タグライン・スローガンとは?違いと作り方を名作コピーで解説

タグライン・スローガンとは?違いと作り方を名作コピーで解説

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「うちの会社にも、タグラインを」。ブランディングの場面でよく出る要望です。ところが、タグライン、スローガン、キャッチコピーは、似ているようで役割が異なります。違いを曖昧にしたまま言葉を作ると、「響きはいいが、使われない言葉」になりがちです。

この記事では、次の3点が分かります。

  • タグラインの定義と、スローガン・キャッチコピーとの違い
  • Nike、Apple、西武百貨店の名作コピーから読み取れる共通点
  • タグラインの作り方と、よくある失敗

タグラインとは

タグラインとは、ブランド全体の価値や姿勢を短い言葉で伝え、長期にわたって使い続ける言葉です。 特定の商品ではなく、ブランドそのものを表す点が特徴です。ロゴと並べて使われることも多く、ブランドの「署名」のような役割を持ちます。

タグライン・スローガン・キャッチコピーの違い

海外のブランディング解説では、一般に次のように整理されます。ただし、定義はサイトや現場によって異なり、同じ意味で使われることもあります。

タグライン、スローガン、キャッチコピーの違いを、役割と使う期間で比較した図。ブランディングで言葉を整理する目安になる。要点を一目で確認できる
図:タグライン・スローガン・キャッチコピー
言葉役割期間
タグラインブランド全体の価値を伝える長期(数十年に及ぶことも)
スローガンキャンペーンや商品など、特定の目的に紐づく短期(終了とともに役目を終える)
キャッチコピー広告で目を引くための言葉媒体や広告ごと

整理の目安として、「ブランドの核を言うのか、今回の目的を言うのか」と考えると区別しやすくなります。成功したスローガンが、後にタグラインとして定着する例もあります。

日本では「スローガン」が企業の標語全般を指して使われることも多く、会社によって呼び方は異なります。社内で言葉を決める際は、まず「何を指して使うか」を揃えることをお勧めします。

名作コピーに学ぶ

事実関係は、出典を確認できた範囲で述べます。引用は短くとどめます。

Nike「Just Do It」(1988年)

Nikeの「Just Do It」は、広告会社ワイデン・アンド・ケネディ(Wieden+Kennedy)の共同創業者ダン・ワイデン(Dan Wieden)が考案したとされています。同社は1982年にポートランドで創業し、Nikeは最初のクライアントでした。なお、考案の年は1987年とする資料もあり、広告としての最初の放送は1988年とされています。報道では、1988年の広告に、当時80歳のランナー、ウォルト・スタックが登場したと伝えられています。

このコピーは、特定の靴ではなく、「ブランドの姿勢」を語っています。商品が変わっても、スポーツに向き合う人への姿勢は変わりません。長く使えるタグラインの典型です。なお、コピーの着想に関するエピソードは、ワイデン氏自身の語りに基づくものであり、本記事では詳細に立ち入りません。

Apple「Think different」(1997年)

Appleの「Think different」は、TBWA\Chiat\Dayが制作し、1997年9月28日にテレビCMが最初に放送されたと報じられています。アインシュタイン、ガンジー、ピカソなど歴史上の人物を白黒の映像で取り上げ、製品の仕様ではなく、ブランドが大切にする姿勢を語りました。1998年にはテレビCMがエミー賞のコマーシャル部門を受賞しています。

コピーの創作者については、クリエイティブ・ディレクターや、当時のスティーブ・ジョブズ氏の関与をめぐって、資料によって語り方が異なります。そのため、本記事では特定の個人に帰属させず、制作会社の名前までにとどめます。

西武百貨店「おいしい生活。」(1980年代)

日本の例として、西武百貨店の「おいしい生活。」があります。糸井重里氏によるコピーとして知られ、同じ時期の「不思議、大好き。」とともに、1980年代のコピーライター・ブームを象徴する言葉とされています。糸井氏へのインタビュー記事では、このコピーが映画『甘い生活』に由来すると語られています。

当時の西武は、ブランド力で老舗百貨店に及ばず、「新しい文化を売る」という方向で勝負したという分析があります。商品の安さや品揃えではなく、「どんな暮らしを良いと考えるか」という価値観を提示した点が、この言葉の特徴だと考えられます。なお、制作・出稿の正確な年は、資料により表記が異なるため、本記事では「1980年代」とするにとどめます。

3つに共通するもの

私たちの見方として、次の共通点が読み取れます。

Nike、Apple、西武百貨店の名作コピーに共通する、姿勢を語る・短い・解釈の余地がある・行動と結びつく、という4つの特徴をまとめた図
図:名作コピーに共通する4つの特徴
  • 商品の説明ではなく、姿勢や価値観を語っている
  • 短く、声に出して言える
  • 受け手に解釈の余地がある(「どう生きるか」「何を考えるか」を、受け手が補う)
  • 企業の実際の行動と結びついて使われてきた

アートと同様に、説明しすぎない余白が、記憶に残る理由の一つだと考えられます。

補足 De Beersの例

ダイヤモンドのDe Beersの「A Diamond Is Forever」は、1947年に導入された長期のタグラインとして、ブランディング解説でしばしば取り上げられます。De Beers Groupの公式沿革でも、広告会社N W Ayerのコピーライター、フランシス・ジェレティ(Frances Gerety)が1947年にこのスローガンを生み出したと紹介されています(一部の資料には1948年とする記述もあります)。

タグラインの作り方

タグラインの作り方を、ブランドの核の確認、言いたいことの絞り込み、短い形、禁止ワード、社内外での確認の5ステップで示した図
図:タグラインの作り方 5ステップ

ステップ1 ブランドの核を確認する

タグラインの前に、ブランドの軸(コンセプトや存在意義)が必要です。軸が曖昧なまま言葉だけを作ると、他社にも当てはまる言葉になります。

ステップ2 言いたいことを3つに絞る

伝えたいことを書き出し、本当に必要なものを3つ以内に絞ります。さらに、その中から1つに絞ります。

ステップ3 短く、声に出して言える形にする

目安は、息継ぎなしで言える長さです。文字数の決まりはありませんが、短いほど覚えやすくなります。

ステップ4 禁止ワードを決める

「革新」「最高」「信頼」のように、どの会社にも使える言葉を避けます。避けることで、その会社らしい言葉が残ります。

ステップ5 社内外で試す

社員や関係者に見せて、自分の言葉で言い換えられるか、会社の行動と矛盾しないかを確認します。

評価のチェックリスト

  • ブランドの核に結びついているか
  • 他社に置き換えても成り立たないか
  • 声に出して言えるか
  • 数年使い続けても、ずれないか
  • 実際の行動で、その言葉を裏づけられるか

よくある失敗

  • 響き優先:音の良さだけで選び、ブランドの核と無関係
  • スローガンをタグラインにしてしまう:特定の商品や時期に依存し、数年で使えなくなる
  • 言葉だけが先行する:実際の行動が伴わず、かえって信頼を損なう
  • 頻繁に変える:言葉が定着する前に変更してしまう

実務での使い方

タグラインは、ロゴ、名刺、ウェブサイト、パンフレット、空間のサインなど、あらゆる接点で一貫して使われてはじめて機能します。オフィスや店舗に掲げる場合は、単なる標語としてではなく、空間やアートと一緒に設計すると、言葉の意味が体験として伝わりやすくなります。リブランディングや周年事業などの節目に、計画段階で専門家に相談しておくと、言葉と形のずれを防ぎやすくなります。

日本語のタグラインを考えるときの視点

日本語は、同じ意味でも表記や語尾によって印象が大きく変わります。以下は、私たちの見方を含む視点です。

  • 句点の有無:「おいしい生活。」のように句点で言い切る形は、断定の強さと、静かな余韻を同時に持ちます。句点の有無だけでも、受ける印象は異なります
  • ひらがな・カタカナ・漢字:同じ言葉でも、ひらがなは柔らかく、漢字は硬く、カタカナは新しく見えます。ブランドの人格に合わせて選びます
  • 主語を置かない:主語を省くと、受け手が自分に引きつけて読めます。反対に、主語を明示すると、企業の宣言になります
  • 音の響き:声に出したとき、リズムが整っているかを確認します

英語の言葉を使う場合は、意味が正しく伝わるか、日本語話者にどう読まれるかを確認します。直訳した言葉が、意図と異なるニュアンスになることもあります。

タグラインを「使い続ける」ための仕組み

タグラインは、決めた時点ではなく、使い続けた時間の中で意味を持ちます。そのためには、運用の仕組みが必要です。

ガイドラインに明記する

使う場所、ロゴとの位置関係、書体、日本語・英語の表記などをブランドガイドラインに明記します。担当者が代わっても、同じ使い方が保てます。

社内に説明できる人を増やす

社員が、タグラインの意味を自分の言葉で説明できるようにします。意味を説明できない言葉は、外に向けても力を持ちません。この点は、社内に向けたブランディングとも関わります。

定期的に見直す日を決める

頻繁に変更することは勧められませんが、事業や社会の前提が大きく変わったときには、見直す機会があってもよいはずです。あらかじめ、見直しの目安(たとえば周年や大きな事業転換)を決めておくと、判断しやすくなります。

空間やアートと組み合わせる

言葉は、単独で伝えるよりも、空間や作品と組み合わせることで、深く記憶されることがあります。受付に掲げる、作品のキャプションに添える、ホテルの客室に置く、といった工夫が考えられます。

ただし、言葉を壁に大きく掲げるだけでは、空間は広告のようになります。言葉が説明するのではなく、作品や空間の体験の中で、言葉の意味が感じられる設計が望まれます。リブランディングやオフィス移転の節目の計画段階で専門家に相談すると、言葉と形の整合を取りやすくなります。

まとめ

  • タグラインは、ブランド全体の価値を短く伝え、長期にわたって使う言葉です。スローガンは、特定の目的に紐づく短期の言葉として区別されます。
  • Nike、Apple、西武百貨店の名作コピーは、商品説明ではなく姿勢や価値観を語り、解釈の余地を残しています。
  • 作るときは、ブランドの核を確認し、言いたいことを絞り、短く声に出せる形にします。
  • 言葉は、実際の行動と空間によって裏づけられてはじめて機能します。

よくある質問(FAQ)

Q1. タグラインとスローガンは、どちらを作ればよいですか。

ブランド全体の姿勢を表したいならタグライン、特定のキャンペーンや商品を伝えたいならスローガン、という目安があります。まずはブランドの核を言葉にしたうえで、必要に応じて両方を持つ会社もあります。

Q2. 英語のタグラインのほうが良いですか。

言語は、伝えたい相手によって選びます。国内の顧客が中心なら日本語が伝わりやすく、海外展開があるなら英語を併用する方法もあります。意味が正しく伝わるかの確認が大切です。

Q3. タグラインは商標登録が必要ですか。

使い方によって異なります。法務の判断が必要な部分ですので、最終的な判断は、弁理士・弁護士などの専門家にご確認ください。


この記事を書いた Euphoric " " について

Euphoric " " は、ユアムーン株式会社が運営するアートメディアです。ユアムーンは、デザインとクリエイティブを軸にしたブランディング会社です。ブランドの言語化から、ロゴやWebサイトなどのデザイン、社内外への発信までを一貫して設計しています。ご希望に応じて、アートの選定・導入もお手伝いしています。

短い言葉は、ロゴやビジュアルと並んではじめて意味が深まります。ブランドの言語化と、それを表すデザインや発信を、一貫して設計しています。

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