デザイン・アカデミー・アイントホーフェン(DAE)とは?8スタジオ制の学士課程と学費・出願を解説

デザイン・アカデミー・アイントホーフェン(DAE)とは?8スタジオ制の学士課程と学費・出願を解説
アイキャッチ使用画像|DAE(作成 2026-10-01 / Saki) Commonsファイル : Eindhoven-Witte_Dame_(1).jpg Commonsページ : https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Eindhoven-Witte_Dame_(1).jpg 画像URL : https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/92/Eindhoven-Witte_Dame_%281%29.jpg/1280px-Eindhoven-Witte_Dame_%281%29.jpg ライセンス : CC0(パブリックドメイン相当) 撮影者 : Romaine 撮影日 : 2016-01-12 被写体 : ウィッテ・ダーム(DAE校舎/アイントホーフェン) 画像内の表記 : 画像:ウィッテ・ダーム(DAE校舎/アイントホーフェン) / Photo: Romaine / CC0 / Wikimedia Commons 処理: 切り取り・色調整なし。object-fit:contain で全体を収め、余白は黒帯。 文字は写真の上に重ねず、右のクリーム地パネル(別領域)に配置。 大学のロゴは使用していません(仕様書15-2)。

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デザイン・アカデミー・アイントホーフェン(Design Academy Eindhoven、通称DAE)は、オランダ・アイントホーフェンにあるデザインの単科大学です。QS世界大学ランキングのアート&デザイン部門2026年版で世界10位にランクインしています。1947年創立で、学生数は700名ほどと決して大きな学校ではありませんが、学士課程が「デザインの分野」ではなく「関心のテーマ」でスタジオを分けているという、他校にはあまり見られない構成が特徴です。

毎年秋にはアイントホーフェンで開かれるダッチ・デザイン・ウィーク(Dutch Design Week)の会期中に卒業制作展が開かれ、新進デザイナーの発表の場として世界的に注目されてきました。この記事では、公式サイト(designacademy.nl)と、校舎について記載のあるオランダ文化遺産庁(RCE)の国指定記念物登録簿で確認できた情報をもとに、DAEの歴史、学士課程と修士課程の中身、学費、出願の進め方までをまとめました。それでは早速いってみましょう。

デザイン・アカデミー・アイントホーフェンの基本情報

正式名称Design Academy Eindhoven(デザイン・アカデミー・アイントホーフェン、通称DAE)
前身Akademie voor Industriële Vormgeving(AIVE)
創立1947年
初代ディレクタールネ・スメッツ(Renee Smeets)
現校名への変更1999年(公式サイトの沿革ページによる。ディレクターにリデヴィ・エデルコートが就任した年)
所在地Emmasingel 14, 5611 AZ Eindhoven, The Netherlands(旧フィリップス工場群の一棟「Witte Dame」内)
学生数700名超(2026年公式サイト)
出身国40か国以上
国際学生の比率学士課程の約70%、修士課程の約90%がオランダ国外出身
課程学士(BA)4年制(8スタジオ制)/修士(2年制、5プログラム、学位はMaster of Arts in Fine Art and Design)
運営体制Raf De Keninck(エグゼクティブボード議長 兼 General Director)。クリエイティブディレクターはラモン・アマロ氏が2026年2月2日付で退任して以降空席で、De Keninck氏が職務を代行中(2026年10月1日時点)
QSランキングアート&デザイン部門2026年版で世界10位、総合スコア81.1(学術評判81.9/雇用者評判73.4)。前年も10位で順位は変わらず

順位の読み方は【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキングで詳しく解説しています。同記事によれば、1位のロイヤル・カレッジ・オブ・アート(98.5)と10位のDAE(81.1)の差は17点以上あり、TOP10の中でも下のほうに位置する学校という立ち位置です。それでも、学生数700名ほどの単科大学が、規模の大きな総合大学や美術大学と並んでTOP10に入っている点は、小さな学校としては際立った結果と言えます。

1947年、「AIVE」として始まった学校

DAEの前身はAkademie voor Industriële Vormgeving(AIVE)で、1947年に初代ディレクターのルネ・スメッツによって設立されました。公式サイトは「オランダで初めて工業デザインの教育を明確な目的として掲げた学校」と説明しています。スメッツは自校の目標を「日常生活で使う、機能的で、形のよい、安価な製品への需要を満たす手助けをすること。同時に、売りやすい製品をつくることで輸出を後押しすること」と語っており、機能性と手ごろさが当初からの重視点でした。学校は順調に教育を重ね、1955年に最初の9名の卒業生を送り出しています。

1960年代に入ると、学生たちが学校運営への発言権を求めるようになり、ストライキや座り込みが起きました。1970年代には、学んでいる内容が実務とかけ離れているという不満も出ています。こうした時期を経て1983年、かつてAIVEで学んだヤン・ルカッセンが新しいディレクターに就任しました。ルカッセンはデザイナーのウルフ・モーリッツ、ヨーケ・ファン・デル・ハイデンとともにカリキュラムを刷新し、従来のテキスタイルデザインや製品プレゼンテーションといった学科を廃止して、「人間」を起点にした8つの学科(Man and Identity、Man and Living、Man and Food、Man and Work、Man and Information、Man and Transport、Man and Environment、Man and Leisure)に再編しています。

この体制は1999年まで続きました。ルカッセンから引き継いだのは、かつてDAEで教鞭を執っていたリデヴィ・エデルコートです。公式サイトの沿革ページは、エデルコートが1999年に学校名を現在の「Design Academy Eindhoven」へ変更したと記しています。理由は、所在地であるアイントホーフェンの名前を校名に入れたかったからだそうです。エデルコートの就任以降、DAEは国際的な発信を強め、卒業生の作品は世界各地のデザインイベントで紹介されるようになり、卒業生たちの仕事は「ダッチ・デザイン」を代表する存在として知られていきました。

アイントホーフェンのエマシンヘル通りに建つフィリップスの旧工場「ライトトーレン」
DAEの校舎と同じエマシンヘル通りに建つフィリップスの旧工場「ライトトーレン(Lichttoren)」。1911年と1921年に建てられ、アイントホーフェンが「光の街」と呼ばれた時代の象徴として国指定記念物に登録されています/撮影:Rosemoon/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)

旧フィリップス工場、Witte Dameのキャンパス

DAEの校舎は「Witte Dame(白い貴婦人)」と呼ばれる建物の中にあります。オランダ文化遺産庁(RCE)の国指定記念物登録簿によれば、この建物は1927年から1930年にかけて建てられたフィリップスの工場建築(棟記号EE・EF・EH)で、設計は建築家D. ローゼンブルフ、様式は機能主義(Functionalisme)です。鉄筋コンクリートによる6層の大規模建築で、1998年に建築家B. ディリックスの手で全面改修され、用途が転換されました。2002年6月24日に「エマシンヘルのフィリップス建築群」の一部として国指定記念物(rijksmonument 518718)に登録されています。公式サイトによれば、DAEが校舎として使い始めたのは1997年です。所在地はアイントホーフェン中心部のエマシンヘル(Emmasingel)通りです。

DAEの校舎がある旧フィリップス工場「Witte Dame」の外観
DAEの校舎がある「Witte Dame」。1927〜30年に建てられたフィリップスの工場建築です/撮影:Kris Roderburg/出典:Rijksdienst voor het Cultureel Erfgoed(オランダ文化遺産庁)経由 Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

ただし、DAEはこの校舎を離れることが決まっています。公式サイトの「DAE Moves」ページによれば、Witte Dameの賃貸契約は当初2027年1月で切れる予定でしたが、2025年4月に2028年まで延長されました。DAEはその後、アイントホーフェン市内のカナールゾーン(Kanaalzone)地区、かつてのカンピーナ乳業工場の隣にあたる場所(Kanaaldijk Zuid 3-5)に新設される専用キャンパスへ、2028年の夏休みに移転します。移転先を探す条件は、全教育課程を行うための延べ床面積10,000㎡と、1年生向けの学生住宅250戸の確保でした。それまでの間、DAEは段階的にWitte Dameのスペースを明け渡しながら新しい場所へ移行するとしています。

現在のWitte Dame(DAE校舎)の外観
現在のWitte Dame(DAE校舎)の外観/撮影:Romaine/出典:Wikimedia Commons(CC0)

学士課程:分野ではなく「関心のテーマ」で分かれる8つのスタジオ

DAEの学士課程は4年制です。公式サイトの学士課程メニューには、Fundamentals(基礎課程)、Studios(スタジオ)、Reflections(振り返り)、Internship(インターンシップ)、Focus(専門深化)、Exams(試験)という要素が並んでおり、スタジオでの実践を軸にカリキュラムが組み立てられていることがうかがえます。

そしてこの学校の最大の特徴が、専攻を「グラフィックデザイン」「プロダクトデザイン」のような分野別の学科で分けるのではなく、「スタジオ」という関心のテーマで分けていることです。公式サイトは「BAスタジオは2021年に導入され、それ以前の学科制度に代わるものとなった。現在は8つのスタジオがあり、それぞれがデザインに対する異なる見方、異なる焦点、異なる研究・実践のアプローチを代表している」と説明しています。各スタジオは、自身の実務も続けながら教える現役のデザイン専門家が率いています。学生は1年目の後期に最初のスタジオを選び、2年目に2つのスタジオモジュール、3年目前期に最後のモジュールを履修します。同じスタジオに残ることも、別のスタジオに移ることもできる仕組みです。

さらに珍しいのは、スタジオ自体が4年間の期限つきであるという点です。公式サイトは「スタジオは4年間設置され、つまり新しいスタジオが毎年度追加されていく」としており、DAEはデザイン実務者なら誰でも応募できる「新スタジオの公募」を常時行っています。これは、在学中の学生の関心や、学校の外にある社会の課題に対して、カリキュラムを絶えず更新し続けるための仕組みだと説明されています。

スタジオ名テーマ(公式サイトの説明を要約)
Studio Melting Realities物理世界とデジタル世界が溶け合う境界線を探る
Studio Body Building直感、好奇心、何かに気づく感覚を起点にする
Studio Do-Makeデザインを「つくること」と「行うこと」の両方から学ぶ
Studio Silva Systems森を「デザインのための超有機体」として捉え、生態系への責任と向き合う
Studio Technogeographies抽出・輸送・製造・消費・地政学といった世界各地の複雑なシステムを学士教育の中心に据える
Studio Thinking Hands心と身体の関係を重視し、手を動かしてつくることで知性を育む
The Morning Studio社会や日常の環境を舞台に、前向きな変化と集団的行動の道具としてデザインを探る
Studio Better Matter素材の変容という文脈の中で、デザイナーの役割を問い直す学際的スタジオ

修士課程:5つのMaster Programme

修士課程は2年制のフルタイム課程で、公式サイトは「複雑な世界の中でリサーチし、分析し、作品を生み出すための手段を学生に与える」と位置づけています。5つのプログラムがあり、志望するプログラムを選んで出願します。修了するとMaster of Arts in Fine Art and Designの学位が授与されます。出願の最低要件は学士レベルの学位で、デザイン・建築・アート・科学分野が望ましいとされていますが、美術史や人文学の学位でデザインへの明確な関心を示せる場合や、それ以外の学問的背景を持つ例外的な志望者も検討対象になるとしています。

プログラム内容(公式サイトの説明を要約)
Critical Inquiry Labリサーチに基づくデザインを、社会に働きかける手段として捉えるプログラム。素材・実験的プロセス・フィールドワーク・理論・執筆を等しく統合する
Geo-Design2020年発足のもっとも新しいプログラム。「地球とともにデザインする」ことをテーマに、物理・物質世界の現象とデザインの関係を探る
Contextual Designデザインを、文化的批評の実践として、世界を理解するための手段と捉える
Social Designデザインを倫理的・政治的な実践と位置づけ、社会的責任のレンズを通じて「まだ存在しない可能性」を形にする
Information Design情報の政治性と主体性、その生産の様式と文脈を探究する

修士課程への進学準備として、Pre-Masterプログラムという土曜開講のコースも用意されています。公式サイトは「多様な背景を持つ人が、デザインをリサーチの実践として理解する土台をつくるためのコース」で、5つの修士プログラムのいずれかへの準備を目的としていると説明しています。

学費:EU/EEA圏か、それ以外かで大きく変わる

DAEの学費は「法定授業料(Statutory Tuition Fee)」と「機関授業料(Institutional Tuition Fee)」の2区分に分かれています。法定授業料はオランダ政府が毎年定める金額で、オランダ・EU/EEA加盟国・スイス・スリナムの学生に適用されます。機関授業料はDAEの理事会が法定授業料をもとに設定する金額で、それ以外の国籍の学生(および、すでにオランダ政府出資の課程で学位を取得している学生)に適用されます。日本国籍の学生は原則としてEU/EEA圏外にあたるため、機関授業料の対象になります。一部、DUO(オランダの奨学金機関)が定める国籍要件を満たす場合に限り、EU/EEA圏外でも法定授業料が適用される例外もあるとされています。

区分学士(BA)修士(MA)
2026-27年度 法定授業料(EU/EEA・スイス・スリナム)€2,694€2,694
2026-27年度 機関授業料(それ以外の国籍)€12,449€19,762
2025-26年度 法定授業料€2,601€2,601
2025-26年度 機関授業料€12,019€19,080

このほか、卒業関連の費用を積み立てるGraduation Fundとして学士は年€105、修士は年€210が加算されます(分割払いを選ぶ場合は事務手数料€24が別途必要)。生活費については、DAE内部の学生アンケートとオランダの家計調査機関Nibudのデータをもとに、月あたり家賃・光熱費€635、食費や衣類などの個人的支出€453、書籍・教材費€343、交通費€67、その他€239という内訳が目安として示されています(公式サイトは合計額を示していませんが、単純に足すとおよそ月€1,737になります)。留学生はビザ申請の際、この生活費をまかなえる資金があることの証明を求められる場合があります。

修士課程では、合格通知を受け取った後の手続きとして、10日以内に授業料の前受金€500を納める必要があります。入学を辞退する場合、5月1日を過ぎるとこの€500は返金されません。

資金面の支援としては、NLスカラシップという制度があります。オランダ教育文化科学省とDAEが協力して提供するもので、初年度の生活費に充てる一時金€5,000が支給されます(学費には充当できません)。ただし注意が必要で、公式サイトによれば枠は修士課程の新入生向けに5件のみで、学士課程の新入生向けの枠は現在ありません。対象はEEA圏外(スイス・スリナムを除く)の国籍で、オランダの高等教育機関で学んだことがない人に限られます。学士課程のQ&Aページでは、奨学金について「オランダ国内にもDAEにもありません」とはっきり書かれており、学士で留学する場合は自国の奨学金制度を探すことになります。

出願の進め方:Studielinkからの出願

DAEへの出願は、オランダの高等教育機関が共通で使うStudielinkという出願プラットフォームを通じて行います。Studielinkで申請すると、大学独自のシステムOsirisのログイン情報が送られ、そこから出願フォームの記入と必要書類のアップロードに進む流れです。

学士課程の出願

出願にはオランダのHAVO・VWO・MBO-4の卒業資格、またはそれに相当する国際資格が必要です。該当する資格がなく21歳以上の場合は、「21+ HBOテスト」経由での出願も可能とされています。出願者は、DAEが毎年出す「ホームアサインメント」という課題に取り組みます。必修課題1つと、選択課題の中から1つの計2本が求められ、この2本が選考委員会との対話の中心になります。完成品だけでなく、リサーチや実験の過程も見せる必要があります。直近の募集サイクルの必修課題は「The Sleep Over: Experiencing Space」で、安全でありながらどこか落ち着かない、空間の感じ方を変えるような体験を設計してつくり、できれば一晩そこで過ごして記録し、改善するという内容でした。選択課題は「The Gift of Time(誰かに時間を与えるとはどういうことかを、物語と実物で探る)」「The Secret(人の秘密を体現し守るオブジェクトのデザイン)」など6本から選ぶ形式です。

ポートフォリオはこのホームアサインメントの結果に加えて、立体(3D)作品と自分の最近の作品をまとめたものを提出します。形式はA4のフォルダかドキュメントで、公式サイトは「デザインする必要はありません。大事なのは中身です」と説明しています。登録を完了した出願者は全員15分間のオンライン面接を受けます。直近のサイクルではポートフォリオのアップロード締切が2026年3月20日、結果通知が2026年4月22日でした。2026年10月1日時点で、公式サイトは2027/28年度入学の出願を受け付けておらず(「現在クローズしています」と表示)、最終出願締切を2027年2月28日23:59と案内しています。

修士課程の出願

修士課程もStudielink経由で出願し、志望動機書・ポートフォリオ(画像と文章をまとめた1つの書類)・1分間の自己紹介動画(MP4)・顔写真・履歴書(PDF)を提出します。各回の締切後、選考委員会が書類を審査し、2週間以内にオンライン面接(MS Teams)の案内か、不合格の通知が届きます。締切までに書類がそろわなかった場合は、自動的に次の回に繰り越されるとされています。2026年10月1日時点で公式サイトが案内している2027/28年度入学の締切は、Round 1が2027年1月29日23:59、Round 2が2027年3月29日23:59です。

英語力の要件

DAEが公開している「Guideline Language Requirement English DAE 26/27」によれば、学士・修士ともIELTS(Academic)6.0以上、またはTOEFL iBT 80以上が最低基準です(TOEFL Home EditionやIELTS Academic Onlineは不可)。このほかTOEIC(Listening & Reading 865、Speaking & Writing 335)、ケンブリッジ英検FCE、LanguageCert、Pearson PTE Academicも認められています。イギリス・アメリカ・カナダ・アイルランド・ニュージーランド・オーストラリアで中等教育を修了した学生や、国際バカロレア取得者などは試験が免除されます。修士課程では、オランダ国内またはこれらの国で学士を取得した学生が免除対象で、英語で行われる学士課程を修了した学生は免除を申請できます。面接でも英語力は確認され、公式サイトは「英語力が不十分な志望者は合格になりません」と明記しています。なお、この文書は26/27年度版として公開されているものです。

DAEの校舎があるエマシンヘル通り周辺のアイントホーフェンの街並み
DAEの校舎があるエマシンヘル(Emmasingel)通り周辺のアイントホーフェンの街並み/撮影:Michielverbeek/出典:Wikimedia Commons(CC BY 4.0)

ダッチ・デザイン・ウィークと卒業制作展

DAEのGraduation Show(卒業制作展)は、公式サイトが「新進デザイナーの作品展として、世界でもっとも影響力のあるものの1つ」と表現する、この学校の最大の見せ場です。毎年秋のダッチ・デザイン・ウィーク期間中にアイントホーフェンで開催され、学士・修士あわせて180名を超える卒業生が作品を発表します。公式サイトによれば、2026年のGraduation Showは10月17日(土)から25日(日)までの9日間、ダッチ・デザイン・ウィークに合わせて開かれ、学士・修士あわせて200点の卒業制作が公開されます。会場はアイントホーフェン市内のProfessor Dr Dorgelolaan 2です。会期中には、学士向けのRené Smeets賞・Melkweg賞、修士向けのGijs Bakker賞の授賞式も行われます。

卒業制作展は当初アムステルダムで開かれていましたが、2001年にディレクターのリデヴィ・エデルコートがアイントホーフェンの校舎(Witte Dame)に会場を戻し、これがダッチ・デザイン財団と協力して行う現在のダッチ・デザイン・ウィークの起点になりました。ダッチ・デザイン・ウィーク自体は、1998年にデザイナー団体Vormgeversoverlegが始めた「Day of Design」が、2002年に「Week of Design」、2005年に現在の名称へと発展したものです。2016年には、来場者が学生や業界関係者と対話できる場「The Arena」が展示会の中心に設けられました。

会場は2018年、Witte Dameでの17年間を経て、Kanaaldijk-Zuid付近にある旧カンピーナ乳業工場の跡地に移転しました。展示面積は5,000㎡から10,000㎡に拡大し、より多くの来場者を受け入れられるようになっています。翌2019年には、それまで学士・修士の各プログラムごとに作品を並べていた構成を改め、テーマ別に作品をまとめる新しい展示構成が導入されました。ただし、公式サイトによればこのカンピーナ工場での開催は2018年と2019年の2回で、その後は会場が変わっています。近年は平均して170〜200名の卒業生、35,000〜45,000名の来場者という規模で開催されています(2020年はパンデミックのためオンライン開催のみでした)。

アイントホーフェンの旧カンピーナ乳業工場「De Hallen」
2018年・2019年の卒業制作展の会場になった旧カンピーナ乳業工場「De Hallen」。DAEが2028年に移転するカナールゾーンの新キャンパスは、この工場の隣に建てられます/撮影:Rosemoon/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
アイントホーフェンの旧フィリップス工場地区ストレイプSのクロックビル
アイントホーフェンの旧フィリップス工場地区ストレイプS(Strijp-S)に建つクロックビル(Klokgebouw)。デザイン・ウィークの会期中、市内100か所以上でデザイナーの展示が行われます/撮影:Steven Lek/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
Graduation Show 2022 @ The Stage – Design Academy Eindhoven(Design Academy Eindhoven 公式YouTube、2022年10月29日公開)

QS世界大学ランキング2026年版で世界10位

冒頭でも触れたとおり、DAEはQS世界大学ランキングのアート&デザイン部門2026年版で世界10位にランクインしています。総合スコアは81.1で、内訳は学術評判81.9、雇用者評判73.4です。前年の2025年版も10位で、順位に変動はありません。

順位大学国スコア前年からの変動
9Aalto University(アールト大学)フィンランド82.38位から1つ下降
10Design Academy Eindhoven(DAE)オランダ81.1変わらず

TOP10全体の顔ぶれや、この指標の読み方については【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキングで詳しく解説しています。同記事によれば、このランキングは学術評判90%と雇用者評判10%の2指標だけで算出されており、教育の質そのものよりも「どれだけ知られ、敬意を持たれているか」を測る指標に近いとされています。学生数700名ほどのDAEが、はるかに規模の大きい総合大学や美術大学と並んでTOP10に入っている点は、専門性の高さが評価されている証と言えそうです。

アイントホーフェン中心部、エマシンヘル通りの街並み
アイントホーフェン中心部のエマシンヘル通り。右手がフィリップスの旧工場「ライトトーレン」で、DAEの校舎Witte Dameも同じ通り沿いにあります/撮影:S. Perquin/出典:Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

主な卒業生

公式サイトは「DAEの卒業生には、世界でもっとも革新的で尊敬を集めるデザイナー、経営者、研究者、アーティストが含まれる」としています。ここでは、公式サイトに卒業年と課程の記載がある人だけを挙げます。

氏名卒業年・課程公式サイトの記載
クリスティン・マインダーツマ(Christien Meindertsma)2003年・学士(第1回Melkweg Award受賞)『Checked Baggage』。空の旅への不安と保安規制が強まっていた時期に、スキポール空港の保安検査で没収された品々を記録した作品。2023年のダッチ・デザイン・アワードでもノミネート者として名前が挙がっています
デイヴ・ハッケンス(Dave Hakkens)2013年・学士(学位:優等/KeepAnEye Award・Melkweg Award受賞)『Phone Bloks』。WiFiやバッテリー、ディスプレイなど機能ごとの部品を組み合わせて自分だけのスマートフォンをつくり、壊れた部品だけ交換できるという提案
アトリエNL(Atelier NL:ナディーヌ・ステルク、ロニー・ファン・ライスウェイク)2007年・卒業後にアトリエNLを設立土や砂といった大地の素材に潜む物語を掘り起こす制作で知られ、展覧会・講演・受賞を重ねてきた。デザイン教育の将来像にも影響を与えたとされています
シャハル・リヴネ(Shahar Livne)2017年・学士素材の見方を問い直す作品で国際的な注目を集め、2018年にビーズリー・デザイン・オブ・ザ・イヤーのファイナリスト、2020年にDezeenの「エマージング・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。卒業制作はプラスチックを文化的・批評的な角度から捉え直す試みでした
クアンイー・クー(Kuang-Yi Ku)2018年・修士(Gijs Bakker Award受賞)医療技術・バイオアート・デザインの交点で活動。卒業制作『Tiger Penis Project』は、漢方が絶滅危惧種の脅威になりうる構造と、合成生物学による代替の可能性を非西洋の視点から扱いました
ガブリエル・フォンターナ(Gabriel Fontana)2018年・卒業『Multiform』などの作品で知られ、2023年のダッチ・デザイン・アワード「ヤング・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」にノミネートされました

このほか公式サイトは、ダッチ・デザイン・アワードの近年の受賞者としてオードリー・ラルジュ(Audrey Large)、クリーム・オン・クローム(Cream on Chrome)、シモン・ドッハー(Simon Dogger)といった卒業生の名前を挙げています。

賞について補足すると、DAEには主要な卒業生向けの賞が3つあります。René Smeets Award(1977年開始。初代ディレクターの名を冠し、学士課程で制作過程と成果物に示されたプロ意識を評価)、Melkweg Award(2003年創設。学士課程で「並外れた才能、独自の視点、真の独創性」を示した1名に贈られる)、Gijs Bakker Award(2014年創設。修士課程向け)です。Melkweg Awardの候補者は各BAスタジオの代表が推薦し、受賞者は毎年のGraduation Showの会期中に発表されます。受賞者には€2,000と、DAE卒業生がデザインしたトロフィーが贈られます。

まとめ

いかがだったでしょうか。デザイン・アカデミー・アイントホーフェン(DAE)について見てきました。要点は次の5つです。

  • 1947年に「AIVE」として創立され、1999年にディレクターのリデヴィ・エデルコートが現在の校名に変更しました。校舎は1927〜30年建造の旧フィリップス工場「Witte Dame」ですが、2028年夏にカナールゾーンの新キャンパスへ移転します
  • 学士課程は4年制で、2021年から「分野」ではなく「関心のテーマ」で分かれる8つのスタジオ制を採っています。スタジオ自体も4年ごとに入れ替わる仕組みです
  • 修士課程は2年制で5つのプログラムがあり、Master of Arts in Fine Art and Designの学位が授与されます
  • 学費は「法定授業料」と「機関授業料」の2区分に分かれ、日本国籍の学生は機関授業料の対象(2026-27年度で学士€12,449、修士€19,762)になります
  • QS世界大学ランキング アート&デザイン部門2026年版で世界10位、総合スコア81.1です

学費や出願の締切は年度ごとに変わりますので、出願を具体的に考える段階では、必ず公式サイトの最新情報をご確認ください。

Witte Dame(DAE校舎)の外観、別アングル
Witte Dame(DAE校舎)の外観/撮影:Romaine/出典:Wikimedia Commons(CC0)

Euphoric " " の視点

たいていの美術大学は、専攻が分野で分かれています。グラフィック、プロダクト、テキスタイル。作るものの種類で教室が区切られているわけです。

DAEの学士課程は、そうなっていません。分かれているのは関心のテーマのほうです。何を使って作るかではなく、何に向き合うか。学生は分野ではなく問いを選んで入ります。

さらに変わっているのは、そのスタジオ自体に期限があることです。4年ごとに公募で入れ替わり、時代に合わなくなったテーマは消え、新しいテーマが入ります。学校が自分の骨組みを、定期的に壊す前提で組んでいます。

学校が教えるものは、そのまま「何が仕事になるか」の予想です。分野で区切る学校は、その分野が続くと考えています。テーマで区切る学校は、分野の境目のほうが先に動くと考えています。どちらが正しいかではなく、自分がどちらの予想に賭けるか。学校選びは、そこまで含めた選択です。

ポートフォリオの作り方に不安がある方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。

もっと知るには

本記事の情報は、デザイン・アカデミー・アイントホーフェンの公式発表をもとに確認しています。学費・日程・出願要件は年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。

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