アーティストステートメントの書き方【英語例文つき・アート英語 第14回】

アーティストステートメントの書き方【英語例文つき・アート英語 第14回】
画像:The Metropolitan Museum of Art, Bequest of Sam A. Lewisohn, 1951(51.112.1)/Open Access(CC0)

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ART ENGLISH 14/ 15PART C 自分の言葉で語る

全15回のうち 第14回

連載「美術館の英語を読める人になる」

My practice centers on …アーティストステートメントを書く

美大の留学出願、ポートフォリオ、展示の資料。作品と一緒に英語で求められることが多いのがアーティストステートメント(artist statement)です。この記事は、連載「美術館の英語を読める人になる」の第14回です。第9回では作家のステートメントを「読み」ました。今回は、それを自分で書くための型を、名画の解説文と見比べながら組み立てます。

連載の全体像と学ぶ順番は、アート英語カリキュラム 目次にまとめています。

読了目安 約16分(練習問題を含む)使える型 3つ練習問題 4問

今日のゴール

この回を読むと、自分(または架空の作家)のアーティストステートメントを、100語前後の英語で書けるようになります。

この回で扱う言葉

artist statementpresent tenseconcisepracticematerialprocess
先に答え:解説文とステートメントの違い
美術館の解説文アーティストステートメント

書く人

美術館(学芸員など)作家本人

人称

三人称(Cézanne, he)一人称(I, my)

作家の行為の時制

過去形(Cézanne painted)現在形(I paint)

中心になる内容

1点の作品と、その歴史的な位置制作全体(何を、どう、なぜつくるか)

長さ

作品1点につき数文〜1段落提出先・用途の指定による

長さは提出先の指定が最優先です。

長さは提出先の指定が最優先です。指定がない場合は、この回で練習する100語前後(短い1段落)から始めると、要点を絞る練習になります。

今日の1枚

ポール・セザンヌ《リンゴとプリムラの鉢のある静物》(1890年頃)、メトロポリタン美術館。青緑の壁を背に、テーブルの白い布の上にたくさんのリンゴが並び、右にピンクの花と濃い緑の葉のプリムラの鉢が置かれた油彩画。
ポール・セザンヌ《リンゴとプリムラの鉢のある静物》1890年頃 画像:The Metropolitan Museum of Art, Bequest of Sam A. Lewisohn, 1951(51.112.1)/Open Access(CC0)
《リンゴとプリムラの鉢のある静物》の部分拡大。白い布の上のリンゴ。一つひとつが目に見える絵具の面でできている。DETAIL
部分拡大:布の上のリンゴ目に見える絵具の面の組み合わせ
《リンゴとプリムラの鉢のある静物》の部分拡大。青緑の壁を背にした、プリムラの花と濃い葉。DETAIL
部分拡大:プリムラの鉢青緑の壁を背にした濃い葉

作品ラベルの形で見てみます。制作年の ca. は「~頃」を表すラテン語 circa の略です。

MUSEUM LABEL

Paul Cézanne (French, 1839–1906)
Still Life with Apples and a Pot of Primroses, ca. 1890
Oil on canvas
28 3/4 × 36 3/8 in. (73 × 92.4 cm)
The Metropolitan Museum of Art, Bequest of Sam A. Lewisohn, 1951 (51.112.1)

作品名
《リンゴとプリムラの鉢のある静物》
作家
ポール・セザンヌ(フランス、1839–1906)
制作年
1890年頃
素材・技法
油彩、カンヴァス
サイズ
73 × 92.4 cm
所蔵
メトロポリタン美術館(ニューヨーク)ヨーロッパ絵画部門
クレジット
Bequest of Sam A. Lewisohn, 1951(51.112.1)
画像
The Met Open Access(CC0)/作品ページ(The Met)

セザンヌは、リンゴのような身近なものを何度も描き続けた画家です。同じモチーフを繰り返し、ものの形と色の見え方を探る。その姿勢は、現代の作家がステートメントで語る「制作の軸」によく似ています。

この回では、セザンヌについての三人称の解説文と、架空の作家による一人称のステートメントを並べて、書き方の違いを確かめます。セザンヌについてはポール・セザンヌの解説記事で詳しく紹介しています。

美術館の解説文で読む

美術館の壁に掲げられる解説文(ウォールテキスト)の書き方にならって、この作品の解説を英語で書きました(Euphoric " " によるオリジナルの文章です)。このあと、同じ「静物」を題材にしたステートメントの見本と比べます。

WALL TEXT 三人称・過去形Paul Cézanne, Still Life with Apples and a Pot of Primroses, ca. 1890

Apples spill across a white cloth, and a pot of primroses rises at the right, its dark leaves set against a blue-green wall. Cézanne painted this still life in oils around 1890. He returned1 to the same humble subjects again and again, treating apples as a way to study form and color. Here each fruit is built from visible patches of paint rather than smooth blending, so the surface stays active even where the objects are still. The folds of the cloth suggest weight and movement at once. The painting was once owned by Claude Monet, the Impressionist painter and ardent gardener. The picture seems to record6 a slow, patient act of looking.

下線と番号は、このあとの「読み解き」1・6に対応しています。

全訳を読む

訳:白い布の上にリンゴがこぼれるように広がり、右側にはプリムラの鉢が立ち上がっていて、その濃い葉が青緑の壁を背に置かれています。セザンヌはこの静物画を1890年頃に油彩で描きました。彼は同じ素朴なモチーフに何度も立ち返り、リンゴを形と色を探るための手段として扱いました。ここでは一つひとつの果物が、なめらかに混ぜた色ではなく、目に見える絵具の面の組み合わせでできているので、ものが静止している部分でも画面は生き生きと動いています。布のひだは、重さと動きを同時にうかがわせます。この絵は、かつて印象派の画家で熱心な園芸家でもあったクロード・モネが所有していました。この画面は、ゆっくりと辛抱強く見るという行為を記録しているように見えます。

読み解き:なぜこの言い方なのか

見本:架空の作家のステートメント(100語)

次の英文は、この回のために作った架空の作家のステートメントです(実在の作家の文章ではありません)。セザンヌと同じく静物を描く画家を想定しています。解説文と比べながら読んでください。

ARTIST STATEMENT 一人称・現在形架空の作家
何を(1文目)どう(2文目)なぜ(3〜4文目)結果(5〜6文目)

My practice centers on2 the objects that stay on my kitchen table for weeks: lemons, a cracked bowl, a folded towel. I work primarily in oil on small wooden panels3, and I paint1 each arrangement many times as the fruit slowly changes. By returning to the same few things, I aim to4 slow down the act of looking. I am less interested in describing an object than in5 recording how its color shifts with the light. Each series ends when the fruit can no longer be painted. The result is6 a quiet record of time passing in a single room.

色は構成の4段、下線と番号はこのあとの「読み解き」1〜6に対応しています。

全訳を読む

訳:私の制作の中心にあるのは、何週間も台所のテーブルに置かれたままのものたちです。レモン、ひびの入った鉢、たたんだタオル。私は主に小さな木の板に油彩で描き、果物がゆっくりと変化していくあいだ、同じ配置を何度も描きます。同じいくつかのものに立ち返ることで、見るという行為をゆっくりにしたいと考えています。私の関心は、ものを描写することよりも、光とともにその色がどう移り変わるかを記録することにあります。それぞれのシリーズは、果物がもう描けなくなったときに終わります。その結果できあがるのは、一つの部屋で時間が過ぎていくことの静かな記録です。

Cézanne painted → I paint:人称と時制を切り替える

ステートメントが説明するのは1回の出来事ではなく、今も続いている制作の習慣だからです。

解説文は Cézanne painted、He returned と三人称・過去形でした。作家の行為はすでに終わった歴史だからです。

一方ステートメントは I work、I paint と一人称・present tense(現在形)で書きます。ステートメントが説明するのは1回の出来事ではなく、今も続いている制作の習慣だからです。英語の現在形は「習慣・繰り返し」を表します。

✕
I painted lemons on wooden panels.(過去の1回の出来事に聞こえ、今の制作の説明にならない)
○
I paint lemons on wooden panels.

ただし、特定のシリーズの経緯を語るときは過去形も使えます。In 2025, I began a series of …(2025年に~のシリーズを始めた)のように、時期をはっきり示した一文なら自然です。

作家の行為は過去形、画面で見えることは現在形という第1回のルールが、ここで「自分の習慣は現在形」へと広がります。

My practice centers on ~:practice は「制作活動の全体」

1文目で何を扱う作家かを言い切るのが、ステートメントの基本の書き出しです。

practice は、第9回(作家のステートメントを読む)で読んだ語です。日本語の「練習」ではなく、作家として続けている制作活動の全体を指します。医師や弁護士の「業務」を practice と呼ぶのと同じ使い方です。

center on ~ は「~を中心にする」。focus on ~ もほぼ同じ意味で使えます。米式では center、英式では centre とつづるので、提出先に合わせて統一します(この連載は米式です)。

✕
My practice is centered in lemons.(前置詞は on。in だと「レモンの中に」になる)
○
My practice centers on everyday objects./My practice focuses on everyday objects.

1文目で何を扱う作家かを言い切るのが、ステートメントの基本の書き出しです。見本では、コロンのあとに lemons, a cracked bowl, a folded towel と具体物を3つ並べています。

抽象的なテーマ(time, memory など)を最初に掲げるより、具体物から入るほうが、読み手は作品を思い浮かべやすくなります。

I work primarily in oil on small wooden panels:素材は in と on で言う

素材と作り方を一文で示すと、ステートメントの「How」の部分が完成します。

I work primarily in ~(主に~で制作している)は、material(素材)を伝える定番の形です。第1回で学んだ「in + 画材」がそのまま使われています。

続く on small wooden panels は、絵具を載せる支持体(何の上に描くか)で、第6回(作品キャプションの読み方)で扱うラベルの Oil on canvas と同じ「X on Y」の考え方です。

✕
I use oil paint for painting.(使う・描くが重複し、情報が増えない)
○
I work primarily in oil on small wooden panels.

版画や写真の作家なら、第13回(ギャラリーで質問する)の edition を使って I print each image in a small edition.(各図柄を少部数のエディションで刷る)と書くこともできます。素材と作り方を一文で示すと、ステートメントの「How」の部分が完成します。

By returning to …, I aim to ~:手段と目的を一文で

by ~ing が手段(how)、aim to が目的(why)です。

By ~ing, I aim to ~ は「~することで、…することを目指している」。by ~ing が手段(how)、aim to が目的(why)です。process(制作の過程)と、その過程で目指すことを結びつける、ステートメントの中心になる文です。

ここで気をつけたいのは、目的の大きさです。

✕
I want to make people feel peaceful and happy.(見る人の感情を約束していて、根拠がない)
○
By returning to the same few things, I aim to slow down the act of looking.

見る人がどう感じるかは、作家が決められることではありません。invites the viewer to ~(鑑賞者を~へといざなう)のような言い回しも、よく見かけるぶん中身のない決まり文句に聞こえやすい表現です。

自分が制作の中で何をしようとしているかを書くと、誇張のない目的になります。

I am less interested in A than in B:立場をはっきりさせる比較

何を選ばなかったかを書くほうが、作家の立場がはっきりします。

I am less interested in A than in B(AよりもBに関心がある)は、自分の関心を何かとの比較で示す形です。「~に興味があります」とだけ書くより、何を選ばなかったかを書くほうが、作家の立場がはっきりします。第9回で読んだ I am interested in ~ の発展形です。

ステートメントでは concise(簡潔な)であることが重視されます。次のような表現は、多くの人が書くため個性が伝わりにくく、削ると文が締まります。

△
I have loved art since I was a child.(子どもの頃から好きだった:作品の説明にならない)
△
My unique style …(unique かどうかは読み手が判断する)
△
I am passionate about …(熱意は具体的な制作方法で示すほうが伝わる)
The result is ~:最後の一文は控えめに締める

自分の作品について suggest や may を使うと、解釈を読み手に開いたまま締めくくれます。

最後の The result is a quiet record of time passing in a single room. は、作品が結果として何になっているかを一文でまとめています。ここで大きな意味づけをしたい場合は、第12回(解釈を述べる)の言葉が役立ちます。

The paintings suggest how slowly an ordinary room changes.作品は、ありふれた部屋がどれほどゆっくり変わるかをうかがわせる
The series may evoke the stillness of a kitchen in the early morning.シリーズは、早朝の台所の静けさを呼び起こすかもしれない

自分の作品について suggest や may を使うと、解釈を読み手に開いたまま締めくくれます。解説文の最後の文 The picture seems to record … も、同じ控えめな締め方です。

なお、見本の構成は「何を(1文目)→ どう(2文目)→ なぜ(3〜4文目)→ 結果(5〜6文目)」の4段です。この順番は、次回の卒業課題「1作品を100語で語る」の4段構成の下敷きになります。

何を

1文目

どう

2文目

なぜ

3〜4文目

結果

5〜6文目

使える型3つ

My practice centers on ~.(型1:私の制作は~を中心にしています)

ステートメントの1文目に使う形です。on の後ろには、扱うモチーフやテーマを置きます。

My practice centers on the streets of my hometown.私の制作は、地元の街路を中心にしています。
My practice centers on hands and the work they do.私の制作は、手と、手が行う仕事を中心にしています。
I work primarily in ~.(型2:主に~で制作しています)

素材や技法を言う形です。in の後ろは画材・技法、必要なら on で支持体を足します。

I work primarily in watercolor on handmade paper.主に手漉きの紙に水彩で制作しています。
I work primarily in black-and-white photography.主にモノクロ写真で制作しています。
By ~ing, I aim to ~.(型3:~することで、…することを目指しています)

制作の方法と目的を結びつける形です。aim to の後ろは動詞の原形です。

By drawing the same tree every month, I aim to record the passing of the seasons.同じ木を毎月描くことで、季節の移り変わりを記録することを目指しています。
By layering thin glazes, I aim to build color slowly.薄い色の層を重ねることで、色をゆっくりと組み立てることを目指しています。

練習問題

Q1選択

( )に入る語を選んでください。

  1. My practice centers (on / in) memory and family photographs.
  2. I (work / worked) primarily in charcoal.(今も続けている制作の説明)
  3. By (cut / cutting) old maps, I aim to create new landscapes.
模範解答を見る
  1. on:center on ~ で「~を中心にする」。
  2. work:今も続く制作の習慣なので現在形。
  3. cutting:前置詞 by の後ろは ~ing 形。
Q2型2を使う

型2を使って、「主に陶土で制作しています」を英語で書いてください。

模範解答を見る

I work primarily in clay.

素材を表す in の後ろには冠詞を付けません(第1回の in + 画材と同じ考え方)。陶芸作品なら I work primarily in ceramics. も自然です。

Q3書き換え

次の文を、ステートメントにふさわしい書き方に直してください。

I want to make everyone happy with my unique paintings.

模範解答を見る

By painting small scenes from daily life, I aim to slow down the act of looking.

見る人の感情を約束する言い方と unique を避け、自分の制作の方法(by ~ing)と目的(aim to)を書きます。内容は作家ごとに変わるので、これは一つの例です。

Q4自由作文(60〜100語)

自分の制作(または、架空の作家を一人想定して、その作家の制作)について、「何を → どう → なぜ → 結果」の4段で、60〜100語のステートメントを英語で書いてください。型1〜3をすべて使ってみましょう。

解答例を見る

架空の作家

次の解答例も、架空の作家を想定したものです。

My practice centers on the night streets of large cities. I work primarily in black-and-white photography, and I shoot only between midnight and dawn. By returning to the same corners again and again, I aim to show how a familiar place changes when no one is watching. I am less interested in people than in the light they leave behind: lit windows, signs, and passing cars. The result is a series of quiet portraits of empty streets.

(77語)答えは作家によって変わります。字数を数えるときは、英文をテキストエディタに貼り付けて単語数を確認すると確実です。

前回の復習

第13回「ギャラリーで質問する」の言葉を使う小問です。

R1選択

( )に入る語を選んでください。

Is this work still (available / possible)?

答えを見る

available:「まだ購入できるか」を聞く定番の語です。

R2和文英訳

「来歴について教えていただけますか」を英語にしてください。

答えを見る

Could you tell me about the provenance?

provenance は持ち主の履歴。クレジットライン(美術館にどう入ったか)より範囲が広い語です。

R3知識

版画の余白にある「AP」は何の略ですか。

答えを見る

artist’s proof(アーティスト・プルーフ)。エディションとは別に、作家の手元に残すために刷られたものです。

次回予告と目次

ジョルジュ・スーラ《サーカスの客寄せ(パレード・ド・シルク)》(1887–88年)、メトロポリタン美術館。夜の見世物小屋の前で、台の上のトロンボーン奏者や楽師たちが正面を向いて並ぶ、細かな色の点で描かれた油彩画。NEXT 15

第15回 卒業課題:1作品を100語で語る100 words

ゴール:1作品を、描写・素材・解釈・感想を含めて100語前後の英語で語れるようになる。

画像:ジョルジュ・スーラ《サーカスの客寄せ(パレード・ド・シルク)》1887–88年 The Metropolitan Museum of Art, Bequest of Stephen C. Clark, 1960(61.101.17)/Open Access(CC0)

全15回の一覧と、学んだ回のチェック表はアート英語カリキュラム 目次にあります。

全15回の目次を見る
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