトは「最近の創作活動の証拠を収めてください。個人の作品でも、学業上の作品でも、職業上の作品でもかまいません。共同制作のプロジェクトはその旨を示し、あなたの役割を明確にしてください」と求めています。

学部とは逆に、大学院からの出願では作品そのものが選考の中心になるというのが実態です。MITのアート・デザイン分野を目指す場合、学部で入って1年目の終わりにBSADを選ぶ道と、他大学で学んだあと大学院のACT・Media Labへ進む道の、2つの入り口があると考えると整理しやすいと思います。

MITの大学院ACTとMedia Labの出願要件を、修業年限、推薦状、志望理由書、GRE、締切の5項目で比べた図。
図:大学院の出願要件 ACTとMedia Lab

QS世界大学ランキング 2026年版で世界6位

MITは、QS世界大学ランキングのアート&デザイン部門2026年版で世界6位(総合スコア84.8)にランクインしました。前年の5位から1つ順位を下げています。

順位大学総合スコア学術評判雇用者評判
1Royal College of Art98.5100.085.4
5Pratt Institute87.588.974.6
6Massachusetts Institute of Technology84.883.398.3
7Politecnico di Milano83.382.887.4

この部門は学術評判が9割を占めるため、研究者からの評価が高い専門校が上位に並びます。MITの学術評判は83.3で1位RCA(100.0)には及びませんが、雇用者評判98.3はTOP10のなかで最も高い数字です。2位のロンドン芸術大学(89.4)、7位のミラノ工科大学(87.4)と比べても頭ひとつ抜けています。順位の読み方や他の大学との比較は、QS世界大学ランキング アート&デザイン部門の解説記事で詳しく取り上げています。

主な卒業生

MIT公式サイトおよび建築学科の公式資料で確認できた、アート・デザイン・建築分野にゆかりのある卒業生を紹介します。

氏名学位・卒業年代表的な功績
キャス・ギルバート(Cass Gilbert)MIT建築学科 1880年建築家。ニューヨークのウールワース・ビル(1908〜13年)、ワシントンD.C.のアメリカ合衆国最高裁判所庁舎(1935年完成)の設計者
レイモンド・フッド(Raymond Hood)MIT建築学科 1903年建築家。1922年のシカゴ・トリビューン本社ビル国際設計競技に優勝。ニューヨークのロックフェラー・センターでは主任設計者を務めた
ルイス・スキッドモア(Louis Skidmore)/ジョン・メリル(John Merrill)MIT建築学科 1921年/1923年世界有数の設計事務所SOM(Skidmore, Owings & Merrill)の創立者
ゴードン・バンシャフト(Gordon Bunshaft)MIT建築学科 1933年建築家。SOMに所属し、ニューヨークのレバー・ハウス(1951〜52年)などを手がけた
I.M.ペイ(I. M. Pei)建築学士(B.Arch.) 1940年建築家。ルーヴル美術館のガラスのピラミッドなどで知られる。MITキャンパスにはGreen Building(1962年)、Dreyfus Building(1967年)、Landau Building(1976年)、Wiesner Building(1985年)の4棟を残している
チャールズ・コレア(Charles Correa)建築修士(MArch) 1955年インドの建築家・都市計画家。アーメダバードのガンディー記念博物館、ムンバイのカンチャンジュンガ・アパートメント、リスボンのシャンパリマウ財団など。2013年に英国王立建築家協会のロイヤル・ゴールド・メダル受賞。MITのBrain and Cognitive Sciences Complexも設計した
ニコラス・ネグロポンテ(Nicholas Negroponte)建築修士 1966年MIT Media Labの共同創設者であり初代ディレクター。発展途上国への教育支援活動One Laptop per Childの創設者
ジョン・マエダ(John Maeda)MITで学士・修士を取得デザイナー・コンピューターサイエンティスト。MIT Media Labの研究担当副所長、Media Arts and Sciences教授を務め、2008年にロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)学長に就任
アリア・ファリド(Alia Farid)SMVisS(視覚研究修士) 2008年美術家。クウェートとプエルトリコを拠点に、植民地主義や非公式なネットワークを主題とした彫刻・映像作品を制作。2023年にヘニー・オンスタ美術センターのLise Wilhelmsen Art Award(賞金10万ドル)を受賞

I.M.ペイについては、MIT公式ニュースの追悼記事で、建築・計画学部長ハシム・サルキス氏が次のように評しています。

「ペイは巨人でした。その膨大で多様な仕事は、建築が負う公共的な責任に一貫して応え、文化施設も公共施設も住宅も等しく、近代の生活のモニュメントへと高めました」

学び舎に自らの設計で建物を残すという意味でも、MITとアート・デザインの関係を象徴する卒業生だといえます。なお、アリア・ファリドのSMVisS(Master of Science in Visual Studies)は1979年にMITが設けた視覚研究の修士課程で、現在のSMACTにつながる系譜にあたります。

まとめ

いかがだったでしょうか。マサチューセッツ工科大学について、アート&デザインという切り口から見てきました。要点は次の6つです。

  • QS世界大学ランキングのアート&デザイン部門2026年版で世界6位(総合スコア84.8)。配点の90%を占める学術評判では83.3ですが、雇用者評判は98.3でTOP10最高です
  • 建築はMIT創立時の4学科のひとつで、アメリカ最初の建築課程が1868年10月に開講しました。現在の建築・計画学部(SA+P)は、建築学科・都市計画学科・Media Arts and Sciences・ACTの4ユニットで構成されています
  • SA+Pは2026年8月、築100年の倉庫を改修したMet Warehouseへ移りました。MIT Media Labは1985年設立の大学院のみの研究ラボで、学部生はUROPを通じて研究に参加できます
  • 2026-27年度の学費は授業料が年間$66,720、生活費込みの総額が$92,760です。この2つを混同しないことが大切です
  • 世帯年収20万ドル未満なら授業料は全額免除、10万ドル未満なら保護者負担は0ドル。そしてこの学費援助は留学生にも適用されます。MITはニードブラインドかつフルニードを国内学生・留学生の双方に適用している、アメリカでも数少ない大学です
  • 学部出願にポートフォリオは必須ではなく、専攻は入学後1年目の終わりに届け出ます。任意のクリエイティブ・ポートフォリオ(最大10点)は別に用意されています。大学院のACT・Media Labはポートフォリオが必須で、学部とは選考の仕組みが大きく異なります
項目マサチューセッツ工科大学(MIT)
創立1861年(ボストン。1916年にケンブリッジへ移転)
学生数11,816名
QSアート&デザイン部門2026年版世界6位/総合84.8
学部授業料(2026-27年度)年間$66,720(生活費込みの総額は$92,760)
学費援助の留学生適用あり(ニードブラインド・フルニード)

学費も出願の要件も年度によって変わります。検討を具体的に進める段階では、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。

Euphoric " " の視点

QSのアート&デザイン部門で、MITは世界6位です。順位だけ見ると、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートやロンドン芸術大学の下にいます。

ところが内訳を見ると、様子が違います。研究者からの評判では上位校に及びませんが、採用する側からの評判は98.3で、TOP10のどこよりも高い。つまり、研究の世界での名声より先に、仕事の現場での評価がある学校です。

入り方にも、それが表れています。学部の出願にポートフォリオは要りません。専攻も、入ってから決めます。何者かであることを先に求めず、入ってから決めればよい、という設計です。美大の入試とは考え方が逆と言ってもいいでしょう。

作る仕事に進みたい人にとって、道は一本ではありません。デッサンで入って4年間作り続ける道もあれば、工学から入って途中でデザインに寄っていく道もある。どちらが正しいという話ではなく、自分がどちらで伸びるかという話です。選択肢が複数あることを知っているだけで、進路の考え方は変わります。

ポートフォリオの作り方に不安がある方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。

もっと知るには

本記事の情報は、マサチューセッツ工科大学の公式発表をもとに確認しています。学費・出願要件は年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。

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