ブランドガイドラインとは?書くべき項目と運用のコツを事例つきで解説

ブランドガイドラインとは?書くべき項目と運用のコツを事例つきで解説
写真:Adam Moss / Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0。トリミング・文字入れ。この画像もCC BY-SA 2.0で提供)

アートコンシェルジュ|最初の一枚から、一生のコレクションまで。無料で相談する

ブランドガイドラインとは、ブランドの考え方と表現のルール(ロゴ、色、書体、文章の語り口、写真の扱いなど)を一冊にまとめ、社内外の誰が使っても一貫した表現になるようにするための文書のことです。ブランドの「考え方」と「見せ方」の両方を書く点が、単なるロゴの使用規定との違いです。

この記事では、ブランドガイドラインに書くべき項目と、作ったあとに形骸化させない運用のコツを、事例とともに整理します。

この記事で分かること

  • ブランドガイドラインの定義と、ロゴ使用規定やブランドブックとの違い
  • 書くべき項目の一覧と、作成の進め方
  • NASAとニューヨーク市交通局の事例、アートを取り入れる際のルール、運用のコツ

ブランドガイドラインはなぜ必要なのか

ブランドは、広告、パッケージ、サイト、名刺、店舗、SNSなど、多くの接点で人の目に触れます。担当者や外部のデザイナーが替わるたびに表現が変わると、受け取る側は「同じ会社」と認識しにくくなります。

ガイドラインは、このばらつきを防ぎ、判断を速くするための道具です。ロゴ、カラー、フォント、トーン&マナーを網羅し、社内外の関係者が参照できる形にしておくことが、一貫した運用の出発点になるとされています。Adobeの解説も、ブランドの要素やブランドボイス(口調や文体)が明確になっていれば、制作に関わる全員が同じ基準で発信できると説明しています。

ガイドラインには、もうひとつ大きな役割があります。それは、判断の基準を共有することです。新しい媒体や企画が出てきたとき、細かなルールが書かれていなくても、理念や個性が言葉になっていれば、「このブランドらしいか」を自分で判断できます。ルールが多いほど守りやすくなるわけではなく、考え方が共有されているほど、現場の判断は揃いやすくなります。

ガイドラインが役立つ場面は、次のとおりです。

  • 新しい担当者や外部の制作会社に、短時間で方針を伝えたいとき
  • 取引先や販売店が、自社のロゴや商品を扱うとき
  • リブランディングや周年事業で、新しい表現を社内に浸透させるとき
  • アートや作家と協働して、作品の使い方を決めるとき

ロゴ使用規定・ブランドブックとの違い

似た言葉の整理です。会社によって呼び方は異なりますが、おおよそ次のように使い分けられます。

ロゴ使用規定・ブランドガイドライン・ブランドブックの違いを、主な内容と主な読み手で比べた図。Euphoric
図:似た言葉の使い分け
名称主な内容主な読み手
ロゴ使用規定ロゴの形、余白、最小サイズ、禁止例制作者、取引先
ブランドガイドライン理念から表現ルールまで、運用の基準全体社内全員、制作者、パートナー
ブランドブック理念や物語を、読み物として伝える冊子社員、採用候補者、顧客

ロゴ使用規定は、ガイドラインの一部と位置づけられることが多く、ブランドブックは、より読み物としての側面が強いものを指す場合が多いです。実務では、ひとつの冊子に両方を収めることもあります。

事例:デザイン史に残る2つのスタンダードマニュアル

ブランドガイドラインの原型として、デザイン史でよく知られているのが、アメリカの2つの「グラフィックス・スタンダード・マニュアル」です。

ニューヨーク市交通局(1970年)

1970年のニューヨーク市交通局グラフィックス・スタンダード・マニュアルは、ユニマーク・インターナショナルのマッシモ・ヴィネッリとボブ・ノルダが制作しました。両者が所属したユニマークは、1960年代後半に、ニューヨーク市交通局から地下鉄を含む全体のグラフィックの仕組みをつくる仕事を任されました(開始年は1966年・1967年と資料で異なります)。このマニュアルは、2014年にKickstarterで資金を集め、Standards Manual社から復刻されました。復刻版には、ヴィネッリの個人蔵書から取った高解像度のスキャン、マイケル・ビエルトの序文、クリストファー・ボナノスの寄稿が収められています。

緑の手すりに取り付けられた黒い駅名板。「14 Street Station」の文字と、色分けされた路線記号が並ぶ
ニューヨーク地下鉄14丁目駅の入口サイン。黒地に白い文字、路線ごとの色の丸記号で案内する方式は、ユニマークの設計したサインシステムに由来します
写真:Kidfly182 / Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
ヘルメット姿の作業員が「Uptown & Queens」とR線の記号が入った黒いサインを掲げている
ホワイトホール駅で案内サインを取り付ける作業員(2012年、ニューヨーク州都市交通局の撮影)
写真:Metropolitan Transportation Authority of the State of New York / Wikimedia Commons(CC BY 2.0)
白髪の男性が机の前で笑っている。隣に女性が座っている
マッシモ・ヴィネッリ(右)とレラ・ヴィネッリ(2010年)
写真:Arwcheek / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

NASA(1970年代)

NASAのグラフィックス・スタンダード・マニュアルは、デザイン事務所のダン・アンド・ブラックバーン(Danne & Blackburn)が手がけた文書です。NASAは1970年代に新しいロゴ、通称「ワーム」を採用しましたが、1992年に取りやめ、従来の「ミートボール」ロゴに戻しました。この旧マニュアルも、2015年にKickstarterで復刻されています。企画したのは、デザイン事務所ペンタグラムのジェシー・リードとハミッシュ・スミスで、リチャード・ダンの承認を得て実施されました。発行年は資料によって1974年・1975年・1976年1月と異なるため、本記事では「1970年代」と記します。

白い表紙の中央に、黒い「ワーム」ロゴのNASAの文字
NASAグラフィックス・スタンダード・マニュアルの表紙(1976年1月版)
資料:NASA / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
スペースシャトルの側面図と上面図に、ロゴと国名表示の位置が示されたページ
同マニュアルのスペースシャトルの表示規定のページ。機体のどこに、どの大きさでロゴを入れるかまで決めています
資料:NASA / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
壇上に並ぶ人々と大勢の聴衆。背後の幕に「NASA」のワームロゴ、右にスペースシャトルの模型
NASA創設25周年の式典(1983年、国立航空宇宙博物館)。背景に「ワーム」ロゴが掲げられています
写真:NASA / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
青い円の中に白い「NASA」の文字と赤いV字の帯、星と周回軌道が描かれたNASAの記章
1992年に再び正式なロゴとなった「ミートボール」
資料:NASA / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

この2つの事例から読み取れるのは、次の点です。

  1. ガイドラインは一度つくって終わりではなく、時代とともに見直される(NASAはロゴ自体を戻した)
  2. きちんと設計された基準は、それ自体が価値を持つ(どちらも数十年後に復刻され、デザインの資料として読み継がれている)
  3. デザイナーが「理念をどう形にするか」を文書にすると、運用の拠り所になる

美術館の分野でも、展覧会ごとにポスターやサイトの表現を変えつつ、館としての一貫した印象を保つ工夫が行われています。共通の枠組みを決めたうえで、個別の企画に自由度を持たせる考え方は、企業のガイドラインにも応用できます。すべてを固定せず、「変えてよい部分」と「変えてはならない部分」を分けて書くことが、運用しやすさにつながります。

アートの観点では、ガイドラインは「作家の意図を、使う側が守れる形にする」ことと似ています。使う人が替わっても、表現の核が保たれる工夫と考えると分かりやすいでしょう。

ブランドガイドラインに書くべき項目

構成は会社によって異なりますが、次の4つのブロックで整理すると過不足が出にくくなります。

ブランドガイドラインに書くべき項目を、考え方・ビジュアル・言葉・運用の4ブロックで整理した図。Euphoric
図:ガイドラインに書く4つのブロック

1. ブランドの考え方(土台)

  • ミッション・ビジョン・バリュー、パーパス
  • ブランドの約束(顧客に何を提供するのか)
  • 想定する顧客と、ポジショニング
  • ブランドのパーソナリティ(人にたとえるとどんな存在か)

デビッド・アーカーは、1996年の著書『Building Strong Brands』で、ブランド・アイデンティティを「製品」「組織」「人」「シンボル」という4つの視点から捉える考え方を示したと紹介されています。ガイドラインの冒頭にこうした視点を置くと、見た目のルールの根拠が伝わりやすくなります。

2. ビジュアルのルール

  • ロゴ(基本形、余白、最小サイズ、背景色との組み合わせ、禁止例)
  • カラー(メインカラー、サブカラー、数値の指定)
  • フォント(見出し、本文、使用場面)
  • 写真・イラストのトーン、アイコンの使い方
  • レイアウトの基本ルール

3. 言葉のルール

  • ブランドボイス(口調、文体、使う言葉と避ける言葉)
  • 名称の表記(社名、商品名の表記ゆれの防止)
  • キャッチコピーや説明文の例

4. 運用のルール

  • 媒体別の使用例(名刺、封筒、サイト、SNS、パッケージ、店舗)
  • 外部パートナー、販売店の使用条件と申請方法
  • 例外が出たときの判断者と手順
  • 更新の担当者と、見直しの頻度

アートを取り入れている会社は、アートの扱い方の項目も加えることをおすすめします。たとえば、作品の掲載にあたっての作家名の表記方法、作品の改変の可否、広告やパッケージで使えるかどうかの条件です。作品の権利は作家にあるのが原則のため、ガイドラインにあらかじめ書いておくと、担当者が替わっても対応が揃います。

作り方の進め方

作成は、次の流れが基本です。

  1. 目的を決める:新しい担当者への共有か、リブランディングの浸透かなど
  2. 現状を集める:既存のロゴ、名刺、サイト、パンフレットの表現のばらつきを並べる
  3. 考え方を言葉にする:理念、提供価値、ブランドの個性を整理する
  4. ルールに落とす:色、書体、文体を決め、使用例と禁止例を付ける
  5. 試して直す:実際の制作物で試し、使いにくい箇所を修正する
  6. 共有する:誰が、どこで、いつでも見られる状態にする

2から3の段階で、社内の関係者と対話することが重要です。経営者だけでなく、営業、広報、現場の担当者に聞き取りをすると、実際の接点でどんなばらつきが生じているかが見えてきます。ガイドラインは、デザイナーだけが作る文書ではなく、使う人の声を反映して初めて運用に耐えるものになります。外部の制作会社が作るにしても、考え方の部分は、社内で納得できる言葉にしておく必要があります。

運用のコツ:形骸化させない5つの工夫

ガイドラインは、作ったあとに使われなければ意味がありません。次の工夫が有効です。

ブランドガイドラインを形骸化させない5つの工夫(短く探しやすく、良い例と悪い例、テンプレート、窓口、見直し)の図。Euphoric
図:形骸化させない5つの工夫
  1. 短く、探しやすくする:全体は詳しく、冒頭の1〜2ページで要点が分かるようにする
  2. 「やってよい例」と「だめな例」を並べる:文章の説明より、見比べる方が伝わる
  3. テンプレートを用意する:名刺、スライド、メール署名など、よく使うものは雛形を配る
  4. 担当者と窓口を決める:迷ったときの相談先と、例外の判断者を決めておく
  5. 定期的に見直す:年に一度など、時期を決めて点検する(NASAの例のように、基準も見直しが前提)

見直しの際は、現場で困った場面を集めると、実用的な改訂ができます。たとえば、「新しい媒体でロゴが使えなかった」「写真のトーンに迷った」といった声は、ガイドラインに足すべき項目の手がかりです。改訂の履歴と日付を表紙に残しておくと、どの版が最新かが分かり、古い版が使われ続けることを防げます。

上段に正しいロゴの例、下段に変形や装飾を加えた誤ったロゴの例が並ぶページ
NASAのマニュアルにある、ロゴの正しい使い方と誤った使い方を並べたページ
資料:NASA / Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

また、配布の形にも工夫が必要です。印刷物だけでなく、社内のサイトや共有フォルダにPDFと素材データ(ロゴのデータ、カラー値、テンプレート)をまとめて置いておくと、制作者がすぐに使えます。素材を探す手間が減るほど、ルールは守られやすくなります。

よくある失敗

  • 見た目のルールだけで、考え方が書かれていない:判断に迷ったときの根拠がなく、例外が増える
  • 細かすぎて誰も読まない:頻度の高い場面に絞って、詳しい資料は別添にする
  • 作ったことが社内に知られていない:発表の場を設け、使い方の説明をする
  • 更新されず、現状と食い違う:担当者と見直し時期を決める

ブランドガイドラインのチェックリスト

  • [ ] ミッション・ビジョン・バリューを書いている
  • [ ] ロゴの余白、最小サイズ、禁止例を示している
  • [ ] 色は数値(印刷とスクリーンの両方)で指定している
  • [ ] 文章の語り口と、避ける言葉を決めている
  • [ ] 媒体別の使用例がある
  • [ ] 外部パートナー向けの使用条件と申請手順がある
  • [ ] アートや作家の作品を使う場合のルールがある
  • [ ] 担当者と見直しの時期が決まっている

まとめ

ブランドガイドラインは、ブランドの考え方と表現のルールをまとめ、誰が使っても一貫した表現を保つための文書です。要点を整理します。

  • 理念(考え方)と、ビジュアル・言葉・運用のルールの両方を書く
  • ロゴ使用規定は一部であり、ブランドブックは読み物としての側面が強い
  • ニューヨーク市交通局やNASAの事例のように、基準は時代とともに見直される
  • アートを使う場合は、作家名の表記や改変の可否もあらかじめ決めておく
  • 短く、探しやすく、担当者を決めて更新する

ガイドラインは、作ること自体より、使われ続けることに価値があります。まずは、現状の表現のばらつきを並べるところから始めてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. ブランドガイドラインは、小さな会社にも必要ですか。

規模が小さくても、外部の制作会社や取引先と関わる機会があれば有用です。最初は、ロゴの使い方、色、書体、文体の4点を1〜数ページにまとめるだけでも、表現のばらつきを抑えられます。

Q2. ブランドガイドラインは、どのくらいの頻度で見直しますか。

決まった頻度はありませんが、年に一度など、時期を決めて点検する方法があります。リブランディングや事業の変化があったときも、見直しの機会です。

Q3. 外部のデザイナーに作ってもらう場合、社内ですることは何ですか。

理念や提供価値を言葉にする作業と、現状の制作物の収集、完成後の運用の担当を決める作業は、社内で行う必要があります。見た目のルールは外部に任せられても、考え方の部分は、社内の合意が欠かせません。

あわせて読みたい


この記事を書いた Euphoric " " について

Euphoric " " は、ユアムーン株式会社が運営するアートメディアです。ユアムーンは、デザインとクリエイティブを軸にしたブランディング会社です。ブランドの言語化から、ロゴやWebサイトなどのデザイン、社内外への発信までを一貫して設計しています。ご希望に応じて、アートの選定・導入もお手伝いしています。

ブランドガイドラインは、考え方の言語化と、ロゴや色、言葉づかいなどの表現のルールづくりを一緒に進めると、運用しやすいものになります。節目の計画段階から、ご相談をお受けしています。

参考資料

NEW POSTS / 新着記事

開催中の展覧会いま行ける展覧会を、終了が近い順に157件 開催中/7日以内に終了 7件展覧会を探す
全国の美術館・博物館ガイド全国の美術館を、エリアから26館掲載美術館を探す