【徹底解説】宮島達男とは?光る数字で時間を表す美術家の人生と作品を解説!

【徹底解説】宮島達男とは?光る数字で時間を表す美術家の人生と作品を解説!

アートコンシェルジュ|最初の一枚から、一生のコレクションまで。無料で相談する

こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんは宮島達男という人物をご存知ですか?

暗い空間のなかで、LEDの小さなデジタル数字が光り、1から9までを数えつづけます。そんな作品で知られる、日本の現代美術家です。千葉市美術館の資料によると、これまでに30か国250か所以上で作品を発表してきました。

数字が静かに変わっていくだけなのに、見ていると、時間そのものを目の前にしているような気持ちになります。その背景には、本人が1987年に掲げた三つの考え方があります。

本記事ではそんな宮島達男の人生と作品についてご紹介します。作品の画像は、作家の公式サイトの掲載画像を出典を明記して引用し、図解と表、外観写真、作家の公式チャンネルの動画、公式に確認できた情報とあわせて解説します。なお、現在の活動に関する記述は2026年10月時点の情報です。

宮島達男って?

基本情報

名前宮島 達男(みやじま たつお/Tatsuo Miyajima)
生年(存命)1957年生まれ(2026年10月時点で存命)。月日は公式資料で確認できなかったため記載しません
国籍・出身日本/東京都
学歴東京藝術大学美術学部油画専攻を1984年に卒業、同大学院を1986年に修了。1998年にロンドン芸術大学(University of the Arts London)から名誉博士号
分野現代美術(LEDのデジタル・カウンターを使ったインスタレーションや彫刻、パフォーマンス、アートと社会をつなぐプロジェクト)
傾向数字が1から9を繰り返し、0を表示しない作品。「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」という三つのコンセプトに基づく
師事した人物・影響を受けた人物恩師に榎倉康二(千葉市美術館の資料)。仏教思想や東洋哲学、物理学、数学なども作品に関わると同館は紹介しています

同じ時代に国際的に活躍した日本の作家や、宮島の展覧会に関わる作家については、以下の記事でもご紹介しています。あわせてご覧ください。

【徹底解説】李禹煥(リ・ウファン)とは?「もの派」とは?

河原温とは?日付絵画(Todayシリーズ)と生涯・代表作をわかりやすく解説

【徹底解説】奈良美智とは?あおもり犬で知られる美術家の人生と作品を解説!

宮島達男の歩みを示す流れ図。1957年に東京で生まれ、東京藝術大学で学び、1987年に三つのコンセプトを発表し、1988年にヴェネチアで注目され、2020年に千葉市美術館で大型個展を開いた流れを示す。
図:宮島達男の歩み

どんな作家として知られているのか

宮島達男の作品でまず目に入るのは、赤や緑、青などに光る小さな数字です。千葉市美術館の資料によると、作品のモチーフであるデジタル数字は、1から9の変化を永遠に繰り返し、0は表示されません。同館の学芸員は、1から9まで(または9から1まで)休みなく数える、と説明しています。

ここで言葉を補っておきます。デジタル・カウンターとは、数字を表示する電子の部品のことです。宮島の作品では、これをLED(発光ダイオード)で光らせています。0を出さずに画面が暗くなることについて、森美術館の展覧会図録の論考は、死を示す意図的な選択だと説明しています。

この作品群を支えているのが、1987年に発表された三つのコンセプトです。「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」。千葉市美術館の資料は、社会情勢を反映し、芸術や物理学、数学、仏教思想、東洋哲学など複数のジャンルを含む作品だと紹介しています。

作家の公式サイトには、この三つの考え方が英語で書かれています。変化はあらゆるものに起こるので、芸術もそれを受け入れて表すべきだという考え。ものごとは単独では成り立たないので、芸術は「アート界」に閉じこもらず世界と関わるという考え。そして、すべては終わりなく続いていく、という考えです。

数字の作品が、国や文化を越えて受け入れられてきた理由を、千葉市美術館の学芸員は次のように整理しています。世界のさまざまな地域で数字が使われているため、国籍を問わず多くの人に受け入れられ、さまざまな解釈の対象になってきた、という説明です。

宮島達男の三つのコンセプトを並べた図。それは変化し続ける、それはあらゆるものと関係を結ぶ、それは永遠に続く、の三つを、それぞれ短い説明つきの三枚のカードで示している。
図:宮島達男の三つのコンセプト

では、宮島達男はどのような道を歩んで、この考え方にたどり着いたのでしょうか。次の章で、年代を追ってみていきます。

経歴と作品

作品の画像は、作家の公式サイトに掲載されているものを、出典を明記して引用しています。作品の全体像は、各館や作家の公式サイトでもご確認ください。

東京藝術大学で学び、街で体を使う(1980年代前半)

宮島達男は1957年、東京都に生まれました。作家の公式な経歴によると、1984年に東京藝術大学の美術学部(油画)を卒業し、1986年に同大学院を修了しています。

千葉市美術館の資料によると、初期の活動を代表するのが、学生だった1980年代前半に、自然のなかや街中で行ったパフォーマンス『NA. AR.』です。「Nature and Artificiality(自然と人為)」の略で、叫ぶ、寝転がるといった外の環境への行為を重ねました。同館は、世界と自分の関係を探る試みだったと説明しています。

LEDのデジタル・カウンターとの出会いも、この頃です。千葉市美術館の学芸員の論考によると、宮島は1980年代初めに、東京の秋葉原でデジタル・カウンターに出会い、点滅する数字を見て、これは生きているようだと感じたといいます。そのカウンターを初めて使った作品が、1983年の『Human Stone』です。奈良県の益田岩船を実際に見た経験をもとに、石のような彫刻にLEDを埋め込みました。

のちの数字の作品とは、ずいぶん違う出発点に見えます。ただ、自分の体で場所に働きかけた経験と、電子の数字との出会いが、のちの作品につながっていくと考えます。

1987年、三つのコンセプトを発表する

森美術館の展覧会図録に収められた論考によると、宮島は東京のルナミ・ギャラリー(Lunami Gallery)での個展の準備のなかで、三つのコンセプトをまとめ、それを表す新作を作りました。千葉市美術館の資料も、1987年にこの三つを発表したと記しています。

『30万年の時計』(1987年)

「それは永遠に続く」を表すために作られた作品です。同じ論考によると、14個のカウンターが0.1秒ごとに数字を変え、3,000世紀以上の時間を数えます。森美術館が公開する作品情報では、大きさは縦32センチ、横21センチ、奥行き4.5センチです。手のひらより少し大きいほどの箱に、気の遠くなるような時間が入っていることになります。

同じ年には、もう一つの考え方に結びつく作品も作られました。論考によると、「それは変化し続ける」という発想は、小さな液晶テレビの映像が電気の流れに応じて変わりつづけることから生まれたといいます。作品の大きさが小さくても、考え方は大きい。そこが、初期作品の面白さだと考えます。

1988年『Sea of Time』、ヴェネチアで国際デビュー

三つのコンセプトは、1988年の『Sea of Time』でひとつに合わさりました。森美術館の論考によると、この作品は東京の原美術館で開かれた「第8回ハラ アニュアル」で、はじめて発表されました。床に272個のLEDが並び、それぞれが自分の速さで数字を変えながら、互いに関わり合う作品です。

床一面に小さな赤いLEDカウンターが点々と置かれ、細い電線でつながれた展示室。右奥の扉から黄色い光が差し込んでいる。
宮島達男『Sea of Time』(1988年)、発光ダイオード(LED)・IC・電線、700×700×2.5cm、原美術館(東京)での展示。画像出典:宮島達男 公式サイト(引用)。撮影:Tadashi Hirose。Courtesy The Hara Museum of Contemporary Art。© Tatsuo Miyajima

同じ年、当時、名古屋のICA(Institute of Contemporary Arts, Nagoya)の館長だった南條史生の推薦で、宮島は第43回ヴェネチア・ビエンナーレの、若手作家の部門「アペルト」に招かれました。ここでは300個のLEDによる版を発表しています。論考によると、英国の新聞『フィナンシャル・タイムズ』がこの部門で言及した3人のなかに宮島が入り、本人の話では、海外からの展覧会の誘いが200件を超えました。これが国際的な活動の入口になり、1990年代の欧米での仕事の多くは『Sea of Time』から始まったと、本人が語っています。

宮島達男の数字作品に共通するきまりの循環図。中心のデジタル・カウンターを、1から9を繰り返す、0は表示しない、ひとつずつ違う速さ、LEDの光、見る人との関係、場所ごとの展示が囲む。
図:数字の作品に共通するきまり

1990年代、海外の美術館へ

ヴェネチアのあと、宮島の活動は海外へ広がりました。作家の公式な経歴を年ごとに見ると、次のような流れです。1990年にニューヨーク、1990年から1991年にベルリン(ドイツ学術交流会DAADの奨学)、1993年にパリ(カルティエ現代美術財団の助成)と、各地に滞在して制作しています。

展覧会も続きました。1993年にはチューリッヒのクンストハレで『Running Time』、1995年にはロンドンのグリニッジにあるクイーンズ・ハウスで『Running Time – Clear Zero』を開いています。『Running Time』は、LEDをつけた無数のおもちゃの車が走りまわる作品で、タイトルにも「時間」が入っています。1996年にはパリのカルティエ現代美術財団で個展を開き、1997年にはロンドンのヘイワード・ギャラリーで『Big Time』を開催しています。1999年には、第48回ヴェネチア・ビエンナーレで日本館の作家をつとめました。

1995年は、もう一つの転機でした。千葉市美術館の資料は、グリニッジを訪れたことを境に、宮島が1995年からパフォーマンスを再開した、と説明しています。1980年代の『NA. AR.』から、約10年を置いての再開です。

またこの頃、青いLEDを使った『Time in Blue』シリーズが始まりました(1996年から)。論考によると、青色LEDが量産されはじめた1995年の直後に、宮島はこれを作品に取り入れています。新しい技術に飛びつきすぎず、使うべき場面では素早く使う。その距離感は、のちの作品にも見えると考えます。

『地の天』(1996年)と千葉市美術館

『地の天』(1996年)

千葉市美術館に収蔵されている大型のインスタレーションです。同館の資料によると、1996年の開館記念展「Tranquility-静謐」に出品されました。実用化されて間もない青色LEDを使った作品です。

千葉市の発表資料によると、直径約10メートルの宇宙のような円形のなかに、1から9までの数字が変化を繰り返すLEDが、星座のように浮かび上がります。2024年度には、197個すべてのLEDを交換する修復が完了しました。この作品は、2026年9月16日から11月23日までの「千葉開府900年記念特別展 月と星と-美術がつなぐとき」で、修復後初めて公開されています(2026年10月時点)。

作品が約30年のあいだ、光り続けてきたこと。そして、部品を替えながら、これからも続けていけるように手入れされていること。これは「それは永遠に続く」という言葉を、美術館が引き受けて形にしているようにも見えます。

千葉市美術館が入る建物(千葉市中央区役所との複合施設)の外観
千葉市美術館が入る建物(中央区役所との複合施設)の外観(作品は写っていません)。撮影:掬茶/CC BY-SA 3.0/出典:Wikimedia Commons

1998年、直島『Sea of Time ’98』

家プロジェクト「角屋」(1998年)

香川県の直島では、民家などを改修して作品にする「家プロジェクト」が、本村地区で続けられています。ベネッセアートサイト直島の公式サイトによると、プロジェクトは1998年の「角屋」に始まり、2026年10月時点で7軒が公開されています。

「角屋」は家プロジェクトの第1弾として完成しました。約200年前に建てられた家屋を、漆喰仕上げ、焼板、本瓦を使った元の姿に修復したものです。公式サイトは、宮島の作品『Sea of Time ’98』では直島町の人々が制作に参加していて、現代アートが地域や島民の生活に関わるきっかけになった作品だと説明しています。

暗い和室の水を張った床に、赤や緑のLEDの数字が無数に光る。右手の障子窓から青白い光が入り、床の水面に映っている。
宮島達男『Sea of Time ’98』(1998年)、防水加工LED・IC・電線・水・FRP製の水盤、486×577×15cm、家プロジェクト「角屋」(直島)。画像出典:宮島達男 公式サイト(引用)。撮影:Norihiro Ueno。Courtesy Benesse Art Site Naoshima, Art Consulting Firm。© Tatsuo Miyajima

同じ公式サイトの作品一覧には、宮島の作品として『Sea of Time ’98』(1998年/2018年)のほか、『Naoshima’s Counter Window』(1998年)、『Changing Landscape』も挙がっています。

作品を作家ひとりで完成させず、地域の人が加わることで完成させる。のちに宮島が掲げる「Art in You」という言葉の、早い時期の実践として読むこともできると考えます。

この年、宮島はロンドン芸術大学から名誉博士号も受けています。

2000年代、「Art in You」と大学での仕事

2000年代に入ると、宮島は「Art in You(アート・イン・ユー)」を提唱しはじめました。千葉市美術館の資料によると、「アートはあなたの中にある」と訳され、誰もが創造性を生み出すと信じる、独自の芸術思想です。2008年には、茨城県の水戸芸術館(ART TOWER MITO)で、『Art in You』の名を冠した個展を開いています。

作家の公式サイトには、この考えを説明した文章が載っています。そのなかで宮島は、芸術はアーティストだけで作るものではなく、見る人がいて初めて芸術になる、と書いています。アーティストと鑑賞者のあいだに、はっきりした線は引けない、という考えです。

この時期には、大学での役割も担いました。作家の公式な経歴によると、2006年から2016年まで東北芸術工科大学の副学長を、2012年から2016年まで京都造形芸術大学(千葉市美術館の資料の表記)の副学長を務めています。

『Floating Time』(2000年)

作家の公式サイトによると、2000年には東京オペラシティ アートギャラリーで『Floating Time V1-00』を発表しています。コンピューターと映写機が、床のスクリーンにデジタルの数字を映し、数字はそれぞれ違う速さで、ばらばらに漂います。来場者は、時間が浮かんでいる展示室のなかを歩くことになります。公式サイトは、この体験を通して、見る人と作品がそれぞれ抱える「時間」と「空間」が重なり合う、と説明しています。

鑑賞者が部屋のなかに入ることで、作品が完成する。この作品は、「それはあらゆるものと関係を結ぶ」という考えを、体で理解させてくれる例だと考えます。

青い光に満ちた展示室で、二人の来場者が床に映し出された光の数字を見下ろして立っている。
宮島達男『Floating Time V1-00』(2000年)、コンピューターグラフィックス・PC・プロジェクター、580×600×450cm、東京オペラシティ アートギャラリーでの展示。画像出典:宮島達男 公式サイト(引用)。撮影:Norihiro Ueno。Courtesy Tokyo Opera City Art Gallery。© Tatsuo Miyajima

2016年『Time Waterfall』、高いビルの壁に数字が流れる

宮島はLEDの数字を、建物の外壁や、水、空のような自然の姿にも重ねてきました。千葉市美術館の学芸員の論考は、海(『Sea of Time』、1988年)、滝(『Time Waterfall』、2016年)、空(『Sky of Time』、2019年)、天(『地の天』、1996年)を再現する試みとして、これらを並べています。

『Time Waterfall』(2016年)

作家の公式サイトによると、2016年のアート・バーゼル香港に合わせて、香港の九龍側の海沿いにある高さ490メートルのインターナショナル・コマース・センター(International Commerce Centre、ICC)の外壁全体に、この作品が映し出されました。大きさの違う数字が、それぞれ違う速さで建物の表面を流れ落ちます。作家は、これを人ひとりひとりの個性と、時間の多重性を表すものとして説明しています。

その後、LEDパネルによる『Time Waterfall』のシリーズも作られました。作家の公式サイトは、2018年に『Time Waterfall – panel #8』が大英博物館の三菱商事日本ギャラリーの所蔵に加わり、古い陶器や甲冑と並べて、現代日本の文化を代表する作品として展示されていると発表しています(2018年10月の発表。現在の展示状況は同館の公式サイトで確認してください)。同じ2018年には、大阪のパナソニック ミュージアムが開館し、『Time Waterfall – panel #2』が創業100周年の記念碑として常設されたとも紹介されています。

宮島達男の『Sea of Time』(1988年)と『Time Waterfall』(2016年)を比べた表。発表の場、見せ方、数字の動きを、それぞれ並べて対比している。
図:『Sea of Time』と『Time Waterfall』

2020年、千葉市美術館「クロニクル」と芸術選奨

「宮島達男 クロニクル 1995-2020」展(2020年)

2020年9月19日から12月13日まで、千葉市美術館で、宮島達男の大規模な個展が開かれました。千葉市美術館の拡張リニューアルオープンと、開館25周年を記念する展覧会で、首都圏の美術館では12年ぶりの大規模個展でした。同館の資料によると、約40点の作品を展示し、1995年から2020年までの25年間をたどる構成でした。

この展覧会には、宮島が近年構想してきた「不確定性」をテーマにした2020年の最新作や、海外でしか発表されていなかった作品の、日本初公開も含まれていました。

『Changing Time / Changing Art』(2020年)

千葉市美術館のコレクションと対話するこの作品では、河原温、菅井汲、杉本博司、中西夏之、李禹煥という、宮島が長く敬愛してきた5人の作家の作品が選ばれました。論考によると、これらの作品には、無数の数字を切り抜いた鏡のシートが重ねられ、鑑賞者の姿も鏡に映り込みます。作品と見る人とが、ひとつの像のなかに入る仕組みです。

美術館の展示室の壁一面に、数字を切り抜いた鏡のシートが貼られ、白い数字と室内の様子が重なって映り込んでいる。床は木の寄せ木張り。
宮島達男『Changing Time / Changing Art』(2020年)、鏡面シート、239.8×1640cm、千葉市美術館での展示。千葉市美術館のコレクションとの協働作品。画像出典:宮島達男 公式サイト(引用)。撮影:Nobutada Omote。© Tatsuo Miyajima
千葉市美術館の収蔵作品との対話を示す循環図。中心にChanging Time / Changing Artを置き、河原温、菅井汲、杉本博司、中西夏之、李禹煥の五人を囲んで示している。
図:千葉市美術館の収蔵作家5人との対話

この年、森美術館の「STARS展:現代美術のスターたち 日本から世界へ」(2020年7月31日〜2021年1月3日)にも出品しています。草間彌生、李禹煥、宮島達男、村上隆、奈良美智、杉本博司の6人を紹介する展覧会で、宮島の初期作品『30万年の時計』(1987年)が公開されました。

そして文化庁は、令和2年度(第71回)の芸術選奨文部科学大臣賞を、現代美術家の宮島達男に贈ると決定しました。授賞の対象は、「宮島達男 クロニクル 1995-2020」展ほかの成果です。

2021年以降、ファッションや音の作品へ

宮島の作品は、美術館の外にも広がっています。作家の公式サイトによると、A-POC ABLE ISSEY MIYAKEとの共同プロジェクト「TYPE-II Tatsuo Miyajima project」では、宮島のデジタル数字を、京都の職人による高度な手捺染の技法で再構成した新しいシリーズが発表されました。数字が、光る部品から、布の上の模様に移った例です。

2025年には、大阪・関西万博のBetter Co-Beingパビリオンで、音のインスタレーション『Counter Voice Network – Expo』が展示されました。会期は2025年4月13日から10月13日まで。パビリオンへの道に沿って30台のスピーカーが並び、さまざまな言語のカウントダウンの声が交互に流れます。作家の公式サイトは、世界の言語や文化の多様性をたたえる作品だと説明しています。

Counter Voice Network – Expo 2025(Tatsuo Miyajima Studio 公式YouTube、2025年4月公開)

2024年から2026年、国内外の展覧会で

最近の動きも見ておきます。作家の公式サイトとCV(経歴一覧)によると、2024年11月28日から2025年6月1日まで、ロンドンのテート・モダンで開かれた「Electric Dreams: Art and Technology Before the Internet」に、『Lattice B』(1990年)と『Opposite Circle』(1991年)が出品されました。テートの公式サイトの作品検索でも、この2点が宮島の作品として確認できます。

2025年には、東京の国立新美術館で開かれた「Prism of the Real: Making Art in Japan 1989-2010」(9月3日から12月8日)に、『133651』シリーズの『Slash』が出品されました。作家の公式サイトによると、このシリーズは1990年に始まり、LEDを10個、横一列に並べます。それぞれが最大5つの別のLEDとつながり、133,651通りの組み合わせが生まれます。赤いLEDが基本で、7の倍数だけ緑色のLEDで示す、という決まりです。

2026年10月時点でも展覧会は続いています。作家の公式サイトによると、イギリス・ダラムのThe Light Durhamで「Victory Over the Sun: Encounters with Light」が2026年8月22日から2027年1月17日まで開かれ、『Floating Time V2-C-12』が出品されています。高松市美術館では、2026年10月10日から11月29日まで開かれる「Art that Moves! the Art of Light, Sound and Movement」展に、同館の収蔵作品『Counter Line No.1』が展示されています。

数字はいまも、世界のあちこちの場所で、それぞれの速さで光っています。

宮島達男の作品を見るときの三つのヒント

ここまでの資料をもとに、これから作品を見る方に向けて、私なりの見方のヒントを三つ挙げます。いずれも書き手の意見であり、正解を決めるものではありません。

一つ目は、数字の「速さ」に目を向けることです。『Sea of Time』も『Floating Time』も『Time Waterfall』も、数字ごとに速さが違います。ひとつの数字だけを追って、しばらく見つめてみると、自分の時間の感じ方が少し変わるかもしれません。

二つ目は、見ている自分も作品の一部だと意識することです。『Changing Time / Changing Art』では、鏡に鑑賞者の姿が映ります。『Floating Time』では、歩く人がいることで時間と空間が重なります。宮島が「アートはあなたの中にある」と言うとき、見る人はただの観客ではありません。

三つ目は、作品が置かれた場所とセットで考えることです。直島の古い民家、高層ビルの壁、美術館の円形の展示室。数字は同じでも、場所によって見え方がまったく違います。そのため、同じ作家の作品を別の場所で見直すことにも、意味があると考えます。

年表で整理する

ここまでの出来事を、公式の資料で確認できた範囲で年表にまとめます。

年できごと確認した出典
1957年東京に生まれる作家公式サイト(経歴)
1980年代前半東京藝術大学在学中にパフォーマンス『NA. AR.』を行う千葉市美術館
1984年東京藝術大学美術学部(油画)を卒業作家公式サイト(経歴)
1986年同大学院を修了作家公式サイト(経歴)
1987年三つのコンセプトを発表。『30万年の時計』を制作千葉市美術館、森美術館
1988年『Sea of Time』を発表。ヴェネチア・ビエンナーレ(アペルト)に出品森美術館、千葉市美術館
1990年〜1991年ベルリンに滞在(DAAD)作家公式サイト(経歴)
1995年グリニッジでの個展。パフォーマンスを再開作家公式サイト(経歴)、千葉市美術館
1996年『地の天』を千葉市美術館の開館記念展で発表千葉市美術館
1998年直島「角屋」で『Sea of Time ’98』。名誉博士号(ロンドン芸術大学)ベネッセアートサイト直島、作家公式サイト(経歴)
1999年第48回ヴェネチア・ビエンナーレ(日本館)森美術館、千葉市美術館
2006年〜2016年東北芸術工科大学の副学長作家公式サイト(経歴)
2012年〜2016年京都造形芸術大学の副学長作家公式サイト(経歴)
2016年『Time Waterfall』を香港のビルの外壁に映す作家公式サイト
2020年千葉市美術館「クロニクル」展。森美術館「STARS展」。芸術選奨文部科学大臣賞(令和2年度)千葉市美術館、森美術館、文化庁
2024年〜2025年テート・モダン「Electric Dreams」に出品作家公式サイト
2025年大阪・関西万博で『Counter Voice Network – Expo』を展示作家公式サイト
2026年千葉市美術館で『地の天』を修復後初公開。高松市美術館、ダラムでも展示千葉市、作家公式サイト

作品に出会える主な場所

記事で触れた作品や施設を、公式サイトの情報をもとに表にまとめました。展示替えや会期があるため、訪れる前に各館の公式サイトで確認してください。

場所作品メモ(2026年10月時点)
直島・家プロジェクト「角屋」(香川県)『Sea of Time ’98』ほかベネッセアートサイト直島の公式サイトで、家プロジェクト7軒のひとつとして紹介されています
千葉市美術館(千葉県)『地の天』(1996年)収蔵作品。2026年9月16日から11月23日の特別展で、修復後初公開
高松市美術館(香川県)『Counter Line No.1』収蔵作品。2026年10月10日から11月29日の特別展で展示
大英博物館(ロンドン)『Time Waterfall – panel #8』2018年10月に、作家の公式サイトが所蔵・展示を発表。現在の展示は同館に確認
テート(ロンドン)『Lattice B』(1990年)、『Opposite Circle』(1991年)テート公式サイトの作品検索で確認。展示の有無は同館に確認

まとめ

いかがだったでしょうか。宮島達男の人生と作品を、公式に確認できた情報をもとにたどってきました。

東京藝術大学で学んだ宮島は、街で体を使うパフォーマンスから出発し、1987年に「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」という三つのコンセプトを発表しました。1988年の『Sea of Time』で国際的に注目され、以後30か国250か所以上で作品を発表しています。

作品は、LEDの数字を1から9まで繰り返し、0を表示しないというきまりを軸にしながら、直島の民家、香港の高層ビル、美術館の展示室、万博の屋外と、場所ごとに姿を変えてきました。1998年の『Sea of Time ’98』では島の人々が制作に加わり、2000年代には「Art in You」という考えを掲げています。

2020年には千葉市美術館で大規模な個展が開かれ、文化庁の芸術選奨文部科学大臣賞も贈られました。2026年10月時点でも、『地の天』の修復後初公開や、国内外の展覧会が続いています。

数字が止まらずに変わりつづける様子を、ぜひ会場で、自分の時間と重ねながら見てみてください。

Euphoric " " の視点

宮島達男は1987年、個展の準備のなかで「それは変化し続ける」「それはあらゆるものと関係を結ぶ」「それは永遠に続く」という三つのコンセプトをまとめ、それを表す新作を作りました。

その後、素材は広がります。A-POC ABLE ISSEY MIYAKEとの共同プロジェクトでは、デジタル数字が京都の職人による手捺染の技法で再構成され、布の上の模様になりました。大阪・関西万博の『Counter Voice Network – Expo』では、さまざまな言語のカウントダウンの声が流れます。

素材が広がると、軸がぶれて見えることを心配する人もいるかもしれません。宮島の歩みからは、先に考えを短い言葉で定めておくことで、光る数字から布へ、声へと形を変えても、作品どうしが一つの流れとして読める、という見方ができると考えます。原則を言葉にしておくことは、新しい素材へ踏み出すときの支えにもなるかもしれません。

この作品を見に行くには

記事で紹介した作品は、次の館などで公開されています。展示替えがあるため、最新の情報は公式サイトをご確認ください。

NEW POSTS / 新着記事

開催中の展覧会いま行ける展覧会を、終了が近い順に79件 開催中/7日以内に終了 1件展覧会を探す