シカゴ美術館附属美術大学(SAIC)とは?歴史・学費・出願・美術館との関係を徹底解説

シカゴ美術館附属美術大学(SAIC)とは?歴史・学費・出願・美術館との関係を徹底解説
アイキャッチ使用画像|SAIC(作成 2026-10-01 / Saki) Commonsファイル : Art_Institute_of_Chicago_(49692750156).jpg Commonsページ : https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Art_Institute_of_Chicago_(49692750156).jpg 画像URL : https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/ab/Art_Institute_of_Chicago_%2849692750156%29.jpg/1280px-Art_Institute_of_Chicago_%2849692750156%29.jpg ライセンス : CC BY 2.0 撮影者 : Raed Mansour 撮影日 : 2020-03-23 被写体 : シカゴ美術館(ミシガン・アヴェニュー) 画像内の表記 : 画像:シカゴ美術館(ミシガン・アヴェニュー) / Photo: Raed Mansour / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons 処理: 切り取り・色調整なし。object-fit:contain で全体を収め、余白は黒帯。 文字は写真の上に重ねず、右のクリーム地パネル(別領域)に配置。 大学のロゴは使用していません(仕様書15-2)。

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こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんはシカゴ美術館附属美術大学(School of the Art Institute of Chicago、略称SAIC)という大学をご存知ですか。QS世界大学ランキングのアート&デザイン部門2026年版で世界11位に入るアメリカの美術大学で、名画『アメリカン・ゴシック』を所蔵することで知られるシカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)と、もともと同じ組織から発展してきました。美術館と美術大学が一体という、世界でもめずらしい成り立ちを持っています。

本記事ではそんなシカゴ美術館附属美術大学について、歴史、シカゴ美術館との関係、学部・大学院の構成、学費、出願の進め方まで、公式サイト(saic.edu)で確認できた情報をもとにご紹介します。それでは早速いってみましょう。

シカゴ美術館附属美術大学って?

基本情報

シカゴ美術館附属美術大学 マクリーン・センターの外観、ミシガン・アヴェニュー
シカゴ美術館附属美術大学 マクリーン・センター(112 S. Michigan Ave.)の外観(2021年)/撮影:ajay_suresh(CC BY 2.0)/出典:Wikimedia Commons
正式名称School of the Art Institute of Chicago(略称 SAIC)
創立1866年。シカゴの芸術家たちが、自分たちのギャラリーを持つ美術学校として設立しました
所在地アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ。ミシガン・アヴェニュー周辺に主要な校舎が集まっています
性格私立の美術大学。学部課程(Undergraduate)と大学院課程(Graduate)の両方を持ちます
学生数2025年秋学期で総数3,323名(学部2,737名・大学院586名)。国際学生が25%を占め、80の国と地域から集まっています
教員700名以上。全員が第一線で活動する作家・デザイナー・研究者です
学長ジソン・リー・イスバラ(Jiseon Lee Isbara)。SAIC史上16代目の学長で、2024年7月就任
認証評価Higher Learning Commissionによる認証を1936年から継続。建築の修士課程はNAABの認証を2031年まで継続取得
美術館との関係シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)と同じ組織から発展した、アメリカでも数少ない「museum school」のひとつです
QSランキングQS世界大学ランキング アート&デザイン部門2026年版で世界11位

順位の読み方は、【最新!2026年版】アート&デザイン部門 QS世界大学ランキングで詳しく解説しています。SAICは2025年版で9位でしたが、2026年版ではグラスゴー芸術大学がTOP10入りしたことにともない11位になりました。

シカゴ美術館という「もうひとつのキャンパス」

SAICを理解するうえでいちばん大事なのが、シカゴ美術館との関係です。公式サイトは「シカゴ美術館は、SAICの教員がつくった、学校にとって最も他に類を見ない教育資源です。そのコレクションは私たちの教室の延長であり、学びと研究にまたとない機会を提供しています」と説明しています。さらに「私たちは、アメリカでも数少ない美術館附属の学校のひとつです。これほど大きな美術館をキャンパスの一部として持つ美術大学は、他にありません」とも述べています。

シカゴ美術館の正面、ミシガン・アヴェニュー側の入口とライオン像
シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)正面、エドワード・キーミーズ作のライオン像とミシガン・アヴェニュー側の入口(2012年)/撮影:Marlin Keesler(CC BY 2.0)/出典:Wikimedia Commons

シカゴ美術館は5,000年以上にわたる人類の表現を収蔵し、作品数は30万点を超えます。SAICの学生は、この収蔵品に無制限にアクセスできます。公式サイトは「あなたはコレクションに無制限にアクセスでき、自分の今の制作に語りかけてくる作品をじっくり探すことができます。それが、自分の作品を新しい方向へ押し進めるきっかけになります」と説明しています。美術史の授業では美術館への訪問が授業に組み込まれることが多く、課題も収蔵作品の分析や応答が中心になります。スタジオの教員も、美術館の展示を使って授業をおこない、実際の作品の表面や形、色、技法を見ながら議論を組み立てています。

この関係は19世紀からのものです。公式サイトによれば、「19世紀、シカゴ美術館のコレクションがSAICの研究のための拠点として設立されて以来、学生たちはその膨大な所蔵品を、自分たちの制作や研究のためのひらめきと情報源として使ってきました」とあります。ヴァン・ゴッホの自画像の色の幅、アンセル・アダムスの風景写真の階調、マーク・ロスコの絵画がもつ静けさを、学生は複製ではなく実物に近づいて体験することができます。

ジョルジュ・スーラ『グランド・ジャット島の日曜日の午後』(1884〜1886年)
ジョルジュ・スーラ『グランド・ジャット島の日曜日の午後』(1884〜1886年)シカゴ美術館蔵。点描技法を代表する作品で、SAICの学生が日常的に実物を見て学べるコレクションのひとつです/出典:Google Art Project 経由 Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

図書館も独自の資源を持っています。フラックスマン図書館(Flaxman Library)には、アーカイブ、ジョーン・フラッシュ・アーティスト・ブック・コレクション、テキスタイル・リソース・センターなど、学生の研究と制作を支える専門コレクションがそろっています。

1866年から160年、SAICが歩いてきた道

ミシガン・アヴェニューとヴァン・ビューレン通りの角に建つシカゴ美術館の建物、1891年頃
ミシガン・アヴェニューとヴァン・ビューレン通りの角に建つシカゴ美術館の建物(1891年頃)/出典:『Industrial Chicago』第1巻(1891年刊)経由 Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

公式サイトの年表によると、SAICは1866年、「シカゴの芸術家たちが、自分たちのギャラリーを持つ美術学校をこの街につくることを決めた」ことから始まりました。1868年にはVisiting Artists Program(客員作家プログラム)を開始し、これまでに1,000名を超える国際的な作家・デザイナー・研究者が学生と関わってきました。このプログラムは、今もSAICの学際的なカリキュラムの中心のひとつです。

設立から15年に満たない1882年、成長を続けていた学校は、その美術館とともに「シカゴ美術館(Art Institute of Chicago)」と改称されます。ここで学校と美術館が同じ名前のもとに結びつきました。1922年にはミシガン・アヴェニューの象徴的な建物へ移転し、公式サイトは「当時、世界最大の美術大学になった」と説明しています。

大きな転換点は1969年です。公式サイトは「60年代の終わりに、SAICは専攻を廃止し、自己主導型の学びの仕組みを採用しました。学生は教員の助言を受けながら、自分自身のカリキュラムの道筋を決めることになりました」と説明しています。この「専攻を決めない」という仕組みは、今もSAICの学びの土台になっています。

その後も変化は続きます。1977年には大学院生が自作の画像生成コンピューターのためのアルゴリズム・ソフトウェアを制作し、これがSAICにとって最初のテクノロジー領域への一歩になりました。1982年には、それまで別々だったGenerative SystemsとKineticsという2つのプログラムが統合され、「アメリカで最初のアート・アンド・テクノロジー学科」が生まれています。1998年には「Design Initiative」を立ち上げ、美術とデザインを扱う総合的な学校へと舵を切りました。2000年には、エドゥアルド・カック教授がマクリーン・センター4階の小部屋にバイオラボを設け、これが現在のバイオアートのプログラムの土台になっています。

地域社会との関わりも、公式の年表に記録されています。2016年には、SAICとHoman Square Foundationが提携し、シカゴ西部のノース・ローンデール地区で美術とデザインの合同授業を開始しました。2018年には、ヴェネチア建築ビエンナーレのアメリカ館の企画・出展校に選ばれ、「市民であるとはどういうことか」を建築家やデザイナーに問いかける展示「Dimensions of Citizenship」を発表しています。

近年では、2016年に創立150周年を記念する1年間の催しが開かれ、シカゴ美術館では卒業生の作品を集めた「Homegrown」展も開催されました。同じ2016年、エリッサ・テニーがSAIC史上初の女性学長に就任しています。2024年には、ジソン・リー・イスバラが第16代学長に就任しました。公式サイトによれば、イスバラ学長は「2人目の女性であり、初めての一世世代の移民」として学校を率いる学長です。ソウル生まれで、コロラド州立大学とソウルの梨花女子大学でファイバー分野の修士号を、梨花女子大学で学士号を取得し、25年近く美術・デザイン教育に携わってきた人物です。

専攻を決めずに学ぶ、SAICの学部・大学院

SAICの学びでいちばんの特徴は、入学時に専攻を決めないという点です。先ほどの1969年の改革以来、この仕組みが続いています。公式サイトは「彫刻を学んでいるけれど、ファッションデザインも気になる。試してみてください。写真に1年間集中したい。それもできます。SAICでは、アドバイザーの助言を受けながら、自分の関心にもとづいて授業を自由に組み立てられます」と説明しています。

学部課程(Undergraduate)

学部でもっとも人気のある学位はBachelor of Fine Arts in Studio(BFA)です。公式サイトによれば、この学位では「13の美術・デザイン領域を横断して学ぶ自由」があり、美術教育や文芸創作に重点を置くことも選べます。このほか、教員養成に重点を置くBachelor of Fine Arts in Art Education、文芸創作のBachelor of Fine Arts in Writing、学術的な研究に重心を置くBachelor of Arts in Art History、Bachelor of Arts in Visual and Critical Studiesがあります。

大学院課程(Graduate)

大学院の中心はMaster of Fine Arts in Studio(MFA)です。建築、アート・アンド・テクノロジー、セラミック、コミックス、新興テクノロジーのためのデザイン、デザインド・オブジェクト、ファイバー、映像・ニューメディア・アニメーション、絵画、パフォーマンス、写真、版画、彫刻、サウンド、ビジュアル・コミュニケーション・デザインなど、幅広い領域別にMFAが用意されています。このほかMaster of Fine Arts in Fashion, Body and Garment、Master of Fine Arts in Writing、自宅から学べるLow-Residency MFA(シカゴでの6週間の夏季レジデンシーを3回、その間の秋・春学期は自宅のスタジオからリモートで学ぶ方式)もあります。学術系ではMaster of Arts in Art Education、Master of Arts in Arts Administration and Policy、Master of Arts in Visual and Critical Studies、Master of Arts in Modern and Contemporary Art History、Master of Arts in Teaching、Master of Science in Historic Preservationがあり、建築分野ではNAAB認証のMaster of Architecture(フル3年制、または建築系の学士を持つ学生向けの2年制の加速コース)とMaster of Architecture with a Track in Interior Architectureがあります。

学科・専攻領域(公式サイト掲載順)
Academic Spine(1年次共通カリキュラム)
Architecture, Interior Architecture, and Designed Objects
Art & Technology / Sound Practices
Art Education
Art History, Theory, and Criticism
Art Therapy and Counseling
Arts Administration and Policy
Ceramics
Contemporary Practices
Fashion Design
Fiber and Material Studies
Film, Video, New Media, and Animation
Historic Preservation
Liberal Arts
Low-Residency MFA
Painting and Drawing
Performance
Photography
Printmedia
Sculpture
Visual and Critical Studies
Visual Communication Design
Writing

Art Therapy and Counseling学科が提供するMaster of Arts in Art Therapy and Counselingは、Commission on Accreditation of Allied Health Education Programs(CAAHEP)の認証を受けた専門課程です。BFA in Art EducationとMaster of Arts in Teaching(美術教育)は、イリノイ州教育委員会(ISBE)の承認を得ています。

学費(2026〜27年度)

SAIC公式サイトの「Cost & Fees」ページには、2026〜27年度(2026年秋学期・2027年冬学期・春学期・夏学期)の学費が次のとおり掲載されています。学費表は学生の区分(学部・ポスト・バカロレア・大学院など)だけで分かれており、州内・州外といった居住地による区分は設けられていません。

区分年間授業料(30単位)1単位あたり
学部(Undergraduate)59,460ドル1,982ドル
ポスト・バカロレア証明書課程59,460ドル1,982ドル
大学院(Graduate)61,980ドル2,066ドル

学費以外に、テクノロジー・施設費として年1,000ドル、学生交通パス(U-Pass)として秋・春の2学期分で年310ドル(別に初回のみVentraカード代5ドル)が必須でかかります。公式サイトが示す「学生予算(Student Budget)」では、これに住居費・食費・教材費・交通費・個人的な支出などの目安を足した、年間の総費用の見積もりが示されています。

項目学部(年額目安)大学院・スタジオ系(年額目安)
授業料59,460ドル61,980ドル
施設費・U-Pass1,310ドル1,310ドル
住居費(学外の目安)7,000ドル7,000ドル
食費3,850ドル3,850ドル
教材・画材費1,830ドル1,830ドル
個人的な支出3,220ドル3,220ドル
交通費2,100ドル2,100ドル
合計(健康保険を除く)78,770ドル81,290ドル

このほか、加入が必要な場合の健康保険が年3,940ドルかかります。ノートパソコンは学校が指定するものを用意する必要があり、購入費の目安は、学部の新入生とAIADO(建築・インテリア建築・デザインド・オブジェクト)の新入生が約2,400ドル、大学院のスタジオ系が約2,200ドルです。公式サイトは「授業料と必須の費用を除けば、これらは目安の平均額であり、ご自身の予算に合わせて調整してください」と注意を添えています。住居費・交通費・個人的な支出は、実際の暮らし方によって大きく変わります。

出願の進め方

SAICの出願は、学部・大学院ともにCommon Applicationを通じておこないます。学部の秋入学には次の3つの締切が公式サイトに示されています(毎年の基本パターンとして、2026年10月1日に確認しました)。

締切内容
11月15日Early Action・優先奨学金選考締切(合否に拘束力はなく、より大きな奨学金枠、優先的な寮の選択、1学期めの優先的な履修登録の対象になります)
1月15日最終奨学金選考締切
4月15日最終出願締切(これ以降の出願は個別に審査されます)

なお、学部には秋入学のほかに春入学(1月開始)の枠もあり、優先奨学金選考の締切は11月1日、最終出願締切は1月1日です。学部出願に必要なのは、Common Applicationのフォーム、ポートフォリオ、パーソナル・エッセイ(Common Appの設問に対して250語以上650語以内)、高校の成績証明書、指導教員などによる推薦状1通です。ポートフォリオはSlideRoom経由で提出し、学位ごとに枚数の目安が決まっています。BFA in StudioとBFA in Art Educationは「直近の、自分の最も良い作品を10〜15点」、BFA in Writingは最大10ページの文章作品、BA in Art Historyは作品5〜10点に加えて5〜7ページの文章課題です。出願料はアメリカ国内在住者が65ドル、国際出願者が85ドルです。

大学院の出願料は90ドルですが、12月1日までに出願(と支払い)を済ませると45ドルに減額されます。最終出願締切は1月10日(アメリカ中部時間の午後11時)で、合格後の入学デポジットの締切は多くのプログラムで4月1日です。提出物は基本情報の申込フォーム、成績証明書(非公式可)、ステートメント・オブ・インテント、レジュメ、推薦状、SlideRoom経由のeポートフォリオです。ポートフォリオの内容はプログラムごとに異なり、たとえばMFA in Studio, Photographyでは「直近の作品を、静止画15〜20点、または10分以内の映像、あるいはその組み合わせ」が目安とされています。

英語力の証明

日本から出願する場合、英語力の証明が必要になることがあります。免除の条件は学部と大学院で異なりますので、ご自身が出願する課程の条件をご確認ください。

学部の場合、公式サイトによれば、アメリカ在住者のほか、第一言語が英語である人、アメリカの認定を受けた高校(国外の分校を含む)に在籍している人、英語で授業をおこなう学校で4年以上学んだ人、英語で授業をおこなう大学で12セメスター単位以上を取得した人は、スコアの提出を求められません。

大学院の場合は、「母語が英語である」「アメリカの認定大学から学士号を取得している」「英語を主要な教育言語とする大学から学士号を取得している」のいずれかに当てはまる場合に免除されます。当てはまらない場合、次のスコアが必要です。

区分TOEFL iBTIELTSDuolingo備考
学部82点以上(2026年1月以降の受験は4.5以上)6.5以上110以上PTE Academicは55以上、TOEFL Essentialsは9以上。Bachelor of Arts in Art Historyのみ、新スコア基準でTOEFL iBT5点以上が必要(他の学位より高い基準です)
大学院(MFA in Studioの例)85点以上(2026年1月21日以降の受験は4.5以上)6.5以上120以上プログラムにより基準が異なる場合があります

TOEFLのスコア送付に使うSAICの機関コードは1713です。大学院の出願案内は国際出願者に向けて「スコアが出願締切に間に合うよう、できるだけ早く受験の予約を取ることを強くおすすめします」と呼びかけています。

キャンパスと学生生活

SAICのキャンパスは、シカゴのダウンタウン、ミシガン・アヴェニューとワバッシュ・アヴェニューの周辺に集まっています。シカゴ美術館に面したマクリーン・センター(112 S. Michigan Ave.)とレイクビュー・ビルディング(116 S. Michigan Ave.)、サリヴァン・センター(36 S. Wabash Ave.)、シャープ・ビルディング(37 S. Wabash Ave.)、280ビルディング(280 S. Columbus Dr.)が主な校舎です。学生活動の拠点はシャープ・ビルディングのLeRoy Neiman Centerで、1階に学生運営のギャラリー(Student Union Galleries)と映像のウォール、講義やイベントに使える空間があり、2階にはカフェとラウンジ、キャンパスライフや学生自治の事務室が入っています。

学部の新入生の多くは、Jones Hallや162 North State Streetなど、SAICが運営する複数の学生寮のいずれかで最初の1年を過ごします。公式サイトのハウジングツアー動画では、そのひとつである162 North Stateの居室や共用スペースの様子を見ることができます。

Student Residence Hall Tour: The 162 North State Street Residences(シカゴ美術館附属美術大学 公式YouTube/2026年8月19日公開)

学びを支える図書館は、すでにご紹介したフラックスマン図書館です。本館コレクションは月曜から木曜が午前9時から午後9時まで、金曜は午前9時から午後6時まで、土曜は午前10時から午後5時まで開いており(日曜休館)、特別コレクションはこれとは別の、やや短い時間帯で利用できます。

映像文化にふれる場も持っています。ジーン・シスケル・フィルム・センター(Gene Siskel Film Center)はSAICの公開プログラムのひとつで、1972年から先鋭的な映画を紹介してきた映画館です。公式サイトによれば、多様な声や各国の文化を取り上げる映画祭、いま活動中のインディペンデント作家の新作のプレミア上映、映画史に残る作品の復元・再上映などをおこない、年間の観客数は10万人にのぼります。上映は年1,600回以上、監督や映像作家の登壇は年200回以上です。

ここを拠点にしているのが、映像・ニューメディア・アニメーション学科が主催する上映会シリーズ「Conversations at the Edge(CATE)」です。25年にわたって、第一線の作家や新しい世代の作家をシカゴに招き、上映・パフォーマンス・対話をおこなってきました。CATEのプログラムはSAICの学生は無料で観ることができるため、在学中から現代の映像表現の最前線に立ち会えます。

QSランキングとアメリカ国内の評価

SAICはQS世界大学ランキング アート&デザイン部門の2026年版で世界11位です。2025年版の9位から2つ順位を下げていますが、これはSAICの評価が下がったというより、グラスゴー芸術大学が大きく順位を上げてTOP10入りしたことによる相対的な変化です。QSの算出方法や他大学との比較は、アート&デザイン部門QS世界大学ランキングの解説記事をご覧ください。

国内の評価では、公式サイトが「U.S. News & World Reportのファインアート部門で全米2位」と紹介しており、そのうち5つの専門分野が同誌の全米トップ10に入っています(絵画・ドローイング2位、写真3位、彫刻4位、タイムベース・メディア/ニューメディア5位、版画6位)。

順位大学国・地域
10Design Academy Eindhoven(デザイン・アカデミー・アイントホーフェン)オランダ
11School of the Art Institute of Chicago(シカゴ美術館附属美術大学)アメリカ
12ArtCenter College of Design(アートセンター・カレッジ・オブ・デザイン)アメリカ
13Delft University of Technology(デルフト工科大学)オランダ

この表はQS世界大学ランキング アート&デザイン部門2026年版の抜粋です(出典は前掲のQS解説記事)。

主な卒業生

SAICの公式サイトは、在籍・修了した著名な人物の一覧を公開しています。出身分野は美術だけでなく、デザイン、映画、文筆、アニメーションと幅広く広がっています。

グラント・ウッド『アメリカン・ゴシック』(1930年)
グラント・ウッド『アメリカン・ゴシック』(1930年)シカゴ美術館蔵。ウッドはSAICに1913〜16年に在籍した卒業生で、この作品は今もシカゴ美術館の代表的な所蔵品のひとつです/出典:シカゴ美術館オンライン・データベース経由 Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
  • 美術:ジョージア・オキーフ(1905〜06年在籍)、グラント・ウッド(1913〜16年在籍)、ジョン・チェンバレン(1951〜52年BFA)、ロバート・インディアナ(1954年BFA)、ジョーン・ミッチェル(1947年BFA、1988年名誉学位)、クレス・オルデンバーグ(1951〜54年在籍、1979年名誉学位)、レオン・ゴラブ(1949年BFA・1950年MFA、1982年名誉学位)、リチャード・ハント(1957年BFA、1979年名誉学位)、ジェフ・クーンズ(1975〜76年在籍、2008年名誉学位)、ナンシー・スペロ(1949年BFA)
  • デザイン・イラストレーション:ハルストン(1952年在籍)、シンシア・ローリー(1981年BFA、2023年名誉学位)、マリア・ピント(1990年BFA、2017年名誉学位)、エドワード・ゴーリー(1943年在籍)、オードリー・ニッフェネガー(1985年BFA)、エミル・フェリス(2008年BFA)
  • 映画・アニメーション:ヴィンセント・ミネリ(1931年在籍)。アニメーション分野では、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオでアニメーション部門の責任者を務めるエイミー・ローソン・スミード(1997年BFA、2026年名誉学位)の名前を、公式サイトが紹介しています
  • 文筆:デイヴィッド・セダリス(1987年BFA、1995年名誉学位)、サラ・ヴァウェル(1998年MA)

また、タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン(1998年MFA、2011年名誉学位)や、キュレーター・批評家として知られるロバート・ストー(1978年MFA、2001年名誉学位)、美術批評家ジェリー・サルツ(1970〜75年在籍、2008年名誉学位)も、SAICの公式卒業生一覧に名を連ねています。

まとめ

シカゴ美術館の正面、ライオン像とミシガン・アヴェニュー側の入口
シカゴ美術館(The Art Institute of Chicago)正面(2012年)/撮影:Marlin Keesler(CC BY 2.0)/出典:Wikimedia Commons

いかがだったでしょうか。シカゴ美術館附属美術大学について見てきました。要点は次の6つです。

  • 1866年創立。1882年に美術館とともに「シカゴ美術館」と改称され、それ以来、美術館と美術大学が一体の「museum school」として歩んできました
  • 学生は30万点を超えるシカゴ美術館のコレクションに無制限にアクセスでき、授業や制作の一部として日常的に実物の作品を見ることができます
  • 1969年に専攻制度を廃止し、自己主導型の学びへ移行しました。この「専攻を決めない」仕組みは今も続いています
  • QS世界大学ランキング アート&デザイン部門2026年版で世界11位。U.S. News & World Reportのファインアート部門では全米2位です
  • 2026〜27年度の学費は、学部・大学院とも年59,460〜61,980ドル。住居費などを含めた年間の総費用の目安は、公式サイトで78,770〜81,290ドルとされています
  • 出願はCommon Applicationを通じておこないます。学部は11月15日のEarly Actionから4月15日の最終締切まで、大学院は1月10日が最終締切です

金額や日程は年度ごとに変わります。出願を具体的に考える段階では、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。

Euphoric " " の視点

多くの美術学校では、名画は画面や図版で見るものです。実物は、行こうと決めて出かけた先にあります。

SAICでは、その距離がありません。同じ敷地にシカゴ美術館があり、学生は所蔵品を見に行けます。スーラの『グランド・ジャット島の日曜日の午後』も、グラント・ウッドの『アメリカン・ゴシック』も、教科書の図版ではなく、絵の具の厚みが見える状態でそこにあります。

この環境と、学部で専攻を細かく決めない学び方は、同じ考えから来ているように見えます。何を作る人になるかを先に決めさせず、まず大量の本物を見せる。順番が逆なのです。

進路を早く決めることは、たいてい良いこととされています。ただ、決めるのが早いほど、決める材料は少なくなります。見た量が判断の質を決めるのだとすれば、迷っている時間そのものが、学校の設備のひとつなのかもしれません。

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もっと知るには

本記事の情報は、シカゴ美術館附属美術大学の公式サイト(saic.edu)をもとに確認しています。学費・出願日程・プログラムの内容は年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。

海外の美術系大学を広く比較したい方は、QS世界大学ランキング アート&デザイン部門の解説もあわせてご覧ください。イギリスの美術大学では、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)やロンドン芸術大学(UAL)の個別解説もあります。

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