コーポレートカラーとは、企業が自社を象徴する色として定め、ロゴ、商品、パッケージ、店舗、Webサイトなどに一貫して使う色のことです。色は一瞬で伝わる分、ブランドの印象を左右します。一方で、「赤は情熱」「青は信頼」といった色彩心理の俗説をそのまま使うと、判断を誤ることがあります。
この記事では、コーポレートカラーの決め方を、色彩心理の研究の読み方、実務の手順、そして見落とされやすい「色の商標」の3つの面から整理します。
この記事で分かること
- コーポレートカラーの決め方の手順と、色彩心理の使い方・誤解
- 日本で「色だけ」の商標が登録されるための条件と、実際の登録例
- アートの事例(イヴ・クラインの青、ヴァンタブラック)から見る「色は誰のものか」
※法務に関わる部分は一般的な情報の整理です。個別の判断は、弁護士・弁理士などの専門家にご確認ください。
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Toggleコーポレートカラーの決め方:4つのステップ
コーポレートカラーは、好みで決めると後で苦労します。編集部としては、次の順序をお勧めします。

- ブランドの言葉を先に決める:どんな企業として見られたいか、誰に向けるのかを言葉にする
- 競合と業界の色を並べる:同じ業界で使われている色を一覧にして、埋もれない位置を探す
- 使う場面での再現性を確かめる:紙、画面、看板、素材ごとに、同じ色として見えるかを試す
- 商標と権利の確認をする:登録や既存の権利との関係を、決定の前に調べる
多くの企業が飛ばしやすいのが、ステップ2と4です。色は他社と近いと識別されにくくなり、後から権利の問題に気づいても変更に大きなコストがかかります。
色の指定は「数値」で持つ
色名や「だいたいこんな赤」では、制作者ごとにずれが出ます。印刷用の特色(DICやPANTONEなど)、CMYK、画面用のRGBやHEXコードを、ガイドラインにまとめて管理するのが基本です。画面で見やすいかどうか(背景色との明るさの差)も、運用前に確認しておきます。
候補の色を評価する6つの軸
候補の色が複数あるときは、好みで投票するのではなく、評価の軸をそろえて比べると、社内の合意が取りやすくなります。編集部が使いやすいと考える軸は次の6つです。

| 軸 | 見るポイント |
|---|---|
| ブランドの言葉との合致 | 決めた言葉(どう見られたいか)と、色の印象がずれていないか |
| 競合との距離 | 同じ業界の主要な企業と、並べたときに区別がつくか |
| 再現性 | 紙、画面、看板、素材ごとに、同じ色として見えるか |
| 視認性 | 背景色や小さな文字との明るさの差が十分か |
| 権利の確認 | 近い商標の登録や出願がないか |
| 長期の使いやすさ | 10年後も使える色か。流行に寄りすぎていないか |
ガイドラインに残す項目
色が決まったら、運用の場面でぶれないよう、次の項目を文書にして共有します。
- 色の名称と、媒体別の指定(特色、CMYK、RGB、HEX)
- メインカラー、サブカラー、アクセントカラーの使う割合の目安
- 背景色とのNGの組み合わせ(読みにくくなる例)
- 写真やイラストと組み合わせるときの注意
よくある失敗
編集部が実務で起きやすいと考える失敗は、次の5つです。
- 流行の色で決める:数年後に古く見え、使い続けにくくなる
- 媒体ごとに色が違う:印刷と画面、看板と名刺で別の色に見え、印象がばらつく
- 社内で色の呼び名がばらばら:「青」「紺」「ネイビー」などの呼び方が混在し、指定が通じない
- 権利の確認が後回し:ロゴや看板に展開してから類似の登録が見つかる
- 競合と近い:同じ業界の主要な企業と似た色で、埋もれてしまう
いずれも、決める前の整理で防げるものです。
色彩心理の誤解:「赤は情熱、青は信頼」を鵜呑みにしない
研究が示していること
マーケティング分野では、ローレン・ラブレックとジョージ・ミルンによる2012年(オンライン公開は2011年)の論文「Exciting red and competent blue」(Journal of the Academy of Marketing Science、第40巻5号)がよく引用されます。4つの調査から、色相をブランドの性格(興奮、能力など)に対応づけ、彩度や明度がその印象をどう強めるかを検討したものです。タイトルのとおり、赤は「刺激的」、青は「有能」という印象と結びつく傾向が示されています。
ただし、この論文は「この色にすれば売上が上がる」と言っているわけではありません。色がブランドの性格の印象に影響する可能性を、実証的に整理した研究です。
研究の読み方に注意が必要な理由
アンドリュー・エリオットとマルクス・マイヤーは、2014年の総説「Color Psychology」(Annual Review of Psychology、第65巻、95〜120頁)で、色彩心理の初期の研究が方法上の課題を抱えていたと指摘しています。色相、明度、彩度といった色の要素を分けて統制できていない研究がある、という趣旨です。
つまり、色の効果は、色相だけでなく明るさや鮮やかさ、使われる文脈で変わります。「この色はこういう心理効果がある」という一対一の断定は、控えめに扱うのが安全です。
よくある誤解

| 誤解 | 実務での考え方 |
|---|---|
| 青は信頼を与えるので、どの業界でも青がよい | 青を使う企業は多く、埋もれる。業界内の位置で考える |
| 色の心理効果は世界共通 | 文化や文脈で意味が変わる可能性がある。海外展開では確認する |
| 色を変えれば印象が変わる | 色は、ロゴ、書体、写真、言葉との組み合わせで意味を持つ |
| 好きな色が最良の色 | 経営者の好みではなく、ブランドの言葉と競合の配置から選ぶ |
「色の商標」とは:日本の制度
色だけで商標になるのか
商標法第2条は、商標を「文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」と定めています。色だけからなる商標(色彩商標)の出願は、2015年4月1日施行の改正商標法で可能になりました。
登録のハードル:識別力
色だけの商標が難しいのは、色が通常は商品の特徴を示すもので、「どの会社の商品か」を示す力(識別力)を持たないとされるからです。商標法第3条第1項第6号は、需要者が誰の商品か認識できない商標を登録できないと定めています。例外が第3条第2項で、使用された結果、需要者が特定の事業者の商品・役務だと認識できるようになったものは、登録を受けられます。
そのため、色彩のみの商標は、長年の使用と周知を、アンケートや広告の資料で示して認められることが基本になります。

写真:Ajay Suresh from New York, NY, USA / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
実際の登録例
特許庁は2017年3月1日に、色彩のみからなる商標として初めての登録の判断を発表しました。対象は次の2件です。
| 出願人 | 色彩 | 商品・役務 |
|---|---|---|
| 株式会社トンボ鉛筆 | 青、白、黒 | 第16類 消しゴム |
| 株式会社セブン-イレブン・ジャパン | 白地にオレンジ、緑、赤 | 第35類 小売等の役務 |
いずれも、拒絶理由の通知を受けたあと、アンケート結果や全国的な宣伝広告の資料を提出して、使用による識別力を立証したと解説されています。単色の場合は、さらに高いハードルがあるとされます。知財高裁の2023年1月31日の判決(女性用ハイヒール靴の靴底の赤色をめぐる事案)は、単色の商標が第3条第2項の要件を満たすには、特定の者による独占的な使用を認めてよいほど高度な識別力を獲得している必要がある、という趣旨を述べています。

写真:Marioluigi633 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)

写真:運動会プロテインパワー / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
制度開始から約10年がたった2025年5月の弁理士法人の解説によると、出願は589件に対し、登録は11件(うち2件は防護標章登録)で、いずれも2色以上の組み合わせであり、単色での登録例はないとされています。最新の件数は、特許庁の公開情報(J-PlatPatなど)で確認してください。
権利の範囲と期間
商標権の存続期間は設定の登録の日から10年で、更新の申請によって更新できます(商標法第19条)。商標権が及ぶのは、登録した商標と、指定した商品・役務の範囲です。「この色を、あらゆる分野で独占できる」わけではありません。
海外の事例:ルブタンの赤いソール
欧州連合司法裁判所(CJEU)は2018年6月12日、クリスチャン・ルブタンの赤いソールをめぐる事件(C-163/16)で判断を示しました。ルブタンは、靴底に赤(Pantone 18 1663TP)を適用したものを、靴の輪郭を除いた形で登録していました。裁判所は、靴底に適用した色は、形状「のみ」からなる標章にはあたらないと判断しています。

写真:Arroser / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
日本とは制度が異なるため、同じ結論になるとは限りません。ただ、色の位置と、輪郭を含めない記載の仕方が、権利の範囲を考える上で重要になる、という点は共通する示唆です。
アートの視点:色は誰のものか
イヴ・クラインとIKB
画家のイヴ・クラインは、1960年5月19日、フランスの産業財産権機関(INPI)にソロー封筒を預け、群青の顔料とバインダー(Rhodopas M)を組み合わせた自らの青の調合を「International Klein Blue(IKB)」として記録しました。ポンピドゥー・センターの解説によれば、保護されたのは色そのものではなく技法で、フランス法では色自体は専有できません。IKBは、クラインや遺族の独占的な色ではない、とされています。

© Succession Yves Klein c/o ADAGP Paris/出典:ポンピドゥー・センター公式サイト(引用)
作家にとっても、色を独占することは法的に簡単ではないことがわかります。
ヴァンタブラックをめぐる論争
2016年、アーティストのアニッシュ・カプーアが、サリー・ナノシステムズ社が開発した超黒色素材「ヴァンタブラック」の美術分野での独占的な使用権を得たことが話題になりました。これに対し、英国の作家スチュアート・センプルは「Pinkest Pink」を発表し、カプーア以外なら誰でも購入できるようにしました。購入時には、カプーアではないことの確認を求めたとされています。

写真:Surrey NanoSystems / Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
この件は、商標ではなく使用許諾の契約の話です。ただ、「色や素材を独占することは許されるのか」という問いを、アートの世界が真剣に議論した例として、企業のブランドカラーを考える上でも示唆があります。
実務のチェックリスト
- [ ] ブランドの言葉(誰に、どう見られたいか)を決めてから色を選んでいるか
- [ ] 同業他社の色と並べて、埋もれていないか
- [ ] 紙、画面、素材ごとに色の再現性を確かめたか
- [ ] 色の指定(特色、CMYK、RGB)をガイドラインにまとめたか
- [ ] 商標の調査(特許庁のJ-PlatPatなど)で、近い登録や出願を確認したか
- [ ] 色彩商標を狙う場合、長年の使用と周知を示せる資料を残しているか
- [ ] 最終判断の前に、弁理士・弁護士に確認したか
まとめ
コーポレートカラーの決め方は、好みではなく、ブランドの言葉、競合の配置、再現性、権利の確認の順で考えるのが実務的です。色彩心理は参考になりますが、色相だけでなく明度や彩度、文脈で印象が変わるため、一対一の断定は控えめに扱うのが安全です。
日本では2015年から色だけの商標が出願できるようになりましたが、登録には長年の使用による識別力が必要で、ハードルは高いままです。色は、決めた瞬間よりも、使い続けた時間によって、その企業のものになっていきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. コーポレートカラーは1色に絞るべきですか。
絞る必要はありません。メインカラー、サブカラー、アクセントカラーの組み合わせで運用する企業が多くあります。重要なのは、使う場面が違っても同じ色として見えるように、数値で管理することです。
Q2. 自社のコーポレートカラーを商標登録できますか。
可能性はありますが、色だけでは識別力が認められにくいため、長年の使用と周知を示す資料が基本的に必要です。ロゴや文字と組み合わせた登録のほうが現実的な場合もあります。個別の判断は弁理士などの専門家にご相談ください。
Q3. 他社と似た色を使ってしまった場合、問題になりますか。
色だけで直ちに問題になるとは限りませんが、商標、不正競争防止法など複数の観点で検討が必要です。決定前に調査し、判断が難しい場合は弁護士・弁理士に確認することをお勧めします。
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この記事を書いた Euphoric " " について
Euphoric " " は、ユアムーン株式会社が運営するアートメディアです。ユアムーンは、デザインとクリエイティブを軸にしたブランディング会社です。ブランドの言語化から、ロゴやWebサイトなどのデザイン、社内外への発信までを一貫して設計しています。ご希望に応じて、アートの選定・導入もお手伝いしています。
色の選定は、ブランドの言語化と一体で考えることで、後から迷いにくくなります。ユアムーンでは、その言葉づくりから相談をお受けしています。
参考資料
- 商標法(e-Gov法令検索)第2条、第3条、第19条 https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000127
- 経済産業省・特許庁「色彩のみからなる商標について初の登録を行います」(2017年3月1日)の内容を解説した記事:企業法務ナビ(BUSINESS LAWYERS)https://www.businesslawyers.jp/articles/172
- 単一の色彩のみからなる商標の自他商品役務識別力に関する知的財産高等裁判所判決について(2)ルブタン商標事件(2023年1月31日判決の解説)https://innoventier.com/archives/2023/03/14824
- マークス国際弁理士法人「特許庁:『色商標』登録制度導入から10年、“単色”の登録は『永遠のゼロ』?」(2025年5月)https://japan.marks-iplaw.jp/newsletter-223/
- Labrecque, L. I. & Milne, G. R. (2012; オンライン公開2011年). Exciting red and competent blue: the importance of color in marketing. Journal of the Academy of Marketing Science, 40(5), 711-727. https://doi.org/10.1007/s11747-010-0245-y
- Elliot, A. J. & Maier, M. A. (2014). Color Psychology: Effects of Perceiving Color on Psychological Functioning in Humans. Annual Review of Psychology, 65, 95-120. https://www.annualreviews.org/content/journals/10.1146/annurev-psych-010213-115035
- 欧州連合司法裁判所 C-163/16 Christian Louboutin v Van Haren Schoenen(2018年6月12日)
- World Trademark Review「Christian Louboutin declares red soles victory」https://www.worldtrademarkreview.com/article/christian-louboutin-declares-red-soles-victory-european-court-hands-down-long-awaited-decision
- Centre Pompidou「The untold story of the International Klein Blue (IKB) of Yves Klein」https://www.centrepompidou.fr/en/pompidou-plus/magazine/article/the-untold-story-of-the-international-klein-blue-ikb-of-yves-klein
- The Collector「The Vantablack Controversy: Anish Kapoor vs. Stuart Semple」https://www.thecollector.com/vantablack-anish-kapoor-stuart-semple-controversy/











