全15回のうち 第15回(最終回)
連載「美術館の英語を読める人になる」
One work, 100 words卒業課題:1作品を100語で語る
連載「美術館の英語を読める人になる」の第15回、シーズン1の最終回です。第1回で比較のために見たスーラの油彩画に、もう一度戻ってきました。あのとき、この作品について言えたのは「これは painting です」の一文だけでした。今回は、第1〜14回で身につけた言葉と型を総動員して、1作品を100語前後の英語で語る卒業課題に取り組みます。
連載の全体像と学ぶ順番は、アート英語カリキュラム 目次にまとめています。
読了目安 約18分(練習問題を含む)使える型 3つ練習問題 4問(卒業課題を含む)
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この回を読むと、1作品を、描写・素材・解釈・感想を含めて100語前後の英語で語れるようになります。
この回で扱う言葉(新出なし・総復習)
事実から始めて、自分の言葉で終わるのが共通点です。
この順番は、第7回(壁の解説文の型)で読む「つかみ → 文脈 → 観察 → 意義」の4段構成と、第14回で書いたステートメントの「何を → どう → なぜ → 結果」を下敷きにしています。事実から始めて、自分の言葉で終わるのが共通点です。
今日の1枚

DETAIL
DETAIL作品ラベルの形で見てみます。第6回(作品キャプションの読み方)で学ぶ項目が、すべてここに並んでいます。
Georges Seurat (French, 1859–1891)
Circus Sideshow (Parade de cirque), 1887–88
Oil on canvas
39 1/4 × 59 in. (99.7 × 149.9 cm)
The Metropolitan Museum of Art, Bequest of Stephen C. Clark, 1960 (61.101.17)
- 作品名
- 《サーカスの客寄せ(パレード・ド・シルク)》
- 作家
- ジョルジュ・スーラ(フランス、1859–1891)
- 制作年
- 1887–88年
- 素材・技法
- 油彩、カンヴァス
- サイズ
- 99.7 × 149.9 cm
- 所蔵
- メトロポリタン美術館(ニューヨーク)ヨーロッパ絵画部門
- クレジット
- Bequest of Stephen C. Clark, 1960(61.101.17)
- 画像
- The Met Open Access(CC0)/作品ページ(The Met)
《サーカスの客寄せ》は、パリのコルヴィ・サーカスの前で、客を呼び込むために行われた出し物(パレード)を描いた作品で、スーラが初めて描いた夜の情景です。1888年のアンデパンダン展で発表されました。
第1回では、素描《アマン=ジャン》の「粒立つ表面」が、この絵の「小さく分かれた色のタッチ」を予告している、と読みました。最終回はその予告の先にある作品を、今度は自分の言葉で語ります。スーラについてはジョルジュ・スーラの解説記事で詳しく紹介しています。
美術館の解説文で読む
最終回のこのブロックには、卒業課題の模範解答を置きます。前半は美術館の解説文のように三人称で事実を書き、後半は第11回のように一人称で反応を語る、単元A・B・Cをつなぐ形で書きました(Euphoric " " によるオリジナルの文章です)。
Circus Sideshow is a painting, not a drawing1. Seurat painted it in oils in 1887–88, and it was his first night scene. It shows2 a free performance outside the Corvi Circus in Paris, held to draw a paying crowd inside. The surface is built from small, separate touches of color, and the muted palette seems to glow3 under the row of lamps. In the foreground, dark silhouettes4 of spectators line the bottom edge. The stiff, frontal figures suggest a ritual rather than a party5. What strikes me is the stillness. I keep coming back to the trombonist at the center. It feels unsettling because6 the scene is meant to be festive, yet almost nothing moves.
色は4段構成、下線と番号はこのあとの「読み解き」1〜6に対応しています。
全訳を読む
訳:《サーカスの客寄せ》は素描ではなく、絵画です。スーラは1887–88年にこの作品を油彩で描き、これは彼にとって初めての夜の情景でした。描かれているのは、パリのコルヴィ・サーカスの前で行われた無料の出し物で、お金を払う客をテントの中へ呼び込むためのものです。画面は小さく分かれた色のタッチで組み立てられ、抑えた色調の色づかいが、並んだランプの下で光を帯びているように見えます。前景では、観客の黒いシルエットが画面の下端に沿って並んでいます。こわばった、正面向きの人物たちは、祭りというより儀式をうかがわせます。私の目を引くのは、その静けさです。中央のトロンボーン奏者に、何度も目が戻ってしまいます。にぎやかなはずの場面なのに、ほとんど何も動いていないので、落ち着かない気持ちになります。
卒業課題の「100語」は目安で、90〜120語程度に収まっていれば十分です。
語数は115語です。卒業課題の「100語」は目安で、90〜120語程度に収まっていれば十分です。
読み解き:なぜこの言い方なのか
1. What it is
2. How it is made
3. What it suggests
- The stiff, frontal figures suggest a ritual rather than a party.画面の要素 + suggests/rather than / 初出 第12回
100語で語るとき、1文目に作品の種類を置くと、聞き手はその後の情報を受け止める枠を持てます。
100語で語るとき、1文目に作品の種類を置くと、聞き手はその後の情報を受け止める枠を持てます。第1回の It’s a drawing, not a painting. を、この作品向けに逆にした形です。
素描《アマン=ジャン》と並べて語る場面を想定すると、「同じ作家でも、こちらは絵画」と区別する一文目が生きてきます。
単独でこの作品だけを紹介する場合は、Circus Sideshow is an oil painting by Georges Seurat. のように、種類と作家を一文で言っても構いません。
「作家の行為は過去形、画面で見えることは現在形」は、100語の文章でも柱になります。
2文目の Seurat painted、it was his first night scene は過去形、3文目の It shows は現在形です。第1回で最初に学んだ「作家の行為は過去形、画面で見えることは現在形」は、100語の文章でも柱になります。
後半の What strikes me、I keep coming back も現在形で、第11回で加わった「自分の反応も現在形」が守られています。
3文目の held to draw a paying crowd の draw は「引き寄せる」の意味です。第1回の「線で描く」、第11回の draws me in(引き込む)に続いて、draw の3つ目の意味がここで登場しています。
100語では、入れる語を選ぶことのほうが大切です。
「How it is made」の段は、単元Aで学んだ見た目の語彙をまとめて使う場所です。small, separate touches of color は第1回の解説文と同じ表現で、点描の技法を専門用語なしに説明しています。muted palette(抑えた色調の色づかい)は第2回(色を語る)の組み合わせです。
seems to glow(光を帯びているように見える)は、第12回の seem to です。絵具そのものが光るわけではないので、The palette glows. と言い切るより、seems to を入れるほうが観察として正確です。
語数に余裕があれば、第5回(筆の跡と質感)の brushwork や、第8回(「〜ism」の読み方)の運動名を加えることもできます。たとえば The dotted brushwork is typical of Neo-Impressionism.(点を打つ筆づかいは新印象派に典型的なものです)。ただし100語では、入れる語を選ぶことのほうが大切です。
描写の文が、解釈と感想の土台になっているのです。
In the foreground(前景に)を文頭に置くと、聞き手の視線を画面の手前に導いてから、そこにあるものを伝えられます。第4回(構図)の型です。silhouette(シルエット、黒い影の形)は第3回(光と影)の語で、逆光や暗がりの中の形を言うときに使います。
この一文があることで、続く解釈の文(3段目)に根拠が生まれます。観客が手前に黒く並んでいるので、見る人は観客の後ろから舞台を眺める位置に置かれます。描写の文が、解釈と感想の土台になっているのです。
描写の段で根拠をしっかり示し、解釈は1文で言い切るほうが、文章全体の説得力が上がります。
3段目は、第12回の型を組み合わせた1文だけです。確かめられるもの(the stiff, frontal figures:こわばった、正面向きの人物たち)を主語にし、解釈は suggest に担わせ、rather than で比べる相手を示しています。
100語の中で解釈に使える語数は限られます。解釈を何文も重ねるより、描写の段で根拠をしっかり示し、解釈は1文で言い切るほうが、文章全体の説得力が上がります。
1〜3段目は事実と根拠、4段目は自分。この役割分担が、卒業課題のいちばんの要点です。
4段目は、第11回の3つの型をそのまま並べています。
- What strikes me is the stillness.(何が目を引いたか)→
- I keep coming back to the trombonist at the center.(どこに目が戻るか)→
- It feels unsettling because …(どう感じ、なぜか)。
最後の理由 the scene is meant to be festive, yet almost nothing moves は、1段目の事実(客寄せの出し物=にぎやかな場面のはず)と、3段目の解釈(儀式のよう)を結びつけています。最後の一文が、それまでの文を回収しているので、100語が一つのまとまりとして読めます。
この4段目は、読む人によって変わってかまわない部分です。同じ作品でも、What strikes me is the glow of the lamps. から始める人もいるでしょう。
1〜3段目は事実と根拠、4段目は自分。この役割分担が、卒業課題のいちばんの要点です。
使える型3つ
1段目の事実を2文で言う形です。種類は painting / drawing / print / photograph など、動詞は画材に合わせて painted / drew / printed を選びます。
※1つ目の例の作品情報(1565年・Oil on oak)は、メトロポリタン美術館の公式データで確認したものです。
3段目の解釈を1文で言う形です。
4段目の感想を2文で言う形です。
練習問題
次の4つの文は、4段構成のどの段に入りますか。1〜4の番号で答えてください。
- The bright yellow sky suggests hope rather than fear.
- This is a print by Katsushika Hokusai.
- I keep coming back to the tiny boats under the wave.
- The deep blue is set against the white foam.
模範解答を見る
- 3(What it suggests):suggest ~ rather than ~ の解釈の文。
- 1(What it is):作品の種類と作家。
- 4(Why it matters to me):I keep coming back to ~ の感想の文。
- 2(How it is made):色の組み合わせ(第2回の型 X is set against Y)。
型1を使って、「《アマン=ジャン》は絵画ではなく素描です。スーラはこれをコンテ・クレヨンで描きました」を英語で書いてください。
模範解答を見る
Aman-Jean is a drawing, not a painting. Seurat drew it in conté crayon.
第1回の型と組み合わせた形です。絵具を使っていないので drew。連載の最初と最後が、この一文でつながります。
次の感想の文を、第11回の型を使って、観察に基づく2文に書き直してください。
I like this painting. It is beautiful.
模範解答を見る
What strikes me is the soft evening light. It feels calm because the colors are warm and the water is still.
like と beautiful を使わず、「何が」と「なぜ」を言います。内容は作品によって変わるので、これは一つの例です。
好きな作品を1点選び、4段構成で、100語前後(90〜120語)の英語で語ってください。書き終えたら、下のチェック表で確認しましょう。
- 1文目で作品の種類(painting / drawing / print など)を言っている確認する回:第1回
- 画材を in で、支持体を on で書いている確認する回:第1回、第6回
- 作家の行為は過去形、画面で見えることと自分の反応は現在形確認する回:第1回、第11回
- 色・光・筆づかい・構図の語を2つ以上使っている確認する回:第2〜5回
- 解釈は画面の要素を主語にし、suggest・seem to などで控えめにしている確認する回:第12回
- 感想に「何が」と「なぜ」がある(like だけで終わらない)確認する回:第11回
- 評価の形容詞(beautiful, amazing など)を、具体的な観察に置き換えている確認する回:全回
解答例を見る
Aman-Jean is a drawing, not a painting. Seurat drew his friend in conté crayon in 1882–83 and showed it at the Paris Salon of 1883. The crayon catches on the raised grain of the paper, so the figure is built from tone rather than outline. The profile emerges from a dark ground, and the white collar holds the brightest light in the picture. The soft edges suggest a quiet presence rather than a precise likeness. What strikes me is how much light comes from a black crayon. It feels calm because the sitter is still and looks away from us.
(100語)第1回の作品を、全回の型で語り直した例です。答えは作品と書く人によって変わります。正解は一つではありません。
前回の復習
第14回「アーティストステートメントを書く」の言葉を使う小問です。
( )に入る語を選んでください。
My practice centers (on / at) the coastline of my hometown.
答えを見る
on:center on ~ で「~を中心にする」。
「主に紙に木炭で制作しています」を英語にしてください。
答えを見る
I work primarily in charcoal on paper.
画材は in、支持体は on です。
ステートメントで、作家が今も続けている制作を説明するときの時制は何ですか。
答えを見る
現在形(present tense)。習慣や繰り返しを表すためです。特定の時期の出来事を言うときは過去形も使えます。
次回予告と目次
これでシーズン1(全15回)は完結です。続編は現在のところ未定です。新しい回を用意する場合は、目次ページでお知らせします。
各回の「身についたこと」と、その回で学んだ型。タイトルから各回へ戻れます。
PART A見て描写する
PART B美術館の英語を読む
PART C自分の言葉で語る
シーズン1で身につけた力を、さらに伸ばすための方法を3つ紹介します。
- 美術館の公式サイトで、本物の解説文を読むこの連載で使ったメトロポリタン美術館の作品ページ(各回の「作品ページ(The Met)」のリンク)には、所蔵館自身の解説文が載っています。この連載で学んだ型(過去形と現在形の使い分け、suggests などの控えめな言い方)がどこに使われているか探しながら読むと、復習になります。
- 1週間に1作品、100語で書く卒業課題を一度きりにせず、作品を変えて続けると、使える語が少しずつ増えていきます。書いた文章を、前の週のものと見比べてみてください。
- 書く英語を、出願や試験につなげる海外の美大を目指す方は、第14回のステートメントと、IELTS のライティング対策をあわせて進めると、作品について書く力と試験で書く力を同時に鍛えられます。
全15回の一覧と、学んだ回のチェック表はアート英語カリキュラム 目次にあります。
全15回の目次を見る- 【徹底解説】ジョルジュ・スーラとは?点描で光を組み立てた新印象派の創始者の人生と作品を解説!
- 絵画は英語で何て言う?painting・drawing・pictureの違いを名画で学ぶ【アート英語 第1回】連載のはじまり
- 【IELTS対策】ライティング(Writing)を劇的に上げる方法
- アートの英単語31語|「表現」・構図・美学は英語で?例文つき辞典単語を引きたいときに
- 美術の専門用語を英語で|明暗法・図像学・来歴など31語の辞典
作品を「見る」から「持つ」へ
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