こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。
皆さんは吉岡徳仁という人物をご存知ですか?
東京2020オリンピックの聖火リレートーチをデザインした人として、名前を知っている方もいるかもしれません。1967年に佐賀県で生まれたデザイナーであり、アーティストです。120枚の薄い紙を重ねた椅子、水を固めたようなガラスのベンチ、水晶の結晶を育てて作った椅子、ガラスでできた茶室など、「ものの形」よりも「光」や「自然の仕組み」を主役にした作品で知られています。作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)やパリのポンピドゥー・センター、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)などに収蔵されています。
本記事ではそんな吉岡徳仁の人生と作品についてご紹介します。吉岡は存命で、作品の著作権も保護されています。そのため作品の画像は、著作権法で認められた「引用」の範囲で、解説している段落の直後に、作家の公式サイトの画像を出典つきで載せています。あわせて、図解と表で全体の見取り図をお届けします。
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Toggle吉岡徳仁って?
まずは基本情報を表で確認しましょう。
基本情報
| 本名 | 吉岡 徳仁(よしおか とくじん/Tokujin Yoshioka) |
| 生年月日(没年月日) | 1967年(月日は記録なし)。存命 |
| 国籍・出身 | 日本/佐賀県 |
| 学歴 | 1986年、桑沢デザイン研究所を卒業 |
| 分野 | デザイン、建築、現代美術 |
| 傾向 | 光や自然の仕組みを素材にし、紙、繊維、ガラス、結晶、水などから形を生み出す |
| 師事した人物・影響を受けた人物 | 倉俣史朗、三宅一生のもとでデザインを学ぶ。本人は、20代前半にアンリ・マティスのロザリオ礼拝堂(フランス・ヴァンス)を訪れた体験が、建築への夢につながったと語っています |
| 活動の拠点(2026年10月時点) | 吉岡徳仁デザイン事務所(TOKUJIN YOSHIOKA INC.、2000年設立) |
表のとおり、生い立ちについて公式資料から確かめられるのは、生年と出身地、卒業した学校ぐらいです。私生活については、本記事では扱いません。その代わり、残してきた作品と、本人が自分の言葉で語った制作の考え方を、ていねいにたどっていきます。
吉岡が師事した一人、倉俣史朗については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
経歴と作品
吉岡徳仁の仕事は、椅子、ガラスの彫刻、建築、展覧会の空間、聖火リレートーチ、駅や商業施設のパブリックアートまで、とても幅広いものです。けれども、並べて見ていくと、一つの問いが通っているように見えます。それは「自然はなぜ人の心を動かすのか」という問いです。最初に、歩みの大きな流れを図で確認しておきましょう。

佐賀県に生まれ、倉俣史朗と三宅一生に学ぶ(1967〜2000年)
吉岡徳仁は1967年、佐賀県に生まれました。1986年に桑沢デザイン研究所を卒業しています。卒業後は、家具やインテリアのデザイナーである倉俣史朗と、ファッションデザイナーの三宅一生のもとでデザインを学びました。
三宅一生との関わりは長く続きます。東京都現代美術館の資料には、20年以上にわたってISSEY MIYAKEの展覧会やスペースのデザインを手がけたとあります。作家の公式サイトの展覧会一覧には、「ISSEY MIYAKE MAKING THINGS」展が1998年から2000年にかけて、パリのカルティエ現代美術財団、ニューヨークのエース・ギャラリー、東京都現代美術館などを巡ったと記録されています。美術手帖の紹介では、1990年にオランダのステデリック美術館で開かれた「Energieen」展も、ISSEY MIYAKEとの共同プロジェクトの一つです。
この時期の吉岡は、服づくりの現場で「素材から発想する」ことを身につけたのだと思います。のちに紙や繊維、ガラス、水晶へと広がっていく素材への関心は、ここに根があると考えます。そして2000年、吉岡は自身の事務所「吉岡徳仁デザイン事務所」を設立しました。
紙の椅子『Honey-pop』(2001年)
独立の翌年に発表した『Honey-pop』は、吉岡の名前を世界に広めた作品です。作家の公式サイトによれば、薄い紙を120枚重ね、1センチの厚みの層を広げると、ハチの巣のようなハニカム構造が生まれます。人が座ったときに初めて形が決まり、そこで作品が完成する椅子です。
公式サイトの説明では、この椅子は、重ねたグラシン紙に切り込みを入れてあり、広げると蜂の巣状の構造になります。軽くて強い、自然が作った究極の建築の形を、紙で再現したといえます。最終的な形は、座る人のお尻の形に応じて整います。
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)の所蔵品記録にも、この椅子が残っています。記録では、2001年に日本でデザインされ、2005年に作られた、蛇腹に折った白い紙の形で、広げる前の平らな状態のものです。説明には、使う人は紙と空気の上に座る、とあります。紙の層そのものが椅子の構造になっていることが分かります。
注目したいのは、「椅子を作る」のではなく「椅子になる前の状態を作る」という発想です。完成の最後の工程を、使う人に任せているともいえます。公式サイトの紹介によれば、この作品はMoMA、ヴィトラ・デザイン・ミュージアム、ポンピドゥー・センター、V&Aに永久所蔵されています。


光学ガラスの『Water Block』とオルセー美術館(2002〜2011年)
2002年から、吉岡はガラスのプロジェクトに取り組み始めます。公式サイトの紹介によると、その最初がガラスのベンチ『Water Block』です。ほかに『透明な日本家屋』『雨に消える椅子』(いずれも2002年)、世界最大の光学ガラスで作られたテーブル『Waterfall』(2005〜2006年)などが続きました。『Waterfall』は、長さ4.5メートルの光学ガラスの塊から作られたテーブルで、岩を流れ落ちる滝の勢いを写しとっています。
『Water Block』は、透明なガラスのブロックから作った、光の彫刻のようなベンチです。水面の反射を思わせるきらめきを持ち、自然の美しさとエネルギーを宿しています。座ることができる彫刻でもあります。
この作品が広く知られるきっかけになったのが、パリのオルセー美術館です。2011年、オルセー美術館は印象派ギャラリーの改修を行い、吉岡も参加しました。作家の公式サイトによれば、マネ、ドガ、モネ、セザンヌ、ルノワールらの代表作とともに、10脚の『Water Block』が常設で展示されています。印象派の画家たちが描いた光とガラスのベンチが、同じ空間で響き合うことをねらった展示です。


繊維と結晶、自然のルールを借りて作る(2003〜2010年)
紙のあとに吉岡が向かったのは、繊維です。『PANE chair』(2006年)は、作家の公式サイトによれば、構想から3年をかけて発表された椅子で、作り方はパンを焼く工程にとてもよく似ています。半円筒形の繊維のかたまりを丸め、紙の筒に入れて、窯で約30分焼くと、繊維が椅子の形を記憶します。繊維そのものが構造体になっている、これまでにない椅子で、空気の上に座るような感触だと説明されています。
同じ紹介文には、硬さで強度を作るのではなく、分散された力が強靭さを引き出すことが、吉岡の考える「未来の構造」への試みだとあります。ここに、吉岡の仕事を理解する鍵があると思います。形を押しつけるのではなく、素材の性質に仕事を任せる。そのために、まず自然の仕組みをよく観察するのです。

その考え方を、さらに先へ進めたのが『VENUS(ヴィーナス)』(2008年)です。水槽の中で小さな結晶を育てて、天然の水晶の椅子にします。作家の公式サイトには、「自然がつくりだす造形には、人間の想像を超える美しさがある」という本人の言葉が載っています。時間とともに、まるで女神が現れるように姿を見せる椅子だと説明されています。
結晶を使った作品には、絵画もあります。公式サイトによると、『白鳥の湖』『Destiny』『Moonlight』などの結晶の絵画は、結晶が育つあいだに音楽を流し、音の振動で結晶の形が変わることで完成します。「一つの曲が一つの絵を作る」と紹介されています。『ROSE』は、バラの色素を結晶にした彫刻です。
2008年、吉岡は21_21 DESIGN SIGHTで、自身がディレクションを務めた展覧会「セカンド・ネイチャー」を開きました。東京都現代美術館の資料によると、この展覧会には、およそ40万本ものファイバーを天井から吊るして空間全体を雲のように覆うインスタレーション『CLOUDS』も出品され、話題になりました。
虹の教会とガラスの茶室(2010〜2022年)
吉岡は、20代の頃から構想していた建築があります。作家の公式サイトに載った本人の文章によると、アンリ・マティスが晩年に仕上げたロザリオ礼拝堂(ヴァンス)を20代の初めに訪れ、圧倒的な光と鮮やかな色に満たされる不思議な体験をしました。そこから「いつかこのような建築をつくりたい」という思いを強く抱いた、といいます。
その夢が形になったのが『Rainbow Church(虹の教会)』(2010年、2013年)です。教会を象徴するステンドグラスは、500本のクリスタルプリズムでできています。自然の光をプリズムが分けて虹の色に変え、空間に「奇跡の光」があらわれます。人が光を感じることで完成する建築だと、公式サイトで説明されています。

2011年、第54回ヴェネチア・ビエンナーレの関連イベント「Glasstress 2011」で、『ガラスの茶室 光庵(Glass Tea House KOU-AN)』の構想が発表されました。公式サイトによると、2015年には京都・天台宗青蓮院門跡の将軍塚青龍殿の舞台に初めて設置されました。その後、2018年から2019年に佐賀県立美術館、2019年から2022年に国立新美術館(東京)で展示されています。
公式サイトの説明では、この茶室には、伝統的な茶室にある畳も、掛け軸も、花もありません。代わりに、床には水面のようなきらめきがあり、巨大なプリズムが日光を受けて虹を映します。自然と一体になり、物質の概念から解き放たれた「光の建築」が、詩的な情景を生む、と本人は説明しています。

将軍塚について、公式サイトには、延暦13年(794年)に桓武天皇がこの地を訪れ、京都こそが都にふさわしい場所だと確信して都の建設に着手したと言われている、と紹介されています。吉岡は、京都という日本文化の源の場所から、世界へ向けて、日本文化の起源を考える新しい体験を届けたいと考えたそうです。
ブランドの空間、展覧会、受賞(2000年代〜2010年代)
吉岡は、企業やブランドとの仕事も数多く手がけています。作家の公式サイトの作品一覧には、ISSEY MIYAKE、Hermès、Swarovski、Cartier、Louis Vuitton、Christian Dior、UNIQLO、Lexus、KDDIなどの名前が並びます。家具ではモローゾ、カルテル、ドリアデ、カッシーナなどのブランドとも仕事をしています。
たとえば2004年の『Souffle(吐息)』は、メゾンエルメスのウィンドウディスプレイです。公式サイトでは、日常の「動き」をユーモアを込めて表現したかったと説明されています。モニターに映した女性の息に合わせて、スカーフがふわりと揺れます。
2005年の『Stardust』は、スワロフスキーとのシャンデリアです。約5,000本の光ファイバーの先に、約2万個のクリスタルをつけ、それぞれが映像の端末になる構成だったと、公式サイトに記されています。
ほかにも、東京都現代美術館の資料には、照明『TōFU』(YAMAGIWA)、au design projectの携帯電話『MEDIA SKIN』、iidaの『X-RAY』など、身近な製品のデザインが挙げられています。2005年から2006年にかけては、トヨタ自動車の高級車ブランドLexusと組んだ「Tokujin Yoshioka x Lexus」展が、公式サイトの展覧会一覧に載っています。展覧会、家具、携帯電話、車、化粧品のパッケージまで、領域を限らずに引き受けてきたことが、吉岡の仕事の幅広さにつながっていると考えます。
この幅広さのなかでも、毎回の仕事は「素材の性質を見きわめ、その素材ならではの現象を起こす」という点で共通しているように見えます。製品のデザインでも、展覧会の空間でも、まず光や空気、水の動きといった自然の現象を観察する。そのうえで、人が体験したときに初めて完成するように、形を決め切らないままにしておく。この姿勢は、紙の椅子から聖火リレートーチまで、一貫しているのではないでしょうか。
美術手帖の作家紹介には、建築に関わるプロジェクトも挙げられています。高度経済成長期に建てられた住宅をリノベーションする「MUJI INFILL+」と、古い構造体から新しい建築を生み出す「Transforming a Japanese House」です。家具から建築へ、新しく作るだけでなく既にあるものの見方を変える仕事にも、領域を広げていることが分かります。
2007年には、Design Miamiの「Designer of the Year」に選ばれました。公式サイトによれば、吉岡はマイアミの自然を要素にして空間全体をデザインしました。その一つが、透明なストローで竜巻を表現したインスタレーション『Tornado』です。もう一つが、プリズムガラスを白金の型に流し込んでつくった『Rainbow Chair』で、背もたれが日光を屈折させ、座面のまわりに虹の色を映します。
展覧会では、2009年に東京国立博物館の表慶館で開かれた「Story of…」カルティエ クリエイション展の総合監修を務めました。東京都現代美術館の資料には、およそ12万人が訪れたと記録されています。2010年には森美術館の「ネイチャー・センス展」に参加し、15メートルにも及ぶインスタレーション『Snow』を発表しました。
東京都現代美術館の資料には、2010年に韓国のソウルで開かれた個展「Tokujin Yoshioka _ SPECTRUM」が、それまででいちばん大きな規模の個展で、会期の延長後に幕を閉じたと記録されています。この展覧会では、虹の教会の一部として、500本のクリスタルプリズムでできたステンドグラスも発表されました。
2013年10月から2014年1月には、東京都現代美術館で個展「吉岡徳仁 クリスタライズ」が開かれました。展覧会の趣旨について、吉岡は「自然のエネルギーを結晶化し作品を生み出す」という意味を込めたと書いています。
作家の公式サイトの展覧会一覧には、その後の活動も並んでいます。2014年にはヴェネチア・ビエンナーレの第14回国際建築展、2015年にはイギリスの邸宅チャッツワース・ハウスでの「Make Yourself Comfortable」、2016年には京都・金閣寺での『Water Block – Golden Brass』があります。美術館の展示室だけでなく、歴史ある庭や寺院といった場所にも作品を置いてきたことが分かります。
2017年には資生堂ギャラリーで『SPECTRUM』を発表しました。公式サイトによれば、壁面の200個のプリズムが、およそ4,000本の虹の光線を屈折させる作品です。光がなぜ人を惹きつけるのかという問いから、自然光のもつ感覚を、研究と実験を通して探ってきた成果だと説明されています。
こうした仕事は、国際的にも評価されてきました。主な受賞を表にまとめます。
記録をたどると、評価は早い時期から始まっています。東京都現代美術館の資料には、1997年のJCDデザイン賞大賞、2001年の桑沢賞が載っています。2007年には、『ニューズウィーク日本版』が選ぶ「世界が尊敬する日本人100人」の一人にも選ばれました。
| 年 | 受賞 |
|---|---|
| 2002年 | 毎日デザイン賞(2001年度) |
| 2007年 | 芸術選奨新人賞、グッドデザイン賞金賞、Design Miami / Designer of the Year 2007 |
| 2008年 | Wallpaper Design Awards 2008 / Best furniture designer、DFA Design for Asia Awards 2008 Grand Award |
| 2009年 | ELLE DECO International Design Awards / Designer of the Year 2009 |
| 2011年 | A&W Architektur & Wohnen / Designer of the Year 2011 |
| 2012年 | Maison & Objet / Creator of the Year 2012 |
| 2017年 | Milano Design Award 2017 |
作品の収蔵先も、作家の公式サイトに一覧があります。次の表は、その一部です。
| 国・地域 | 収蔵先 |
|---|---|
| アメリカ | ニューヨーク近代美術館(MoMA)、クーパー・ヒューイット国立デザイン博物館、シカゴ美術館、サンフランシスコ近代美術館 |
| フランス | ポンピドゥー・センター(国立近代美術館)、オルセー美術館、パリ装飾芸術美術館 |
| イギリス | ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A) |
| ドイツ | ヴィトラ・デザイン・ミュージアム |
| 日本 | 東京都現代美術館 |
| 香港 | M+ |
聖火リレートーチ(2019〜2020年)
吉岡の名前を、デザインに詳しくない人にまで広めたのが、東京2020オリンピックの聖火リレートーチです。作家の公式サイトに、本人の言葉が載っています。トーチのかたちは、日本を代表する花である桜をモチーフにしています。
製法についても、公式サイトに説明があります。伝統的な「桜の花」の形を、アルミニウムの押出成形の技術と精密な切削加工で作り、継ぎ目のない、徹底的に軽いトーチにしました。素材の一部には、アルミニウムの再生材が使われています。

吉岡が強調するのは、トーチの本体だけでなく、炎の形こそが大切だということです。花びらから五つの炎が別々に立ち上がり、トーチの中心で一つになって、平和の象徴である「桜の炎」になります。桜が日本各地で咲くように、聖なる炎が日本をめぐる。その物語が、人々の心を動かし、行く手を照らしてほしいと、本人は書いています。

あわせて、聖火リレートーチと同じ桜のモチーフを使った「聖火リレー記念燃焼台」も、2020年の作品として手がけています。
都市の光、ガラスの聖火、氷の椅子(2020〜2025年)
近年の吉岡は、都市の中のパブリックアートも手がけています。2020年10月に東京メトロ銀座駅のリニューアルを記念して設置された『Crystal of Light(光の結晶)』は、636個のクリスタルガラスの光でできた彫刻です。ガラスの位置は世界地図をもとにプログラムされ、世界を光で表しています。「地球に生きるものとして世界がひとつになる」という平和への願いを込めた作品だと、公式サイトで紹介されています。
2022年には、東京ミッドタウン八重洲に高さ10メートルの『STAR』が設置されました。2,000本を超える八角形の鏡面ステンレスのロッドが集まり、結晶のような形をつくっています。昼は日光を、夕方は琥珀色の光を、夜は夜空の光を映し、見る時間によって表情が変わる彫刻です。
2023年には21_21 DESIGN SIGHTで「TOKUJIN YOSHIOKA_FLAME」を開き、ガラスのトーチと聖火台を発表しました。公式サイトによると、これは2024年の「JAPAN GAMES SAGA 2024」(旧・国民体育大会)の式典のために設計されたものです。透明なガラスで作られた、世界で初めてのリレー用トーチで、炎が空中に浮かんで見えると説明されています。聖火台も、透明なガラスのかたまりとしては世界初です。吉岡の出身地である佐賀県の大会のために、ガラスという素材で新しい炎の形を作ったことになります。
2025年には、ミラノ・デザインウィークで「TOKUJIN YOSHIOKA – Frozen」を開催しました。氷の自然な構造から作った『Aqua Chair』を中心にした展覧会で、公式サイトによれば、形のない透明な水を「光の彫刻」へと変えることに挑んだ展示です。
書籍も出ています。東京都現代美術館の資料の作品集・書籍の欄には、『Tokujin Design』(ギャップ出版、2001年)、『Tokujin Yoshioka Design』(ファイドン、イギリス、2006年)、『みえないかたち』(アクセスパブリッシング、2009年)、『TOKUJIN YOSHIOKA』(リッツォーリ、アメリカ、2010年)が挙げられています。作品を実際に見に行く前に、作家本人の言葉と作品の写真をあわせて眺めてみるのも一つの方法です。

まとめ
いかがだったでしょうか。吉岡徳仁は、1967年に佐賀県で生まれ、倉俣史朗と三宅一生のもとで学んだのち、2000年に自身の事務所を設立しました。120枚の紙で作った『Honey-pop』、繊維を焼いた『PANE chair』、水槽で結晶を育てた『VENUS』、オルセー美術館に常設される『Water Block』、プリズムの建築『Rainbow Church』、ガラスの茶室『光庵』、そして東京2020の聖火リレートーチと、作品の素材も大きさもさまざまです。
けれども、どの作品にも共通するものがあります。自分が形を決めるのではなく、素材や光や自然の仕組みに、形づくりの一部を任せるという姿勢です。作品の画像と見比べながら、気になった作品の公式ページを開いてみてください。
吉岡の作品を見るときは、「何でできているか」と「どう変化するか」の二つに目を向けてみてください。紙は座る人によって形が決まり、結晶は時間とともに育ち、ガラスは光の角度で表情を変えます。完成した形を見るというより、変化の途中に立ち会う感覚に近いと、私たちは考えます。本記事で紹介した作品は、どれも作家の公式サイトで作品ごとの説明が読めます。
Euphoric " " の視点
吉岡徳仁は、東京2020オリンピックの聖火リレートーチについて、トーチの本体だけでなく、炎の形こそが大切だと強調しています。花びらから立ち上がる炎が一つになり、「桜の炎」になるという構想です。
2023年には、出身地である佐賀県の大会のために、透明なガラスのトーチを発表しました。公式サイトは、炎が空中に浮かんで見えると説明しています。素材はアルミニウムからガラスへ変わりましたが、どちらも、手に持つ道具より、その道具が運ぶ炎を見せることに心を砕いた仕事だと考えます。
道具をつくる人は、つい道具そのものを目立たせたくなるかもしれません。けれども吉岡のトーチからは、道具が運ぶものを主役にするという考え方が読み取れると考えます。同じ題に二度向き合い、異なる素材で答えを出していく姿勢に、次の仕事への期待がふくらみます。
この作品を見に行くには
記事で紹介した作品は、次の館などで公開されています。展示替えがあるため、最新の情報は公式サイトをご確認ください。






