京都市立芸術大学とは?美術学部の学科・学費・入試を徹底解説

京都市立芸術大学とは?美術学部の学科・学費・入試を徹底解説

アートコンサルティング

こんにちは。ユアムーン株式会社 編集部です。

皆さんは京都市立芸術大学(通称・京都芸大、英語名 Kyoto City University of Arts)という大学をご存知ですか。公式サイトの沿革によれば、その母体は1880年(明治13年)に創立された京都府画学校で、公式サイト(本学の概要)は「日本初の公立の絵画専門学校として開設された京都府画学校」を母体と説明しています。1969年に京都市立美術大学と京都市立音楽短期大学が統合して現在の京都市立芸術大学となり、2023年には京都駅の東側、下京区の崇仁(すうじん)地域に新しいキャンパスを構えて移転しました。美術と音楽が同じキャンパスにある、公立の芸術大学です。

本記事では、このうち美術学部(美術科・デザイン科・工芸科・総合芸術学科)を中心に、基本情報、沿革、学科で学べること、大学院、学費、入試の方式、キャンパスと施設、卒業後の進路、主な卒業生まで、公式サイト(kcua.ac.jp)で確認できた情報をもとにご紹介します。音楽学部と大学院音楽研究科については、基本情報で触れる程度にとどめます。あわせて、国際的な大学ランキングで京都市立芸術大学の名前を見かけない理由についても、誤解のないように解説します。それでは早速いってみましょう。

京都市立芸術大学って?

基本情報

京都市立芸術大学 崇仁キャンパスの校舎と京都タワー
京都市立芸術大学 崇仁キャンパス(A棟・C棟)と、キャンパス西側に位置する京都タワー(2023年7月)/撮影:Dango2020112(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons
正式名称京都市立芸術大学(英語名 Kyoto City University of Arts)
創立1880年。京都府画学校として創立されました
大学としての開学1969年。京都市立美術大学と京都市立音楽短期大学が統合し、京都市立芸術大学となりました
所在地〒600-8601 京都市下京区下之町57-1(崇仁キャンパス)
設置者公立大学法人京都市立芸術大学(公立。2012年に公立大学法人へ移行)
学長小山田徹(2025年4月就任。2021年10月から2025年3月までは美術学部長)
学部美術学部(美術科・デザイン科・工芸科・総合芸術学科)、音楽学部(音楽学科)
大学院美術研究科、音楽研究科(いずれも修士課程と博士(後期)課程)
在学生数1,065名(男260名・女805名。大学院を含む全学。2025年5月1日現在)。うち美術学部は558名
収容定員965名(大学院を含む全学。2025年5月1日現在)。うち美術学部は540名
教員数99名(2025年5月1日現在。公式サイトの教員数一覧の合計)
学校の目的(1883年)1883年の京都府画学校通則の一節「粗を戒め精を窮め浮を去り実に就き」

公式サイトは教育・研究理念として3つの柱を掲げています。第一は「本学独自の伝統をふまえ、芸術の教育研究を『創造活動』として推進すること」です。第二は「少数精鋭の高度な教育体制を維持・展開させること」、第三は「地域社会と連携しつつ、文化首都・京都の特質を活かした国際的な芸術文化の交流拠点となること」です。

美術学部の教育・研究目的は、京都の文化的・人的資源を生かし、独創的な人材を育成して社会に貢献することと、公式サイトにまとめられています。なお、本学は東京藝術大学、金沢美術工芸大学、愛知県立芸術大学、沖縄県立芸術大学と並ぶ5つの芸術大学のひとつとして、各校と連携していることも公式サイトに記載されています。

音楽学部は音楽学科の1学科で、作曲、指揮、ピアノ、弦楽、管・打楽、声楽、音楽学の7専攻があります。2027年度の一般入試の募集人員は65名です。音楽の側面については、本記事では詳しく扱いません。

1880年から続く、京都芸大の歩み

公式サイトの沿革表をたどると、京都市立芸術大学の歴史は校名と校舎が何度も変わってきた歴史でもあります。1880年(明治13年)に京都府画学校が創立され、当初は京都御苑内の旧准后御里御殿を仮校舎としました。1889年(明治22年)に京都市の経営に移って京都市画学校と改称し、1891年に京都市美術学校、1894年に京都市美術工芸学校と名前を変えています。

1909年(明治42年)には、美術工芸学校の校舎の一部を転用して京都市立絵画専門学校が創立されました。1926年(大正15年)に東山区今熊野の新校舎へ移り、1945年に京都市立美術専門学校と改称、1950年に京都市立美術大学が創立されます。一方の音楽は、1952年に京都市立音楽短期大学が上京区出雲路立本町に創立され、1956年に左京区聖護院へ移転しました。そして1969年、両校が統合して京都市立芸術大学が開学します。

年出来事(公式サイトの沿革より)
1880年京都府画学校創立
1889年京都市の経営に移り、京都市画学校と改称
1909年京都市立絵画専門学校創立
1950年京都市立美術大学創立
1952年京都市立音楽短期大学創立
1969年京都市立芸術大学開学
1980年大学院美術研究科修士課程を設置し、西京区大枝沓掛へ移転
1986年大学院音楽研究科修士課程を設置
1999年美術学部に総合芸術学科を設置
2000年大学院美術研究科博士(後期)課程と、修士課程保存修復専攻を設置。日本伝統音楽研究センターを開設
2003年大学院音楽研究科博士(後期)課程を設置
2010年ギャラリー@KCUAを設置
2012年公立大学法人へ移行
2014年芸術資源研究センターを開設
2023年下京区下之町(崇仁地域)の新キャンパスへ移転

1980年に大学院が設置された際、大学は西京区大枝沓掛に移転しました。以降40年以上にわたり、沓掛が京都芸大の拠点でした。その後、2023年10月に京都駅東部エリアの現キャンパスへ移っています。学長メッセージは、この新キャンパスを「テラスのような大学」というコンセプトの空間と紹介しています。1880年創立という歴史は、学長メッセージでも、日本で最も長い歴史を持つ芸術系大学であると述べられています。

美術学部4学科、何をどう学べるのか

美術学部は、美術科・デザイン科・工芸科・総合芸術学科の4学科で構成され、受験は学科単位で行います。美術学部の公式ページによれば、1年次の前期は学科や専攻を横断する「総合基礎実技」が共通課程として置かれています。学科の異なる学生が混ざってクラスを組み、毎年共通のテーマに取り組み、最後に展覧会として成果を発表する授業です。1年次後期から、選んだ専攻の基礎(材料、描画技法、道具など)を学び、専門的な実技は2年次から本格化します。

学科専攻公式サイトの説明
美術科日本画、油画、彫刻、版画、構想設計(5専攻)1年次後期から2年次前期にかけて、半期ごとに1つずつ、計2つの基礎実技を選んで学びます。各専攻に定員はありませんが、専攻実技に進む際に基礎実技の履修が条件となる場合があります
デザイン科総合デザイン、デザインB(2専攻)1年次後期に2専攻の基礎を学び、2年次に2専攻の基礎実技から半期ずつ選択します。2023年4月に改組されました
工芸科陶磁器、漆工、染織(3専攻)1年次後期に3専攻すべての基礎を学び、2年次から専門に進みます
総合芸術学科総合芸術学(1専攻)1年次から総合基礎実技と並行して基礎演習が始まります。個別試験は描写と小論文の2科目です

カリキュラム全体の特徴として、公式サイトは次の点を挙げています。午前は講義、午後は実技を行うのが基本であること。教養科目が「芸術文化」「芸術科学」「芸術学・美術史」などに分かれていること。外国語として英語・フランス語・ドイツ語、体育、コンピュータ演習があること。そして「テーマ演習」という本学独自の科目があり、異なる専攻の学生と教員が共通のテーマを研究し、学生がテーマを提案することもできること。教職課程と博物館学課程(学芸員資格)も用意されています。

展示の機会が多いことも、公式サイトが強調している点です。学部1年生から大学院修士課程2年生までが毎年作品を発表し、展示作業、搬入、搬出は学生が自分たちで行います。学部生は卒業までに4回の大規模な展覧会に参加するとされています。

在学生数と収容定員を学科別にみると、次のようになります(2025年5月1日現在、公式サイトの「収容定員及び在学生数」より)。

学科収容定員在学生数うち男性うち女性
美術科280名288名71名217名
デザイン科120名124名26名98名
工芸科120名123名20名103名
総合芸術学科20名23名3名20名

収容定員はおおむね、各学科の1学年の募集人員の4倍にあたります。少数の学生が、学科の枠を越えて同じ工房や展示の場で学ぶ大学であることが、数字からも読み取れます。なお、旧課程の入学生(2022年度以前入学)にはビジュアル・デザイン、環境デザイン、プロダクト・デザインの3専攻があり、2023年度以降の入学生が総合デザインとデザインBに進む仕組みになっています。

京都市立芸術大学の美術学部を、美術科の5専攻、デザイン科の2専攻、工芸科の3専攻、総合芸術学科の1専攻の4学科に整理した図
図:美術学部の4学科と専攻

大学院美術研究科で、さらに深く学ぶ

大学院美術研究科には修士課程と博士(後期)課程があります。修士課程は、公式サイトによれば次の専攻・領域で構成されています。

専攻領域特色(公式サイトの紹介より)
美術専攻日本画テーマを自ら設定して日本画を制作し、美術や教育分野での専門的な活躍を目指します
油画自主制作を中心に、表現のテーマと技法を見つめ直し、多角的な演習で制作意識を高めます
彫刻独自の観点を探求し、自身の表現や社会との関わりを研究・考察します
版画版表現を軸に、複数の版種の工房を横断しながら、メディアとしての版画の可能性を広げます
構想設計担当教員のアドバイザー制のもと、大学の資源を活用して自らの場を社会の中に創ります
デザイン専攻総合デザイン理論と実践を兼ね、社会問題の解決に向けた包括的な研究と、短期スタジオでの実践的な議論を行います
デザインB実技と理論・人文社会科学を結びつけ、多面的な視点と実験的なデザインのあり方を探究します
工芸専攻陶磁器歴史的観点を踏まえ、現代性を問いながら制作と論理の関係を明確にします
漆工伝統技法の研究や技法実験を通じて、時代に対応する発想力を養います
染織染織を通じて工芸と美術全体への理解を深め、作家としての意識を確立します
芸術学専攻芸術学専門分野と指導教員を定め、研究発表の成果を修士論文にまとめます
保存修復専攻保存修復日本・東洋の古典絵画を対象に、修復の理論・技術と伝統的な絵画技法を学びます

保存修復専攻は2000年に設置された専攻です。博士(後期)課程は、「専門分野についての理論的な考察と実践によって次世代を担う芸術家及び研究者を養成」することを目的としています。指導教員によるアドバイザー制のもと、自ら立てた研究計画に沿って演習・制作・研究を進め、修了時には作品と論文で成果を発表します。

博士課程の研究領域は、日本画、油画、彫刻、版画、構想設計、総合デザイン、デザインB、陶磁器、漆工、染織、産業工芸・意匠、芸術学、保存修復、リベラルアーツです。このうち「産業工芸・意匠」は「工芸とデザインの融合による複合的研究」を掲げ、「リベラルアーツ」は芸術と学問の交差を扱う、博士課程のみの領域とされています。専門分野を問わず、C棟6階の「博士ラボ」で制作・研究を行い、他領域の学生と交流できる点も特色です。

学費(公式ページ掲載額)

京都市立芸術大学の公式サイト「学費・手続き・制度」のページに掲載されている金額は次のとおりです。このページには年度の表記がなく、本記事は2026年10月時点で掲載されている金額を示しています。学部生も大学院生も、授業料と入学料は同額です。

項目京都市内出身者京都市外出身者
入学料282,000円482,000円
授業料(年額)535,800円535,800円
初年度に納める合計817,800円1,017,800円
入学考査料(出願時)17,000円

公立大学の学費では、入学料に市内・市外の区別があります。京都芸大の場合、市外出身者の入学料は市内出身者より200,000円高く設定されています。この「市内出身者」の定義は、出願前に必ず公式サイトで確認してください。

4年間に大学へ納める入学料と授業料を、公式ページの金額をもとに編集部で計算すると、市内出身者で2,425,200円(817,800円+535,800円×3年)、市外出身者で2,625,200円(1,017,800円+535,800円×3年)になります。この計算に含めているのは入学料と授業料だけです。公式のこのページには施設費や教材費の記載がなく、制作に使う材料費や、住居費・生活費などは含まれていません。美術の学びには材料費がかかりますので、実際の負担は学科や制作内容によって変わると考えておく必要があります。

このほか、公式ページには授業料の減免制度や短期融資制度(美術教育後援会に加入している学生が対象、限度額5,000円)、学割証についての記載があります。金額や条件は変わることがありますので、進学を具体的に検討する段階では、教務学生課(学生・国際担当)にご確認ください。

京都市立芸術大学の公式ページに掲載された学費を、京都市内出身者と京都市外出身者で、入学料、授業料、初年度合計について比較した表
図:初年度に納める費用

入試の方式(2027年度入試)

京都市立芸術大学の公式サイトには、2027年度(令和9年度)入学者選抜要項が公開されています。美術学部の募集は一般入試のみで、募集人員は美術学部135名です(美術科70名、デザイン科30名、工芸科30名、総合芸術学科5名)。公式ページには、学生募集要項は11月上旬に公表予定と記載されています。出願期間や試験日は毎年変わりますので、ここでは日付には触れず、方式と配点の概要を整理します。

共通テストと個別試験を組み合わせる

入試の方式は、「大学入学共通テスト」と、本学独自の「個別試験」の成績を総合して合否を判定するものです。個別試験は分離分割方式の前期日程で実施されます。出願できるのは、令和9年度大学入学共通テストで本学が指定する教科・科目をすべて受験した人で、過年度(2026年度以前)の共通テストの成績は利用できません。アドミッション・ポリシーは、美術学部が求める学生像として「表現に対する強い意欲」を持つ学生、「自ら課題を見出し、解決しようとする意欲」を持つ学生、「基礎的な学力や造形力、柔軟な思考力」を持つ学生などを挙げています。

個別試験の科目と配点は次のとおりです。

個別試験の科目試験時間配点美術科デザイン科工芸科総合芸術学科
描写(鉛筆描写)4時間250点○○○○
色彩(色彩表現)3時間250点○○○-
立体(立体表現)3時間250点○○○-
小論文(論述試験)2時間200点---○
個別試験の合計750点750点750点450点

美術科・デザイン科・工芸科は、描写・色彩・立体の3科目をすべて受けます。総合芸術学科だけは、描写と小論文の2科目です。公式サイトは個別試験の評価の観点を、描写は「与えられた対象物を条件に従って構成し、的確に観察・把握し、描写する能力」、色彩は「与えられたテーマを条件に従って発想・構想し、的確に色彩で表す能力」、立体は「与えられたテーマを支給された材料と与えられた条件に従って発想し、的確に立体にする能力」、小論文は「与えられた文章等を的確に理解し、それをもとに思考したことを論述する能力」と説明しています。

共通テストで受験が必要な教科と配点は、学科によって異なります。

学科共通テストの教科と配点共通テストの合計合否判定の満点
美術科・工芸科国語200点、地理歴史・公民から1科目100点、数学・理科・情報から1科目100点、外国語200点(4教科4科目または5科目の合計600点を500点に換算)500点1,250点(個別750点+共通テスト500点)
デザイン科国語200点、地理歴史・公民から1科目100点、数学または情報100点、理科100点、外国語200点(5教科5科目または6科目)700点1,450点(個別750点+共通テスト700点)
総合芸術学科国語200点、地理歴史・公民・理科から1科目100点、数学または情報100点、外国語200点(4教科4科目または5科目)600点1,050点(個別450点+共通テスト600点)

外国語で「英語」を選んだ場合は、リーディング(100点満点)を140点満点に、リスニング(100点満点)を60点満点に換算し、合計200点満点とします。受験する科目が複数ある場合の得点の扱いは、学科ごとに細かい規定がありますので、要項で確認してください。

共通テストの比重を見ると、デザイン科は共通テストの配点が個別試験の750点に迫る700点で、美術科・工芸科の500点より高くなっています。実技の力だけでなく、教科の力もあわせて見る設計だと読み取れます。

2026年度入試の結果

公式サイトが公表している令和8年度(2026年度)入学試験結果は次のとおりです。美術学部の4学科合計の数字で、公式PDFは学科別の数字として掲載しています。

学科募集人員志願者数受験者数合格者数(追加合格含む)入学者数
美術科70名249名248名72名70名
デザイン科30名132名132名30名30名
工芸科30名100名100名30名30名
総合芸術学科5名20名20名5名5名
美術学部 小計135名501名500名137名135名

公式PDFには倍率の欄がないため、本記事では倍率を掲載していません。志願者数や合格者数は大学ごとに数え方や対象範囲が違いますので、他の大学の数字と単純に比べることはできない点にご注意ください。同じPDFには合格最低点も載っており、美術科が636.50点(1,250点満点)、デザイン科が811.60点(1,450点満点)、工芸科が646.84点(1,250点満点)、総合芸術学科が646.00点(1,050点満点)でした。

キャンパスと施設

京都芸大のキャンパスは、2023年に開かれた崇仁キャンパスです。所在地は京都市下京区下之町57-1で、京都駅東部エリアに位置し、公式サイトによれば京都駅からA棟まで徒歩約6分です。キャンパスは3つの地区に10棟の建物が配置され、鴨川と高瀬川の2つの川に面しています。コンセプトは「テラスのような大学」で、外に向かって開かれ、内側と外側が共有できる場所とされています。

京都市立芸術大学 崇仁キャンパスB地区と高瀬川
京都市立芸術大学 崇仁キャンパスB地区。手前は同時に護岸が整備された高瀬川(2023年7月)/撮影:Dango2020112(CC BY-SA 4.0)/出典:Wikimedia Commons
施設公式サイトの紹介
堀場信吉記念ホール(A棟)800席の講堂で、音楽やオペラにも対応できる形式に変えられます
笠原記念アンサンブルホール(B棟)地下から3層吹き抜けの大きなアンサンブル室で、フルオーケストラを想定した空間です
ギャラリー@KCUA(C棟)堀川御池から移転しました。2010年に設置されたギャラリーです
芸術資料館(C棟)1991年に設立され、約4,300件を所蔵します
伊藤記念図書館(C棟)約14万冊の蔵書に加え、視聴覚室や試奏室があります
共有工房(I棟)大型の機械や専門的な設備を、専攻や分野を越えて全学で共有します
芸大通キャンパスを南北に貫く通りです

公式サイトの施設一覧には、ほかにアートスペースk.kaneshiro、芸術資源研究センター、日本伝統音楽研究センター、キャリアデザインセンターも挙がっています。2023年の移転に際しては、堀場信吉記念ホール、笠原記念アンサンブルホール、伊藤記念図書館、アートスペースk.kaneshiroが整備されたと、沿革表に記されています。

美術大学の新キャンパスに、芸術資料館とギャラリーが入っていることには意味があります。学生が作品を作る場所と、見せる場所、収蔵して残す場所が、同じ敷地の中に揃っているからです。さらに、美術と音楽が同じキャンパスにある点について、学長メッセージは、ジャンルを超えた交流が生まれると述べています。

世界大学ランキングでの位置づけ

海外の美術大学を調べたことがある方は、QS社が発表する「QS World University Rankings by Subject」の「Art & Design」部門をご存知かもしれません。結論からお伝えすると、2026年版のアート&デザイン部門に、京都市立芸術大学は掲載されていません。編集部で確認したところ、同部門に掲載された日本の大学は東京大学、千葉大学、筑波大学、京都大学、武蔵野大学、東京藝術大学、慶應義塾大学、京都工芸繊維大学、九州大学、早稲田大学の10校でした(武蔵野大学は武蔵野美術大学とは別の大学です)。

これは、教育の質が低いという意味ではありません。このランキングの配点は学術評判が90%、雇用者評判が10%で、世界中の研究者や企業の採用担当者へのアンケートで順位が決まります。つまり、国際的な認知や研究の発信力が順位に表れやすい仕組みです。算出方法の詳しい解説は、Euphoric " " のアート&デザイン部門QS世界大学ランキングの解説記事をご覧ください。

卒業後の進路

京都市立芸術大学の公式サイトは、年度ごとの進路状況をPDFで公開しています。以下は「令和7年度 卒業・修了生等の進路について」(令和7年3月31日現在)に基づく数字です(年度の表記は公式資料の表題のままです)。この資料は、学科・専攻ごとに、活動(制作、演奏など)、進学、就職、その他、進路未定に分けて人数を示しています。公式資料の注記には、「活動」にはアルバイトや非常勤講師などをしながら各種活動している人を含むこと、「進路未定」の「その他」には未回答者を含むことが書かれています。

区分学生数活動(制作)進学就職その他(アルバイトなど)進路未定
美術学部125名1名35名43名5名41名
大学院美術研究科 修士課程68名5名1名27名7名28名

美術学部125名の内訳をみると、進学は35名(うち修士課程が34名)、就職は43名(企業41名、教員2名)でした。進路未定の41名のうち、就職希望が6名、「その他」が35名で、この「その他」には未回答者が含まれます。大学院修士課程68名では、就職が27名(企業24名、教員3名)、進路未定が28名です。進路未定の数は、決まっていない人だけでなく未回答の人も含む数字ですので、この数字だけで「就職できなかった人の数」と読むことはできません。

学科別にみると、美術学部の就職者43名のうち、デザイン科が16名(ビジュアル11名、プロダクト5名)、美術科が17名、工芸科が10名でした。進学は美術科が21名、工芸科が8名、デザイン科が4名、総合芸術学科が2名です。就職先の業種について、公式サイトは「建築、繊維産業、出版印刷、電気機器、自動車、情報マスコミなど」の民間企業の例を挙げています。

公式サイトが公開している「令和7年度 主な就職先」の一覧(美術・音楽を含む全学の一覧)から、いくつかを抜き出すと、次のようになります。

区分主な就職先の例(公式サイトの一覧より)
ゲーム・アニメーション任天堂、東映アニメーション、スタジオコロリド
広告・出版・デザイン読売連合広告社、青幻舎、GK京都
インテリア・空間・テキスタイルオカムラ、高島屋スペースクリエイツ、川島織物セルコン、田中刺繍
伝統工芸・食品堤浅吉漆店、叶匠寿庵
研究機関・文化施設宇宙航空研究開発機構(JAXA)、福岡市博物館

一覧にはゲームやアニメーション、広告、出版、インテリア、伝統工芸、研究機関まで幅広い業種の名前が並びます。進路は年度によって変わりますので、最新の状況は、公式サイトの進路・就職状況のページでご確認ください。

主な卒業生・ゆかりの作家

京都市立芸術大学の公式サイトには「ゆかりのある著名人」のページがあり、美術20名、音楽8名の卒業・修了生が掲載されています。ここでは、そのうち美術分野の方々を、公式の表記に沿ってご紹介します。なお、前身校(市立美術専門学校・市立美術大学)の卒業生も含まれています。

  • 田中一光(グラフィックデザイナー):1950年、市立美術専門学校 図案科卒業
  • ワダ・エミ(演劇・映画衣装デザイナー、アカデミー賞衣装デザイン賞受賞):1959年、市立美術大学 西洋画科卒業
  • 森口邦彦(染織家、人間国宝):1963年、市立美術大学 日本画科卒業
  • 森村泰昌(美術家):1975年、市立芸術大学 美術学部 工芸科デザイン専攻卒業
  • 外尾悦郎(彫刻家、サグラダ・ファミリア彫刻師):1977年、市立芸術大学 美術学部 彫刻科卒業
  • ヤノベケンジ(現代美術家):1991年、大学院美術研究科 修士課程彫刻専攻修了
  • やなぎみわ(現代美術家):1991年、大学院美術研究科修了

音楽分野では、指揮者の佐渡裕が1984年に音楽学部 管・打楽専修を修了した卒業生として、公式の一覧に掲載されています。顔ぶれをみると、現代美術、デザイン、染織、舞台衣装、彫刻と、領域が多岐にわたっていることがわかります。

まとめ

いかがだったでしょうか。京都市立芸術大学について見てきました。要点は次の7つです。

  • 1880年に京都府画学校として創立され、1969年に京都市立芸術大学となった公立の芸術大学です。2023年に京都駅東側の崇仁キャンパスへ移転しました
  • 美術学部は美術科・デザイン科・工芸科・総合芸術学科の4学科で、2027年度の一般入試の募集人員は135名です
  • 1年前期は学科を横断する「総合基礎実技」で学び、2年次から専門的な実技に進みます
  • 授業料は年額535,800円、入学料は市内出身者282,000円・市外出身者482,000円です(公式ページ掲載額。4年間の入学料と授業料の合計は、編集部の計算で市内出身者2,425,200円、市外出身者2,625,200円)
  • 入試は大学入学共通テストと個別試験(描写・色彩・立体、総合芸術学科は描写・小論文)を組み合わせます。2026年度入試の志願者は501名、合格者は137名でした
  • QS世界大学ランキング アート&デザイン部門2026年版には掲載されていません。掲載の有無は教育の質を示すものではありません
  • 卒業後の進路は、美術学部125名のうち進学35名、就職43名でした(令和7年3月31日現在)。進路未定の41名には未回答者が含まれます

学費や入試の内容、募集人員は年度ごとに変わります。出願を具体的に考える段階では、必ず公式サイトで最新の情報をご確認ください。

Euphoric " " の視点

京都芸大の美術学部は、1学年135名の募集です。その入試では、描写、色彩、立体の3つを、4時間と3時間の長い試験で課します。絵が描ければよいわけでも、デザインが得意ならよいわけでもなく、手でものを作る力を幅広く見られます。専攻ごとに絞り込む前に、まず造形の基礎全体を見ようとする姿勢が、試験の設計に出ているように読めます。

入学後の設計も同じ方向です。1年前期は学科の違う学生が混ざって「総合基礎実技」に取り組み、専攻は基礎を学んだうえで選びます。入る前に専攻を決め切らなくてよい仕組みは、18歳で自分の表現を言い当てることの難しさを前提にしているのだと思います。

この大学の歩みで目を引くのは、2023年に沓掛から崇仁へ移った点です。1980年から40年以上続いた拠点を離れ、京都駅のそばに、美術と音楽、ギャラリー、芸術資料館、図書館を一か所に集めました。大学が「見せる場所」を学外に求めず、キャンパスの中心に置いたことは、作品を発表することを学びの一部と考えているということだと思います。

卒業後の数字は、読み方に注意が必要です。美術学部125名のうち、進学が35名、就職が43名で、進路未定が41名と記載されています。ただし進路未定には未回答の人も含まれますから、この数字から就職の難しさを断定することはできません。一方で、任天堂やJAXA、伝統工芸の企業まで並ぶ就職先の幅広さは、公式の一覧から確かに読み取れます。授業料が年額535,800円という公立大学の学費で学べることも含め、進学先を「何を学ぶか」だけでなく「どう学び続けるか」でも比べる価値のある大学だと思います。

出願に向けて、作品やポートフォリオを用意する段階でお悩みの方は、ポートフォリオ添削サービス「PORTFOLIO SENSEI」もあわせてご覧ください。

もっと知るには

本記事の情報は、京都市立芸術大学の公式サイト(kcua.ac.jp)をもとに確認しています。学費・入試・募集人員は年度ごとに変わりますので、出願の際は下記の公式ページで最新の情報をご確認ください。

海外の美術系大学と比較したい方は、QS世界大学ランキング アート&デザイン部門の解説もあわせてご覧ください。国内の美大を比べたい方は国内美大の比較記事、国内の他の芸術・美術大学については国内の芸術・美術大学のアート&デザイン学部/専攻をまとめた記事もご用意しています。

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