グラスゴー芸術大学(GSA)とは?マッキントッシュ校舎の今後と学費・出願を徹底解説

グラスゴー芸術大学(GSA)とは?マッキントッシュ校舎の今後と学費・出願を徹底解説

アートコンサルティング

こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんはグラスゴー芸術大学(The Glasgow School of Art、通称GSA)という大学をご存知ですか。スコットランド・グラスゴーにある美術大学で、QS世界大学ランキングのアート&デザイン部門2026年版では世界8位にランクインし、英国内3位、スコットランドからは唯一のTOP10入りを果たしました。

ただし、この大学を語るうえで避けて通れないのが、同校を象徴する建築家チャールズ・レニー・マッキントッシュ設計の校舎、通称「マッキントッシュ・ビルディング」です。この建物は2014年と2018年の二度の火災に見舞われ、2018年の火災ではほぼ全焼しました。そして2026年7月、GSAの理事会は、この建物の今後についてこれまでで最も踏み込んだ公式発表をおこなっています。

本記事ではそんなグラスゴー芸術大学について、マッキントッシュ・ビルディングの現在地、学部・大学院の構成、学費、出願の進め方まで、公式サイト(gsa.ac.uk)などで確認できた情報をもとにご紹介します。それでは早速いってみましょう。

グラスゴー芸術大学って?

基本情報

グラスゴー芸術大学 マッキントッシュ・ビルディングの外観、スコット・ストリートの角から見たところ
マッキントッシュ・ビルディングの外観、スコット・ストリートの角から見たところ(2006年撮影。二度の火災が起きる前の姿で、現在この状態は見られません)/撮影:Steve Cadman(CC BY-SA 2.0)/出典:Wikimedia Commons
正式名称The Glasgow School of Art(グラスゴー芸術大学、通称GSA)
創立1845年。グラスゴー官立デザイン学校(Glasgow Government School of Design)として創立し、1853年に現在の校名に改称しました
所在地スコットランド・グラスゴーのガーネットヒル地区(167 Renfrew Street)
性格公的助成を受ける独立系の美術大学。公式サイトは自校を「英国に残る数少ない独立系アートスクールのひとつ」と位置づけています
学位の認証学位はグラスゴー大学(1451年設立)が認証しています
スクール構成School of Fine Art/School of Design/Mackintosh School of Architecture/School of Innovation and Technology の4校
学生数3,250名(2025/26年度。GSAが2026年7月に公表した事業計画書の数字。2020/21年度の2,270名から増えています)
卒業生95か国に2万人以上(公式サイト「Creative Network」の記載)
学長ペニー・マクベス教授(Professor Penny Macbeth。公式の肩書きはDirector and Principal。2020年5月就任)
QSランキングアート&デザイン部門2026年版で世界8位(英国内3位)、総合スコア82.9

順位の読み方は、【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキングで詳しく解説しています。グラスゴー芸術大学は前年の12位から4つ順位を上げてTOP10入りした学校で、このランキングでスコットランドから唯一の上位校です。

GSAは自校の教育を「スタジオを拠点とした、実践主導の専門教育」と説明し、分野を越えた学び合いや批評的な議論、試作を重ねるプロセスを重視する姿勢を公式サイトで強調しています。座学よりも手を動かしながら考えることに重きを置いた学校だといえます。

マッキントッシュ・ビルディングと二度の火災

GSAを語るうえで欠かせないのが、同校の卒業生でもある建築家チャールズ・レニー・マッキントッシュが設計した校舎、通称「マッキントッシュ・ビルディング」です。モダニズム建築の先駆けとされ、世界の建築史において重要な作品のひとつに数えられています。

建設の経緯

1885年に校長に就任した画家フランシス(フラ)・ニューベリーのもと、学校は手狭になった校舎の建て替えを計画します。1895年、ベラハウストン・トラストがレンフルー・ストリートの敷地を6,000ポンドで購入して学校に寄贈し、さらに建設基金として4,000ポンドを提供しました。1896年、学校はグラスゴーの建築家を招いた指名設計コンペをおこない、翌1897年1月、建築事務所ハニーマン&ケッピー(John Honeyman & Keppie)の案が当選します。

ここが誤解されやすいところですが、この時点でマッキントッシュは、同事務所に勤める29歳の若手製図工にすぎませんでした。当時の公式記録に彼が設計者として現れるのは、1901年に事務所のパートナーになったあと、第2期の設計者としてです。様式から見て建物全体を設計したのはマッキントッシュだというのが定説ですが、彼の名が最初から表に出ていたわけではありません。

工事は1897年11月に始まりました。建物は2期にわけて建てられ、東棟が1899年12月に完成して開館、1907年11月から始まった第2期で西棟が加わり、1909年12月に建物全体が開館しています。

マッキントッシュ・ビルディングの正面玄関
マッキントッシュ・ビルディングの正面玄関(2006年撮影。二度の火災が起きる前の姿です)/撮影:Steve Cadman(CC BY-SA 2.0)/出典:Wikimedia Commons

完成した校舎は、北面に並ぶ鋳鉄枠の大きな窓、アール・ヌーヴォーの花模様を描く鉄の装飾、そして内部の図書館で知られ、長らくマッキントッシュの代表作として世界的に評価されてきました。なかでも図書館は、吹き抜け2層の空間に2列の木の柱と梁が立ち、三方をギャラリー(回廊)が囲むという独特のつくりで、建築やデザインを学ぶ人が一度は見ておきたい場所とされてきた部屋です。砂岩の外観の内側に、当時としては先進的な鉄骨の構造を組み込んだ点も評価されています。

2014年の火災

その校舎は、2014年5月23日の昼に火災に見舞われます。出火元は地下のスタジオ19でした。消防当局の調査報告書によれば、学生が卒業展示の準備で壁に貼った発泡ウレタンの隙間を缶スプレーで埋めていたところ、缶の噴射剤が、2〜3時間つけっぱなしだったプロジェクターの冷却ファンに吸い込まれ、内部の通電部品で発火したと結論づけられています。缶に火が移ったのではなく、噴射ガスが機器の内部で燃えたという経緯です。火は西棟を中心に広がり、マッキントッシュの代表的な内装とされていた図書館が焼失しました。アーカイブ資料は、紙の資料と紙に描かれた作品の大半が無事で、水濡れした一部は自然乾燥または凍結処理によって安定化され、修復されています。

火災で窓枠が焼け焦げたマッキントッシュ・ビルディングの外壁
2014年の火災から3か月後、窓枠が黒く焼け焦げた外壁の様子(2014年8月撮影)/撮影:John a s(CC BY-SA 3.0)/出典:Wikimedia Commons

この後、GSAは忠実な復元工事に着手します。消防当局の調査報告書によれば、現場工事が始まったのは2016年の夏で、総額4,800万ポンド規模、2019年5月の完了が予定されていました。

2018年の火災、そして今も残る焼け跡

ところが2018年6月15日の夜、復元工事が最終段階に入っていたタイミングで、二度目の火災が発生します。今度の被害ははるかに深刻で、内部は全焼し、屋根と外壁の上部も失われました。残った構造は、建物の内と外に組まれた大がかりな足場と支保工によってかろうじて保たれている状態です。出火の原因は、消防当局が火災当夜から2021年9月末まで3年以上調査を続けたものの、燃え方が激しく物証がほとんど残らなかったため「原因不明(undetermined)」と記録されました。報告書の公表は2022年1月です。なお、瓦礫の撤去や構造の安定化など建物を維持するための費用として、2018年以降すでに約2,600万ポンドが費やされたとGSAは説明しています。

足場に覆われたマッキントッシュ・ビルディングの外観、2018年5月撮影
一度目の火災からの復元工事中だったマッキントッシュ・ビルディング(2018年5月22日撮影。この約3週間後、二度目の火災が発生した)/撮影:Paul Trafford(CC BY 2.0)/出典:Wikimedia Commons

2026年7月の公式発表、今後の方針

長らく「忠実な復元」を目標に掲げてきたGSAですが、2026年7月22日、理事会はこれまでで最も踏み込んだ公式発表をおこないました。2018年の火災をめぐる長期の保険金請求が決着したことを受け、最新の分析(Strategic Outline Business Case Addendum)を公表したのです。その内容は率直なものでした。建物を完全に復元するための費用は約2億6,500万ポンドと見積もられ、これはGSAの年間事業収入のおよそ5倍にあたります。理事会は「学校は単独でマッキントッシュ・ビルディングの忠実な復元を進めることはできない」と結論づけました。理事会議長のアン・プリーストは次のように述べています。

「私たちは、この類まれで世界的にも重要な建物が再建されることを強く望んでいます。しかし、そのためにGSAの財政的な持続可能性を危険にさらすわけにはいきません」

そのうえでプリーストは、建物が新しい役割を担い「グラスゴーとその周辺における、イノベーションと再生、経済成長の起爆剤」になり得るとも語っています。

今後は、保険金を原資とする工事が予定されています。2018年の火災から立ち続けている外部の足場を撤去し、建物内部に保持構造を新設するもので、これによって外壁が再び見えるようになり、将来の工事に向けてより安全な構造が確保されます。GSAは設計をまとめて必要な許認可を取得したうえで、2027年夏の着工を見込んでいます。並行して、グラスゴー市や政府、関係機関、出資しうるパートナーとともに、復元に向けた協力の可能性を探っていくとしています。

つまり2026年10月時点で、マッキントッシュ・ビルディングがいつ、どのような形で復元されるのかは決まっていません。いま留学してもこの建物で学べるわけではないという点は、志望する方に知っておいていただきたい事実です。

白い保護膜と足場に覆われた現在のマッキントッシュ・ビルディング、2023年撮影
白い保護膜と足場に覆われた、2023年時点のマッキントッシュ・ビルディング(左)。右手が現在の主要校舎であるリード・ビルディングです/撮影:AlasdairW(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons

1845年から続く歴史、グラスゴー・スタイルとグラスゴー・ガールズ

GSAの創立は1845年1月6日。当初は「グラスゴー官立デザイン学校」という名前で、1836年に英国議会の特別委員会が提言した、製品デザインの質を教育で引き上げるための官立学校網のひとつとして始まりました。英国の工業都市に置かれた20校ほどのうちの1校です。1853年に現在の校名「グラスゴー・スクール・オブ・アート」に改められ、1869年にはインガム・ストリート12番地から、サウキーホール・ストリートのコーポレーション・ギャラリーズ(現在のマクレラン・ギャラリーズ)へ移ります。GSAがガーネットヒル地区にあるのは、このときからです。

GSAの歴史を語るうえで、マッキントッシュとともに欠かせないのが「グラスゴー・ガールズ」と呼ばれる女性たちです。1890年前後に学生として同校に入ったマーガレット・マクドナルドとフランシス・マクドナルドの姉妹、1894年に刺繍科を立ち上げたジェシー・ニューベリー(ニューベリー校長の妻で、教員として指導にあたりました)、その後任となったアン・マクベスらが中心となり、金工・刺繍・テキスタイル・絵画の分野で、スコットランド独自のアール・ヌーヴォー様式「グラスゴー・スタイル」を築きました。彼女たちの仕事はマッキントッシュの名声の陰で長らく語られることが少なかったものの、近年あらためて評価が進んでいます。

マーガレット・マクドナルド・マッキントッシュの肖像写真
マーガレット・マクドナルド・マッキントッシュの肖像(19世紀、撮影者不明)/画像提供:グラスゴー市議会 図書館情報学習部門(Glasgow City Council, Libraries Information and Learning)/出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

マッキントッシュ自身も、GSAにとって特別な存在です。1883年9月、15歳のときに夜間の学生として入学し、在学中にマーガレット・マクドナルドと出会って、のちに結婚しています。学生がやがて母校の象徴的な建物を手がけるという巡り合わせは、GSAの歴史のなかでもひときわ印象的なエピソードです。

彼のキャリアは建築だけにとどまらず、家具、ステンドグラス、テキスタイル、グラフィックまで手がけ、妻マーガレットをはじめとするグラスゴー・ガールズとの共同制作も数多く残しています。生前の評価は必ずしも高くありませんでしたが、没後に再評価が進み、いまではグラスゴーという街そのものを象徴する人物のひとりです。

4つのスクールと学部・大学院の主なプログラム

GSAは現在、School of Fine Art(ファインアート)、School of Design(デザイン)、Mackintosh School of Architecture(マッキントッシュ建築学部)、School of Innovation and Technology(イノベーション&テクノロジー)の4つのスクールで構成されています。学部課程・大学院課程のいずれも、この4校のもとに編成されています。

学部課程(Undergraduate)の主なプログラム

スクール主なプログラム
Mackintosh School of ArchitectureArchitecture(BArch/DipArch)、Engineering with Architecture、Environmental Architecture、Interior Architecture
School of DesignCommunication Design、Fashion Design、Fashion Narrative、Interaction Design、Interior Design、Product Design Engineering、Silversmithing & Jewellery Design、Textile Design
School of Fine ArtFine Art Photography、Painting & Printmaking、Sculpture & Environmental Art、International Foundation(Art and Design)
School of Innovation and Technology3D Modelling、Games and Virtual Reality、Product Design、Sound for the Moving Image

このほか、ポートフォリオ作りから始める準備課程「Portfolio Preparation – Creative Practices」(24週間のスタジオベース課程。Open Studio部門が担当し、出願はUCASではなくGSAのサイトから直接おこないます)や、英語力を底上げする「English For Creative Disciplines」も用意されています。

大学院課程(Postgraduate)の主なプログラム

スクール主なプログラム
Mackintosh School of ArchitectureArchitecture by Conversion、Architecture(DipArch)、Architectural Studies(Creative Urban Practices/Digital Creativity/Energy and Environment/History and Theory of the City/Urban Buildings/Urban Design)、Sustainable Cities
School of DesignCommunication Design、Fashion Design、Graphics/Illustration/Photography、Interior Design、Product Design Engineering、Silversmithing and Jewellery Design
School of Fine ArtContemporary Art Practice、Curatorial Practice(Contemporary Art)、Master of Fine Art
School of Innovation and TechnologyDesign Innovation and Circular Economy/Citizenship/Environmental Design/Future Heritage/Interaction Design/Service Design/Transformation Design、Digital Heritage Visualisation、International Management and Design Innovation、Medical Visualisation & Human Anatomy、Serious Games and Virtual Reality、Sound for the Moving Image

建築学士(BArch)は3年制のOrdinary Degreeと4年制のHonours Degreeがあり、3年次(フルタイムの場合)または4年次(パートタイムの場合)を修了すると、英国の建築家資格に必要なARB/RIBA Part1試験が免除されます。BA(Hons)Architectureの学力要件は、2026年9月の1年次入学の場合、Highers(スコットランドの高校卒業資格)であれば読み書きを重視する科目(literate subject)と数学または物理を含む4科目ABBB、Aレベルであれば数学または物理を含む3科目ABBと、GCSE英語のグレードA/7が標準として示されています。

School of Fine Artは絵画・版画・彫刻・写真を軸に個人の表現を掘り下げ、School of Designは産業との接点が強い領域を扱います。Mackintosh School of Architectureはスタジオでの設計演習を中心に据え、School of Innovation and Technologyはゲームやバーチャルリアリティ、医療分野への応用まで、テクノロジーと創造性を組み合わせた比較的新しい領域を担っています。

グラスゴー芸術大学を構成する、ファインアート、デザイン、マッキントッシュ建築学部、イノベーション&テクノロジーの4つのスクールの特徴を整理した図
図:GSAの4つのスクール

学費(2026/27年度)

GSAの学費は、学部・大学院とも「スコットランド」「Rest of UK(イングランド・ウェールズ・北アイルランドなど)」「国際学生」の3区分で分かれています。日本からの留学生はすべて国際学生の区分です。以下は公式サイト「Fees & Finance」ページで2026年10月2日に確認した、2026/27年度の金額です。

区分スコットランドRest of UK国際学生
学部課程(年額)£1,820£9,790£24,800(在学期間中据え置き)
Portfolio Preparation(準備課程)£2,999公式サイトに記載なし£5,650

スコットランドの学部生の£1,820が極端に安く見えますが、これには理由があります。スコットランドに居住する学生はスコットランド学生奨学庁(SAAS)に申請することで授業料の支援を受けられる仕組みがあり、GSAの学費ページもSAASへの問い合わせを案内しています。同じページでGSAは、スコットランドとRest of UKの学部生について「所属する資金援助機関からおおむね全額の支援を受けるため、デポジットの支払いを求めていません」と説明しています。£1,820は制度上の授業料であって、本人が全額を負担する前提の数字ではありません。日本からの留学生にこの制度は適用されませんので、国際学生の欄をご覧ください。

区分スコットランド/Rest of UK国際学生
大学院(1年制修士、年額)£10,700£26,420
MSc Medical Visualisation & Human Anatomy£13,500£32,500
博士課程(年額)£5,238£21,200

国際学生は、学部・大学院とも合格後に£6,400のデポジット(前払い金、学費に充当)を納める必要があります。Home/Rest of UKの大学院進学者は£1,700です。また、GSAの学部を卒業して同校の大学院に進む場合や、交換留学(Study Abroad Exchange)でGSAに在籍したことがある場合には、大学院の学費を20%減額する「GSA Graduate Study Scholarship」が、申請不要で自動的に適用されます。なお、ここに挙げたのは2026年9月入学(2026/27年度)の金額で、次に説明する2027年9月入学の学費はまだ公表されていません。金額は年度ごとに改定されますので、出願の際は必ず公式サイトでご確認ください。

グラスゴー芸術大学の2026/27年度の学費を、スコットランド、Rest of UK、国際学生の3区分で、学部・大学院・博士課程ごとに比べた表
図:学費(2026/27年度・年額)

出願の進め方

学部課程の出願はUCASを通じておこないます。2027年9月入学の場合、公式サイトで示されている主な日程は次のとおりです(2026年10月2日確認)。

締切内容
2027年1月13日 18時(英国時間)UCAS出願フォームの提出締切
2027年1月20日 13時(英国時間)デジタルポートフォリオ(PDF形式、最大15ページ)とポートフォリオ・ステートメントの提出締切。Product Design Engineeringのみ、この提出の対象外です

出願にはUCASの出願フォーム、推薦状1通、志望理由書(Personal Statement)に加え、デジタルポートフォリオと、ポートフォリオの内容を補足する「ポートフォリオ・ステートメント」(最大3,000字。半角文字数での上限で、英文なら500語程度にあたります。UCASのPersonal Statementとは別内容にする必要があります)が求められます。多くのプログラムで、ポートフォリオを踏まえた面接もおこなわれます。なお、GSAは出願を提出順に随時審査しており、合否の連絡時期は人によって異なるとしています。

注意が必要なのが、BEng/MEng Product Design EngineeringとBEng/MEng Engineering with Architectureの2つは、GSAではなくグラスゴー大学(University of Glasgow)を通じて出願する点です。入学要件も出願方法もグラスゴー大学側のページに掲載されていますので、志望する方は必ずそちらをご確認ください。

大学院課程(Postgraduate Taught)の出願は固定の締切がなく、通年のローリング方式です。ただしGSAの奨学金に応募するなら、2027年2月28日までの提出が推奨されています。提出物はオンライン出願フォーム、志望理由書(最大500語)、学歴の証明書と成績証明書、学業に関する推薦状1通、写真つき身分証明書、デジタルポートフォリオ(PDF、最大15ページ)、ポートフォリオ・ステートメント(最大500語)などです。人気のプログラムは早く定員が埋まることがあるため、GSA自身も早めの提出をすすめています。

グラスゴー芸術大学の学部出願を、UCASの出願、デジタルポートフォリオの提出、英語力の証明という3つのステップと締切日で示した流れ図
図:学部出願の3つのステップ(2027年9月入学)

英語力の証明

日本から出願する場合、英語力を証明するスコアの提出が必要です。GSAが第一に挙げるテストはIELTS for UKVI(Academic)で、必要なスコアは学部か大学院かではなく、どのスクールのプログラムかによって変わります。公式の出願ガイドで確認できる基準は次のとおりです。

対象IELTS for UKVI(Academic)の基準
School of Fine Art のプログラム総合6.0、各技能5.5以上
School of Design のプログラム総合6.0、各技能5.5以上
Mackintosh School of Architecture のプログラム総合6.5、各技能5.5以上
Master of Fine Art(大学院)総合6.0、各技能5.5以上
博士課程(PhD)総合6.5、各技能6.5以上
International Foundation総合5.0、各技能5.0以上

見落としやすいのが、建築系は学部でも総合6.5が必要で、大学院のMaster of Fine Artの6.0より高いという点です。「大学院のほうが高い」と思い込んでいると準備を誤りますので、必ず志望するプログラムの出願ガイドで確認してください。

基準に届かない場合に向けて、GSAは「Pre-Sessional English for Creative Disciplines」という準備コースを用意しています。条件付き合格を得ている方が対象で、語学力に応じて14週間・10週間・5週間の3種類があり、オンラインでもグラスゴーのキャンパスでも受けられます。修了すれば英語力の条件を満たしたものとして扱われます。

ポートフォリオの審査基準は、GSAがプログラムごとに公開している出願ガイドに書かれており、評価の軸はプログラムで異なります。建築では「制作物の多様さと、立体を表現する描写力」が重視され、絵画・版画では「出願した専攻の媒体で制作した作品が相当量含まれていること」が期待されます。コミュニケーションデザインでは、完成作品だけでなく「スケッチブックのページやワークシート、制作過程のシート」を見たいと明記されています。いずれのガイドも、ポートフォリオ・ステートメントで「なぜこの学校の、このプログラムを選んだのか」を自分の言葉で説明することを求めています。

キャンパス、いまどこで学べるのか

マッキントッシュ・ビルディングが使えない現在、GSAの授業は主にガーネットヒル地区に集まる他の校舎でおこなわれています。中心になっているのが、建築家スティーブン・ホール(Steven Holl)がグラスゴーのJMアーキテクツと組んで設計し、2014年4月に開館したリード・ビルディング(正式名称 Seona Reid Building)です。マッキントッシュ・ビルディングの向かいに立ち、ガラスを多用した現代的な外観が歴史的な校舎と対照をなしています。

このほか、ガーネットヒル地区にはマッキントッシュ建築学部の拠点であるブールドン・ビルディング、イノベーション&テクノロジー学部とデザイン学部のスタジオが入るホールデン・ビルディング、図書館、学生寮のマーガレット・マクドナルド・ハウスなどが集まっています。また、ファインアート学部のスタジオと工房があるストウ・ビルディング、イノベーション&テクノロジー学部の拠点のひとつである65ウェスト・リージェント・ストリートなど、ガーネットヒルの外にも市内数か所に施設があります。

ブールドン・ビルディング内の建築スタジオ、製図用の棚と作業台が並ぶ
マッキントッシュ建築学部が拠点とするブールドン・ビルディング内のスタジオ(2002年5月撮影)/撮影:Gunnar Klack(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons
赤砂岩造りのホールデン・ビルディング外観
ヒル・ストリートに立つホールデン・ビルディングの外観(2007年撮影)/撮影:Paul McIlroy(CC BY-SA 2.0)/出典:Geograph Britain and Ireland 経由 Wikimedia Commons

グラスゴー以外では、スコットランド北部フォレス近郊のアルタイア・エステート内にハイランド&アイランズ・キャンパスを構えています。1830年代に建てられたイタリア様式の歴史的建築群を改装したキャンパスで、研究と大学院課程の拠点です。ハイランド地方特有の自然環境や地域社会の課題と向き合いながら、修士課程・博士課程の学生が研究と制作に取り組んでいます。

なお、GSAは2012年9月から、シンガポール工科大学(SIT)およびテマセク・ポリテクニックと提携し、コミュニケーションデザインとインテリアデザインのBA課程の3・4年次をシンガポールで提供していましたが、2020/21年度の卒業生を最後に提携は終了し、現在シンガポールにキャンパスはありません。マッキントッシュ・ビルディングについては、2018年の火災以降ずっと外部足場が組まれたままで、2023年には保護用の白い膜と仮設の屋根が取りつけられました。この状態が今も続いており、建物は使用できません。

QS世界大学ランキング2026での評価

GSAはQS世界大学ランキングのアート&デザイン部門2026年版で、世界8位・総合スコア82.9という評価を得ています。これは前年版の12位から4つ順位を上げた結果で、同部門で最も大きく順位を伸ばした学校のひとつでした。

年版順位
2025年版12位
2026年版8位(英国内3位)

このランキングは、世界の研究者・教員へのアンケートである「学術評判」が配点の90%、企業の採用担当者へのアンケート「雇用者評判」が10%という特殊な配分で決まり、論文の引用数などの指標はいっさい使われていません。順位の仕組みや他の上位校との比較は、QS世界大学ランキング アート&デザイン部門の解説記事で取り上げています。

同じ2026年版では、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートが世界1位、ロンドン芸術大学が世界2位とロンドンの2校がTOP3のうち2つを占めており、グラスゴー芸術大学は英国内3位です。学生数3,250名という規模は、2万名を超えるロンドン芸術大学と比べるとはるかに小さく、小規模校でありながら世界的な評価を得ている学校だということがうかがえます。

主な卒業生

GSAの卒業生でもっとも知られているのは、やはり校舎を設計したチャールズ・レニー・マッキントッシュでしょう。現代美術の分野では、英国でもっとも権威のある美術賞ターナー賞の受賞者を数多く送り出していることで知られています。GSA公式の発表によれば、個人での受賞者としては、これまでに7名のGSA卒業生がターナー賞を受賞しています(2026年10月時点)。

受賞年氏名
1996年ダグラス・ゴードン
2005年サイモン・スターリング
2009年リチャード・ライト
2011年マーティン・ボイス
2014年ダンカン・キャンベル
2018年シャーロット・プロジャー
2024年ジャスリーン・カウル

直近の受賞者であるジャスリーン・カウルは、1986年グラスゴー生まれ。2008年にGSAのBA(Hons)Silversmithing and Jewellery(銀細工・ジュエリー)を卒業し、その後2009年から10年にかけてロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでジュエリーと金工の修士号を取得した人物です。GSAのペニー・マクベス学長(Professor Penny Macbeth, Director of The Glasgow School of Art)は受賞にあたり「GSAデザイン学部の卒業生であるジャスリーン・カウルが今年のターナー賞を手にしたことを、たいへん光栄に思います。この素晴らしい成功に、心からのお祝いを申し上げます」とコメントしています。

なお、個人の受賞者7名とは別に、2021年にターナー賞を受賞したアーティスト集団アレイ・コレクティブ(Array Collective)にも、トーマス・ウェルズとシーラ・ブレフナック・キャシェルという2名のGSA卒業生が参加していました。1996年のダグラス・ゴードンから2024年のジャスリーン・カウルまで、約30年のあいだにこれだけの受賞者を送り出してきた実績は、ロンドンに拠点を持たない小規模な美術大学としては際立った数字だと言えるでしょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。グラスゴー芸術大学について見てきました。要点は次の6つです。

  • 1845年に官立デザイン学校として創立。1853年に現校名となり、学位は現在もグラスゴー大学が認証しています
  • 象徴であるマッキントッシュ・ビルディングは2014年と2018年の二度の火災に見舞われ、現在も使用できません。2026年7月、理事会は「学校単独では忠実な復元を進められない」と公式に発表しました。保険金を原資とする先行工事は2027年夏の着工が見込まれていますが、完全な復元の時期や形はまだ決まっていません
  • School of Fine Art、School of Design、Mackintosh School of Architecture、School of Innovation and Technologyの4スクール構成です
  • 2026/27年度の学費は、学部の国際学生が年£24,800(在学中据え置き)、大学院の国際学生が年£26,420からです
  • 学部の出願はUCAS経由。2027年9月入学の場合、UCAS出願フォームの締切は2027年1月13日、デジタルポートフォリオの締切は1月20日です。英語力の基準はスクールごとに違い、建築系は学部でもIELTS総合6.5が必要です
  • QS世界大学ランキング アート&デザイン部門2026年版で世界8位。個人の受賞者としては7名の卒業生がターナー賞を受賞しています

金額や日程、建物の復元方針は今後も変わる可能性があります。出願を具体的に考える段階では、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。

Euphoric " " の視点

マッキントッシュ・ビルを設計したチャールズ・レニー・マッキントッシュは、この学校の卒業生でした。自分が学んだ校舎を、自分で設計したことになります。

その建物が、2014年と2018年の二度の火災で失われました。2018年のほうはほぼ全焼です。

2026年7月、大学は方針を公表しました。忠実な復元には2億6,500万ポンドかかり、それは大学の年間収入の5倍にあたる。学校単独では進められない、と理事会は結論しています。完了の時期も、再建の形も、まだ決まっていません。

建築は、作った人より長く残るものだと思われています。けれど実際には、残るかどうかは誰かが毎年お金を出し続けるかどうかで決まります。名建築という言葉は、その事実を見えにくくします。

この学校を選ぶ人は、その建物がない状態で学ぶことになります。それでも学校は続いています。学校とは建物のことではない、という当たり前のことを、ここは証明し続けているとも言えます。

ポートフォリオの作り方に不安がある方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。

もっと知るには

本記事の情報は、グラスゴー芸術大学の公式サイト(gsa.ac.uk)およびGSA公式メディアセンター(gsamediacentre.co.uk)をもとに確認しています。学費・出願日程・建物の復元方針は今後も変わる可能性がありますので、出願の際や最新状況の確認には、下記の公式ページをご覧ください。

海外の美術系大学を広く比較したい方は、QS世界大学ランキング アート&デザイン部門の解説もあわせてご覧ください。イギリスの美術大学では、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)の個別解説もあります。

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