こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。
皆さんはアリッサ・モンクスという人物をご存知ですか?
アリッサ・モンクス(Alyssa Monks)は、1977年にアメリカのニュージャージー州で生まれた画家です。写真と見まがうほど写実的な人物を描きながら、その手前に曇ったガラスや湯気、水、草花を重ね、近づくと厚い絵具の筆跡が抽象画のように見えてくる油彩画で知られています。
作家の公式サイトは、モンクスが伝統的な写実の境界を押し広げ、作品に抽象的な要素を取り入れていると紹介しています。2022年には、カリフォルニア州のサンルイスオビスポ美術館で、モンクスにとって初めての美術館での回顧展が開かれました。
本記事ではそんなアリッサ・モンクスの人生と作品についてご紹介します。モンクスとはどんな画家なのか、アメリカや海外での展覧会の歩みとあわせて見ていきます。
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Toggleアリッサ・モンクスって?

基本情報
| 本名 | アリッサ・モンクス(Alyssa Monks) |
| 生年月日(没年月日) | 1977年生まれ(2026年10月時点で存命。月日は公式の資料で確認できなかったため記載していません) |
| 国籍・出身 | アメリカ/ニュージャージー州生まれ |
| 学歴 | ニュースクール(ニューヨーク)で学ぶ。1999年ボストン・カレッジで学士(B.A.)。在学中にフィレンツェのロレンツォ・デ・メディチ校で絵画を学ぶ。2001年ニューヨーク・アカデミー・オブ・アートで修士(M.F.A.) |
| 分野 | 油彩画(リネン・板)、木炭によるドローイング |
| 傾向 | 写実的な人物画に、ガラス・ビニール・湯気・水・草花などの半透明の層と、厚塗りの筆跡による抽象的な要素を重ねる |
| 師事した人物・影響を受けた人物 | 公式の資料で確認できなかったため記載していません |
| 拠点 | ニューヨーク・ブルックリン(2022年のサンルイスオビスポ美術館の紹介による) |
モンクスと同じく、現代の写実的な絵画で人や都市を描く画家については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
経歴と作品
ニュージャージーからニューヨークへ(1977年〜2001年)
アリッサ・モンクスは1977年、ニュージャージー州で生まれました。作家の公式サイトとサンルイスオビスポ美術館(SLOMA)の紹介によると、モンクスは子どものころから油絵を描きはじめています。
その後、ニューヨークのニュースクールで学び、1999年にボストン・カレッジで学士号を取得しました。この間に、イタリアのフィレンツェにあるロレンツォ・デ・メディチ校でも絵画を学んでいます。2001年には、ニューヨーク・アカデミー・オブ・アートで美術学修士(M.F.A.)を取得しました。
公式サイトの展覧会歴によると、最初の個展は2002年、カリフォルニア州のサラ・ベイン・ギャラリーで開いた「Surfacing」でした。以後、同じ画廊で2003年から2009年までほぼ毎年のように個展を重ね、ニューヨークのDFNギャラリーでも2006年から個展を開いています。
水と人を描く(2000年代)
2000年代のモンクスが追い求めたのが、水と人の組み合わせでした。公式サイトの2005年から2009年の作品一覧には、「Immersion(浸ること)」「Liquid(液体)」「Steamed(湯気の立つ)」「Vapor(蒸気)」「Glass(ガラス)」といった題名が並びます。水滴のついたガラス越しの人物や、湯気にかすむ顔、水面に浮かぶ人など、水によって見え方が変わる人の姿をくり返し描きました。
2006年には、カリフォルニア州のフラートン・カレッジでアーティスト・イン・レジデンスとして滞在制作を行っています。公式サイトによれば、モンクスは大学や各地の機関で講義や指導を重ね、現在もワークショップや個別の指導を続けています。
『Lake George』(2007年)
2007年の『Lake George』は、横幅およそ2メートルの大きな油彩画です。画面のほとんどを、波立つ暗い水面が占めています。左上の方に、黄色いライフジャケットを着けた男性が頭だけを水から出して泳いでおり、その周りに白い水しぶきが上がっています。水面には空の光が映り込み、手前に向かうほど、波の形が黒と紫と銀色の大きな模様になっていきます。
泳ぐ人は画面の中ではとても小さく、主役はむしろ水そのものです。写真のような細部と、近づくとただの色の帯に見える波の描写が一枚の中に同居しています。題名のレイク・ジョージは、ニューヨーク州にある湖の名前です。

ガラスと湯気の向こう側(2010年代前半)
公式サイトとSLOMAは、モンクスが参加した主な展覧会として、ニューヨークのナショナル・アカデミー美術館で開かれた展覧会「Reconfiguring the Body in American Art, 1820-2009(アメリカ美術の身体の再構成 1820〜2009)」と、ドイツのアーレン美術館で開かれた展覧会「Intimacy」を挙げています。公式サイトの掲載誌の一覧には、アーレン美術館の2010年の展覧会カタログで、モンクスの作品が表紙を飾ったことも記されています。
2013年には、イタリアのヴェネツィアにあるクエリーニ・スタンパリア財団で開かれたベネトン財団の「Imago Mundi」展に参加しました。ギリシャのミコノス島の画廊のグループ展にも、2011年以降たびたび参加しています。モンクスの作品は、アメリカだけでなくヨーロッパでも紹介されてきました。
アメリカ国内の美術館のグループ展にも参加しています。公式サイトの展覧会歴には、2014年にインディアナ州のフォートウェイン美術館で開かれた「Contemporary Realism Biennial」、2016年から2017年にルイジアナ州のルイジアナ芸術科学博物館で開かれた「Contemporary Old Masters」などが並びます。
この時期の代表作には、ガラスやビニール越しに人物を描いた大きな作品が多くあります。SLOMAは、2010年の『Charade』について、水面へもがき出ようとしているようにも、ひとりで考えにふけっているようにも見える女性を描き、断片的な場面だけを見せることで、見る人に自分の経験を重ねさせる作品だと説明しています。
『Melancholy』(2014年)
人物だけでなく、モンクスは風景も描きました。公式サイトの2010年から2014年の作品一覧には、2014年に描かれた25センチ四方ほどの小さな板の作品が並びます。『Melancholy(憂い)』は、そのうちの一点です。
画面には、葉を落とした細い木々が何本も立ち並ぶ林が描かれています。全体は灰色と淡い緑、茶色に包まれ、木々の手前には、白くひび割れたような絵具の層がかかっていて、霧の向こうか、曇ったガラス越しに林を見ているように見えます。人物を描くときと同じ「手前に半透明の層を置く」方法が、風景にも使われていることが分かります。

2015年11月、モンクスはインディアナ大学で開かれたTEDxIndianaUniversityで講演し、その映像は2016年にTEDの公式サイトでも公開されました。TEDは講演の紹介文で、モンクスを、未知のもの、予測できないもの、ひどいとさえ思えるものの中に美しさとインスピレーションを見いだす画家と紹介し、人生と絵具とキャンバスの関わりを、画家として、人間としての歩みを通して語った講演だと説明しています。

半透明の層と厚い筆跡
モンクスの絵の特徴について、作家の公式サイトは次のように説明しています。モンクスは、ガラス、ビニール、湯気、水、草花などの半透明のフィルターを浅い空間に重ねることで、背景と前景を入れ替えて見せます。絵の緊張感は、構図だけでなく、絵の表面そのものからも生まれます。筆跡は一つひとつ厚く塗られ、すべての身ぶりと判断を記録する化石のようで、手でつくられたもののエネルギーを感じさせるといいます。
SLOMAの展覧会の紹介には、モンクス自身の言葉も引かれています。モンクスは、自分の人間としての経験の親密さと弱さを絵具に移し、ほかの誰かがそれとつながれるようにすることが自分の意図だと語ります。そして、絵画は同じ部屋にいなければ表面のエネルギーを感じられない「もの」であり、自分の絵はできるかぎり親密なものにしたい、と述べています。
写真のように描かれた顔も、近づけば、厚く重なった絵具の筋や盛り上がりでできていることが分かります。離れて見るか近づいて見るかで、写実と抽象のどちらにも見える。それが、モンクスの絵の前で起こる体験です。
花と顔が重なる絵(2010年代後半)
2016年、モンクスはニューヨークのフォーラム・ギャラリーで個展「Resolution」を開きました。以後、2018年の「Breaking Point」、2021年から2022年の「It’s All Under Control」と、同画廊で個展を重ねています。SLOMAは、モンクスの作品はフォーラム・ギャラリーが扱っていると紹介しています。
2018年には、テレビドラマの世界でもモンクスの絵が使われました。公式サイトとSLOMAによると、アメリカのテレビ局FXのドラマシリーズ『ジ・アメリカンズ』の第6シーズンで、モンクスの作品が大きく取り上げられています。
モンクスの絵は、美術館の外でも人の目にふれてきました。公式サイトの掲載一覧によると、2012年の映画『メイジーの瞳(What Maisie Knew)』に作品が登場し、2014年にはフランスの出版社アクト・シュッドの本の表紙や、音楽アルバムのジャケットにも使われました。現代の写実絵画を集めた画集『Juxtapoz Hyperreal』(2014年)や、『Disrupted Realism: Paintings for a Distracted World』(2019年)にも取り上げられています。
この時期から、モンクスの画面には花や葉が大きく入り込むようになります。顔の上に、花びらや枝が半透明の層となって重なり、人物と植物がひとつに溶け合ったような絵です。
『Roar』(2019年)
2019年の『Roar(ほえる)』は、91センチ四方ほどの正方形の油彩画です。画面いっぱいに、目を伏せ、口を開けた女性の顔が描かれています。その顔に、オレンジや赤茶色のケシの花、紫や水色の野の花が重なり合い、どこまでが顔でどこからが花畑なのか分からないほどです。
筆跡は四角く短いタッチで、色は鮮やかです。題名のとおり、声をあげるような口の形と、咲き乱れる花の勢いが、画面に強いエネルギーを与えています。公式サイトの画像の説明には「ケシの花畑と顔」と書かれています。

『Shapeshifter』(2019年)
同じ2019年の『Shapeshifter(姿を変えるもの)』は、横幅2メートルを超える大作です。画面の中央に女性の顔が大きく描かれ、その上に、淡いピンクの花をつけた枝が一面に重なっています。こちらを見つめる片方の目は鮮やかに描かれていますが、もう片方の目や頬、口元は花びらの向こうにかすみ、黒い髪の束が花の枝と絡み合っています。
公式サイトの画像の説明には「桜の花と女性の顔」とあります。花の層が、顔を隠しながらも同時に飾り、人物が花へと姿を変えていく途中のようにも見えます。題名の「姿を変えるもの」という言葉が、その印象を言い当てています。

美術館での回顧展と近年の作品(2020年代)
2020年から2021年には、ジョージア州コロンバスのボー・バートレット・センターで個展「Hiraeth」を開きました。2021年の個展「It’s All Under Control」の作品について、SLOMAは、重なったガラスのように見えるものの向こうに一人の人物を描き、新型コロナウイルス感染症の流行がもたらした不安と先の見えなさをとらえた作品だと説明しています。
2022年8月27日、サンルイスオビスポ美術館で回顧展「Be Perfectly Still」が開幕しました。SLOMAは、これをモンクスにとって初めての美術館での回顧展と紹介し、2000年代前半からパンデミックの時期までの作品を集めた、それまででもっとも幅広い展覧会だったと説明しています。展示されたのは、モンクス本人や身近な人々を、無防備で親密な状況の中で描いた大きな肖像画でした。
2023年には、ニューヨーク州サウサンプトンのMMファインアート・ギャラリーで個展「Where Longing Meets Limits」を開きました。
『Where Longing Meets Limits』(2023年)
個展と同じ題名をもつ2023年の『Where Longing Meets Limits(憧れが限界と出会うところ)』は、横幅およそ2.4メートルの大作です。画面いっぱいに、くすんだピンクや白、灰色のバラやフリルのような花びらの花、小さな白い花の房、緑の葉が幾重にも重なっています。その花のすき間から、女性の片目と鼻の一部だけがのぞいています。
花びらは透けるように描かれ、その向こうの顔とひとつに溶け合っています。顔はほとんど隠れているのに、こちらを見つめる一つの目が、画面全体に静かな緊張感を与えています。

公式サイトによると、2026年もモンクスはギリシャのミコノス島の画廊でのグループ展や、ペンシルベニア州の画廊での展覧会「Disrupted Realism」に参加しており、2027年にはドイツのヴィースバーデンの画廊での展覧会も予定されています。
| 年 | 主な出来事 |
|---|---|
| 1999年 | ボストン・カレッジで学士 |
| 2001年 | ニューヨーク・アカデミー・オブ・アートで修士 |
| 2002年 | 最初の個展「Surfacing」(サラ・ベイン・ギャラリー) |
| 2006年 | フラートン・カレッジでアーティスト・イン・レジデンス |
| 2013年 | ベネトン財団「Imago Mundi」展(ヴェネツィア)に参加 |
| 2015年 | TEDxIndianaUniversityで講演 |
| 2016年 | 個展「Resolution」(フォーラム・ギャラリー) |
| 2018年 | ドラマ『ジ・アメリカンズ』第6シーズンで作品が使われる |
| 2022年 | 初の美術館での回顧展「Be Perfectly Still」(サンルイスオビスポ美術館) |
| 2023年 | 個展「Where Longing Meets Limits」(MMファインアート・ギャラリー) |
まとめ
いかがだったでしょうか。アリッサ・モンクスの人生と作品について、ご紹介してきました。
モンクスは1977年にニュージャージー州で生まれ、ボストン・カレッジとニューヨーク・アカデミー・オブ・アートで学びました。2002年の最初の個展から、水やガラス、湯気を通して見える人の姿を描き続け、2010年代にはアメリカだけでなくドイツやイタリアでも作品が紹介されました。2010年代後半からは、花や葉が顔と重なり合う作品へと広がっています。
写真のように精密な顔と、近づくと化石のように盛り上がる厚い筆跡。一枚の中に写実と抽象が同居するのが、モンクスの絵の大きな特徴です。2022年には、初めての美術館での回顧展も開かれました。
画面の前で一歩近づき、また一歩離れてみると、モンクスの絵はそのたびに違う顔を見せてくれます。
Euphoric " " の視点
モンクスの絵は、写真と見まがうほど精密な顔と、近づくと化石のように盛り上がる厚い筆跡とが、一枚の中に同居しています。ガラスや湯気、水を人物の手前に重ねることで、離れて見るか近づいて見るかによって、写実にも抽象にも見える画面が生まれます。
伝統的な写実の技術を大切にしながら、その境界を押し広げてきた歩みは、2022年の初めての美術館での回顧展へとつながりました。見る位置を変えるたびに新しい顔を見せる作品は、絵の前でじっくり過ごす時間の豊かさを教えてくれます。
この作品を見に行くには
記事で紹介した作品の所蔵先は、作家の公式サイトに記載がありません。2026年10月時点で、常設で作品を見られる美術館は確認できませんでした。作品の画像と最新の展覧会の予定は、次の公式サイトでご確認ください。






