こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。
皆さんは愛知県立芸術大学(英語名 Aichi University of the Arts)という大学をご存知ですか。1966年に開設された公立の芸術大学で、愛知県長久手市の広大なキャンパスに美術学部と音楽学部、そして大学院の美術研究科・音楽研究科が同居しています。美術と音楽を一つのキャンパスで学べる公立の芸術総合大学であることが、この大学の大きな特徴です。
本記事ではそんな愛知県立芸術大学について、基本情報、沿革、美術学部の7専攻で何を学べるのか、大学院、学費、入試の方式、キャンパスと施設、卒業後の進路、主な卒業生まで、公式サイト(aichi-fam-u.ac.jp)で確認できた情報をもとにご紹介します。音楽学部については基本情報で触れるにとどめ、記事の中心は美術学部です。あわせて、国際的な大学ランキングでこの大学の名前を見かけない理由についても、誤解のないように解説します。それでは早速いってみましょう。
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基本情報
| 正式名称 | 愛知県立芸術大学(英語名 Aichi University of the Arts) |
|---|---|
| 開学 | 1966年4月1日。美術学部美術科(絵画・彫刻・デザインの各専攻)と音楽学部音楽科(作曲・声楽・器楽の各専攻)で開設されました |
| 所在地 | 〒480-1194 愛知県長久手市岩作三ケ峯1-114 |
| 設置者 | 愛知県公立大学法人(2007年4月に設置者が愛知県から変更されました) |
| 学長 | 白河宗利(第12代。2024年4月就任) |
| 学生数 | 学部785名(美術学部413名・音楽学部372名)、大学院博士前期課程162名、博士後期課程23名(2026年5月1日現在) |
| 入学定員 | 学部195名(美術学部95名・音楽学部100名)、大学院博士前期課程70名、博士後期課程8名 |
| 敷地面積 | 409,343平方メートル(123,826坪) |
| 学部・大学院 | 美術学部、音楽学部、大学院美術研究科、大学院音楽研究科 |
公式サイトの理念のページによれば、愛知県立芸術大学は、個性的で魅力ある大学として、愛知が生んだ芸術文化の拠点となり、国際的に開かれた芸術文化の核を目指しています。理念には、学部から大学院までを一貫して教育・研究する体制の充実、国際的な視野をもつ高度な芸術教育、地域社会と連携した愛知県の芸術文化への貢献の3点が挙げられています。
美術学部の目的について公式サイトは、学生の個性を尊重して創造力を育み、それを表現として成立させる技術力を身につけさせること、少人数教育で多様な個性を引き出し、現代に影響力をもつ芸術家やデザイナーを育てることだと説明しています。
学長挨拶で白河学長は、広い緑のキャンパスで学生一人ひとりに個人指導ができることを、都市の大学にはない強みと位置づけ、これを「芸術村的な環境」と表現しています。また、少子化やAI時代の到来を受けて「変革を恐れず」、大学組織を現代のニーズに合わせて構築し、社会や世界とつながる芸術大学を目指すとも述べています。
学生数の内訳
公式サイトの「学生数・収容定員等」(2026年5月1日現在)によれば、美術学部の専攻別の入学定員と現員は次のとおりです。
| 専攻 | 入学定員 | 現員(全学年) |
|---|---|---|
| 日本画 | 10名 | 46名 |
| 油画 | 25名 | 107名 |
| 彫刻 | 10名 | 43名 |
| 芸術学 | 5名 | 24名 |
| デザイン | 25名 | 110名 |
| 陶磁 | 10名 | 39名 |
| メディア映像 | 10名 | 44名 |
| 美術学部 計 | 95名 | 413名 |
美術学部の1学年はおよそ100名で、最も定員が小さい芸術学専攻は5名です。同じ公式資料には男女別の人数も載っており、美術学部は男性85名・女性328名で、女性が約8割を占めています。専攻の規模がはっきり分かれていることも、この大学の姿を知るうえで見ておきたい数字です。
音楽学部について
本記事の中心は美術学部ですが、この大学を理解するうえで音楽学部の存在は欠かせません。公式サイトの組織のページによれば、音楽学部は音楽科の1学科で、作曲専攻(作曲コース・音楽学コース)、声楽専攻、器楽専攻(ピアノコース・弦楽器コース・管打楽器コース)で構成されています。入学定員は合計100名、現員は372名(2026年5月1日現在)です。大学院音楽研究科は、作曲、音楽学、声楽、鍵盤楽器、弦楽器、管・打楽器の6つの研究領域を置いています。同じ敷地に音楽の施設(室内楽ホール、合奏棟、奏楽堂など)と美術の工房・アトリエが並んでいることは、先ほどの「芸術村的な環境」という学長の言葉を具体的に思い描く手がかりになります。
開学60年、愛知県立芸術大学の歩み
愛知県立芸術大学の歴史は、1966年4月1日の開学から始まります。公式サイトの沿革によれば、開学時は美術学部に絵画・彫刻・デザインの各専攻、音楽学部に作曲・声楽・器楽の各専攻が置かれ、初代学長は上野直昭でした。1970年4月には、学部の専攻に対応する修士課程が美術・音楽の両研究科に開設されます。
1989年4月には大きな改組がありました。美術学部のデザイン専攻に代わってデザイン・工芸科(デザイン専攻と陶磁専攻)が置かれ、絵画専攻は日本画専攻と油画専攻に分かれました。同じ年の9月には、後述する法隆寺金堂壁画模写展示館が開館しています。1993年には大学院で絵画専攻が日本画と油画に分かれ、陶磁専攻が加わり、1994年には作曲に音楽学のコースが加わっています。
2001年4月には美術学部に芸術学専攻が加わり、いまの美術学部の骨格ができあがりました。2007年4月には設置者が愛知県から愛知県公立大学法人に変わり、大学院は美術専攻・音楽専攻のそれぞれ1専攻に再編されました。2009年4月には美術・音楽の両研究科に博士後期課程が開設され、学部から博士後期課程までの学びがそろいます。
直近の動きとしては、2022年4月にデザイン・工芸科へメディア映像専攻が加わり、2026年4月には大学院美術研究科にもメディア映像の領域が加わりました。2024年4月には白河宗利が第12代学長に就任しています。2026年は開学60年にあたり、公式サイトのトップページには60周年特設サイトへのリンクも置かれています。
| 年 | 主なできごと |
|---|---|
| 1966年 | 美術学部・音楽学部で開学。初代学長は上野直昭 |
| 1970年 | 美術研究科・音楽研究科の修士課程を開設 |
| 1989年 | デザイン・工芸科を設置、絵画専攻が日本画・油画に分かれる。法隆寺金堂壁画模写展示館が開館 |
| 2001年 | 美術学部に芸術学専攻を設置 |
| 2007年 | 設置者が愛知県公立大学法人に変更。大学院が美術・音楽の各1専攻に再編 |
| 2009年 | 美術・音楽の両研究科に博士後期課程を開設 |
| 2022年 | デザイン・工芸科にメディア映像専攻を設置 |
| 2024年 | 白河宗利が第12代学長に就任 |
| 2026年 | 大学院美術研究科にメディア映像の領域を設置 |
沿革の年表には、1985年に南京藝術学院(中国)と学術交流協定を結んだことも記されています。開学20年足らずで海外の芸術大学との交流が始まっていたことが分かります。
美術学部7専攻、何をどう学べるのか
美術学部は、美術科(日本画・油画・彫刻・芸術学の4専攻)とデザイン・工芸科(デザイン・陶磁・メディア映像の3専攻)の2学科7専攻で構成されています。公式サイトは、芸術学専攻を除く6専攻は実作による創作を中心に教育課程を組んでいると説明し、教育の柱として各専攻の特色を生かした実技実習と、複数の教員が少人数で学生に対応する少人数教育を挙げています。以下、専攻ごとに公式サイトの紹介をまとめます。
日本画専攻
岩絵具と膠(にかわ)を使った技法で、伝統的な絵画表現を学ぶ専攻です。公式サイトによれば、1学年10名に対して常勤教員6名と30名以上の非常勤講師が担当し、1対1の個人授業を行います。1年次は植物・動物・風景、裸婦、自画像、絹絵などの制作で基礎技法を身につけ、臨模で古典絵画の筆法を学びます。2年次は植物の精密写生や、国宝「信貴山縁起絵巻」を課題とした古典絵画の模写に取り組みます。3年次には関西の寺社や工房を訪ねる古美術研究旅行があり、4年次には150号の大画面で卒業制作に取り組みます。金銀箔の扱いや截金(きりかね)の実習があるのも特色です。
油画専攻
絵画を出発点に、学生一人ひとりの「個」の力を引き出し、独自の表現を追求する専攻です。公式サイトは「『個』を尊重し、自立心と探究心を養いながらグローバルに活躍するアーティストを目指します」という方針を掲げています。1・2年次は風景や人物を題材にした基礎的な描画、油絵具の技法や材料、版画(木版、銅版、リトグラフ、シルクスクリーンなど)を学び、2年次からは各教員が開く講座を自分で選んで横断的に学びます。3・4年次には、約2か月の間に教員と対話しながら制作する「チュートリアル授業」が開設されます。
彫刻専攻
石・木・土・金属など、基本的な素材や人間が作り出した素材を扱う、触覚的な表現分野です。1年次の彫刻実技Ⅰでは塑造、石・金・木・土の実習、樹脂による型取りや成形、インスタレーションの基礎を学びます。2年次は個々の創作研究に合わせて単元を選択し、3年次は教員ごとのゼミで学びを深めます。公式サイトは特色として、アトリエに近い石・木・土・金属の工房と森に囲まれた制作環境、「オープンスタジオ」での定期的な作品発表を挙げています。卒業制作展では外部の専門家による公開講評があります。
芸術学専攻
美術史や美術理論を探究する、理論系の専攻です。公式サイトによれば、芸術の実践と理論を結びつけることを重視し、美術史・美術理論の研究者、学芸員、評論家、文化財保存の専門家などを目指します。1・2年次は日本美術史、西洋美術史、美学、現代アート論などの基礎に加え、素描や日本画、油彩などの基礎実技も履修します。3年次の「古美術特別研究」では近畿・東海地方の文化財を中心に現地で研究し、4年次には卒業論文をまとめます。実技専攻の学生や教員と身近に接し、制作の現場に触れられる環境も特色だと紹介されています。
デザイン専攻
デザインを芸術教育の一翼と捉え、学生が自分の創作の動機を探ることを重視する専攻です。公式サイトは、社会とデザインが影響し合う提案ができるデザイナーを目指すと説明しています。1年次は木工・金工・シルク印刷・3Dプリンティングの技能を習得する工房実習などを行います。2・3年次は学年を跨いだ混合編成で、「デザイン選択実技」では8つのテーマから1年間で4つを選びます。官学・産学連携などで成果を実際に提案する社会連携プロジェクトや、ベンチャーカフェ東京との連携のもと他大学の学生とともに取り組むアントレプレナーシップ教育も組み込まれています。ただし公式サイトは、目的は起業家の育成ではなく優れたデザイナーを育てることだと明記しています。
陶磁専攻
瀬戸・常滑・美濃といった産地の伝統と技術を背景に、陶磁の可能性を探る専攻です。1・2年次は陶土や磁土による湯呑み、飯碗、皿、鉢などの制作、鉄絵・染付の基礎、石膏型を使った成形などを学び、陶磁原料学や陶磁史の科目も置かれています。3年次からは「陶磁・工芸」「陶磁・デザイン」「陶磁・芸術表現」の3コースに分かれます。公式サイトによれば、経験豊かな教員陣に加えて60名以上の非常勤講師が指導にあたります。
メディア映像専攻
2022年4月に新設された、アニメーション、VFX・XRコンテンツ、コマーシャル映像、メディアアート、デジタルアーカイブ、メディア映像文化の研究を主な対象とする専攻です。キャッチフレーズは「新たなイメージを社会に掲示する」。3・4年次は研究室に所属してゼミ形式で制作研究を進めます。研究室の分野として、アニメーション表現、映像表現、CG/ゲーム表現、メディアアート表現、メディア企画が挙げられています。大型の映像スタジオ、MA室、アニメーションスタジオ、CGスタジオ、工作室(3Dプリンターやレーザーカッターを含む)などの設備と、学生用の個人制作PCが用意されています。
| 学科・専攻 | 学べる内容(公式サイトの紹介より) |
|---|---|
| 美術科 日本画専攻 | 岩絵具と膠を使った伝統的な絵画表現。1対1の個人授業 |
| 美術科 油画専攻 | 「個」を尊重し、グローバルに活躍するアーティストを目指す |
| 美術科 彫刻専攻 | 石・木・土・金属など多様な素材による触覚的な表現 |
| 美術科 芸術学専攻 | 美術史・美術理論を探究し、実践と理論を結びつける |
| デザイン・工芸科 デザイン専攻 | 社会とデザインが影響し合う提案ができるデザイナーを目指す |
| デザイン・工芸科 陶磁専攻 | 産地の伝統を背景に陶磁の可能性を探る。3年次から3コース |
| デザイン・工芸科 メディア映像専攻 | アニメーション、VFX・XR、メディアアートなど(2022年新設) |
大学院美術研究科、さらに深く学ぶ
愛知県立芸術大学の大学院は、美術研究科と音楽研究科の2研究科です。いずれも博士前期課程と博士後期課程があり、博士後期課程は2009年4月に開設されました。美術研究科は美術専攻の1専攻で、公式サイトの組織図には日本画、油画・版画、彫刻、芸術学、デザイン、陶磁、メディア映像の7つの研究領域が挙げられています。メディア映像は2026年4月に加わった領域です。
美術研究科の目的は、博士前期課程では学部教育を基礎に専門教育を充実させ、学際的で柔軟な教育課程により現代の表現や社会の要請に応える高度な専門的能力をもつ人材を養成すること、博士後期課程では高度な専門能力に理論的分析力と表現力を加え、自立した芸術家・研究者や、社会の多様な場で中核的・指導的役割を担う人材を養成することとされています。公式サイトは、研究科の姿勢を「柔軟で横断的な研究教育システムの構築」と説明しています。
| 課程 | 美術研究科の入学定員 | 現員(2026年5月1日現在) |
|---|---|---|
| 博士前期課程 | 40名 | 89名(うち外国人留学生18名) |
| 博士後期課程 | 5名 | 13名(うち外国人留学生4名) |
博士前期課程の現員は、1年生44名・2年生45名という内訳です。入学定員40名に対して現員が多いのは、公式資料の充足率(1.11)にも表れています。博士前期課程の現員89名のうち18名が外国人留学生という点も、数字から読み取れます。
学費
公式サイトの学費のページによれば、学部の入学料は282,000円、授業料は年額535,800円です。公立大学ですが、このページには入学料の域内・域外の区分は記載されていません。また、ページは美術学部の専攻別諸費用は「入学年度により異なることがある」と注記しており、掲載されているのは2026年10月時点の金額です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 入学検定料(学部) | 17,000円 |
| 入学料(学部) | 282,000円 |
| 授業料(年額) | 535,800円 |
このほか、美術学部・音楽学部に共通して、入学時に次の諸費用がかかります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 芸術祭等(4年間) | 27,000円 |
| 学生保険(賠償責任保険を含む、4年間) | 4,660円 |
| 後援会費(学部) | 10,000円 |
| 同窓会費(入会金・終身会費) | 20,000円 |
美術学部には、専攻ごとに専攻別諸費用が設定されています。公式サイトの掲載は次のとおりです。
| 専攻 | 専攻別諸費用 | 内訳・注記 |
|---|---|---|
| 日本画 | 100,000円 | 古美術研究旅行費。このほか教材費約250,000円が後日必要 |
| 油画 | 100,000円 | 古美術研究旅行費。このほか基礎実技実習費約60,000円が後日必要 |
| 彫刻 | 400,000円 | 古美術研究旅行費100,000円、教材費300,000円 |
| 芸術学 | 100,000円 | 古美術研究旅行費 |
| デザイン | 0円 | このほか学外研究旅行費約60,000円、教材費約50,000円が後日必要 |
| 陶磁 | 320,000円 | 学外研究旅行費200,000円、道具80,000円、1年次の原料40,000円 |
| メディア映像 | 180,000円 | 学外研究旅行費80,000円、教材費100,000円 |
たとえば油画専攻の場合、入学料282,000円、授業料535,800円、共通の諸費用61,660円(芸術祭等27,000円・保険4,660円・後援会費10,000円・同窓会費20,000円)、専攻別諸費用100,000円を合計すると、初年度の納入額は979,460円になります(編集部で公式の金額を合計したものです。入学検定料と、後日必要となる基礎実技実習費約60,000円は含みません)。授業料だけで4年間分を計算すると2,143,200円で、入学料を加えると2,425,200円です(編集部の計算)。ただし専攻別諸費用は専攻によって100,000円から400,000円まで差があり、教材費が後日必要な専攻もあるため、実際の総額は専攻ごとに異なります。住居費や生活費、作品制作にかかる私費は、この数字には含まれていません。
大学院の入学検定料は30,000円、入学料は282,000円、授業料は年額535,800円と掲載されています。大学院の専攻別諸費用や音楽学部の費用はこのページには載っていないため、詳細は大学に問い合わせる必要があります。
入試の方式(2027年度入試)
公式サイトの美術学部入試のページによれば、2027年度(令和9年度)入学者選抜では、美術学部に次の3つの選抜区分があります。具体的な日程や出願期間、科目・配点の詳細は毎年変わりますので、必ず最新の学生募集要項をご確認ください。
| 選抜区分 | 対象専攻 | 概要(公式サイトより) |
|---|---|---|
| 総合型選抜 | 日本画、彫刻、デザイン、陶磁、メディア映像 | 大学入学共通テストを免除。第1次選考(調査書、自己推薦書、自己アピール資料等)の後、第2次選考を実施。第2次選考は面接、提出作品審査、小論文、実技試験で、提出作品審査は日本画、小論文は彫刻、実技試験は陶磁とメディア映像の志願者が対象 |
| 社会人特別選抜 | デザイン | 共通テストを免除。自己アピール資料等の内容、小論文、面接等により総合的に判定 |
| 一般選抜 | 全専攻 | 大学入学共通テスト、個別テスト(専攻別実技試験等)、調査書等により総合的に判断 |
つまり、一般選抜は共通テストと専攻別の実技試験を組み合わせる方式です。一方で総合型選抜は、共通テストを課さず、書類と作品・面接などで判断する方式で、実施されるのは5専攻に限られます。油画専攻と芸術学専攻には総合型選抜がなく、この2専攻を志望する場合は一般選抜が窓口になります。出願はインターネット出願で行います。
直近の入試結果(2026年度入試)
公式サイトが公表する2026年度(令和8年度)入試結果によれば、美術学部7専攻の一般選抜の合計は、志願者816名・合格者97名でした(募集人員は83名。総合型選抜・社会人特別選抜は含まない数字です)。志願者数を合格者数で割ると約8.4倍になります(編集部の計算)。総合型選抜・社会人特別選抜を含む美術学部全体では、志願者927名・合格者114名、入学定員95名と公表されています。
専攻別の一般選抜の倍率には大きな差があり、公式資料では油画が11.2倍、デザインが14.9倍、彫刻が6.1倍などとなっています。倍率は大学ごとに対象範囲や算出方法が違うため、他大学の数字と単純に比べることはできません。見るときは、どの選抜区分の合算なのか、志願者と受験者のどちらが分子なのかを確かめる必要があります。
キャンパスと施設
愛知県立芸術大学のキャンパスは、愛知県長久手市の岩作三ケ峯にあります。公式サイトの校地・校舎のページによれば、敷地面積は409,343平方メートル(123,826坪)で、延床面積は教育研究施設で約30,668平方メートル、サテライトギャラリーを含めた合計が47,465.90平方メートルです。学生寮・教員住宅を含めた総合計は51,159.76平方メートルとなっています。
美術の施設として、公式サイトには美術学部棟、芸術学・メディア映像棟、アトリエ棟、基礎デッサン棟、大工房棟、鋳金工房、窯場棟、陶磁実習棟、日本画模写保存修復施設、デザイン棟、彫刻棟、メディア映像スタジオ棟、美術研究科博士棟、総合研究棟が挙げられています。音楽の施設としては、室内楽ホール、合奏棟、管打棟、奏楽堂などがあります。このほか図書館(閲覧室棟・書庫棟・新書庫棟)、芸術資料館、文化財保存修復研究所、体育館、大学会館、クラブハウスが並び、名古屋市東区にはサテライトギャラリーもあります。
法隆寺金堂壁画模写展示館
この大学ならではの施設が、1989年9月に開館した法隆寺金堂壁画模写展示館です。公式サイトによれば、法隆寺金堂の大壁12面と小壁(飛天図)20面の壁画模写を展示しています。原本は7世紀末から8世紀初め頃に描かれたもので、模写は焼損前の姿を「忠実に再現」したものだと説明されています。制作には本学の教員と卒業生らが携わり、完成まで16年を要しました。高松塚古墳壁画や、神護寺所蔵の肖像画(伝源頼朝・伝平重盛・伝藤原光能・文覚上人像)などの模写も順次特別公開されています。
公式サイトによれば、展示館は教育・研究や地域文化の向上に役立てるため、春と秋に一般公開されています。日本画専攻のカリキュラムに古典絵画の模写が組み込まれ、文化財保存修復研究所の成果をもとにした模写と座学があることとも、つながりが感じられます。
芸術資料館
芸術資料館は、芸術関係の資料を収集・保管・展示し、教育に役立てるための施設です。収蔵品は日本画、油画、版画などの絵画に加え、彫刻、デザイン資料、陶磁器、楽器や音楽関係の資料など幅広い分野にわたります。年間を通して収蔵資料展、学生の研究発表展、美術学部教員展などを開催しており、アーティスト・イン・レジデンスで招いた海外アーティストの企画展にも使われています。2007年2月から「博物館相当施設」に指定されています。
世界大学ランキングでの位置づけ
QS World University Rankings by Subject 2026の「Art & Design(アート&デザイン)」部門に、愛知県立芸術大学は掲載されていません。編集部でQSの公式サイト(topuniversities.com)を確認したところ、同部門の日本の掲載校は東京大学、千葉大学、筑波大学、京都大学、武蔵野大学(武蔵野美術大学とは別法人)、東京藝術大学、慶應義塾大学、京都工芸繊維大学、九州大学、早稲田大学の10校で、本学の名前はありませんでした。
これは教育の質が低いという意味ではありません。この部門の配点は学術評判(研究者へのアンケート)が90パーセント、雇用者評判(企業の採用担当者へのアンケート)が10パーセントで、国際的な研究面での知名度が順位に表れやすい仕組みです。ランキングの詳しい算出方法や各大学の順位は、アート&デザイン部門QS世界大学ランキングの解説記事をご覧ください。
卒業後の進路
公式サイトの進路のページには、卒業生・修了生の進路の傾向が説明されています。卒業後に大学院へ進学して技術を磨く人が増えていること、海外の大学等へ進学する人もいること、美術館・博物館の学芸員、国内外のオーケストラ団員・ソリスト、大学・高校・中学校の教員などになる人が多いこと、民間企業で芸術関連の職種を選び、クリエイターやデザイナーの卵として活躍する人もいることが挙げられています。
同じサイトの2025年度の卒業状況では、2022年度に入学した美術学部生102名のうち、2025年度に卒業したのは97名で、過年度卒業者が25名とされています。標準修業年限内の卒業率は70.6%です(音楽学部は89.0%)。博士前期課程では、美術研究科の2024年度入学者39名のうち38名が2025年度に修了し、標準修業年限内の修了率は87.2%でした。
| 区分 | 入学者数(年度) | 卒業・修了者数(2025年度) | 標準修業年限内の卒業・修了率 |
|---|---|---|---|
| 美術学部 | 102名(2022年度入学) | 97名 | 70.6% |
| 大学院美術研究科 博士前期課程 | 39名(2024年度入学) | 38名 | 87.2% |
専攻別の進路も、公式サイトの紹介から分かります。日本画専攻は作家として院展・日展・創画会などで活動する人のほか、教員、企業(アニメーション業界を含む)、学芸員などに就く人がいると書かれています。芸術学専攻は学芸員資格を取得して美術館や博物館で働く人が多く、陶磁専攻は陶磁器デザイナーとして企業に就職する人、陶芸家として作品発表を行う人が多いと説明されています。
公式サイトは年度別の「進路について」のPDFを公開していますので、就職先や進学者数の具体的な数字は、そちらで確認してください。なお、美術学部と音楽学部、大学院で集計の区分が異なるため、他大学の就職率と単純に比べることはおすすめしません。
主な卒業生・ゆかりの作家
公式サイトには「活躍する卒業生・修了生」のコーナーがあり、分野ごとに卒業生・修了生が掲載されています。ここでは、そのページに掲載されている方のうち、分野と肩書の確認できる方を紹介します(卒業・修了年は公式ページに記載がないため記していません)。
- 油画分野:奈良美智、長井朋子、村瀬恭子、小林孝亘(いずれも公式サイトの油画分野の卒業生・修了生一覧に掲載)
- デザイン分野:杉浦良(カーデザイナー)、鈴木功(タイプデザインディレクター)、長崎佑香(アートディレクター)、渡邉こと乃(アニメ演出・アニメ監督)
肩書は、デザイン分野のページに記載されたものをそのまま引いています。デザイン分野の一覧には、イラストレーター、映像ディレクター、プロダクトデザイナー、UI/UXデザイナー、グラフィックデザイナーなど14名が載っており、デザイン専攻の卒業生が映像、プロダクト、UI、アニメなど幅広い職種に就いていることが、公式の一覧から分かります。
まとめ
いかがだったでしょうか。愛知県立芸術大学について見てきました。要点は次の7つです。
- 1966年に開学した公立の芸術大学で、愛知県長久手市のキャンパスに美術学部・音楽学部と大学院2研究科があります
- 美術学部は美術科(日本画・油画・彫刻・芸術学)とデザイン・工芸科(デザイン・陶磁・メディア映像)の2学科7専攻で、入学定員は合計95名です
- 学生数は学部785名、大学院博士前期162名・博士後期23名(2026年5月1日現在)。美術学部は1学年およそ100名の少人数です
- 授業料は年額535,800円、入学料は282,000円。専攻別諸費用が専攻ごとに0円から400,000円まで異なります
- 2026年度入試の美術学部一般選抜は、志願者816名・合格者97名。専攻によって倍率に大きな差があります
- キャンパスには法隆寺金堂壁画模写展示館や芸術資料館があり、美術の学びと文化財に近い環境が整っています
- QS世界大学ランキング アート&デザイン部門2026年版には掲載されていませんが、これは教育の質を示すものではありません
学費や入試の日程、募集人員は年度ごとに変わります。出願を具体的に考える段階では、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。
Euphoric " " の視点
この大学の数字で最初に目を引くのは、美術学部の1学年がおよそ100名で、いちばん小さい芸術学専攻は定員5名だということです。大規模な美術大学と比べると、教員と学生の距離を近くすることを前提に設計された規模だと読めます。学長挨拶が「芸術村的な環境」を強みに挙げているのも、この規模と無関係ではないはずです。
次に、公立大学であるにもかかわらず、専攻別諸費用に0円から400,000円までの幅があることです。授業料は専攻によらず同額なので、学費の表だけを見ると差がないように見えます。しかし彫刻のように教材費300,000円を含む専攻と、デザインのように専攻別諸費用が0円で教材費などが後日の負担となる専攻とでは、初年度の見え方がまるで違います。学費は授業料だけでなく、専攻別の内訳まで読んで比べるべきだと私たちは考えます。
三つ目は、法隆寺金堂壁画の模写です。教員と卒業生が16年かけて壁画を模写し、それを学内に展示して一般公開しているという事実は、この大学が「つくる人を育てる」だけでなく、文化財を後世に伝える仕事も学びの一部に含めていることを示しています。日本画専攻に古典絵画の模写があり、組織図に文化財保存修復研究所が置かれていることと合わせて読むと、一貫した方針が見えてきます。
そして2022年に加わったメディア映像専攻と、2026年に大学院へ加わった同名の領域は、この大学が伝統的な絵画や彫刻の領域だけで固まらず、組織を更新し続けていることの表れです。変革を恐れないという学長挨拶の言葉は、少なくとも組織の動きとしては裏づけがあります。進学先を選ぶときは、パンフレットの言葉よりも、何を新設し、何を残してきたかという事実を見るのが確かだと思います。
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本記事の情報は、愛知県立芸術大学の公式サイト(aichi-fam-u.ac.jp)をもとに確認しています。学費・入試日程・募集人員は年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。
| 内容 | 公式ページ |
|---|---|
| 学長挨拶 | 愛知県立芸術大学「学長挨拶」 |
| 沿革 | 愛知県立芸術大学「沿革」 |
| 学生数・収容定員等 | 愛知県立芸術大学「学生数・収容定員等」 |
| 組織 | 愛知県立芸術大学「組織」 |
| 美術学部 | 愛知県立芸術大学「美術学部」 |
| 学費 | 愛知県立芸術大学「学費等」 |
| 美術学部の入試 | 愛知県立芸術大学「学部入試(美術)」 |
| 進路 | 愛知県立芸術大学「卒業生・修了生の進路」 |
| 卒業生・修了生 | 愛知県立芸術大学「活躍する卒業生・修了生」 |
| 施設 | 愛知県立芸術大学「校地・校舎」/法隆寺金堂壁画模写展示館/芸術資料館 |
海外の美術系大学と比較したい方は、QS世界大学ランキング アート&デザイン部門の解説もあわせてご覧ください。国内の美大については国内美大の比較記事、国内の芸術・美術大学の全体像は国内の芸術・美術大学のアート&デザイン学部/専攻をまとめた記事もご用意しています。






